JAPANには瓦版という新聞のようなものがある。
この瓦版には様々な種類があって、その国が刷っているものもあれば町々で刷っているものもある。
国によっては国の発行するものしか公式に認められないというところもあるのだ。
では何故国が管理するかというと、それは過去の歴史が証明している。
情報統制と言う名の下の管理。
はっきり言って、この時代民衆が情報を得る手段といえばクチコミと瓦版くらいなものである。
それを国が管理すれば世論の掌握など簡単なのだ。
『織田、巫女機関に宣戦布告! 全国の巫女マニアの同士諸君、織田の横暴を許すな!』
『浅井朝倉の震災復興は順調のようで、朝倉一郎氏が――――』
『大道寺様のライブ二日後に迫る』
「ここの瓦版は面白いな…流石種子島家、自由な商人の国」
ペラペラと。
祐輔は器用に右手だけで瓦版を抱え、指先で紙をめくる。
それは祐輔が種子島家の端っこ部分で売っていた物を買ったものだ。
「復興もちゃんと出来てるのか。よかったよかった」
行き交う人々の怪訝な視線を物ともせず、祐輔は紙に目を這わせる。
彼はとても目立のだ。左腕に包帯をびっしり巻いているので、着物の裾から覗くのは真っ白な包帯。
しかも祐輔の頭と肩にはちゅんちゅんと可愛らしく雀が囀っているのである。
「はぁ…そろそろ、路銀が心もとなくなってきたな」
周囲からの視線なんてなんのその。気にしていたのは最初だけで、嫌でも慣れる。
そして雀が目立っている原因の一翼を担っているのも気づいたが、彼等は重要な祐輔の『目』なのである。
『おう。この周囲に変な武装集団はいねぇぞ。
それにあのランスとかいう奴も。怪しい奴もいねぇ』
「あ、玄さんご苦労様。また頭の上で休んでてよ」
祐輔の気ままに移動する旅は浅井朝倉を出て、織田から脱出してから結構な時間がたっていた。
時には落ち武者や山賊に襲われそうになって泣きながら逃げ出したり、路銀が心もとなくなってしまって皿洗いのバイトをしたり。
それなりの右折左折の後に種子島の端にまでたどり着いたのだが、一番の出来事といえば天志教で門前払いをくらった事だろう。
そもそも祐輔の原作知識は根も葉もない、根拠のない夢物語に過ぎない。
天志教で大僧正に会いたいとして、祐輔には面識も紹介も地位もないのである。
『ザビエルが復活する(まだ確定ではない)んだよ。えへへへ』とでも言おうものなら、叩きだされる事間違いなしだ。
もう一度言うが、祐輔には情報のソースを提示できない。
早期に魔人を封印できれば被害の拡大を防ぐ事ができるが、それとて確定情報ではない。
しかも天志教の定期検査の後に瓢箪は割れているので、逆に怪しまれるかもしれないのだ。
無論方法がないわけではない。
瓢箪の中にザビエルが8つに分けられ封印された事はトップシークレット。
ある程度上層部の者の耳に入れば祐輔に興味を持ち、大僧正に面通りもかなうかもしれない。
だが祐輔はこうも考えたのである。
『あれ、俺って呪い憑きじゃん? 問答無用で滅殺とかありえるんじゃね?』
そう考えれば呪い憑きの身で天志教の国にはいる事そのものが凄く危険な事のように思えたのだった。
そして祐輔の結論は『怖いから、もう諦めてもいいよネ?』。
流石は元々ヘタレな祐輔。背負う者が何もなければこんなものである。
そこでさっさと蜜柑、なにわを超えて種子島にまで至った祐輔だった。
だが種子島と言っても明石との国境ぎりぎりなので、どちらかと言えばというだけの話で、姫路にもとても近い。
とりあえずは織田から離れられたので旅のスピードを緩めている祐輔なのである。
順調にこのまま行けば種子島にいる柚美たちに会う事が出来る。
しかしそれもどうかと祐輔は思うのだ。
「さてと、どうしたものか…」
難しい顔でむっつりと祐輔は考え込む。
種子島の人々の気質を見れば、案外あっさりと呪い憑きを受け入れてくれるかもしれない。
だがその反面、逆に拒絶される事を想像してしまうと祐輔の脚は鈍る。
人の心というものはとても脆い。
確固とした意思を持ち、何者からの悪意も跳ね返す強さを持つ一面もあれば、
常に他人からよく見られるよう、他人からの視線を気にする一面もある。
祐輔は奇異の視線に対しては感覚が麻痺しつつあったが、感情に関してはまだまだ不慣れなのだ。
