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No.3690の一覧
[0] リリカル in wonder 無印五話 挿絵追加[角煮(挿絵:由家)](2009/04/14 12:06)
[1] 一話[角煮](2008/08/02 22:00)
[2] 二話[角煮](2008/08/02 22:03)
[3] 三話[角煮](2008/08/02 22:06)
[4] 四話[角煮](2008/08/02 22:11)
[5] 五話[角煮](2009/04/14 12:05)
[6] 六話[角煮](2008/08/05 19:55)
[7] 七話[角煮](2008/08/21 04:16)
[8] 八話[角煮](2008/08/21 04:26)
[9] 九話[角煮](2008/09/03 12:19)
[10] 十話[角煮](2008/09/03 12:20)
[11] 十一話[角煮](2008/09/03 20:26)
[12] 十二話[角煮](2008/09/04 21:56)
[13] 十三話[角煮](2008/09/04 23:29)
[14] 十四話[角煮](2008/09/08 17:15)
[15] 十五話[角煮](2008/09/08 19:26)
[16] 十六話[角煮](2008/09/13 00:34)
[17] 十七話[角煮](2008/09/14 00:01)
[18] 閑話1[角煮](2008/09/18 22:30)
[19] 閑話2[角煮](2008/09/18 22:31)
[20] 閑話3[角煮](2008/09/19 01:56)
[21] 閑話4[角煮](2008/10/10 01:25)
[22] 閑話からA,sへ[角煮](2008/09/19 00:17)
[23] 一話[角煮](2008/09/23 13:49)
[24] 二話[角煮](2008/09/21 21:15)
[25] 三話[角煮](2008/09/25 00:20)
[26] 四話[角煮](2008/09/25 00:19)
[27] 五話[角煮](2008/09/25 00:21)
[28] 六話[角煮](2008/09/25 00:44)
[29] 七話[角煮](2008/10/03 02:55)
[30] 八話[角煮](2008/10/03 03:07)
[31] 九話[角煮](2008/10/07 01:02)
[32] 十話[角煮](2008/10/03 03:15)
[33] 十一話[角煮](2008/10/10 01:29)
[34] 十二話[角煮](2008/10/07 01:03)
[35] 十三話[角煮](2008/10/10 01:24)
[36] 十四話[角煮](2008/10/21 20:12)
[37] 十五話[角煮](2008/10/21 20:11)
[38] 十六話[角煮](2008/10/21 22:06)
[39] 十七話[角煮](2008/10/25 05:57)
[40] 十八話[角煮](2008/11/01 19:50)
[41] 十九話[角煮](2008/11/01 19:47)
[42] 後日談1[角煮](2008/12/17 13:11)
[43] 後日談2 挿絵有り[角煮](2009/03/30 21:58)
[44] 閑話5[角煮](2008/11/09 18:55)
[45] 閑話6[角煮](2008/11/09 18:58)
[46] 閑話7[角煮](2008/11/12 02:02)
[47] 空白期 一話[角煮](2008/11/16 23:48)
[48] 空白期 二話[角煮](2008/11/22 12:06)
[49] 空白期 三話[角煮](2008/11/26 04:43)
[50] 空白期 四話[角煮](2008/12/06 03:29)
[51] 空白期 五話[角煮](2008/12/06 04:37)
[52] 空白期 六話[角煮](2008/12/17 13:14)
[53] 空白期 七話[角煮](2008/12/29 22:12)
[54] 空白期 八話[角煮](2008/12/29 22:14)
[55] 空白期 九話[角煮](2009/01/26 03:59)
[56] 空白期 十話[角煮](2009/02/07 23:54)
[57] 空白期 後日談[角煮](2009/02/04 15:25)
[58] クリスマスな話 はやて編[角煮](2009/02/04 15:35)
[59] 正月な話    なのは編[角煮](2009/02/07 23:52)
[60] 閑話8[角煮](2009/02/04 15:26)
[61] IFな終わり その一[角煮](2009/02/11 02:24)
[62] IFな終わり その二[角煮](2009/02/11 02:55)
[63] IFな終わり その三[角煮](2009/02/16 22:09)
[64] バレンタインな話 フェイト編[角煮](2009/03/07 02:27)
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[3690] 空白期 四話
Name: 角煮◆904d8c10 ID:63584101 前を表示する / 次を表示する
Date: 2008/12/06 03:29
てちてちとキーボードを打ちつつ、情報端末の画面に浮かぶページに視線を這わせる。

うむうむ。なかなかの値段が付いたようだ。

画面には俺の作ったデバイスのサンプル画像が載っており、その下には落札価格が。

残り十分を切ったから、まだ値段が上がるかもねー。

現在開いているのは、自作デバイス・コミュニティにあるオークション。

日夜、数多ものデバイスが出品されるここに、俺の作品も並んでいるのだ。

市販されている簡易作成キットにカラーリングを施したていどのチャチな代物じゃねぇ。アンカーガンやスバルのローラーブーツとは次元の違う完全自作である。

この自作デバイスの作成は、現在の俺の数少ない趣味の一つとなっている。あと、小遣い稼ぎ。

少しだけ早く起床してこつこつと作り続け、それを出品する。

最初の頃は制作費ギリギリの値で買い叩かれてたりしたが、今はそれなりに名が売れて上の下ていどの評価はもらっていたりするのだ。

そのお陰で、最近は懐にかなりの余裕ができていますよ。

いやぁ、シグナム、フェイトの養育費と生活費に家賃。トドメで将来への貯金。交通費は管理局から出るけど、それでも出費はデカイ。

お父さんの小遣い、マジハンパない額である。低い意味で。

それでもめげずにデバイスを作り続け、早半年。

今月で、ようやく四機目のデバイスが完成し、今現在落札されようとしているのである。

以下、作った物。

記念すべき一号機、ドア・ノッカー。

『アンカーガンのキットを改造して作りました。
 カラーリングは黒を基調に銀を。
 カートリッジの装弾数は一。中折れ式の単発です。使いすぎは身体によろしくないため、無闇やたらにリロードできないよう設計しました。
 カートリッジのサイズは十三ミリ。ハンドガンサイズの限界を搭載しました。
 ミッド式対応のストレージですが、AIの搭載を可能とする機能拡張性は残してあります。
 青光りを放つランタンと一緒に使ってやってください』

評価:☆☆☆

シグナムに欲しがられた二号機、エクスカリバー。

『二刀連結式の大剣。オリジナル作品です。
 カラーリングは無地。何かご要望があればこちらで塗装を施して発送します。
 魔力刃形成に特化させた物で、それ以外の機能は持たせていません。。
 しかしその分、切断力は折り紙付きです。
 落札者の要望に従って、ミッド、ベルカのどちらかに設定した後に発送します。
 AIは未搭載。浪漫武装なので実戦で使うことはオススメしません。
 憎いあんちきしょうのドテっ腹に突き刺してやってください』

