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No.35776の一覧
[0] Muv-Luv Lunatic Lunarian; Lasciate ogni speranza, voi ch[カルロ・ゼン](2012/12/05 03:39)
[1] プロローグ[カルロ・ゼン](2012/12/05 03:39)
[2] 第一話 地獄への道は、善意によって舗装されている。[カルロ・ゼン](2012/12/14 04:50)
[3] 第二話 善悪の彼岸[カルロ・ゼン](2012/12/14 04:52)
[4] 第三話 Homines id quod volunt credunt.[カルロ・ゼン](2012/12/05 04:02)
[5] 第四話 最良なる予言者:過去[カルロ・ゼン](2012/12/05 03:59)
[6] 第五話  "Another One Bites The Dust" [カルロ・ゼン](2012/12/13 02:31)
[7] 第六話 Die Ruinen von Athen[カルロ・ゼン](2013/02/19 08:41)
[8] 第七話 Si Vis Pacem, Para Bellum[カルロ・ゼン](2013/02/27 07:44)
[9] 第八話 Beatus, qui prodest, quibus potest.[カルロ・ゼン](2013/06/26 09:01)
[10] 第九話 Aut viam inveniam aut faciam (前篇)[カルロ・ゼン](2013/03/08 07:24)
[11] 第一〇話 Aut viam inveniam aut faciam (中篇)[カルロ・ゼン](2013/03/12 05:11)
[12] 第一一話 Aut viam inveniam aut faciam (後篇)[カルロ・ゼン](2013/04/25 09:45)
[13] 第一二話 Abyssus abyssum invocat.(前篇)[カルロ・ゼン](2013/05/26 07:43)
[14] 第一三話 Abyssus abyssum invocat.(中篇)[カルロ・ゼン](2013/08/25 08:38)
[15] 第一四話 Abyssus abyssum invocat.(後篇)[カルロ・ゼン](2013/08/25 08:37)
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[35776] 第一三話 Abyssus abyssum invocat.(中篇)
Name: カルロ・ゼン◆f40da04c ID:f789329c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/08/25 08:38
護る、というのは簡単だ。
では、何を、どうやって、何から護るべきか。



彼らのうちで誰が、祖国を思わざるだろう。
だから彼らは『祖国』を護ると、誓った。


祖国。

愛する故郷であり、自分たちの暮らす生活の場であり、護るべき人々の住む我らが大地。

この手で護ると。

どんな相手からだろうとも、どんな難戦だろうとも、如何なる手段をもってしても護り抜いて見せると誓ったのだ。
護るべき相手、如何なる敵も掃って見せると誓った。

『如何なる手段』でもってしても…誓ってしまったのだ。

自国を防衛するために、自国を核で吹き飛ばすという本末転倒。

…誰が、祖国の地を焼き払いたいと思うだろうか。

だが、焼くしかないのだ。護るためには、焼くしかない。
泣き叫ぶ子供らを背後に背負い、砕かれた防衛線と奔流のごとき敵影。
誓ったではないか、それが、護ることが、自分たちの唯一の誓い。
先に逝ってゆった戦友たちに、轡を並べた輩に、護り切れなかった人々の骸に。

だが、誰が、祖国の大地を吹き飛ばしたいと思うだろうか。
















Svǫl計画に基づく『反応弾』の敷設命令。
発令され次第、行動を開始した合衆国戦術機甲部隊は事の重大性もありウォーケン大佐が直卒。
『偶然』付近に寄港していた米軍原子力潜水艦から提供された戦術核。
それをもとに合衆国・フィンランド合同部隊は反応弾の敷設へと急行する。
行動を開始したウォーケン大佐の指揮する戦術機甲合同部隊の任務は、速やかな反応弾の敷設とBETAの誘導。
これをもって、人口密集地帯への進軍を阻害しつつ、大多数のBETAをおびき出すことで北欧防衛を確実ならしめることが期待されている。

純然たる軍事的側面から見た場合、この成否は北欧における防衛線の存続にかかわる重大な作戦だ。
最低限度の損耗でもって、防衛線への脅威を迅速かつ適切に排除しうる唯一のオプションとしての焦土作戦。
とりわけ、国連と加盟国間の財源・兵站に関する制度上の不備が招いた北欧国連軍の補給物資の欠乏が高くついているときにはなおさらだろう。

