という訳でアースラ、トレーニングルーム。秘密のお話なので結界張ってもらってます。「でだ、ユーノ」「うん」「お前には無限書庫っていう……まぁなんて言うか世界の知識がもりもり詰まったような所に行って欲しいわけだよ」「ふんふん。まぁ、あそこなら手に入らない知識はないって言われてるね」ああ、そりゃ知ってますよね。“知識探求の為ならボクは何でも利用するよ”って前にも言ってたし。何でもユーノにはやりたい事があるらしい。一回だけ教えてって言ったけど言い難そうだったからそれ以来聞いてない。無理して聞くようなことでも無いだろうし。「そう。その手に入らない知識はないと言われる所に君には行って欲しいわけだよ」「それはどうして? 君はどう考えても前線メンバーにしかなれないんだし、バラバラになっちゃうじゃないか」「闇の書、又は夜天の書についての情報が欲しい」「っや、闇の書? 確か11年前に相当な事故を起こしたって聞いたことあるけど……その闇の書だよね?」「うん。その闇の書」しかしユーノは何でも知ってるな。ミッドの人たちにとったら有名なのかな? 俺全然聞いたこと無いんだけど。てかロストロギアのことなんだから聞いたこと無くて当たり前だと思うんだけどな。ユーノは一体何処で情報を得てるのでしょうか。……スクライア関係かな?「なんで急に闇の書の情報が欲しいなんて言い出すのさ。 ……もしかして、欲しいの?」「いるかあんなモン」大体闇の書って主を選ぶんだよね?へへ、俺のトコに来なかった時点で使用者の資格無しでゲス。「“あんなモン”。君、闇の書の事知ってるんだね」「おう、今はお前よりも詳しい自信がある。 けどね、俺が探してるのはそんなどうでもいい情報じゃない。欲しいのは闇の書の、その根底に関わる部分なんだ。設計図とか、プログラムとか、封印の仕方とか、後は、う~ん……以前の主の事とか、かな」「……夜天の書っていうのは?」「闇の書のホントの名前。今は狂ってるから闇の書」「ん……なるほど……」そしてユーノは口元に手をやり、深く考え込んだ。きっと脳内は酷い事になってるんじゃないだろうか。もう色んな情報が入り乱れてばりばりばり~って感じ。ユーノ絶対コナン君よりすごいからね。デッドライン・ブルーくらいかな。ちょっと名前呼んでみるけど反応無し。ユーノが俺の事シカトするとかありえないから聞こえて無いんだろう。もしも~し。ユーノ? ユーノく~ん?「……君は闇の書の所有者を知ってる。その所有者に何らかの不都合がある。助けたいってこと。フェイトちゃんの拘束を軽くする事と所有者の不都合解消が両立しない。両立させたいけど、出来ない。出来ない? 管理局に入るから? 違う。所有者の所に行きたいけど、行けない。管理局に入る。入る? 入れられる? 行かせたくないのか。闇の書。ボク。だから無限書庫か。でも管理局は、闇の書を封印したい。永久封印したいけど、出来なかった。11年前。そう、事故があって。だから……ギル・グレアム? ああそうか。クライドだったかな、そういうこと? ハラオウンか。なるほどね、そういうことか。ディフェクトらしい、人間らしい悩みだ。地球か。盲点、だったのかな? だから局員には気がつかなかった? 探知の方法が、確立している? 知っているのか。封印。させたくないんだね。何故? 知っている人は、助けたいから。好きだから。フェイトちゃんと、所有者。時間は、あんまり無いのかな? そう、なんだったか、リーゼ、ロッテ? アリア? そうだ、英雄みたいな扱いされてるからな。皆、気がつかないわけか。……なるほど、なるほど、把握」「……ユ、ユーノさ~ん?」ひぃっ、初めて見るぞ、こんなユーノ。き、気持ち悪……。いや、可愛いよ、仕草とかは。だから余計に……。「ディフェクト」「は、はいっ」「邪魔は管理局。じゃなくて、ギル・グレアムだ。……だよね?」「……」「あれ、違った? 君が知っていることが前提なんだけどな……?」