評価:☆☆☆

哀と怒りと悲しみの、興味を持ったクイントさんに一度ぶっ壊された三号機、ユニコーンドリル。

『手甲型アームドデバイスの拡張パーツ。オリジナル作品です。
 カラーリングは青を基調にしています。
 カートリッジは旧式の電池タイプを使っています。装弾数は二。
 見ての通り、ドリルです。ぎゅんぎゅん回ります。
 大出力砲撃と大出力のバリア展開に性能を特化させています。
 炎熱の変換資質を持っている方にオススメします。デザイン重視なため、実戦で使う際には周りの目に注意してください。
 尚、カートリッジはこちらでカラーリングを施した物を六つ付属させます。リロードのしすぎに注意してください。
 ファイナルアタック、と叫んで砲撃を撃つと幸せになれます』

評価:☆☆☆

色々とアレな四号機、ルダ・グレフィンド。

『銃剣付き回転式拳銃型。オリジナル作品です。
 カラーリングは銀。装飾には懲りました。
 一般的なカートリッジシステムを使っています。装弾数は六。転送魔法でリロードしてください。
 大剣形態と、砲撃形態の二つへの変形が可能です。
 ミッド式を推奨。
 AIを搭載できるだけの余裕はあるので、必ず搭載してください。
 次回に出品する予定のベイル・ハウターを弟にプレゼントすると、素敵な兄弟愛を育めると思います』

評価:―

こんな感じ。インテリタイプにカートリッジシステムを搭載するのは酷い手間が掛かるから基本的にやってないのだ。

まぁ、インテリを自作するのも気が進まないしね。ぶっ壊れたときの責任とか取れないし。

と、こんな物を作って小遣い稼ぎをしているのですよ。

……ん、もうそろそろ時間か。

情報端末を閉じ、上着に袖を通して部屋を出る。

そしてノックをしつつシグナムの部屋に顔を出して一言。

「それじゃあシグナム、定期検診に行ってくるから」

「はい、父上。気を付けて」

「ああ。……もし遅くなるようなら連絡するから、はやての所に行ってなさい」

「はい。……私だって、留守番ぐらい一人でできます」

ぷうぅ、と頬を膨らませるシグナム。

そんな様子に苦笑しながら、行ってきます、と声をかけて家を出る。

いつものようにリニアに乗ってクラナガンへと向かい、先端技術医療センターへ。

待ち合わせ時間には少し早いが――っと、いたいた。

「おはようございます」

「ん……おはよう、エスティマ」

声を返してくれたフィアットさん。

今日の彼女はピンクナース服でも私服でもなく、局員の制服の上から白衣を羽織っている。

……もしかしたらコスプレが趣味だったりするのかなぁ。

そんな妄想が脳裏を過ぎってしまう。いや、だって会う度に特徴的な服装をしているんですよ?

ちみっこい女医ルックのフィアットさんは俺のところに歩いてくると、いきなり眉を潜めた。

なんだろう。

「どうかしました?」

「……いや。お前、背が伸びたか?」

「言われてみれば」

前までは同じぐらいだった身長だが、いつの間にか頭半個分ぐらい俺の方が高くなっている。

成長期だからなぁ。

「それがどうかしました?」

「む……いや、なんでもない。なんでもないが……くっ」

と、悔しそうにそっぽを向く彼女。

……身長低いの気にしてたっけか。

「ああ、そんな気にしなくても。あれですよ。世の中にはこういう言葉もあります」

「どんなのだ?」

「小さな巨人、と。存在感さえあればどんなに小さくても――なんですか?」

「……フォローのつもりか?」

「半分ぐらい」

「残り半分は?」

「男の子としての優越感ですかねぇ」

「そうか、そうか。……今日は猛烈に医療ミスがしたい気分だ。注射針の二、三本は覚悟してくれても良いだろう」

「それはどうなんですか!?」

知るか、と大変御立腹な様子で踵を返すフィアットさん。

そのあとに付いていきながら、今日は何をするのか聞いてみる。

「フィアットさん。今日は何をするんでしょう」

「左腕の調子を見るつもりだ。それと、軽い検査だな。
 何か問題はあったか?」

「いいえ、特には。使い勝手も良くて気に入ってますよ、これ」

そう言い、ぶらぶらと左手を振る。

至近距離まで接近されたときの最終手段であり攻撃手段でもある左腕。

移植――交換と自分で言うのはなんか嫌なのである――される前もパルマフィオキーナを撃つことはできたが、今と比べると発動速度は雲泥の差だ。

違法研究の匂いがプンプンする技術だが、調べてみたところグレーゾーン。

クローン……一人の人間を生み出すのは完全な違法だが、パーツとしてクローニング技術を使用することは禁止されていない。

それと、戦闘機人に関する技術だって、別にすべてが違法というわけではないのだ。

ただ、それらの技術を集結させた存在がイリーガルなだけで。

……まぁ、このことは追々。

検査室に通されると、フィアットさんと別れて検査用のポッドが置いてある部屋へと。

薄光りしか存在しない空間の中には、時の庭園にあった培養ポッドが横倒しになったようなものが転がっている。

服を脱いで全裸になると、そこへと横になり閉じ込められる。

……変な水とか垂れてきてブロンズ化したりしないよなぁ、とか毎回思います、はい。

ヒッポリト星人マジ怖い。

機械音を聞きながら寝っ転がるまま。

どうにも暇なので上を見上げると、フィアットさんと目があった。

が、なぜだか真っ赤になった彼女は顔を逸らす。なんぞ……って、ああ。俺、全裸じゃん。

そう思ったら猛烈に羞恥心が沸き上がって……こない。

ガキの身体なんて見られても恥ずかしくないもの。

もう二、三歳年を食えば違うんだろうけどさ。

いや、相手がフィアットさんってのもあるか。

クイントさんとか暴力シスターに見られたら色々恥ずかしいが、別にねぇ。

『おいエスティマ』

「なんでしょう」

『何か失礼なことを考えていなかったか?』

「気のせいですよ」

……あっれー? 考えてることが口に出たりはしてなかったと思うんだけど。

実はフィアットさんってエスパー?