…兵站が完全に機能していたところでBETA大規模攻勢を阻止しえるだけの砲弾を蓄積できるかと言えば微妙なラインなのだが。

とはいえ、それらは結果論だ。

難戦し、防衛線が崩れてから起爆される『レッドシフト』と決定的に違うのは前線戦術機甲部隊の損耗率である。
本来の核による焦土化をも辞さない防衛戦への移行は前線が崩壊してからの予備計画だ。
言い換えれば、ほかに選択肢が奪われた末の窮余の一策にすぎない。

反応弾敷設部隊を率いるウォーケン大佐が、空調の整ったコクピットの中でさえ何処か息苦しさを覚えるほどにそれは重苦しい決定である。
北欧を守るために、北欧の大地を核で吹き飛ばすという矛盾。

脳裏に浮かぶのは、命令が発令されたときのフィンランド人たちの何かを堪えるような握りしめられた拳。
平然とした表情で作戦計画を受け入れた彼らの拳が、泣くに泣けない彼らの顔の代りに泣いていた。

軍人だ、自分達は実行する側の軍人で命令を遂行せざるを得ない身なのだ。

よそ者のウォーケン大佐にとってさえ理性では必要性を理解しえても、感情では戸惑いが残ってしまう。
だが、網膜投影で映し出される眼下の光景は青々とした美しい北欧の大地を見るにつけ、決意は思わず揺らがざるをえない。
異郷の地とはいえ、自分たち衛士は、人類は、この地を、生存圏を守るためにBETAの前に立ち塞がったのではないのかという違和感。

後方の基地とはいえ、避難する民間人らから寄せられる祖国奪還と防衛への切望にも似た思いは嫌というほど感じていた。
そんな中でも子供たちが、無邪気に笑いながら北欧の地を駆け回る光景は、何のために合衆国軍人として志願したのかという意味を感じさせてくれるもの。
人類のために、祖国のために、或いは、誰かの故郷のために。

だからこそ、核敷設に向かう自分達へ向けられる北欧諸国からの痛みすら感じるような咎める視線の根幹を理解せざるを得ない。
この地で共に防衛戦を戦い抜いているウォーケン大佐にしてみれば、痛みにも似た気持ちがよく理解できる。
祖国を守るために、祖国を焼くなどという本末転倒。

それだけは、避けたい。誰もがそう願っていた、最悪の一歩手前。
けれども、あえて軍人としての彼はそれが必要なことだとも意識的に割り切っていた。
戦術機甲部隊を預かる指揮官であり、自分の迷いが部下を殺すとなれば彼は迷う訳にはいかない。
…だからこそ、その機微を理解しえる軍人としてジョン・ウォーケン大佐は扱き使われるのだが。
指揮官は、常に戦場においては孤独な存在とならねばならない。

悩めるウォーケン大佐は、幾度かの実戦を経て、操縦桿を無意識のうちに強く握りしめている習慣が自分にあることに気が付いていた。
悪い癖だ、と手を放し首を振って余念を除けねば、と深呼吸を一つしようとした時。
鳴り出した通信機の呼び出し音で、ウォーケン大佐はふと我に返らされた。

「カッサンドラよりランサー01、聞こえるか?」

戦局の悪化と補給のヘマを受けて不機嫌そのものといった表情のデグレチャフ女史。
パイロットという人種はこんな時だからこそ不思議と、変なことに気が付くものらしいが、自分もその例外ではないらしい。
そういえば、この人は何時も苦々しげな表情だと気が付く。

そんな余裕が自分にあることに驚きつつも、ウォーケン大佐は内心のうねりに関わらず軍人としての声色を保って無線に応じた。

「問題ありません。」

「出撃前に話した通り、本作戦は本来ならば防衛線が崩壊したのちに使用されるべき作戦だった。」

反応弾を使用しての焦土作戦など、国防という観点から言えば邪道だ。
ましてや伝統的に国土を縦深として使い得る中ソならばいざ知らず、欧州正面には縦深など政治的に構築しえない。
純軍事的観点から求められた反応弾による防衛計画は、それ故に圧倒的劣勢を覆すための最後のカード。