「……よし、行くぞユーノ」「あ、ちょっと待ってよ。合ってるの? 合ってないの?」「もう行こうぜ、ユーノ」「だから合ってるでしょ、ボクの答え」「……超、超、大、大、大っ正解だよこんちくしょう! これだから天才って奴はっ! せっかく上から目線で教えてやろうと思ってたのに!!」「あは、それでも君はボクに頼ってくるんだもんね。ホントは最初から考えてたでしょ?」「お前最高だ!」「うふふ、でしょう?」『夫婦か・貴様ら』02/レット・アス・ゴー「まさか君まで局に入ってくれるとはね」グレアムは内心の大笑いを止め、静かに言った。考えさせてくれと言って出て行った少年はその次の日、つまり今日に答を出してきた。管理局に入るというのだ。一つ大きな“おまけ”まで付けて。ユーノ・スクライア。出来すぎた脳。有り余る才能。魔法技術。どれをとっても一流を凌駕していた。学生時代から有名人だったのだ、ユーノは。ディフェクトを含め、有望株は何名か居たが、その中でもピカイチの能力。派手さは無いが、堅実で確実な物が多い魔法といい、冷静に取捨選択を出来る性格といい、まさしく完璧だった。性格に難はあるが、優れた才能を持つ人材を多く輩出する学校。その中でもグレアムはユーノを一番に買っていた。部下をスカウトに送ったのも一度や二度ではない。しかし暖簾に腕押し。ユーノは一向に首を縦に振らなかった。どんな条件を出そうと、どんなに高額な金を出そうと(ユーノにはそれほどの価値がある)。そんなユーノがディフェクトと一緒に来た。鴨が葱を背負ってきた所の話ではない。背負ってきたのは金銀財宝、宝の山だ。それはもちろんグレアムの計算で、ディフェクトとユーノの関係を見ればもしかしたら、という思いがあった。確実とはいい難いが、学生時代の調書と、クロノからの記録。照らし合わせてみれば、二人はチームだったのだ。片方を引き抜けばもう片方。安易な考えだが、ユーノが来てくれればラッキー程度にしか考えていなかったグレアムにとっては重畳。自然に笑みが浮かび、しかしそれは笑顔のままに続ける。「それで、入局試験はいつにするかね?」「別にいつでも―――」「ちょっと黙ってて、ディフェクト」「何か、質問でもあるのかな?」「ええ、いくつか聞きたいことが」笑顔のままだった表情を若干引き締めて、グレアムは髭を撫でる。「聞こうか」「提督はフェイトちゃん……失礼。フェイト・テスタロッサの裁判を優先して受けさせることが出来ると聞いたのですが、それは結局どの程度の期間短縮になるのでしょうか?」「おお、これは失礼。君たちが局に入ってくれるので浮かれていたようだ。 確実にとは言い難いが、私の権限を全力で施行するのならおおよそ二ヶ月といった所だろう。当然の事ながら保護観察期間をはずす事は出来ないがね」「……二ヶ月。それなら俺が訓練校出て来るくらいかな」「理解しました。もう一つ、保護監察官は提督がするそうですが、その期間はどのくらいでしょうか」「それは裁判が終わらないと何とも言えんがね、恐らく三ヶ月か、もしくは半年を考えておくといい」「ん、有難う御座います。それでいい、ディフェクト?」「……そうだな。うん。結構いいんじゃない?」軽い調子でディフェクトが頷く。その様は少しだけグレアムを苛立たせた。もちろん表情には欠片も出さないが。誰のせいで面倒なことをしなければいけないと思っているのか。もちろんそれは理不尽な怒りなのだが、それでも今は闇の書の凍結に全力を注ぎたかった。ジュエルシードというロストロギアが故郷である地球に落ちたのがそもそもの始まり。それを考えると、ジュエルシードを発掘した部族で、グレアムが局に欲しかった人材のユーノ。己の生存の為に集め、その際にグレアムが隠している闇の書の主と知り合い、ユーノをグレアムの前につれてきたディフェクト。グレアムと、見えはしないが深い関係を持っており、闇の書の主で、魔導師であるディフェクトと接触した八神はやて。