救急車の中(この辺の展開はアニメ版を参考にしております。)
あかり「誰なの、あなた?」
ヒカル「俺はヒカルだよ。」
あかり「ヒカル!?嘘でしょう。」
ヒカル「嘘じゃねえよ。正真正銘の進藤ヒカルだぜ。」
あかり「ヒカルは背が低いし、第一そんなに格好良くないわ。
あたしを騙す気ね?」
ヒカル「あのなあ、俺は5年後の未来からやって来たヒカルなの。
5年も経てば背が伸びるし、格好だってよくなるだろ?」
あかり「へえー、ずっと小さいままかもって思ってたから安心したわ。
でもそれなら、どうして未来から戻ったりしたの?目的は何?
もしかして、あたしとやり直すためとか。」
ヒカルは、向きになって否定した。「んなわけねえだろ!」
あかり「何よ。判るように説明してよ。」
ヒカル「それが、どうして戻って来ちまったのか、俺にもさっぱり
判らねえんだ。でも、きっと囲碁と関係があるんだ。」
あかり「えーっ、囲碁と関係!?じゃあ、もしかして、お蔵の碁盤、
とうとう売っちゃったのね?それで・・・タタリに遭った?」
ヒカル「タタリぃ・・・!?それ有り得るかも?」
あかり「ねえ、未来のヒカルってさ、死んじゃったの?」
ヒカル「死んでねえよ!国際試合で碁を打ってたんだ、俺が大将で。」
あかり「ヒカルが囲碁?国際試合で大将!?」
ヒカル「そうだよ、俺、中学生で囲碁のプロになったんだ。」
あかり「へー、囲碁のプロにねえ?そういえば、平八じーちゃんは
昔囲碁が強かったって聞いたことがあるわ。ヒカルにも
素質があったのね。」
ヒカル「すごいだろう。」
あかり「でもさ、碁を打ってて、急に過去に戻って来ちゃったから、
ヒカルが神隠しに遭ったって、未来の世界じゃ大騒ぎに
なってるんじゃないかしら?」
ヒカル「俺、心だけ過去に戻ってきちゃったみたいなんだ。」
あかり「えーっ、心だけ。」
ヒカル「未来の世界から魂だけ抜け出してきて、お前に取り憑いた
みたいなんだ。」
あかり「ちょっと待ってよ。どういうこと?」
ヒカル「俺が元の世界に帰るまで、お前の心の中にちょこっと
住まわせて、あかり、お願い。」
ヒカルは両手を合わせて、あかりを拝んだ。
あかり「冗談じゃないわ!何がちょこっとよ。あたしが、お風呂
入ったり着替えしたりするときは、どうすんのよ!?
ちゃんとあたしから離れてるんでしょうね?」
「無理!」ヒカルは即答した。
あかり「きゃーっ!エッチ・痴漢・変態・信じられないわ!!」
ヒカル「そんなこと言ったって、俺たち海水浴に行って、帰りに
一緒のお風呂入って、体の洗いっこしてたじゃねえか?」
あかりは顔を赤らめた。「それ、一体いくつの時の話よ。」
ヒカル「心配いらねえって。俺がお前のことちゃんと責任とって、
お嫁にもらってやるからさ。」
「えーっ、それ本気なの?」あかりは嬉しそうだ。
ヒカル「本気さ。」
あかり「未来に戻ったら、ちゃんと向こうのあたしにプロポーズ
するの。約束よ。」
ヒカル「ああ、約束する。俺がタイトル取れたらな。」
あかり「それじゃあ、いつのことになるのか、判らないじゃない!」
ヒカル「馬鹿にすんなよ!俺は『塔矢アキラのライバル』って
言われてんだぜ。」
あかり「塔矢アキラ?誰それ?」
ヒカル「塔矢名人の息子、中1でプロになったんだ。新人なのに
負けなしで26連勝の新記録を作ったんだぜ。
本因坊リーグに入ったりさ。」
あかり「ふーん、よく判らないけど、強そうね。どんな人?」
ヒカル「指が長くて瞳がきれいで、ちょっと王子様みたいな感じかな。
髪型はおかっぱなんだ。」
あかり「おかっぱで王子様なの?何か変な感じ。」
ヒカル「変じゃねえよ。はまり過ぎっていうか、あいつ似合うし。」
あかり「わー面白そう。あたしも一度見てみたいな。」
ヒカル「いつも駅前の碁会所にいるんだ。いけば会えるぜ。」
あかり「あたしが元気になったら連れてって。ヒカルがいつまで
こっちにいるか判らないんだし。」
ヒカル「ああ、いいぜ。明日さっそく連れてってやるよ。」