それはそれ以外に防衛手段がないことの告白でもある。
だからこそ、冷戦期にあっては膨大な規模のWTOに対してNATOは航空優勢の確保によって戦術核での焦土戦を回避しようとしていた。
同様に本来ならば、同様に戦術機甲部隊と艦隊の火力支援で防衛は可能なはずだったのだ。

が、兵站の混乱で砲弾が届かずに核の使用に至るなど至愚極まりない。
網膜投影に映し出される戦線に配置された戦力は、全て健在。
WTO残存部隊と、スカンジナビア連合軍は依然として高い戦力発揮が可能な状態にある。

ただ、決定的なまでに砲弾が足りないのだ。

だからこそ、操縦桿を握りしめる衛士らの感情はやりきれない内心の行き場を持て余してしまう。
どうして、どうして、だ、と。

「当然、フィンランド軍は同意しているとはいえ内実は複雑とならざるを得ない。」

北欧戦線の泥沼具合は決して東独戦線と比しても劣るものではない。
とりわけ、愉快に平常運転しているシュタージと国家人民軍の笑えない足の引っ張り合い。
それに類する東西対立の余波は東側WTO部隊と西側スカンジナビア連合並びにNATO派遣軍で常態化してしまっている。

だが、それを踏まえてもなお。
祖国防衛がため、血反吐を吐き続けたスカンジナビア諸国衛士たちは累々の屍でもって人類の戦線を維持してきたのだ。
高い教育水準と、卓越した技術者としての才能あるお国柄でもって辛うじて支えられてきた北欧戦線。

その人類への犠牲的献身が保っていた均衡を改善するべく発動されたのが先の国連軍による初の間引き作戦だった。
実際、目的は達成されている。BETA大戦における基準からすれば、僅かと形容しうる二割の損耗。
それも、余裕のある攻勢下のために人的損耗はより抑制されたマシな戦場だ。

小康状態に持ち込める。

誰もが、誰もが高い犠牲の末にそれを勝ち得たと確信した瞬間にすべてが覆されたのだ。

「ダース単位で銃殺してやりたい無能共のおかげで、我々ステイツの面目は完全に崩れ去っている。」

BETAの数的飽和量が多すぎた、というのがこの事態を直接引き起こした直接の原因ではある。
実際、史実のBETA大戦史においては今年スカンジナビア半島に侵入したBETA群が、フィンランド領ロヴァニエミにハイヴ(甲八号目標)を築いていた。
間違っても口には出来ない情報源からの確実な知識。

だからこそ、だからこそ、あらかじめの間引きを試み、かつ防衛線に梃入れを図ったのだ。
その見通しが間違っていたとターニャ自身は思わない。
代替戦略という観点から見た場合、間違いなく東独の負担を減らすことで欧州正面の負荷を軽減できるのだ。
そして、史実よりも戦力に遥かな梃入れが行われた北欧戦線は今年をしのぐことは不可能ではない。

それが、この状況を理解できていない呑気な無能共に邪魔されていなければ。

「この私が、よりにもよって、この私がWTOに艦砲射撃支援を要請する羽目になったほどだ!糞忌々しい無能共め!」

なるほど、国連総会で騒いだという途上国の言い分も一見すれば尤もだ。

BETAが人類種にとっての脅威であるのと同様に、貧困も、不衛生も、人類種にとっての安全保障上の脅威だろう。
それは、確かに生存にかかわる重大かつ喫緊の問題である。
BETA同様に、人類が一丸となって取り組むべきという理屈は実に道理にかなっているだろう。

後方国家の多くにしてみれば、彼らの直面している脅威はBETA以外にも多数存在する訳である。

が、ターニャに言わせればそれは完全な戯言だ。

開発学が積み上げてきた失敗は、援助など幾ら注ぎ込んだところで『統治機構』と『市場原理』に逆らっての開発など百害あって一利もないと雄弁に物語る。
ボツワナの事例が物語るのは、マトモな感覚を持った政治家が、私腹を肥やすことなく常識的に国家運営を行えば国連の援助など無用の長物にすぎないという事だ。
シンガポールの経験は、人的資本投資の重要性と国家方針の妥当さを保ちえれば国家というものが効率的に発展しうると示していた。