そして故郷の世界で起こった事件を理解し、全ての関係性を把握しているギル・グレアム。なにやら奇妙な縁があるように感じた。何か、全能の存在に操作されているような、言いようの無い不安がグレアムを襲う。まるで今が、何者かによって仕組まれたことのように感じてしまった。(うまく行き過ぎているからか……?)ディフェクト・プロダクトが釣れる事は予想の範疇。クロノから聞いた話、読ませてもらった事件の調書。どちらをとっても妹の為に行動しているのが分かる。守護騎士システムがすでに展開されている以上、地球にやるわけにはいかない。餌になるだけならいいが、彼の戦闘能力を考えると抵抗は激しいものが予想される。さらに使い魔からの報告によると闇の書の存在を示唆していたこともあるそうだ。“気付いている”可能性がある。やはり、目の届く場所に拘束せざるを得ない。実際に局員になれば世の為に大いに貢献出来る人材だとも思う。そして地球に居て欲しくなかったもう一人の人材、ユーノ・スクライア。グレアムもユーノが付いて来るのに確信はなかった。単純な嬉しさ。高町なのはと言う少女に魔法を授けたことは間違いではないだろう。グレアム自身と同じような状況だ。力のある魔導師はいくら居てもいい。現実に犯罪は増え続け、検挙率は低くなる一方。世を憂うグレアムにとっては朗報だ。しかし、その彼女が八神はやてと接触のある可能性が表面化した。流石に管理外世界の人間には影響力が及ばない。(……狂わされているというのか、この子供たちに)少しだけ俯き、視界の隅に二人を映した。「……提督?」ユーノが言い、「っはは、その目つき止めてくれよ。まるで“獲物を狙う”目だ」ディフェクトはいやらしく笑った。(―――面白いではないか)グレアムは一瞬だけ身震いし、そして大きく笑って見せた。「はっはっは、いやいや許して欲しい。局にとっては余りに魅力的な存在だ。物騒な目になっていたかね?」「なってたなってた! まるで死ぬまでこき使ってやると言わんばかりだったよぉ!」「あ、こらディフェクト、提督に向かって失礼だよっ」「なになに、気安くて心地良いものだ。 階級が上がるのも考え物でね、昨日までの同僚が部下になってしまう。久しくなかったな、先ほどのような物言いは」「本当にすみません」「んだよぉ、良いって言ってんじゃん」「ちょっと黙ってなって!」「うむ、なかなか楽しい人物だ。大事にすると良い」「は、はい。大事にしてます」「超大事にされてます」三人は笑顔を作る。それぞれの思惑を抱えながら。「私は少し急ぎすぎたようだな。 ……君たちは局に入ってくれると、そういうことで良いのかね?」「俺はそれで良いし、試験の日程も任せます。フェイトの事頼みますよ」「ボクも構いません。全力を尽くします」「そうか。では後日……そうだな、今週以内にはクロノに連絡を入れる。 試験は筆記と実技、後は魔法だ。それほど難しいものではない。君たちなら難なく突破できるだろう」「ん、了解」「それではボク達はこれで。失礼します」「ああ、時間を取らせてすまなかったね」「こっちこそ時間を取らせてスンマセン。『スカウト』なんて思ってもみなかったっスよ」「人材はいつの時代も貴重なものだ。……世界は優しいものばかりじゃないからな」「世界? あっはは、違う違う、“人は”の間違いですよ、ソレ」「……ディフェクト、行くよ。ユーノ・スクライア、失礼しました」「ディフェクト・プロダクト、失礼しました~」「……」出て行く二人を見送り数分。グレアムが一人になったところで、「お父様……」何処からともなく一匹の猫が現れた。光に包まれ、その姿を一人の女性に変える。女性はゆっくりとグレアムに腕を回した。「お父様」「……聡い子供達だった。将来、局に名を残すことになるだろう」ソファーに深く身を沈めたままグレアムは女性、己の使い魔の頭を撫でながら続ける。「故に、惜しい。