なんてことを考えていると検査が終了した。

服を着て最後にセッターを首に下げようとすると、何やらチカチカ光っているデバイスコア。

「セッター、何をしている?」

『はい。データの送信を行っていました』

「ふうん。なんの?」

『旦那様の検査データです』

フィアットさん、セッターを経由してデータのやりとりでもしているのか。

まぁ、インテリジェントデバイスの演算機能はそんちょそこらの情報端末より優れているからなぁ。

お疲れ、とセッターに声をかけて検査室を出て診察室へと移動すると、フィアットさんが既に椅子に座って待っていた。

机の上には薬の入った紙袋が一つ。忘れないで用意してくれたのか。

「お疲れ様、エスティマ」

「はい。どうでした?」

「特に問題らしい問題はない。左腕も酷使しすぎで間接に疲労が溜まっているようだが、自然治癒の範囲内だ。
 経過も良好。もう闇の書事件の傷も完全に癒えただろう」

「ようやく、ですか。まぁ、リミットブレイクの禁止って言っても、そんな物を使う機会はなかったんですけどね」

「何を言っている。治療に専念すれば、もっと早く治ったんだぞ? それなのにお前は――」

「ああ、はいはい、分かってますよ」

「……むぅ」

本当に分かっているのか、と言わんばかりにフィアットさんはジト目を向けてくる。

いや、分かってるって本当に。

ただ、休む暇なんてなかっただけなんだから。

「こんな物を必要としている奴が、そんなことを言っても説得力はないと思うが」

言いつつ、フィアットさんは紙袋を手渡してくる。

それを受け取って鞄に押し込むと、さて、と声を上げた。

「診察はこれで終わりですか?」

「ああ。……その、な、エスティマ」

「ええ。飯でも食べに行きますか」

「あ、ああ」

待っていろよ! と声を荒げて急に席を立つと、フィアットさんは奥の方にすっ飛んでいく。

そして待つこと数分。

管理局の制服+白衣という服装だった彼女は、ホットパンツにキャミソール。その上から、黒いジャケットという軽装で姿を現しました。

……なんか俺が着ているのと似ているなぁ、ジャケット。

まぁ偶然だろうけど。

「ま、待たせたな」

「いや、良いんですが……飯を食べに行くだけだし、制服でも良かったんじゃあ」

「あー、それは、だな。……そう、午後休なんだ」

「そうなんですか。んじゃあ、行きましょう。今日は何を食べます?」

「ううむ、そうだな」

などと会話をしつつ医療センターから出て繁華街の方へ。

フィアットさんはまだ迷っているらしく、腕を組みながら唸っていたり。

「ほら、街中でそんなことをしたまま歩いていたら危ないですよ」

「ん、ああ……って、お前、ななななな、何を!?」

何を、って手を繋いだだけですが。

「だって俺たち小柄だから、人波に攫われるとそのまま流れていきそうですし」

「そういう問題じゃなくてだな……ああもう、私が馬鹿みたいではないか!」

「……こういう反応が面白いんだよなぁ」

「おま、お前は……っ!」

なんだかこの場で地団駄を踏みそうなフィアットさん。

無垢っていうか純真っていうか奥手って言うか。この人はからかうと面白い……って、あだだだだだ!

「手が潰れるー!」

「ことある毎に私を弄ぶその性根は、なんとかならないものか?」

「握力! 握力強いですって!」

せめて左手を握って! まだ我慢できるから!

骨が軋む! いや、軋んでる!

などとやっていると流石に俺が限界だと感じたのか、馬鹿者め、とそっぽを向いて力を緩めてくれた。

……手は繋いだままだけど。

が、手を繋いだままでもお子様コンビでは人波に逆らうことなどできず。

いつの間にか大通りの中心から端の方に追いやられていましたよ。

そうして歩いていると目に付くのは、ショーウィンドウの並ぶ店先。あと、露店か。

ガラス越しに陳列してある服などはサイズが大人向けなのでフィアットさんには関係ないのだが、やはり気になるものは気になるのか。

ちらちらと視線が俺をスルーしてショーウィンドウの方に向いていたりする。

そして時折溜息が。

やっぱり気にしているのか、幼児体け……もとい、身長が低いこと。

などと思っていると、不意に彼女の足が止まった。

「どうしたんです?」

「いや……路上に店が……これが店頭販売というやつか」

「微妙に違いますね。露店です、これ。ちなみに食べ物の場合は屋台で、それ以外だと――」

「知っていたぞそれぐらい!」

ああ、俺のうんちくが。

ガー、と怒りの咆吼もとい照れ隠しをしつつ、フィアットさんは花に誘われる蝶の如きふらつき方をしながら近付いてゆく。

陳列されているのは、ありがちなシルバーアクセ。

ただ、無意味やたらに装飾に凝ったタイプではなく、シンプルな作りの品物が多い。

フィアットさんの視線は指輪の辺りを行ったりきたりしているけれど、サイズがないと思うよ。

「フィアットさん、指輪ですか」

「ん、ああ。最近、興味が出てきてな」

「へぇ。どんなのが良いんです?」

「あまりゴツいのは好みではないからな……」

と言いつつ、再び品物に視線を向けるフィアットさん。

俺はペンダントトップの方を――

『おい少年』

『……誰?』

『目の前にいるだろう?』

と、顔を上げると、そこにはサムズアップした青年が。

いきなり念話とかなんだ。

『何か用でしょうか』

『彼女が物欲しそうな目をしているんだ。ここは一つ、プレゼントをしてみたらどうだい?』

『残念。この人、別に彼女とかじゃないんで。
 それに指輪とか、重いでしょう?』

ああ、ちなみに、重量の方じゃないっす。意味的なものですよ。

青年は俺の返答に楽しげな笑みを浮かべると、フッと、分かってないな小僧、みたいな顔をする。

なんだろう。酷くむかつくぞ。

『お前は何も分かっちゃいない。そう、分かったつもりになって、何も見えてない』

『それっぽいこと言って煙に巻こうとするなよ露天商』

『いいや、俺の考えていることは真理だね!
 良いか少年、幼年期におけるフラグ立ての重要性を、君は何も分かっていない!
 思春期に入ってからでは遅いのだ! それとない約束事、フラグという名の鎖で縛ることによって、人生計画は花開くのだと――』

うだうだうだうだ。

持論を念話で熱弁しやがりくさって、おかげで若干頭が痛い。

……面倒だなぁ。

「……フィアットさん、それ、欲しいんですか?」

「ん、ああ」

『いよおっし!』

視界の隅でガッツポーズをしやがる店主を意図的に無視して、こっそりと溜息を吐きつつ苦笑。

「買ってあげますよ。今、懐に余裕があるんで」

「施しを受けるつもりはない。これぐらい――」

と鼻を鳴らしてジャケットのポケットをまさぐる彼女。

しかし、若干焦った様子で、今度はホットパンツのポケットを何度も叩いたりして、硬直。

頬を汗が伝う。

「……財布を忘れた」

「……あー、えっと、今度何か奢ってくれれば良いんで」

「……すまん」

こりゃー昼飯も俺持ちかなぁ、などと考えつつ指輪のサイズを確かめる。

が、やっぱりフィアットさんに合うのはなかったようだ。

しょんぼりと肩を落とす彼女。

んー、でも、まぁ。

「チェーンの一番短いヤツを一緒にもらえます?」

「どうするつもりだ?」

「ありがちですけど……こんな感じで」

と、指輪をチェーンに通してフィアットさんの首に通す。

どこか驚いた様子で目を見開いた彼女は、首に下がった指輪を掌に乗せて視線を注ぐ。

そして顔を上げると満面の笑みを浮かべ、

「……悪くない。ありがとう、エスティマ」

「どういたしまして」

そう言ってもらえると嬉しいものだ……って、なんだ?

肩を叩かれたので顔を向ければ、そこには露天商の暑苦しい顔が。

「なんですか」

「サービスだ」

と、無理矢理手を取られて何かを握らされる。

見てみれば、フィアットさんと同じようにチェーンに通された指輪が。

……なんだかフィアットさんがじっと視線を向けてくるのに耐えられなかったので、俺もその場で装着。

セッターが首に下げてあるから、なぁ。あとで紐の長さを調節して、ぶつからないようにしないと。

「じゃあまぁ、会計を」

「はいはい」

と、ご機嫌な店主が値段を提示。

日本円で諭吉さん一人と夏目さん二人がぶっ飛びました。

何がサービスだあの野郎……!

