テストですから。
繰り返される世界。
俺が見ることが出来なかった日常。
そのなんでもない日常を過ごしていた。
しかし、何事にも終わりがあり。
永遠に続くことはない。
だから自分の手で終わらせることにした。
なにもないと知っていたのに。
終わりが見たいと嘘をつき。
歩むに連れ暗くなる道は、より冷たく感じた。
だが、その終わりの向こうには
青い空が広がっていた。
「あれ?」
間抜けな声が出る。
おかしい、バゼットを説得してあの世界を終わらせたことで、
俺は消滅し、座に帰るはずだったのだが。
なんか生きてます。
それも、なんか右手になんか気色悪い、肉の皮を持って。
「どこだよ、そしてこれなんだよ」
持ち上げたものは。
「気色悪――!!」
手には繰り返される四日間で、着続けた衛宮士郎の殻。
中身が入ってないことで、ダルダルのゴム人形みたいなその物体。
「うわー、俺こんなの着てたのか、姿借りといてなんだけど」
広げてみると、嫌に少し重くてリアルだ。
そして、風でピロピロしてるのがシュール。
「捨てるか、気色悪いし。なんか持ってると呪われそうだし」
適当にポイッすると、視界にファスナーらしきものが見えたが、気にしない方向で。
「それより、此処どこだ?前の世界にしては、空気が変だし」
本当にどこだろう、座に戻った記憶もないし、俺が守護者として呼び出されることなんて
ある分けがない、自身は最弱だしアンリマユとして呼び出したとしても。
反英霊の親玉のような俺に助けられたら、世界も迷惑だろう。
「いや、マジでここどこだよ、あれか最弱過ぎて捨てられたとか、長い間帰らなかったから居場所が抹消されたとか、まあ確かに住居料金出した覚えねーけど」
そんなくだらないことを考えていると、スーと力が抜ける。
「あれ?」
力なく座り込み自分の手を見てみると、腕が透けている。
「まー当然か、別に受肉したわけでもなし、魔力の供給もない」
突然この世界に来て、突然消える。
なぜ?
さあ?帰る途中でしょんべん我慢できなくて、バス止めたんじゃない。
そんで、十分後に出発。
本当なんで俺、此処に出てきてんだ。
意味が分からん。
出てきた当初は結構元気だったのに、物の数分で消える。
説明を要求する。
「我々はー、事の発端の説明を要求するー」
世界に対して「助けてくださーい!」と叫んでやろうか。
こんな意味の分からない状況で、説明がないなんて。
夜に気になって眠れなくなったらどうすんだ。
此処に来てした事といえば、あの膨れていない士郎をポイしただけ。
地球を汚すなってことか、しょうがないな拾ってやるから。
ちゃんと説明を。
「・・・あれー」
やる気のない声が漏れる。
なんで、この世界に留まれるのかなー、消えそうだから適当にした善行に神がサービスしたのか。
良いのか神、暇なのか。
「しょうがねー、持ってくかとりあえず説明有るまで」
アンリマユは士郎の皮を手に入れた。
この装備は呪われている。
「そうなったらやだなーー」
留まっていても、しょうがないので適当に歩き出す。
地平線が見える荒野。
その逆には町。
荒野に繰り出すには、やる気が足りないので町の方に向かって。
てくてく歩くと、ズリズリ音が続く。
士郎(仮)は擦り切れ寸前で俺に引きづられていた。
面倒くさそうに、歩く姿は人の皮を持ってることも手伝って異様だ。
「疲れる。なんでこんなに疲れるの早いんだ。しかも気づいたんだけど口調が前のままだし」
殻をまだ持ってるから、それに伴い性格が抜け切ってないのか。
それなら、体力も付いてきて欲しい。
「はーどうすっかなー、これ着れば体力戻るかもしれんが」
ぼやきながらの歩行。
やる気のない気持ちが、さらに歩みを遅くする。
でもこれ気持ち悪いしなー、出来れば着たくない。
「俺は絶対着ないぞ、これでも過去の人間だし現代人より体力あるだろうし」
歩き出し五分。
「ア、 足がだるい」
十分。
「・・これくらい、なんとも」
十五分。
「・・・・・・・・」
十六分。
「考えてみたら、俺そんなに歩いた記憶ないな」
現代人の体力に負けた俺は、士郎スーツを着ることにした。
肉の感触がキモイ。
着てみた感想は後ろのチャックが最後まで上がらねー。
「あれ?何かきた」
この世界の神。
鯨の形をしたその神は、最弱な英霊に脅威を感じることもなく。
子供がおもちゃで遊ぶように、世界を見ていた。
アンリマユ、魔法の国ゼス近くに出現。
あまりに人間過ぎて、神にスルー。