「くそ、まったく」
コンビニで買ってきたビールを呷りながら春日恭二は悪態をついた。
『鋼の軍勢』を自分がUGNと協力して潰したことはすぐにFHに知れ渡り。
あやうく造反の濡れ衣を着せられそうになった春日は必死に申し立て、
ようやく『自分がメタルレギオンの暴走を止めるため、やむなくUGNと協力した』という事実を上に認知させた。
UGNの犬として処刑されるところだったことを思い返すたび怒りではらわたが煮えくりかえる。
冗談ではない。かつての栄華を取り戻すためにも、自分はこんなところで足踏みをしているわけにはいかないのだ。
「やってられるか。まったく、かつて幹部クラスと評されたこの私が……」
彼の優れた肉体はメタルレギオンの毒すら無効化するほどに優れている。
故にアルコールを入れたところですぐに分解してしまい、酔うことなどできない。
それでも飲まずにはいられなかった。冷たいが一瞬だけ喉の奥を熱くする感覚だけを味わいたくて。
液体をがむしゃらに流し込む。
飲み干せば飲み干すほどに、自分の先日を思い返してしまうのだけれど。
「まったく。酷い厄日がつづく」
本来なら見込みある人材をスカウトし、あわよくば自分の部下にとまで考えていたのだが。
結果は散々。
骨折り損どころかなぶられ損である。
「だが、収穫がゼロだったわけではない」
脳裏に黒木智子の姿を思い浮かべ、ぐっと一気に酒を飲み干す。
春日は彼女がUGNにずっといるとは思っていない。
家族を始め一般の人々に正体がばれたとき、UGNの一枚岩と言い難い複雑な内部構造を垣間見た時。
その時に改めて声をかけに行こう。
鋼の軍勢が発した言葉を信じるわけではない。
が、彼女は正義や愛という理想よりも己の欲望で動きそうだというのは春日も感じたのだ。
「いずれ、また会おう。若人よ」
アルミの杯を窓外の月夜に掲げ、悪魔は今日も孤独な酒宴を続けるのだった。