ファック……!

などと思っている俺と違い、フィアットさんはご機嫌な様子でリングを指先で弄んでいる。

今の出費が地味にデカかったから、昼食はファミレス。

そこへ向かっている最中、ずっと彼女は微笑みを浮かべていた。

……喜んでくれているみたいだな。

なら……まぁ、良いか。

この人にはなんだかんだでお世話になっているんだ。言葉では言い表せないような借りが、いくつもある。

それは、俺の愚痴を聞いてくれたりだとか、気分転換にこうして付き合ってくれたりだとか。

きっと第三者の立場から見たら普通に遊んでいるように見えるんだろうが、違う。

俺からしたら、これは、彼女にしかできないことなのだ。

身内ともまた違った気軽さで付き合えて、しかし関係は近すぎず遠すぎず。けど、他人とは絶対に言えない。言いたくない。

なんだろう。失いたくない人、ってのが一番しっくりくるかな?

……むう。外見がこんな人なんだがなぁ。

包容力って点だけは、もうそろそろ認めても良いか。

「……おいエスティマ」

「なんでしょうか」

「今失礼なことを考えなかったか?」

「まさか」

訂正。

やっぱり包容力はないかもしれない。




















リリカル in wonder




















レジアス中将の戦闘機人計画。

それは、地上の戦力を魔導師に頼らないという一点で推し進められた代物だと原作では語られていたが、調べてゆく内に、どうやら少し違うものではないかと思い始めた。

それを語るには、まず、レジアス中将が防衛長官の立場になって最初に行ったことから順を追わないと分からないだろう。

ミッドチルダ地上で行われるテロ行為。それは、魔導師でも人間でも結局のところやることは同じである。

破壊工作なり立てこもりによる要求なり。

それを鎮圧する際、海でも陸でも同じように局員が負傷することは多々ある。

中には、職場復帰が不可能になるまでの怪我を負う者も。

レジアス中将が行ったことは、そういった管理局員としての人生を終えようとしている者への救済措置だった。

負傷者への高性能の義肢の支給。殉職した局員の家族への遺族補償の充実。

知ってから驚いたのだが、今適応されている制度が始まる前はそこら辺が酷くアバウトだったのである。

これならレジアス中将に熱を上げてる局員がいるってのも、分からなくはない。というか、分かる。

まぁ、金食い虫を増やすつもりがなかったのかね、今まで。海がかなりの予算を持って行ってるし。

次元航行艦一隻の維持費なんて、陸の大隊が余裕で運営できる額だぞ。

陸の予算の使い道なんてヘリの燃料費とデバイスなどの装備の維持費、人件費ぐらいだ。

そりゃあ海が陸に妬まれるのも分かるさ。

……話が逸れた。

とにかく、義肢の開発に予算を割いて局員の使い潰しを防ぐようになったレジアス中将だが――

……おそらく、そこを最高評議会に突かれたのだろう。

そもそもがアインヘリアルなんて誰にでも使える兵器の導入を進めた人が、戦闘機人なんて成熟にも手間がかかって生み出すのにも金がかかる存在に目を点けたというのがイマイチ信じられなかったのだ。