ここ一ヶ月の間にぶつけられる嘲り、畏れ、恐れ…祐輔の左腕は悪い意味で目立ちすぎる。
祐輔自身仕方がない事だと思いつつ、心の底では助けを叫び続けていた――――
「会ったら別れが辛くなるだろうな…俺ってば涙脆いし」
なんて事は全然なかった。
単純に今まで放置し、会いづらいという事も十分理由としてある。
ただソレ以上に柚美と再会したとしても、すぐに別れが待っている再会。
祐輔はほとぼりが冷めるまでは死国付近でスゴそうとだいたいの目安を決めていた。
祐輔に悲壮感といった類は多少あるものの、殆ないと言って差し支えない。
何故なら呪い憑きをなんとか出来るアテがあるのだから。
『あー、けどな。奇妙なモンは見つけたぞ?』
思い出したかのように祐輔の頭の上で寛ぎながらチュンと鳴く玄さん。
実際にはチュンと鳴いているだけなのだが、祐輔の脳内にて自動変換される素敵設定。
そのため祐輔にはメロンが大好きなヴェリリリリリィィイメロォォン!! の中の渋い人の声に聞こえていたりする。
閑話休題
「奇妙なモンって?」
『なんか頭に角っぽい装飾品をつけた幼女が木に逆さづりにされてた』
「――――――」
絶句。
普通の生活をしていれば、いや非日常で生きていても中々目に掛かれない光景だろう。
リンチか? リンチなのか? それとも別のナニカなのか?
祐輔は常識人的に混乱しつつも脳内ベータベースに当該ケースを検索する。
「あ」
ヒット。
そうだ、そういえばあの人物がこの世界にいたではないか。
即座に祐輔は心当たりを思い出し、あまりに哀れなので助けてやろうと思い立った。
「玄さん、場所教えて」
『面倒ごとは避けるんじゃなかったのか?』
「や。流石に見逃せんでしょ」
呆れたような声を返す玄さんに祐輔は当然の事と答える。
祐輔は基本的に善人だと自覚している。目の前に困った人がいれば助ける。ただし自分の命が脅かされない限り。
今回は特に危険だとは思えなかったため、助けてやろうと思ったのである。
チュンチュンという囀りのまま、街道を少し離れ林道に入る。
そして祐輔は暗がりの林の奥で彼女と出会った。
■
「ぅぅ、ぐす、ぐす、ぐす……」
一つ常識的な問いをしよう。
問:目の前で泣き崩れる幼女がパンツ丸出しで泣き崩れている。貴方はどうしますか?
答:そんなもん知るか、バカヤロウ
俺の今まで生きてきた人生において、こんな経験はない。あったらマズイ。
そりゃ子どもが泣いていたら慰めるし、場合によっては親を探すのもやぶさかでない。
しかしこの状況…どうするべ?
目の前で俺が近づいている事にもまるで気付かず、ぐすぐすと鼻を鳴らしながら泣く幼女を目の端に映しながら自問自答する。
「………」
とりあえず、下ろすか。
腰にぶら下げている脇差を手に取り、シャランと音を立てて抜き放つ。
逆さ吊りにされている幼女の背後から近づき、勢いよく縄に半ばから斬りつけた。
「ふぎゃ!?」
すると縄はほとんど抵抗なく断裂したではないか。幼女は真っ逆さまに地面に激突する。
俺は初めてこの脇差を使ったのだが、どうやらかなりの業物らしい。
新しい発見もともかく、まずは「あ痛たたったたた…」と全泣きしている幼女をなんとかしないといけない。
「うっぅう、ぐすっ…くじけちゃ駄目、くじけちゃ駄目よ」
幼女は気を落ち着かせるためか、しきりに自分に言い聞かせている。
完全に俺の存在を無視しているが…もう、俺街道に戻ってもいいよね? なんか急に面倒臭くなってしまった。
そう一応の区切りをつけて幼女から踵を返すものの――――――
「はっ! そう、そうよ、助けてくれた人のお礼言わなきゃ!」
がっしりと何者かに肩を掴まれ、俺の脚は強引に止められてしまう。
何者かなんて愚問か。俺がくるりと振り返った先にはぐしぐしと掴んでいない手で目頭を擦る青い髪の幼女がいた。
■
祐輔が助けた幼女の名は山中子鹿という。
泣くな泣くなと祐輔が頭を撫でながらあやし、鼻をぐずぐず言わせながらそう幼女は名乗った。
ある意味予想通りだったとはいえ、祐輔としては二つの意味で驚きだった。
一つは自分が思っていた年齢よりも更に幼いという事。
年齢的には諸々の理由で18歳以上なのだが、見た目はどう見ても小学生低学年にしか見えない。
