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No.35089の一覧
[0] 薄刃陽炎(ネギま×BLEACH 第八話投稿)[ドレイク](2013/09/08 15:09)
[1] 第一話[ドレイク](2012/09/12 07:21)
[2] 第二話[ドレイク](2012/09/12 07:21)
[3] 第三話[ドレイク](2012/09/18 22:46)
[4] 第四話[ドレイク](2013/09/09 22:17)
[5] 第五話[ドレイク](2012/10/08 20:46)
[6] 第六話[ドレイク](2012/10/28 18:56)
[7] 第七話[ドレイク](2012/11/10 17:33)
[8] 第八話[ドレイク](2013/09/08 15:08)
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[35089] 第八話
Name: ドレイク◆f359215f ID:12861325 前を表示する
Date: 2013/09/08 15:08



 死神とは、一体何なのか。
 死を司る神、魂を狩り取る者。世間一般の共通の認識でくくられた形で語るのならば、凡そそんなところだろう。
 だがそれも、幻想の中。あり得ざる者として語られるそれは所詮幻でしかなく、死神というのは所詮、死を恐れる太古の人間が作り上げた死の恐怖からくる虚構の概念でしかないのだから。

「……私って、そんなに怖いのかな」
「どうしました?」
「あ、いえ、なんでもないですよっ」

 あまりに突然の命を賭けた戦い。それを切り抜けたというべきか、見逃してもらったというべきか、とにかくさよは千雨に続くかのように戦場となった玄関を後にした。
 一方的に襲われた筈にもかかわらず、まるで逃げるように立ち去ってしまったのか、それはさよ自身にもわからなかった。形ばかりとはいえ、既に学園長の後見を受けている身だ。駆け付けて来た人に事情を話し、あとは早晩、学園側が千雨の捕縛なりなんなりを行い、解決していただろうことは想像に難くない。
 明らかに非は襲撃者側の千雨にあり、そのような不穏分子を放置しておくなどあり得ない。その程度はさよ出も容易に想像がつき、だとすればこうして、起こった争いに口を噤み、いつもの様に刹那の指導を受けている現状は、事態の早期解決を放棄したかのようだ。

「いえ、ですが明らかに昨日より剣が鈍っています。それで何も無い、というのはちょっと……」

 突然の脅威、明らかな矛盾、その二つが起こす必然の迷い。
 表情を隠す、などという人間関係の構築に必要な行為からとことん縁の無かったさよに、それを行うなど土台無理な話である。
 いともあっさりと内心の揺らぎを見咎められ、それでも自分を心配してくれているのだという色を帯びた言葉を投げかけられたさよは、とりあえず、今一番疑問に思っていることを口にした。


「……私って、死神呼ばわりされるほどに怖いと思いますか?」
「へ?」


 そこで自分が死神呼ばわりされるのは、自分がそう呼ばれるほどに怖い存在なのかもしれない、などとピントのはずれまくった疑問を口にするさよ。言うまでもなく本気で口にするあたり、そんなわけは無いだろうと刹那は思った。
 どこの世界に打ち捨てられた子犬の様に不安げな眼差しで、「私って怖いですか?」などと聞く死神がいるのだろうか。

「むしろさよさんは死神と呼ばれて怖がるより、死神が枕元にやってきて怖がる方が似合っているような……」

 だっていろいろ付随要素はあるけど現在進行形で幽霊だし。

「ひっ、ひどいですよぉ刹那さんっ。私だってこれでも幽霊なんですからね、怖がらせるぐらいお茶の子さいさいなんですからっ!!」

 それがお茶の子さいさいだったのならば、とっくの昔にさよの存在は認識されているんじゃないのか、という当然の言葉を刹那は飲み込み、全く以って字面と似合わない様で気合を込めるさよに、生温かい視線を向ける。死神? いいえしにがみ(笑)です。言葉にするならそんな感じだろうか。


――そうして交わされる、二人の少女の他愛のない会話。


 けして普通、とは言えない背景を二人ともが持っている。だから普通の人生を歩んでいるとは言えない二人がそうして交わす会話は、まぎれもなくどこにでもありふれた友達同士が紡ぐもの。
 これからもそういうことを続けたい。これまでできなかった分を取り戻したいと思うし、だからこそ喪うのは、死ぬのは死んでも御免だとさよは思っている。
 だからこそ、彼女は千雨とは相容れない。
 生きたがりの幽霊と、死にたがりの生者など水と油以外の何物でもないだろう。
 あぁ、つまり――


                    ■■


「――――で、つまり?」

 その規模の大きさ故に、日常的に喧騒に包まれる学食の食堂、その片隅で周囲の視線から外れるように昼食をとっていた千雨は、唐突に断りもなく、対面の座席に座った予想外の人物に対し、苦虫を百匹ぐらい噛みつぶした様な苦い表情を隠すことなく晒していた。