より性能の良い義肢を生み出す。それを追求した結果、生体と機械の融合に行き着いたのではないか。

そして非合法研究に片足を突っ込んだ結果、抜け出せないレベルにまでにスカリエッティや最高評議会との繋がりができてしまったのではないか。

使うつもりが使われた。そんなところなのだろう。

スカリエッティを捕まえようとしても、それと同時にレジアス中将が自分と繋がっていることを暴露されるとなれば迂闊に手出せない。

防衛長官として調子が出始めた時期に、夢と同時に地位を失脚することなどできないだろうから。

現時点で退けないレベルにまでキちゃってるのか、まだ間に合うのか。

そこまでは分からないが……さて。

「……参ったな」

背もたれに体重をかけ、ギシ、と悲鳴が上がる。

ゼスト隊壊滅を防ぐためにここにいるわけだが、思った以上に事態は複雑だわなぁ。

今日までやってきたことと言えば、部隊の皆様のデバイスのチューンとカートリッジの大量生産、それとなく勧めた対AMF戦闘訓練ぐらい。

地雷を踏まないように小賢しいレベルの情報操作で突入を先延ばしにしているが、それは気休めだ。

……ううむ。

ナンバーズがいたことから、きっとゼスト隊が突入した研究施設は『当たり』だったのだろう。

ガジェットⅣ型すらもいたわけだし。

捕らぬ狸の何とやらだが、もしナンバーズを全員捕縛して、スカリエッティも捕まえたとする。

しかし、その捕まえたスカリエッティが余計なことを喋ったら一大スキャンダルなわけで、ミッド地上はカオスとなるだろう。

それこそ、JS事件の前倒しと言って良いほどに。

……スカ博士と一番を殺して、見つけ出した二番も殺せばあるいは。

死人に口なし。研究施設だってデータベースごと破壊すれば……。

「……そう上手くいくわけないっつーの」

オーバーSランクの騎士が殺される戦場だぞ。いくら部下を庇って負傷したあとの戦闘だったとしても。

AAA-ていどの俺が、そんな上手いことできるわけないっつーの。

……まぁ、リミットブレイクを使えば分からないけど、それも奥の手だ。

第一、あんなもんを使ったら死ねる。御免被る。

「……っと、定時か」

視界の隅に移った壁掛け時計を見て、身体を起こす。

隊長とクイントさん、メガーヌさんは本部に出向いて隊舎にいないが、時間になったら帰って良いと言われている。

今日は先にお暇するとしましょうか。

今日の作戦の報告書とデバイスメンテの報告書を隊長の情報端末に転送して、電源を落とすと席を立つ。

お先でーす、と同僚に声をかけて隊舎を後に――しようとして、ばったりと隊長たちと出くわした。

「あ、お疲れ様です」

「……エスティマ。すまないが、任務の予定を前倒しにする。今日は帰れない」

「えっ……と?」

「以前から目を点けていた研究施設に踏み込む。……支度をしろ」

有無を言わさぬ口調でそれだけ告げると、隊長は俺の横を通り過ぎる。

……遂に、かよ。

「エスティマくん、シグナムちゃんに連絡をしないと。ね?」

「ほら、行こう?」

「あ……はい」

クイントさんとメガーヌさんに、両側から肩を叩かれる。

……動揺している場合じゃねぇ。

「クイントさん、確か、目標の研究施設ってベルカ自治領に近い場所にありましたよね」

「えっと……メガーヌ?」

「ええ、そうよ。作戦が終わったら、直帰できるように隊長にかけあってあげるから」

大丈夫、と柔らかな笑みを浮かべるメガーヌさん。

しかし、俺はそんなことを確かめたかったワケじゃない。

ベルカ自治領が近いのなら、保険をかけることはできる。

踵を返すと、大急ぎで隊舎のロビーに向かい、公衆電話の受話器を持ち上げる。

……こんなこと、徒労で終わって欲しいものだけど。





































『……第三層クリア。やはり、ここは戦闘機人プラントのようです』

『了解。引き続き調査を頼む』

忙しなく両足――否、四肢を動かしながら、周囲に視線を向ける。

フェレットモードでの斥候は、この部隊でも海にいたときでも変わらない俺の役目だったりする。

まぁ、移動速度が速いから撤退して本隊と合流するのも早いし、打って付けだろうさ。

……こんなダンジョンだと包囲されたら突破するのは骨が折れるだろうけどね。

周囲を見回し、立ち並ぶ培養槽、その中に収まっている人間っぽいものや元人間の姿にうんざりする。

作りは割と簡素っていうか、いい加減というか。

時の庭園にあったアリシアのポッドは一品物で高かったのかね。

『エスティマくん、先行しすぎよ』

『大丈夫ですよ。孤立しても敵中突破ぐらいこなしてみせます。
 クイントさんこそ、本隊と離れないように気を付けてください』

そうクイントさんからの念話に返事をして、脚を進める。

多分、クイントさんたちの役目は俺が肩代わりしているんだろう。

単独戦闘スキルの高いフロントアタッカーと、その補助であるメガーヌさん。

本来ならば二人が突っ込んで――

「――っ!?」

動かし続けていた脚を止める。

耳を立てて神経を尖らせれば、微かだが、今まで聞こえていなかった駆動音が響いている。

……もうそろそろか。

天井の高さはそれなり。包囲されても空を飛べば隊長たちと合流することは可能。

などと考えている内に、シャッターの降りていた壁が耳障りな音を上げ、続々とガジェットが吐き出され始める。

俺には気付いていないようだ。

このまま下がるか、スカのところまで行くか。

判断に苦しむところだが。

『機械兵器らしき未確認体と接触。数はおよそ五十。まだ増えています。
 AMFの発生を確認』

『了解した。……調査を続行する』

『……あの、隊長』

『なんだ』

『ここは一度退いた方が良いと思います。
 閉鎖空間でこの数に包囲されたら、最悪、全滅の可能性もありますよ』

『駄目だ。最大規模の戦闘機人プラント……このチャンスを逃すわけにはいかん。
 エスティマ、お前は俺たちと合流しろ。集団で突破する』

『……了解』

思わず舌打ち。

元より退くつもりはない、か。

そりゃあ今回を逃せば、明日から違う案件に第三課は当てられるんだ。なんとしてでもここを落としたいのは分かるが。

……っと、

「きやがったか」

足元に照射されたレーザーを跳躍しつつ回避し、変身魔法を解除。

既にバリアジャケット姿となっている俺。白金のハルバードを構えつつ、レーザーを避けながらクロスファイアをぶっ放す。

が、密集したガジェットのAMFの前に、誘導弾は霧散する。

……屋内だから広域型のサンダーレイジは使えない、か。

フェイトだったら可能だろうが、俺じゃあ逆立ちしても無理だ。闇の書事件のときより技量が上がった今でも、それは変わらない。

唯一の救いは施設全体にAMFがかかっていないことか。

おかげで飛行魔法に支障はないし、プロテクションだって普通に発動できる。

回避運動を行いつつ、物理防御設定で直撃コースのレーザーを弾きながら、どうするか、と思考を巡らせる。

……前と後ろから囲まれたらマズイな。一向方だけでも確保しておこう。

「Seven Stars、物理破壊設定」

『了解』

「デュアル――バスター!」

密閉空間での砲撃魔法。

通路を雷光とサンライトイエローの砲撃が蹂躙し、直接のダメージと撒き散らされる破片でガジェットⅠ型の群れがスクラップへと変わる。

それを横目で眺めながら、通路を後戻り。

隊長たちは……駄目だ。いつの間にかジャミングがかかってる。正確な位置が分からない。

合流にも骨が折れる。A.C.S.で一気に突破するか?

いや、一匹の敵に対してやるのは良いけど、俺の場合紙装甲だから、複数の敵を目標にして使うと傷だらけになるんだよなぁ。

などと思いつつ通路を進んでいると――

「――っ、Seven Stars!」

『――Phase Shift』

同時に、Seven Starsを目の前に思いっきり叩き付ける。

薄暗い通路の奥にちらついた光。

それを目にした瞬間、思わず稀少技能を発動させた。

通路の照明とも、ガジェットのライトとも違う色。

それは――

「流石です、エスティマ様」

キチキチと音を立てながら、そんなことをほざく女を睨み付ける。

青を基調としたボディースーツに身を包み、紫の頭髪、身体の節々にリアクターフィンにも似た光翼をまとう人物。

「ナンバーズ……!」

「ほう……ご存じでしたか!」

咄嗟に蹴りを叩き込み、お互いに間合いを空ける。

今対峙している女は、やはり、そうか。

「知っているのならば隠す必要もない。ナンバーズⅢ、トーレと申します。
 ……しかし、なぜ私たちのことを?」

「さて、なんでだろうな」

まずった。咄嗟のことで口が滑った。

トーレを視界の中心に収めつつ、なんとか逃げ場はないかと視線を這わす。

脇……いや、駄目だ。今ので分かったが、向こうのIS、ライドインパルスとこっちの稀少技能はほぼ互角。もう少し打ち合ってみないと断言はできないが、それでも背中を見せるのはマズイ。

逃げるのは難しい……か。

くそ、隊長と連絡が絶たれている今、限定解除の申請だってできないっつーのに!

「まぁ良いでしょう。我々のことを知っているのならば話は早い。
 エスティマ様。少し込み入った話があるのですが、宜しいでしょうか」

「生憎と急いでいる身でね。……そこを退け」

「それはできません。ここにきてしまった以上、あなたには我々と共に行動してもらいます」

「断る。お前の指図を受ける義理もなければ義務もない。必要もない。
 退かないって言うのなら――実力で排除するまでだ」

「分かり易いお人だ……私としては好ましいですが!」

「ほざけ……Seven Stars!」

『――Phase Shift』

「IS――ライドインパルス!」

同時に加速を開始する。

向こうは四肢に取り付けられたエネルギー翼が武器。こちらはハルバード。

リーチはこちらが上だが、身体能力は向こうが上。

五分といったところだが――俺は、今すぐにでも隊長たちのところに行かなければならないんだ。

トーレを俺が引きつけていたとしても、最もこの戦場で当たっちゃマズイ存在が隊長たちとぶつかっているかも知れない。

こんな逃げ場のない場所で爆発物を扱う敵……アウェーな上に相性最悪な奴がいる。

彼女と当たる前に、早く合流をしなければならない。

それなのに……!

「くそ……!」

向こうのISは常時発動型。こちらの稀少技能は時間制限付き。

このリミッターを解除するには限定解除許可がいるわけだが、さっきも言ったように今は不可能。

……五分じゃない。俺の方が不利じゃねぇか!