話を聞いたところ乙女の年齢を聞くなと脛をけられたが、おそらく祐輔の想像は外れていない。
それが第一の驚きだとすると、もう一つの驚きはこんな幼女がお家再興のために奔走しているという事だ。
彼女自身から語られた事ではないが、祐輔は原作知識として子鹿の情報を持っていた。
実は彼女の家は九州地方にあったのだが、今は西日本の雄・毛利家によって滅ぼされてしまっているのである。
そのため原作では彼女がお家再興のため諸国を駆け回るも不幸な目に会い続けてしまうというイベント。
しかもそのお家再興というのも、この幼女自身の家ではない。
山中家というのは確か滅ぼされた尼子家の重臣で、この幼女が再興しようとしているのは山中家ではなく尼子家。
主君とはいえ他人のためにそこまでできる子鹿が少し祐輔は眩しく見えた。
「で、なんでこんなとこに?」
「それは天志教の性眼様にお家復興の手助けをしてもらおうと思ったのよ」
事情を聞くに、どうやら子鹿はなにわへと行こうとしていたらしい。
「けれどここは明石よりの種子島家だぞ? なんで逆戻りしてんの?」
「うっ、それは……騙されたのよ」
プルプルと全身を悔しさから震わせる子鹿。
また涙からか鼻声でつらつらと事の顛末を祐輔に語った。
なんで祐輔にこうも事情を話すのかと疑問に思うかも知れないが、子鹿も小さな女の子なのだ。
愚痴りたい事だってあるし、吐き出したい思いもある。
それに祐輔に助けてもらったのだから、事情を話す義務もあると彼女は思っていた。
本当はお供の者達と一緒になにわまで到着していたらしい。
しかしながら性眼と面識もなく、紹介状があるわけでもない。
そう簡単に天志教というJAPANの国教を統べるトップに会えるはずがなかった。
これは祐輔の予想通りとも言えよう。
やっぱり無理があるよなと思いつつ、祐輔は子鹿の愚痴に耳を傾ける。
落胆にくれる子鹿だったが、なんでも怪しい男が声をかけてきたそうだ。
その男によると性眼の知り合いである自分についてくれば、性眼に取り次いでやるというのである。
だが条件として子鹿一人のみしか案内できないという。
「……そこで気付こうよ。明らかにおかしいじゃないか」
「う、うぅ、うぅぅぅ…必死だったの、必死だったのよ!」
お供の者は止めるものの、子鹿はチャンスだと男に着いて行く。
だが性眼へと紹介してくれるはずの男はどんどんなにわから離れて行く。子鹿が不審に思って咎めたところ男は豹変し―――
そして今現在の状況に陥ってしまったというわけなのだ。
「それで貞操は無事だったのか?」
「うん…でも、いっぱい触られた。お金も全部取られちゃったし」
シクシクと泣きながら胸やらお尻やらを穢れを払うようにすりすりと摩る子鹿。
なんて哀れなと祐輔は目頭を揉みつつ空を仰ぎみた。ロリコンは業が深い。
遠くから見て愛でる勝家などの紳士もたいてい業が深いと思ったが、手を出す方はもっと愚かしい。
「……ぅぅ、どうしよう。皆はまだなにわだろうし」
途方にくれるとは正にこのこと。
男に連れてこられたという子鹿は当然の事のように道がわからない。
しかもお金もないとなれば、合流出来る前に飢え死にする事も十分にありえる。
「待ち合わせの場所とかは決めていないのか?」
「……一応あるにはある。けど、そこまで行くには二日はかかる」
ずーんと暗い影を背負って俯く子鹿。はぁ。やれやれと祐輔は力なく頭をふる。
奇妙な光景があると雀が教えてくれた時点で無視して街道を行けば、こんな厄介ごとには巻き込まれなかっただろう。
今頃は次の宿街にでもついて、ゆっくりと茶でもしばいていたに違いない。
「よし、じゃあ山中に20GOLD貸してあげよう。
一日二食にして、町の一番安い宿に泊まれば二日はもつと思う」
きっとこうやって返ってくるアテもない金も貸さずにすんだはずだ。
「え?」
「え? じゃないだろう。流石に合流するまでは面倒みきれないからな」
ぽかんと目をまん丸にする子鹿。
そんな子鹿の右手に小器用に懐から右手だけで財布から抜き取った金を握らせる祐輔。
落とすんじゃないぞと手を離すと、子鹿は「わ、わ、わわ」と慌てて右手を閉じた。
祐輔は基本的に善人なのだ。
全てを救いたいなんて傲慢な事は思わない。自分の出来ること以上をしようとも思わない。