アレほどの才能、潰したくは無いのだがな……」「大事の前の小事……そう考えても、やるせないのですね」「……ロッテはどうしている」「監視、継続中です」そうか、と呟き、優しく拘束してくるアリアの腕を解いた。立ち上がり窓の外を眺める。次元空間の闇が広がっているそこに光は無い。「二人が局入りしたら、そちらも頼めるか?」「もちろん」「もし、計画の邪魔になるのなら……」グレアムの、人を救いたいと言う信念は今も昔も変わらない。大を救うのに小を切り捨てるのも厭わない。だから、「妙な真似をしたのなら、殺せ」「……了解」多くの人の為に。人の為。偽。「……っふ、所詮私も偽者だということだ。人は英雄になどなれんよ、なぁクライド」その視線の先に、光は無かった。。。。。。アースラよ、私は帰ってきた!にしてもしっかしあんちくしょうめ。「あ~超こわかったぁ。あれ絶対俺たちの事殺すつもりでしょ」「……さてね、僕の『視た』感じだと、まぁ、すごい信念を持って行動してるんだろうけど……」「おろ、随分曖昧ですな。何のために俺が色々揺さぶりかけたと思ってんだよ、怖かったんだぞ。すごく。すごく」「ゴメン。けどちょっと流石にアレはねぇ。頑強すぎるし、年の功って奴かなぁ……ボクの社会経験が足りないってのもあるだろうけど、とにかく堅牢だった」だ、そうです。ユーノでも読みきれないような人物なわけですよ。ユーノ読めない=強い(いろんな意味で)みたいな構図が俺の中に出来てるからちょっとイモ引いてるんだ☆獲物を狙う目って言ったけど、実際にはもっとこう、なんて言ったらいいかな、ヤル気満々(?)みたいなね。ありゃ実際に見てみないと説明の仕様が無いよ。にしても、俺が局員か。……はっきり言ってフェイト人質みたいなもんだしね。局入りしなきゃ妹さんがどうなっても知らないよ? みたいな。こりゃ無印で はやてに会ったのは正直失敗だったね。ちっとも原作どおりに進まないし。いやいやもちろん後悔はありませんけど。まぁクロノみたく管理局に入って誇りを持って仕事しますって訳じゃないし、エース終わったらすぐ辞めますが何か?とりあえずすぐぶっ殺されない為にも局入りは良い判断だと思う。地球にいたら仮面をつけた猫達が襲ってくるだろ、間違いなく。なのはとフェイトが遅れをとるほどの実力を持ってるわけだし、戦闘になったら二体一だし。怖い。監視が一人地球にいて、もう一人がこっちに付く。ユーノも見なきゃなんないし、多少はやり易いんじゃないかな。さて、これからの俺の行動を明記しておこう。まず管理局入るだろ。んで、フェイトの拘束が短くなって、よしktkr。そんで訓練校が終わる。俺はどっかの部隊に飛ばされるはず。グレアムから。でもユーノは事務で、しかも無限書庫じゃ最高の人材だから簡単に飛ばすことは出来ないだろ。そんでユーノが色々見つけてくれる。もうすっごい情報とか見つけてくれる(期待大)。リィン死なない。エース解決。グレアム捕まる。フェイトの保護監察官がリンディ辺りに変わる。俺局辞める。はやて飯ウマー。完☆璧。「パねぇ。俺の脳みそ、パねぇ」『ええ・そうでしょう』(馬鹿的な意味で)「こんなエースのかわし方があるなんてな。改めて自分の考えが怖くなるぜ……」「なに悦に入ってるの?」「まぁ俺にも色々あんだよ」頑張ってくれたまえよ、ユーノ君。リィンが死ぬか死なないかは君の無限書庫での働きにかかっている。原作では無限書庫入って速攻で『夜天の書』っていう、管理局員すら全然知らないキーワード見つけたくらいなんだからね。二ヶ月間、お仕事しながらとは言え、二ヶ月間無限書庫に入っていられるんだし、それなりの情報は見つかるだろ。見つけてくれると、俺は信じています。まぁ、見つかんなかったらリィンが死ぬだけだ。……もちろん最善は目指すけど、そのせいで はやてがやばくなったとしたら切り捨てるよ?だって俺はまだリィンに会ったこと無いし、見たことも無い。いくらはやてが泣こうが、流石に命優先だよ。