エネルギー翼と魔力刃を何度も合わせながら、通路内を乱舞する。

衝撃波が吹き荒れ、ガジェットの残骸は舞い踊る。

鎌の魔力刃を発生させたSeven Starsを振るい、接近しようとしてきたトーレを遠ざける。

それと同時に稀少技能が解けたので、再び発動。

が、一瞬の空白の間にトーレが俺の左下へと移動していた。

ハルバードか否か。逡巡し――

「……何!?」

左腕で、インパルスブレードを受け止める。

皮膚を裂き、肉が千切れ、血が噴き出す。

……だが、骨までは断てない。三分の一ほどまで刃が突き刺さっているが、それだけだ。

「ぐうぅ……捕まえたぁ!」

頭に響く激痛に呻きながらも声を上げ、手の中でグリップを滑らせてSeven Starsを短く持つと、振り下ろすと共に魔力刃を突き刺す。

それと同時に稀少技能が切れ、

『ブレードバースト』

間髪入れずに、魔力刃を破裂させた。

爆煙によって視界がゼロへと変貌するが、トーレが吹き飛んだ方向は把握している。

歯を食いしばって痛みに耐えながらSeven Starsの穂先をそちらに向けると、魔力を集束させ、姿勢制御のために両肩のアクセルフィンへと魔力を送り、

「ディバイン――バスター!」

砲撃。

轟音が通路を震わせ、閃光で視界が明滅する。

非殺傷での一撃だが、これなら、おそらくは。

粉塵によって灰色に染められた通路の中に、俺の荒い息だけが木霊する。

稀少技能の連続使用……こんなに堪えるもんだったかな。

壊れたエンジンのように深く、耳障りな吐息を漏らす自分の喉に顔を顰める。

バリアジャケットの下は汗でびしょ濡れになっているし、身体の節々からは嫌な反応が返ってくる。

……早く隊長たちと、合流を。

そう思い、Seven Starsを肩に担いで移動を再開しようとした瞬間だ。

「まったく、お前は過激だな、エスティマ」

……どこかで聞いた――聞き覚えのある声が耳に届いた。

煙は徐々に晴れてゆき、声の主の姿がうっすらと浮かび上がってくる。

……ああ、そうだ。彼女の声だ。

けど、なんで?

思わず飛行魔法をキャンセルし、地面へと降り立つ。

左腕の傷がじくじくと痛むが、その苦痛も目の前の光景に薄れてしまいそうだ。

視線の先。

そこには倒したと思ったトーレが苦痛に顔を歪め、右腕を押さえながらも立っており……いや、そんなことはどうでも良い。

その隣に立っている、小柄な、首にリングペンダントを下げた人。

華奢な体躯を戦闘機人のスーツで包み、その上からコートを纏った姿。

長い銀髪。少し太めの眉。

「……いや、え?」

そんな、間抜けな声が出てしまう。

いや、分かっている。ナンバーズの中で、あの体格でコートを着ているのは、一人しかいない。

……けど、おかしいじゃないか。

彼女が首に下げているアクセサリーは、俺が彼女にプレゼントしたもので。

いや、違う。そうじゃない。いや……そう、なのか?

「……お前とは、こんな形で顔を合わせたくなかったよ」

ざり、と靴裏がガジェットの残骸を噛んで音を上げた。

……なんで後退っているんだよ、俺は。

「……フィアット、さん?」

「それは偽名……私はナンバーズの五番、チンクと言う」

そう……か。

言われてみれば、そうだ。

確かに、眼帯をすれば、脳裏にぼんやりと残っているイメージに合っている。

この身体に入ってから摩耗した、情報と違って鮮度を保っていられない視覚情報。

合っていると断言はできないが……ああ、そうだ。確かに彼女はチンクだ。

ナンバーズの五番で、俺の敵。

……敵なら。

Seven Starsを握る腕を持ち上げ、構えようとする。

が、穂先が妙にブレていることに気付いた。

見れば、腕がどうしょうもないほどに震えている。

それを頭を振って見なかったことにし、両手で、Seven Starsのグリップを掴み、対峙する。

「エスティマ、抵抗するな。お前に乱暴はしたくない」

一歩、フィアット――否、チンクが歩み寄り、俺が一歩下がる。

そんなことを二度ほど繰り返し、彼女はどこか呆れたように、諦めたような、笑みを浮かべた。

「エスティマ。あの時の問いを、もう一度しよう」

「……あの時?」

「墓地での、だ。……私たちの元にこないか?」

脳裏に風化しかけた一年以上前の記憶が浮かんでくる。

Larkを葬って、その直後に交わした会話。

……ああ、そうだ。確か、そんなことを言っていたな。

そんな風に思い出し、俺の口から漏れたのはイエスでもノーでもなかった。

「あのときから、俺に目を付けていたんですか?……プロジェクトFの遺産である、俺に。あんたたちの親は」

「……どこまで知って」

「答えろ! 最初に出会ったときから、お前は俺を騙していたのか!?」

彼女の問いを遮り、怒声が零れた。

……ああ、みっともない。本当にしょうもない。

けど……どうしてだろうか。

この人に裏切られていたのだと……そう思うだけで、どうしてこんなにも。

視界が歪み、それだけは、と必死で堪える。

……目の前の彼女を八つ裂きにしてやりたい。したくない。

そんなドロドロとした、上手く言葉にできない感情が際限なく沸き上がってくる。

チンクは俺から目を逸らすと、躊躇いがちに口を開く。

「……ああ、そうなるだろうな。名を偽り、身分を嘯いて、お前に近付いた。
 それに間違いはない」

「なんで……そんなことを」

声が裏返った。だが、構わずに先を続ける。

「なんの意味があってそんなことを、どんな理由があって、あんたは……!」

「監視だよ。それと、保険だ。今このときに、お前をこちらへと引き込むための。
 ……おそらく気付いていないようだから教えてやる、エスティマ。
 お前は一年以上前、闇の書事件のときから、人間ではなくなっているんだよ」

「はっ――人間じゃないって言うのなら、そんなこと、生まれたときから……」

「違うんだよ、エスティマ。……レリックウェポン、というものを知っているか?」

その単語で、一年以上前、人間じゃない、というピースがカチカチと組み合わさる。

……いつの間にか手の震えは全身に及んでいた。

寒気すら覚える。

俺の様子を見て、博識だな、とチンクは繋ぐと、先を続けた。

「ヴォルケンリッターによって命を奪われたお前は、私たちの親によって蘇生された。
 魔力結晶体を埋め込まれ、人ならざる兵器として生まれ変わり、お前は再び目を開いた。
 ……お前は私たちと一緒なのだ。
 戦うための道具としてこの世に生を受けた存在」

そこで一度言葉を句切り、彼女は胸元に下がったリングをつまみ上げる。

チャリ、と心地の良い音。

それに頬を緩ませながら、彼女は柔らかな視線を向けてきた。

「日常も悪くないものだったよ。お前と共に過ごした日々は、楽しかったと言える。
 ……だが、お前はそうじゃないだろう?
 なぁ、エスティマ。薬を頼りに正気を保ってまで送る生活になんの意味がある。
 そこまでして、守る価値はあるのか?
 いつも私に愚痴を言っていたではないか。辛い、と。
 そんな物、全部捨ててしまえ。そして、私たちと一緒に過ごそう。
 ……な?」

カツカツと足音を立てて彼女は近付いてくる。

……今度は、もう、後ずさることはない。

……どうしようもないだろう、こんなの。

ははは……笑える。この上なく笑えるじゃないか。

プロジェクトFで生み出され、レリックを埋め込まれ、終いにはこの左腕……この義手は、きっと戦闘機人計画に噛んだ代物なんじゃないのか?