ただ自分が出来る無理のない範囲で、手の届く範囲で手を差し伸べる。
これは偽善だ。
幾人もの命を間接的に、直接的に奪った祐輔は地獄に堕ちるだろう。
だがしない偽善よりもする偽善のほうがいい。何故ならそれによって救われる人も確かにいるのだから。
一方子鹿は自分の右手にあるお金を見つめていた。
はっきり言って尼子家が毛利家に潰されて以来、子鹿に好意的に接してくれるのは今もついてきてくれているお供の者だけ。
残ってくれていた家臣も次々に離れていき、今では数えるほどになっている。
そして家という後ろ盾がなく、単なる小娘に過ぎない自分に世間の風当たりは強かった。
お家再興の力添えを頼んでも断られる事はおろか、門前払いも少なくなかった。
だからだろうか。祐輔から受けた善意がとても懐かしく、とてもギコチなく感じる。
まして他人からの見返りを求めない善意である。
今までが散々だっただけに、反動で子鹿はとても暖かい気持ちになった。
「あ、ありがとう。絶対、絶対返すから! 待ってなさいよね!!」
「おー、おー。お家が再興したら期待してるぞー」
子鹿が反発するかのように祐輔へと反応したのは照れ隠しだ。
祐輔から見ても子供が親に照れ隠しで怒っているいるみたいなものなので、大変微笑ましい。
子鹿に棒読みで返した後、ハハハッと祐輔は笑う。
「まぁ頑張れよ」
「ふんっ、すぐにでも再興してやるんだから!」
■
「じゃあこのまま街道を行け。このまま北へ行けばたどり着けるからな。
知らない大人にはついていっちゃ駄目だぞ。あと暗くなったら無理せず宿に泊まる事。いいな?」
「子供扱いするなっ!」
祐輔と子鹿はある程度大きな街道まで一緒に歩き、分岐点で分かれる事にした。
祐輔はこれから街道を西に行き、とりあえずの目標地点である死国へ。
子鹿は種子島を北に進んでなにわ方面へと。
ついつい子供にするようにかいぐりかいぐり頭を撫でる祐輔の手を払い、子鹿は小さな胸を張って歩き出した。
しかし何事かを思い出したのか、くるっと後ろを振り返る。
「まだあんたの名前教えてもらってないじゃない!! ちゃんとお金返すんだから、教えなさいよね!」
「あー…、そういえば、そうだったな」
訊ねない子鹿も子鹿だが、気づかない祐輔も祐輔である。
「祐輔だ。森本祐輔」
「ふーん、森本祐輔、ね…よし、覚えた」
うんうんと頷き、胸中で反芻して子鹿は記憶する。
尼子家を再興したら下っ端の家臣くらいには取り立ててやるか。
子鹿は受けた恩はちゃんと返すのだ。
「じゃあね、祐輔!」
そう言って元気よく駆けて行く子鹿に手を振りながら祐輔は見送った。
祐輔は思う。あんな小さな子がお家を再興するために全国を奔走している。
現代っ子である祐輔にとって『家』という概念がとても薄いため、いまいち実感が湧かない。
ただとても大事で重要な事なんだろうなと漠然と思うだけである。
「お家再興、か……」
御家再興で祐輔の脳裏に浮かぶのは仲の良い少年と美人な姉の姉弟。
再会の約束はしたものの結局会うことは能わなかった。
仮に再会できたとしても、それはいったい何年後になるのか……
「ま、元気にやってるだろ」
惜しむらくはこの男は自分の影響力がとても小さいと勘違いしている事だろう。
祐輔が出奔したと聞いて、太郎と五十六が一族の者を使って捜索を開始している事。
ランスが祐輔が同盟国浅井朝倉と関係のない人間となった事を知り、捜索に相当数の人を割く事を懸案しているという事を。
ランスにとって祐輔とは目の上のたんこぶ。
祐輔さえいなければ雪姫に夜這いをかけて、メロメロにして条約を有耶無耶にする事すら可能。
少なくともランスは本気で可能だと考えている。
そこで重要なのが祐輔という存在になる。
無理やりしようとしても祐輔の雀が監視していれば、早い段階で夜這いが見抜かれ作戦が失敗に終わってしまう。
しかも夜這いはあくまで秘密裏に行い、雪姫のほうからランスに会いたいと言わせなければいけないのだ。
つまり祐輔の雀が非常に厄介。
しかも祐輔が生きている限り、ランスは鳥の糞から逃げ続けなければいけないという苦行が待っている。
祐輔の能力の効果範囲を知らないランスは実際に不可能だと知る術がないため、祐輔をずっと警戒しなくてはいけないのだ。