「えっと、お話をしたいんです」
「ねぇよ」
「えぇ~」

 何が悲しくてつい先日殺し合ったばかりの相手と、仲良く会話に応じなければいけないのか。
 確かに、昨日の戦闘は自分が一方的に襲いかかったのが原因であるのは間違いない、だからと言ってこれではまるで、そう、まるで自分のクラスメイトの様な脳天気さだと千雨は感じた。

「ほんとまじでねぇよ。――殺し合いならいくらでも応じてやる、大歓迎だ」

 どの口で殺し合いなどとほざく。〝合い〟じゃないだろうに。楽になりたいから戦火を望む心をオブラートに包んだその物言い。
 死にたいのなら死ねばいい。殺されないのならそれこそ、いくらでも自分で自分を殺す方法は存在する。
 それを選択しないのは自分に死の恐怖が僅かなりとも存在するからなのか、それとも単なる捻くれ、自分の心情を吐露したくない感情が働いているのか。
 正と負、善と邪、陽と陰、その二極で精神を分類するのならば間違いなく千雨は後者であった。

「だから失せろ、あたしにお前と話すことなんざ欠片もねぇ」

 その歪みが一層、険を増した排斥の言葉を吐き出させる。――お前はあたしと違うだろう、脳天気な奴らと真っ当に、脳天気な馬鹿騒ぎをやっとけよ。――さよを射抜く視線が、声なき声を繋げている。

「――――けど、私にはありますよ」

 けれど、さよの纏う柔らかな空気は、そんな言葉では揺らぎもしなかった。

「正直に言えば、私はあなたのことが嫌いです」
「そりゃそうだろ、何処の世界に殺し合いを仕掛けてきた奴にこう感情を抱く奴がいるんだよ」

 だというのに、さよの空気は欠片も変化を見せてはいない。ここまでくれば、悪し様に罵りの言葉を吐き捨て、敵意をぶつけられた方が万倍もましだった。針の筵というには腑抜けた居心地の悪さを感じる。

「だからですね、どうしてあなたのことが嫌いなのかなぁ、って昨日はずっと考えていたんですよ」
「……当人目の前にしてそんなこと言うか?」
「だってもう昨日既に言ってるじゃないですか」
「あぁ、そういやそうだった」

 千雨の脳裏に、戦火の中に紛れた売り言葉と買い言葉が再生される。
 あれは確か、そう……、情けない本心を思わず漏らしてしまった直後だったか。
 しかしあれは、思い返してみるとどうにも衝動的な物に思えた。
 つまりさよの考えた、という発言はその衝動を明確に形にできたということだろうか。




「だから聞きます、――――千雨さんは死にたいんですか?」




 だからといっても、それはあまりにも直球過ぎる言葉だった。
 そして、飾り気のない正しく抜き身の様な言葉は千雨の心中に、鋭利な刃を突き立てていた。
 お前に何がわかる、と子供じみた勘気が鎌首をもたげ、ここが多数の生徒がたむろしている食堂だということも忘れて、手の中に霊子の鏃を形作ろうとしてしまう。
そうしてここに惨禍をまき散らして、裏の人間に粛清されて生を終える。間違いなく下から数えたほうが早いぐらいにお粗末な終わり方だろう。

「……それが事実だとして、お前に何の関係があるんだ」

 そんな衝動を怒りにつり上がる目元だけにどうにか留め、体の奥深くから絞り出すような声を吐き出す。そこには間違いなく、返答如何では昨日の続きを今ここで行うという、無言の通告が含まれている。

「……関係大有りです」
「何?」
「死にたいなんて、軽々しく思わないでください」
「軽々しくねぇよ」
「そんなところが、あなたの嫌いなところです」
「死にたがりの、死にたがる部分が嫌いってか? 随分とお人好しだな」
「お人好しなんかじゃありませんよ。だって、あなたの為じゃありませんから」
「は? 意味わかんねぇよ」
「だって私、生きたがりですから」

 まるで千雨が口にした死にたがり、という言葉に反発するように、さよはその言葉に明確な敵意をこめていた。
 そして、表情は何一つ変わらぬままに、さよはその瞬間、うすら寒くなるような敵意とも憐れみとも付かない感情をのぞかせる。

「死ぬって、どういうことだと思います? ――――私の声は届かなくて、誰も彼もが自分を見ない。自分はここにいるんだって言う確証が持てなくて、ずっとあやふやな底なし沼にいる様な感じで」

 そんな感じなんですよ、と薄く笑みさえ浮かべながら告げるさよに、千雨は二の句を告げないでいた。
 妄言だ、と切って捨てるのは容易いだろう。相坂さよという少女はここにいる、しっかりとした輪郭と質量を持って、千雨の眼前に確かにいるのだから。
 それでも、死とはどういうことかを語るさよは、まるで現世ではないどこかにいる様なうすら寒い透明感を湛えていた。