……馬鹿馬鹿しい。

イレギュラーだった俺は、いつの間にか歯車の一つとして組み込まれていたわけだ。

それも、欠かすことのできない類のキャストとして。

原作がどうのこうのなんて、もう言うつもりはない。ずっと前からそんなつもりはなくなっている。

けど……これはあんまりだ。

いくらなんでも、これはないだろ?

最低の最悪で……逃げ出したいのを必死に堪えて、Larkまで失って闇の書事件を終えて。

その傷だって段々と癒えてきたっていうのに、これからはもう裏目になんかしないって、そう、思っていたのに。

そのために動き続けていたのに。

それなのに、破綻の種は俺自身にあっただなんて。

カラン、と音が足元から上がる。

ああ……Seven Starsか。取り落としたみたいだ。

きっとコイツもスカリエッティ謹製なんだろうなぁ。

ははは。

あははははは。

くつくつと笑い声が零れる。

チンクが怪訝そうな表情をするが、俺からしたらそっちが不思議だ。

だって、そうだろう?

嗚呼――もう嫌だ。

もう、どうにでもなれ。

「……エスティマ?」

心配そうな声。それと共に、チンクが俺の頬へと手を伸ばし――

「はあぁぁぁぁああああっ!!」

轟音、震動。

不意に、脇の壁が爆ぜた。

棒立ちになりつつ首を傾げてそっちを見ると、そこには右拳を突き出してこっちに突っ込んできたクイントさんの姿が。

ああ、良かった。まだ生きてたんだ。

「エスティマくん、無事ね!?」

「待て、そいつは私と……!」

「メガーヌ!」

クイントさんの声と共に、チンクと俺たちを分断するように、通路を遮断するほどのシールドが展開される。

チンクが何かを叫びながらシールドに拳を叩き付けるが、何を言っているのか分からない。

恨み言か何かだろうか。どうでも良いけど。

「エスティマくん、ほら、しっかりして!」

肩を揺さぶってくるクイントさん。バリアジャケットはところどころ裂けており、額からは血を流している。

必死そうな表情からは、きっと俺を助けるためにここへと突入してきたであろうことが察せられた。

「メガーヌ、エスティマくんを上層に転送!」

「分かったわ!」

りん、と涼しげな音と共に俺の足元に魔法陣が展開した。

……転送魔法か。

「……クイントさんとメガーヌさんは?」

「私たちなら大丈夫だから、ね?」

「ええ。君は先に隊長のところへ……ほら、しっかりしなさい。男の子でしょう!?」

怒鳴られ、Seven Starsを無理矢理持たせられる。

……それで、萎えていた気力が少しだけ持ち直した。

駄目だ。駄目だ駄目だ駄目だ。

「駄目だ! こんなところに残ったら、間違いなく死ぬ!
 それが分からない二人じゃないでしょう!?」

悲鳴じみた声色が出た。

それに、クイントさんとメガーヌさんは顔を合わせると、子供をあやすとき特有の笑みを俺に向ける。

「あら。エスティマくんは私たちが負けるとでも思っているの?」

「なら残念。生憎と、娘が成人するまで死ぬつもりはないのよ。私も、クイントもね」

だから、と二人は繋ぎ、

「安心して行きなさいな。……たまには、娘たちと遊んであげてね」

「待っ――!」

手を伸ばす。

けれど、それが届くより早くクイントさんの転送魔法が完成して――

コマ送りのように、次に現れた視界には、二人の姿は見えなかった。

「あ……ああああ……」

その場に膝を着き、次いで、両手を地面に着く。

もう堪えることができなくなり、嗚咽が口から漏れた。

俺なんか、もうどうなったって良いのに、なんであの二人が……!

手遅れの俺なんかどうでも良くて、あの二人は幸せになるべきで――俺は、そうするためにここにいたというのに。

思わず床を殴り付け、奥歯を噛み締める。

こんなことになるぐらいなら、俺は……!

「スクライア執務官!」

名を呼ばれ、ほぼ条件反射で顔を上げた。

周りを見回せば、この場にいる人数は四人。

そのどれもが憔悴しきった表情で、玉のような汗をびっしりと浮かべている。

「……隊長は?」

「殿を務めると言って、一人で……指揮権は執務官に譲渡されました。限定解除も行われています。
 執務官、指示を」

「……そう」

……そうか。

それだけ応えて、ゆらり、と立ち上がる。

……誰も救えず、自分が人間ですらないと知り。

目的を果たせず、またこんなことになり。

……もう、うんざりだ。

「もう――――――――――
      ――――――――――――もう、たくさんだ!」

『フルドライブ・エクセリオン。
 モードB。カウリング・ガンハウザーをセレクト』

唐突の咆吼に呆気にとられた隊員たちを余所に、フルドライブモードを起動させる。

エクセリオン。莫大な魔力消費と引き替えに全能力値を底上げするモード。

それを開放する。

ハルバードの外装は全て剥がれ落ち、剥き出しの、黄金のフレームが現れる。

それは眩い光を放ちながら流動すると、一本の槍に変貌。

次いで、虚空から現れた外装が、彩りを加える。

人の頭を飲み込むほどの砲口。それを上下からホールドする、顎のような外装。

ヘッドの形状を例えるならば、ブレスを吐き出そうとした姿勢で固まった竜の頭か。

その後頭部に重厚な回転式弾倉が填り込む。

最後に石突きが伸縮し、放熱器が開放される。

近接戦闘能力、射撃補助。それらの機能の一切を廃して、ただ砲撃を撃つためだけに特化した、Seven Starsの四形態の内一つ。出力調整など考えず、ただ最大出力で敵を蹴散らすために、カートリッジシステムも装備されている形態。