結論からいうと、雪姫とイタすためには祐輔は邪魔。
今までは浅井朝倉の人間だったから手を出せなかったが、国主が出奔したと言ったのだ。
祐輔は世間的に浅井朝倉と『全く関係のない』人間となったのだから。
サクっと殺るか。
ランスの出した結論は単純明快極まりないものだった。
捜索を願い出た五十六の手前、祐輔を害してもよいとは言えない。
一応の名目として捜索のため傷つけるなと命じてある。織田にいればすぐに見つかるに違いない。
そして見つかった場合はランスの標的を外すように命じて素直に応じれば良し。もし仮に断られてもそのまま解放すればいい。
一度織田の城まで連れて来れば、正確な居場所を把握できるのだから。
もし彼が織田の城から帰る途中で不幸な――偶然、不幸な事故で死んだとしてもランスには関係ない。
この時代不幸な事故なんてものは簡単に起こるものなのだから。
何気に死亡フラグを回避している祐輔、流石である。
重要な所を見逃して本当に手配されていると勘違いした事は結果的に祐輔を救った。
「路銀がピンチ。仕方がない、この脇差を質にいれるか。
俺逃げるだけだし、使いこなせないし」
なんか一郎様がどこぞの家の由緒正しい脇差とか言ってた気がするな~。
自分がランスに狙われているとは露とも知れず、祐輔は空に浮かんだ空想の一郎に断りを入れて脇差を質に入れようと決める。
高く売れればいいなぁとのほほんとしながら、少し種子島の市場へと向かう事にした。
ちなみにこれは全然関係ない事だが、結構高値で売れたらしい。
おまけ
予告編再掲載
―――――舞台の幕が開ける
『フハッ、フハハハハハハハハ!!!』
――――復活する魔人
――――彼の下に集うは魔人の使徒
『やれやれ…孵ったのはまだ俺だけか。これから忙しくなるねぇ』
――――闇は人知れず蔓延っていく
『これが私の力…早雲の力になれる!』
――――紙の上に落ちた一滴の墨汁のように
――――誰にも気づかれぬまま
『ぐぬぬぬぬ、生意気な奴め。まだリーザスからの援軍はこないのか!?』
『ランス様…手紙出したの三日前なんですけど』
『俺様が来いといったら、三日でも長すぎるくらいだ』
――――英雄は己の道を突き進む
――――腹の中で邪悪が育っているとも知らずに
『どうしてッ…どうしてですか、兄上!!』
――――加速する舞台
――――賽は既に投げられたのだから
『おうおう、やれば出来るじゃねぇか! そのはんばぁぐを後200個な!』
『ん~っとね…テヘッ☆ しびれ薬と致死薬間違えちゃった☆』
『てめぇも呪い憑きなら、わかるだろ。俺達はこんな糞みてぇな場所から這い上がる。
施しは受けねぇ。自分たちの手で上がり詰めてやるさ』
『主人〈マスター〉…? その命令は理解できない………』
『ククッ、何も戸惑う事はない。人生には酒と戦、後は上手い飯があればそれで充分。
さぁ行くぞ祐輔!! 血を啜り、骨を砕き、戦に酔いしれようではないか!!』
『な、なんでこれが宇宙船だってわかるんですかー!?』
『は~…拾ってくれて本当に助かったね、美樹ちゃん』
『そうだねっ♪』
――――新しい出会い
――――そして再会
『…………本当に……いい、度胸……あまり……私を……嘗めない……で……』
『祐輔さん。僕に何も言わずに放浪の旅に出るとはどういった了見ですか!!』
『その、急な話ですが祐輔殿。祐輔殿は山本家に婿に来るきはありませんか?』
――――再び巡りあった愛しい人
『やっと……やっと、会えました』
――――JAPANを震撼させる魔軍の出現
――――大きな波が戦国乱世を覆い潰す
『って、おいいいぃぃぃぃィィィィィイイイイ!?
お前狒々だろ! 狒々に決まってる! 狒々に違いない!!!
やっべぇよ! もう俺半分くらい狒々なんじゃね!?』
――――演じるは絡繰人形〈マリオネット〉
――――道化は拒絶する。悲劇を、惨劇を、BADENDを
『俺は認めない……欲しけりゃくれてやる!!!!!
だから俺の言う事を聞きやがれぇぇぇぇぇええええええええええ!!!』
――――筋書きの無い演劇の開幕
――――デウス・エキス・マキナは動かない
――――万物の主はただ嘲笑うのみ
Next Episode “Je pense,donc je suis”
……………coming soon