自分の関係ないトコであってる戦争で死んでいってる人達の事なんて知りません。まぁ、ちょっと違うけど、所詮俺はその程度です。偉い人には成れません。凄い人にも成れません。だって見ず知らずの人よりは大事な人を選ぶんだもん。今は大事な人達がヤバイから頑張れてるけどさ、はやてとリィンだったら、はやて。はやてとフェイトだったら選べない。リィンと仲良くなって、良い奴で、信用してくれたりしたら選べなくなる。俺って割と最低人間なのかもね。こりゃどうにかしなきゃその内嫌われちゃうよ。「……それにしても君さ、ホント何処で闇の書の情報とか、プログラムが暴走してることなんて知ったの?」「ん、もしかして疑ってる?」「全然。だって君、意味の無い嘘はあんまり付かないし、付く時も“本当の事は言わない”って感じだからさ、疑いは持ってないよ。これはボクの単純な疑問」「ん~まぁ、ちょっと未来が見えてるって言うか、そんなところかな」「……本当の事は言ってないけど、嘘じゃないってところかな?」ユーノ本当にすげぇな。普通に人間の領域超えてね?まぁだからこそ俺はユーノの事を完璧に信用できてる訳だけど。……能力有りきの関係なんて言うなよ? 人間誰しもそんなトコあります。……あるよね?「悪いね、こればっかりはお前に言っても信用してくれないと思う。リアリストにはキツイ話だよ」「君の秘密ってわけだ?」「まぁね。女に限らず、男も秘密をたくさん持ってるもんさ」「エッチな本とか?」「そうそう。システルさん家のベッドの下に28冊くらい隠してるぜ。知らない間に動いた形跡があるから多分システルさんもお世話になってるはずだ」「屋根裏にも隠してるでしょ」「そうそう」「あと学校のロッカーの中にもあった」「そうそう」「たまにコソコソ隠れてタバコ吸ってよくむせてるし」「そうそう」「こっそり自分の自転車に名前付けてるし」「そうそう」「授業中に思い出し笑いして咳で誤魔化してたし」「そうそう」「すっごい可愛い子に告白された事もあったし……断ってたけど」「そうそう」「自分の名前自分で考えたし」「そうそう」「実は花屋さんとか行きたいし」「そうそう」「たまにマンホールって何で丸いんだろうとか考えてるし」「そうそう」「授業中にトイレに行く夢見て漏らしそうになったこともあるし」「そうそう」「文化祭の時にちゃっかりボヤ騒ぎ起こしたの君だし」「そうそう」「キツネさんにテクを伝授してくれって訳わかんないこと叫んでたし」「そうそう」「脛毛が生えないこと気にしてるし」「そうそう」「自分が一番カッコよく映る角度とか鏡の前で練習してるし」「そうそう」「お母さんを感じさせる人にすぐ惚れるし」「そうそう」「アイス食べたらお腹壊すし」「そうそう」「童貞だし」「9歳ですよ?」「インテリアとかこだわりたいし」「そうそう」「毛布好きだし」「そうそう」「占いは良いときしか信じないし」「そうそう」「帽子被りたいけど似合わないし」「そうそう」「足の親指捲き爪気味だし」「そうそう」「中二だし」「!」「ピアス空けてみたいけど怖いし」「そうそう」「下着はボクサー派だし」「そうそう」「実は猫アレルギーだし」「そうそう」「鼻からスパゲティー出したことあるし」「一回だけな」「寝てるときの冷暖房嫌いだし」「そうそう」「お煎餅とか好きだし」「そうそう」「えっちだし」「男だし」「ボクが寝てる間(寝たふり)にキスしようとしたこともあったし」「そ、そうそう」「たまに学校のトイレで変なことしてたし」「そ、そう、そう……」「よくなな姉さん(システル)のパンツ下ろしてたし」「……そうそう」「ちょっと変態的な嗜好持ってるし」「っ、そうそう……」「実はボクのこと大好きだし」「当たり前じゃん」「……」「……」「……」「……」「……」「キスしてやろうか?」「―――ま、また今度……」『夫婦か・貴様らⅡ』ユーノに秘密は通用しないようです。Sore/Nante/Ero/Ge?。。。。。