「……スクライア執務官?」

「……地上までの突破口を作ります。離脱したら、指定の人物に連絡をしてください。
 間違いなく、保護してくれるはずです」

言いながら隊員にデータを転送して、砲口を斜め上へと向ける。

そして両手でグリップを握り締め、深呼吸を一つ。

「もう……どうにでもなれ」

『――Zero Shift』

瞬間、すべてが速度を失う。

戸惑った隊員たちも、未だに続いているどこかの戦闘の音も。

そんな中で動けるのは、俺とSeven Starsのみ。

忌々しいデバイスだ、本当に。

だが、今は――今だけは、その性能に感謝してやる。

「ディバイン――!」

『カートリッジロード』

重厚なヘッドの上部に露出した、大型の回転式弾倉。

装填されたすべてのカートリッジ六発を開放し、流れ込む魔力に吐き気すら覚える。

だが、それをなんとか飲み下し、ただ天井の一点を睨み付け、

「バスタアアアァァァァァァァァッ――――――――!」

溜まりに溜まった魔力を、一気に開放した。

視界を覆うサンライトイエローの光に目を焼かれながら、しかし、しっかりとグリップを握り締めて足を踏ん張る。

そうして十秒ほどだろうか。

魔力を吐き出し切り、熱風を放熱器から吐き出すSeven Stars。

今にも倒れそうなほどに意識がふらつくのをなんとか堪えながら、たった今空けた大穴――

地上へ一直線の最短ルートを指さす。

「……行け」

「は、はい。……あの、執務官は」

「急げ!」

「はい!」

怒鳴りつけ、隊員たちは焦った様子で地上へと登り始める。

……これで良い。

……俺にできることなんて、これが精一杯だよ、どうせ。

『カウリング・パージ。モードAに移行します』

ガンハウザー・カウリングが切り離され、Seven Starsは再び以前と同じ白金のハルバードへと姿を戻す。

だが、フルドライブは維持したまま。

失血のせいだろうか。感覚を失い始めた指先を苛立たしく感じながら、俺はSeven Starsを両手で握り締める。

「さて……きたか」

通路の両側から、まるで害虫のように数多ものガジェットが姿を現す。

Ⅰ型に混じってⅣ型も。

……八つ当たりの相手としては上等だよ。

俺には勿体ないぐらいだ、本当。

『リミット無制限――Zero Shift』

稀少技能を発動させ、ガジェットの群れへと突撃する。

魔力刃で敵を切り裂くなんてことはしない。

みんな壊れてしまえと、ただ闇雲にSeven Starsを振り回す。

俺の魔力を吸い上げたSeven Starsの硬度は、悪い冗談のような次元に達している。

それを音速超過で叩き付け、腕を振るうごとにガジェットの残骸が一つ、また一つと増えてゆく。

唐竹から振り下ろし、突きで貫き、薙ぎ払う。

レーザーを放つ前に叩き潰し、前脚を振り下ろそうとするガジェットを転倒させ、左拳で打ち砕く。

ああ、なんだろう。

今までにないほどに頭が冴える。

左拳はきっと割れているというのに、その痛みすら心地良いと錯覚しそうだ。

駆逐し、殲滅し、次の獲物はまだかと心待ちにする。

――そうして、どれだけのガジェットを潰した頃だろうか。

「あ――れ?」

不意に、全身から力が抜けた。

脚がもつれてその場に倒れ込み、不様に顔面からぶつかった。

……なんだろう。床が冷たくない。

むしろ暖かみすら感じるな、などと思いながら、Seven Starsを杖にして立ち上がる。

「それにしても……まだ動けるのか、俺」

割と限界を超えたことをしたと思ったんだけどな。

本当、嫌な身体。

「敵……敵を探さないと」

Seven Starsで身体を支えて、歩き出す。

ゼロシフトも、エクセリオンも切れてる。ってことは、魔力が底を着いたか。

まぁ、あれだけ暴れれば当然だよな。

昂ぶっていた気分が急に冷めて、それと同時に、身体が酷く重くなった。

……俺、何やってんだろう。

馬鹿みたいだ。気に入らないから暴れて、そんなことをしたって、なんにもならないってことぐらい、分かっているのに。

本当――

「馬鹿だ……な……っ!?」

ずち、と、右肩を何かが貫通した。

見れば、バリアジャケットを貫通して鋼の爪が突き出ている。

ゆっくりと首を回すと、そこにはガジェットⅣ型の姿が。

それを切っ掛けにして右腕も力を失い、Seven Starsが地面に転がった。

俺は俺で無造作に持ち上げられて、壁へと叩き付けられる。

息が詰まる。右肩から飛んだ血飛沫が目に入って痛い。

ずるり、と背中が壁を滑って尻餅を着くと、俺を取り囲んでいるガジェットⅣ型の姿が見えた。

十体ぐらい……かな? まだこんなに残っていたのか。

いや、俺の見落としかも。こいつらステルス迷彩持ってるし。

まぁ良いや。

「……これで終わり」

機械的に持ち上げられたガジェットの前脚を眺めながら、そんな言葉が口を突いて出た。

そして、まるで断頭台の刃のように、鋼の爪が振り下ろされる。

……こういう時、走馬燈が見えるものだと思ったけど。

……いや、そういえば、シグナムに殺されたときは見た気がするし、一生に一度っきりなのかな走馬燈。

そんなどうでも良いことを考えながら、目を瞑る。

……。

しかし、いつまで経っても期待した終わりは訪れない。

どうなってんだ、と目を開けば、そこにあったのはライトブルーの光の壁。

そして、

「テメェら……!」

聞き覚えのある声が鼓膜を震わせた。

「エスティマに――はやての恩人に、何やってんだ――――!」

轟音、次いで、破砕音。

……ああ、そういえばそうか。

救援がきたって、おかしくなかった。

最後にそんなことを思いながら、俺は意識を手放した。





























「どうやら撤退したようだね」

ディスプレイに映る外の様子を眺めながら、ジェイル・スカリエッティは小さく頷いた。

そして、顔に出さないが胸を撫で下ろす。

……今回の襲撃は、正直、心が躍った。

対魔導師用の切り札であるAMF搭載型機械兵器。それらの有用性は、充分に立証できただろう。

精鋭揃いと言われている部隊の主力メンバーを疲弊させるのに充分な役目を果たし、自分の作品を最大限に映えさせる道具となってくれた。

それは良い。それらは全て想定の範囲内だ。

だが、正直なところ予想外だったことが一つ。

「エスティマくん……君はどこまで私を楽しませてくれたら気が済むのかね」

研究所内に配備しておいた機械兵器。それらの半数以上を、彼は一人で破壊し尽くした。

ディスプレイには、ついさっきまでライブで送られていたエスティマの戦闘映像が今も流れている。

それだけではない。

先日の戦技披露会――チンクに撮影させたもの――のも同時に映っている。

まるで暴風のように破壊を振りまくその姿は、既に人ではない。

愉悦に目を細め、スカリエッティは両手を振り上げながら阿呆のように大口を開ける。

「やはり私の作った作品は最高だ……アハハ……!
 喝采せよ、かっさ――」

『博士』

「……何かな」

心持ち不機嫌な声で、スカリエッティは通信ウィンドウに浮かんだ顔、クアットロに返事をする。

『今回撃破した魔導師ですが、どうしますー?
 私の方はきちんと息の根を止めたのですが、チンクちゃんは半殺しでやめちゃったらしくてー。
 あの坊やも引き込むのに失敗したみたいだし、本当、駄目な子』

「ふむ……」

顎に手を当てながら、スカリエッティはキーボードに指を滑らせて魔導師のデータを参照する。

「一応、すべて回収してくれたまえ。レリックウェポンの素体に、高ランク魔導師が欲しかったところだし。
 エスティマくんへの対応も、追って考えよう」

『了解です』

どこかはしゃいだ様子で通信を切ったクアットロ。

スカリエッティはエスティマの戦闘映像を見ながら、手に入ったサンプルに思いを馳せる。

が、

「ドクター」

「何かなウーノ」

「早々に他の研究所へ移らなければ、面倒なことになります」

「……そうだね」

誰の仕業が知らないが、この場所が聖王教会に知られてしまった。

戦闘機人はともかく、レリックウェポンのことを知られたら面倒なことになるだろう。

溜息混じりにデータの整理と自爆装置の発動を検討しながら、スカリエッティは背中を丸めた。




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