だからこそ、だからこそ、ターニャには費用対効果の著しく望みえない開発援助への無制限な浪費だけは耐え難かった。
それが、効率的に使われるというならば喜び勇んで人類の後方兵站基地とすべく予算を注ぎ込むに躊躇いはない。
だが、浪費され消費されるだけの援助予算ならば、まだ中抜きされるにしても前線に回せる東独にでも流し込むべきなのだ。

それが叶わぬどころか、自前の砲弾にすら事欠き困窮した前線が破られているとなれば発狂寸前の憤怒を滾らせるほかにない。
煮え返る腸で「国際協調」の名目の元に恩着せがましく共産主義者から申し出られた艦砲射撃の支援に頭を下げるなど血管が千切れそうだった。
流通コストも理解できないマルクス主義者のくせに、利害計算だけは一流なのだから糞忌々しい。

仲良くBETAと総括していればよいものを、こんな時ばかり目ざとい輩に助けられるのだ。

「何より面倒なのは合衆国がある種の禊を示さねばならんことだ。すまんが、政治的理由で一番厄介なところを引き受けてもらう。」

「私は軍人です。…実行する側の軍人である以上、政治には従うしかありません。」

鉄面皮の裏側でマグマのように煮えたぎった憤怒を抑えるに抑えかねているデグレチャフ事務次官補。
だが、ウォーケン大佐同様に、彼女もまた政治には従わざるを得ない立場の人間なのだ。
そこに選択の余地はない。

「真理だな、大佐。私も、月面で同じ思いだったよ。」

誰が悪いという訳ではない。
合衆国は常任理事国とはいえ、国連加盟国の一つにすぎないのだ。
本来であれば、国連の財政問題に関する責任も相応のものにすぎない。

が、合衆国とは為したことで非難され、為さなかったことで非難される宿命の超大国だ。
超大国に対し、人々は勝手な期待を常に寄せ、挙句満たされないことで裏切られたと批判する。

結果的に、合衆国の砲弾が届かなかったのだ。
そして、合衆国出身のデグレチャフ事務次官補が主導した限定攻勢の結果が此れである。

「ステイツの名誉は諸君の双肩にかかっている。期待させてもらう。」

「最善を尽くすだけです。ステイツの意地と誇りを北欧諸国の眼に刻んでご覧にいれましょう。」

後方のツケを払うのは常に前線の将兵だ。
だが、それこそが民主主義国の軍人に付きまとう宿命である。
人民の、人民による、人民のための祖国。

その祖国が求めるのならば、彼らは市民として誇りを持ってオムツを取り換えてやらねばならない。

「結構。たびたびアーリントンに足を運ぶのは億劫でな。なるべくならば、仕事を増やさないでくれ。」

「了解。」

「では、幸運を…何?」

通信機越しに飛び込んでくる警報音。
次の瞬間、前衛の警戒に当たっているスウェーデン軍のJ-35が消える。
咄嗟の回避機動も虚しく恐るべき光線の照射を受けた装甲版が融解し、推進剤が誘爆。

一瞬のうちに爆散する友軍機のなれの果てに唖然とするまもなく散開する彼らの火器管制システムが捉えるのは禍々しい大物。

「「重光線級だと!?」」

乱数回避故に、衛士の動揺が直接反映されない。
だが、隊内通信に満ち溢れるのは想定外のことに対する隠しようのない衝撃。

「…最悪だ。」

思わず、ウォーケン大佐が引きつった表情で無自覚に呟いた一言。

それが、偽りなき彼らの総意だ。

現状の重金属雲濃度は、重光線級を想定していない。
限られた弾薬事情に制約され、本来の規定通りの濃度はできなかったのだ。
最低限度、光線級の照射を妨害することを念頭に濃度はギリギリまで妥協されている。

そんな状況で、重光線級の突発出現。

…ハイヴ近隣でしか活動が確認されていないことが司令部の判断ミスを招いた、と言えばそうだろう。

だが、そもそももとより選択肢がない状況下で濃密な重金属雲濃度を確保する方が無理難題なのだ。

「状況知らせ。」

「重光線級の照射圏内に捉えられました!即時火力支援を!」

それでも咄嗟に口から出たのは火力支援要請。

…ほかにどうしようもないのだ。
重光線級というのはそれほどまでの、災厄。

人類にとって、戦術機の衛士にとって、それは確率論で何人持っていかれるかの世界。
重金属雲と砲兵の支援があり、初めてようやく分の悪い賭けに命を賭けられる最悪の相手。