―――ティロリロリンッ☆ちょうど昼時。買い物の途中で。「……変な電波感じた」「どうかされましたか、主」「ん~ん。何もないよ、シグナム」「そうですか。それは安心です」静かで落ち着きのある声。背中から聞こえるソレは、先日召喚された新しい家族の一人。物静かな立ち居振る舞い、少しだけ固い頭。はやては何となくだが、『武士』だと思っている。なにが『武士』なのかは分からないが、その在り方は『武士』だと思っている。車椅子を押してくれているシグナムを振り返れば、その鋭い目つきに優しさを湛えて、「どうかされましたか、主」「んふふ~、なんかええなぁ思うて」「そうですか。私もそう思っていたところです」「ほんまかぁ?」「ええ、本当です」変わらず微笑のままのシグナムに心が軽くなるのを感じた。初めてシグナム達と会って、二ヶ月と少し。またねと残して消えたもう一人の家族、その悲しみで沈み込んでいく前に現れた守護騎士たち。シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ。全員が八神になってくれればこれ以上嬉しい事は無い。『実は君ね、魔法使いの卵なんだ』少年に言われた言葉は本当だった。本当に魔法使いになってしまった。誕生日、日付が変わって数秒でそれは起こった。物心付いた時から家にあった、装飾が綺麗な一冊の本。なんとなしに持っていた本から魔法が生まれた。脈打つように鼓動を響かせるその姿は若干醜悪だったが、光が走り、次の瞬間には四人が跪いていた。『はぁ~、ディフェっちゃんが言っとった事はほんまやったんやねぇ』と、何となくで済ませてしまったのだが、その四人は はやての守護騎士だという。守護騎士と言われても何かに命を狙われているわけでもなし、これから危険な所に赴くわけでもなし。だから家族になった。はやては主だ。主だと言うからにはやはり主らしく、四人の衣・食・住、すべてに責任を持つべきだろう。そしてはやてに新しい家族が出来たのだ。「そういや今日ヴィータとザフィーラは何してるん? 朝から見ぃひんけど?」「ヴィータなら朝早くからげぇむせんたぁ(?)に行くと張り切っていました。何でも欲しい獲物がいるとの事で、それを捕らえてくるそうです。ザフィーラもそれに。心配なのでしょう」「あんま朝早う行っても開いてへんちゃうかな……」「そうですか。それではヴィータは残念なことをしましたね」「ん~、開いてへんかったら帰って来てよさそうなモンやけど、そんなに欲しかったんやろか」「やけに張り切っていましたし、諦めきれないのでしょう。私の財布の中からお金も抜いていったようですし」「ありゃりゃ、そらアカンよ」「申し訳ありません主。お金は大事に使えと教えたのですが……。 まぁ、もともと私達は主に養ってもらっている身ですし、私のお金といっても主のもの。ヴィータが帰ったら少しきつく言っておきましょう」「ん、ん~……まぁ、あんまり金遣い荒いのもいかんけどなぁ……。お小遣い少ないかな?」正直な所他の子供がどの程度小遣いを貰っているのか分からないので一応ヴィータには月に三千円渡している。シャマルは夕食の買い物など、家族のために使うお金が多いので、お小遣い(三万)+五万円。シグナムは一応受け取るが(三万)、使ったところは見たことがない。ザフィーラなど最初から受け取らない。考えれば結構な額だが、両親の遺した『色々』と足長おじさんの援助はそれを遥に上回り、言ってしまえば八神はやてはお金持ちなのだ。人間一人が小学校に入り、大学を卒業するまでに約二千万から三千万と言われるが、八神家には子供が四人いても大学まで卒業できるであろう金額の貯蓄があり(もちろんはやてが管理しているわけではない)、その上月々の援助も。はやて自身は何度となく援助の額を少なくしてもいい、なくても大丈夫と手紙に書いているのだが、父の友人は相当に人が良い人物の様で“君が社会に出るまでは続けさせてもらう”と返信に。