「だから私、あなたが嫌いなんです。私がようやく手に入れられた大切な物を馬鹿にされたままではいられないですから」

 その言葉に、気圧されたままにいた千雨の心中に怒りが灯る。
 お前がそれを言うのか、と。
 よりにもよってお前がそんなことをぬかすのか、と。
 私から平穏を奪ったお前が、そうぬかすのか、と。
 八つ当たりだというのは勿論分かっている。
 歪みに歪んだ後ろ暗い感情を暴発させ、襲いかかったのは千雨の方で、その様がどうやら、相坂さよという少女に対して宣戦を布告するに足る行為だったらしい、それぐらいはう僅かに残る冷静な部分で理解できる。
 だがもう、理屈ではないのだ。

「あぁ、なんだ。つまりお前は――」
「――えぇ、喧嘩を売りに来ちゃいました」
「ハッ、似合わねぇ言葉だな」
「私もそう思います。でも、死んでしまったらこういうこともできないんですよ」
「そうかもな、――――でも知るか、そんなの」

 表情だけは笑みの形を張り付けている二人だったが、その中には相手に対する制御できない敵意が渦巻き始めていた。
 二人の周囲の空気が軋み、戦場の風が吹き荒れようとする。
 今はまだ周囲の喧騒に紛れるそれは、何かきっかけさえあればそのまま暴発しかねなかった。

「で、どうする、ここでやるのか?」

 その張りつめた均衡を崩そうとしたのは千雨の方からであった。弄ぶような手つきで霊子の矢を形成――無論昨日さよに撃ち放ったようなでかさではない、精々鉛筆サイズの矢だった。
 そしてそれを、弓には番えず、手首の動きだけで投擲。下からさよの顎を突き上げる様な軌道で、十二分に人を殺傷せしめる威力を持った矢が飛翔する。

「う~ん、それは他の人に迷惑じゃないでしょうか」

 それをさよは手の中にあった箸に気を纏わせ、軽く払うような仕草で千雨の一撃を迎撃する。所詮これは挨拶代わり、如何に相応の威力があろうとも、二人の中に渦巻く敵意の確認作業に過ぎない。
 千雨の中には既にさよに対する敵意が、暗く、黒く煮詰まった汚泥の如くに沈殿していて、さよの中には、昨日垣間見て、そして今まさに確認し終えた千雨の感情を認められないものとして認識している。

「じゃあ、今度の日曜でどうだ?」
「そうですね、私はそれで構いませんよ。あ、でも場所はどうしましょうか」
「それなら心当たりがあるぞ」

 言うなり千雨は胸ポケットから生徒手帳を取り出すと、メモ書き用のページに簡単な地図を書き記し、それをさよに手渡した。
 さよはそれを受け取り目を通し、にこやかな表情のままで懐にしまいこむ。
 まるでそれは、仲の良い友達が遊ぶ約束を取り付けているようにしか見えず、しかし、剣呑さに溢れた行為だった。


                    ■■


「……なぁ、龍宮」

 そんなとんでもない状況になっているとは知る由もない刹那は、さよが入浴している間を見計らって真名に相談を持ちかけていた。

「どうした? 刹那」
「実はな……、どうにもさよさんが何か隠しているみたいなんだ。昨日からどうにも様子がおかしいし、今日の昼休みだってふらりとどこかに消えていたし」

 真名の法もさよの様子の変化には気づいていたが、真っ当な生活を送れるようになってほとんど時間が経過していない、何がしか心情の変化があってもおかしくは無いだろうと結論付けていた。

「それで不安を感じているわけか、中々に過保護だなお前は」
「あぁ、しかも今日の鍛錬の時には「……必殺技とか、どうやって身につければいいんでしょうか」、とか言ってたしな」
「ひ、必殺技か……」
「あぁ、急にそんなことを言い出すなんて明らかにおかしいだろう」

 これは相当に重症だな、と真名は心中で呟いた。いつもの刹那ならば過保護だなんだと言われれば慌てふためいて否定するだろう。それぐらいにいつもの刹那というのは自身の気持ちに正直になるのが下手な不器用者なのだ。
 ルームメイトとして、そして仕事仲間として付き合いの深い真名はそんな刹那がそうした軽いジョークにも反応せず、深刻な表情を浮かべている刹那の動揺具合を正確に見抜いていた。
 そして、或いはこれも好都合かもしれないと考え――――

「そうだな、――――明らかな隠し事は、されると辛いものだろうな」

 まるでここにいない誰かを慮る様な口調。

「何が言いたい」
「さてな、どう受け取るかはお前次第さ。何も感じないならこのままでいいと思うし、何かを感じたら――その時はお前のしたいようにすればいい」

 そして言外に、これはお前の問題でもあると告げてる真名に対し、刹那はただ、押し黙っているだけであった。








<あとがき>
 さよさん宣戦布告回。次回はさよ対千雨の本格バトル、という感じになると思います。


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