「…ああ、確認した。そして大佐、悪い知らせだ。」

「は?」

「…フォート級が突発出現し、現在砲兵はそちらにかかりきりだ。」

だが、残酷なことにこの場において賭けは成立すらしない。

網膜投射される戦局図。
全戦線にわたって突発出現したフォート級。
最悪なことに、海上で艦隊が襲撃されたために火力支援そのものが細っている。

「艦隊は現在自衛戦闘中。咄嗟射撃戦だ。…砲撃支援の再開時刻は不明。」

それは、細々とながらも続けられていた支援そのものが断ち切られたことを意味するのだ。

「どの部隊もAL弾頭への換装は間に合わない。以上の戦局を勘案し、犠牲を顧みず光線級吶喊にて対応せよ。」

余分な砲弾はない。艦隊の支援砲撃は、間に合わない。
そして、彼らに後退は許されない。
何より重要なことに、司令部は彼らの生死を度外視している。

「重金属雲を欠いた状態の光線級吶喊は自殺行為です!ご再考を!」

「大佐、戦死者からの…無能な上官への恨み言ならばアーリントンで幾らでも私が聞いてやる。」

支援があろうとも、半数は重光線級に喰われざるをえないのだ。
それを、無支援で長躯進出してベストコンディションとは程遠い混成部隊で為せ、と言われることの意味は単純。

「他に手段がない。」

如何なる手段をもってしても…否、なりふり構わぬ犠牲を払うしかないのだ。

「損耗率は問わない。成果を上げよ。…なに、これは日常のことだよ、大佐。」

「・・・了解!」

泣き言はナシだ。

軍人なのだ。

理不尽な、意味の分からない命令も甘んじよう。

…ステイツの、星条旗に誓ったのだ。

合衆国のために死ぬのならば、それは誇らしいことだ。

「誓おう大佐。クソッタレのBETAとその同類は引き受けた。後のことは任せてほしい。」

「はっはっはっ、貴女は約束を守られる方だ。お任せしましょう。」

後に憂いはない。
信ずべき人々と、護るべき人々。

彼らが背後にあり、為すべきことを為さねばならないのであるならば。

「マイルズ!貴様の大隊は反応弾の敷設作業だ!スカンジナビア合同部隊と合わせてやれ!」

「大佐殿!?」

死なねばならぬ宿命だというのならば、死んで見せよう。
誰かを贄として屠られねばならないのならば、一人目は決まっている。

「スパイク・ランサー両大隊に通達!光線級吶喊に備えよ!」

「ウォーケン大佐、自分の隊が代りに志願いたします!」

「マイルズ少佐、貴官の部隊は陽動で構わん。我々が突入する間に敷設作業にかかれ!」

心残りがあるとすれば死ねるのは一度だけ。
無論、合衆国のために死ぬのだ。
そこに、自分の選択に後悔はない。

「大隊、吶喊!!」

乱数回避機動を取りつつ、二個大隊での光線級吶喊。
犠牲を織り込み物量にての飽和攻撃で重光線級の処理能力を無理やりねじ伏せる。
泥臭く、高価な犠牲を払っての突進。

それは、禁忌だ。

それは、本来ならば断じて許されない算数。

だが、それでも。

Be the Best and the Brightest.

突き刺さる無数の照射。
だが、堕ちていく彼らは決して意味のない犠牲ではない。

僅かなインターバルとて、距離を詰めるには十分。
所在を露見させ、照射の合間に距離を詰めた満身創痍の生き残りら。
元より、後はない。

なればこそ、ならばこそ、その吶喊は一本のわずかな可能性を手繰り寄せえる。


「もう一つ、命があれば良いのだが。」

そうすれば。
もう一度、合衆国のために戦えるのに。




あとがき

前回の終わりで、ミッションの説明がありましたが諸般の事情で砲撃支援が十分に行われなかったことを企業連は不幸な事情とはいえ遺憾とするところであります。

と、そんな具合でルナティック風味のオルタをお送りいたします。

『友情、努力、勝利』カルロ・ゼンはこういうものが、大好きですのではーとふるな『友情』と、『努力』と、『勝利』をお届けする予定です。

次回、『友情』の末に『努力』が贖われ、彼らは『勝利』する!
ご期待を。

ZAPしました。


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