だから、「お小遣いのアップも考えるべきやろか……」「いえ、その必要はありません。無くなったのなら私の財布から勝手に取っていくでしょう」「でもそれやったらシグナムが使えへんよ」「私には特に趣味もなければ嗜好品を愛することもないので、あんなに沢山の額は余ってしまいます」「なんやちょっとしたアクセサリーとか、もっとお洒落したらええのになぁ」「……私にそういうのは似合いません……」何度も何度も繰り返した問答だ。シグナムは自分に女の魅力が無いと思っている。今、まさしく今の、困ったような笑みがどれほどの威力を持っているのか分かっていないのだ。ムラムラと何か、なんと言えば良いのだろうか、少しだけおかしな欲求が湧き出てくる。お洒落をさせてあげたいし、凄く美人だということもきちんと教えてあげたい。自慢、したいのだ。家族のことを。いろんな人に。シグナムとシャマルは自分のお姉ちゃん。ヴィータは妹。ザフィーラは何だろうか、ペットでは流石に怒りそうだから、お兄ちゃんか。皆に言いたい。私は今、幸せなんだぞと。はやてはそこまで考えて、自分の目に涙が溜まっていることに気が付いた。一滴、ぽたりと膝を濡らす。「……ありゃ?」「っ! 何かありましたか?」シグナムが心配そうに、焦ったように顔を覗き込んでくる。その距離が少し近すぎて、焦りが顔のシグナムがやけに間抜けに見えた。「ち、ちゃうちゃう、何でもないんよ。ちょっと幸せすぎてゆるんでもうただけや」「そう、ですか。それは……良かった。 私達は何処にも行きません。この身が消えうせ、魂だけになっても主のそばに居ましょう。だから泣かないで下さい。幸せで涙が出てしまうのなら、これから先 主の涙腺は枯れてしまいます」「あは、そやね。あんま泣いとるとヴィータ辺りに馬鹿にされてまうな」「どうでしょう。ヴィータもヴィータで少し涙腺がゆるいところがありますから」「そかなぁ、泣いてるとこ見たこと無いけど……」「ふ、そうですか? 私はたまに見かけますが。主と同じ理由で泣いている所を」「……それは、ええことやね」「そうでしょう。とても、良いことです」くすくすと二人で笑いあって、そして遠くから声が聞こえた。少しだけかん高くて、聞き覚えのある声。「はぁやて~!」「噂をすれば、やね」「期待を裏切らない守護騎士です」ゲームセンターの名前が入った大きな袋をぶんぶん振りながら走ってくるヴィータを見て、本当の幸せを実感した。紅蓮の髪の毛を風に揺らし、太陽のような笑顔がヴィータにはあった。「いっぱい取ったぞ! のろいうさぎじゃない奴も、いっぱいいっぱい!!」「そかそか、よかったなぁ」「はやてにソックリだったから前から狙ってたんだ! ホラこれ!」ヴィータが袋の中から取り出したのはファンシーな狸の人形だった。少しだけ垂れた目と、股間にある男の象徴。自分に似ているのかどうかはさておき、この時間は永遠のものだと信じて疑わないのが八神流の生き方。足の感覚。それが無くなっている場所が広がろうが何だろうが、それがどうした。八神はやては、今を生きる。だから今は、とても幸せだった。「あはぁ、ほんまに似とるなぁ……ん? ほんまに似とるかなっ!? 付いとるやん! めっちゃ付いとるやん!!」「絶対似てるって! ソックリ間違い無し!」「ヴィータ、主に失礼だぞ」「失礼とか言われるモンに似とるんか私は!」「あ、ああ、いえ、そういう訳ではなくてその……」「シグナムひでー。こんなに可愛いのに失礼とか言わねーよフツー」「そやそや、私はこんなに可愛いのに」「ち、違うんです主、私が言いたいのはっ」「あー、あかんあかん。そこは『自分で可愛いとかどんだけ自身あんねん!』とか、まぁこの辺やな」「ほらいけシグナム。烈火の将の見せ場だ」「……。……、……じ……じぃ、自分で可愛いとか、どんだけ自身あんねぇん……」「あかんな」「全然ダメだな」「いったい私をどうしたいのですか……」幸せだ。