テストなんだぜ。
お腹が痛いのはカロのせいといったら。
すごい顔された。
その後に、腹痛に悶えていたが。
自分のせいで、こうなってるのは分かっているのだが。
どこかゴハンをお預けされて、困っている犬に見える。
絶対、八の字になったマユが似ていると思うのだ。
待てを。してくれなそうだけど。
〈アンリマユ〉
糞苦い。
口に未だある苦味と青臭さ。
こんなもん飲んだら返って腹壊しそうだ。
薬が苦いのは、気持ちの面でこれだけ苦ければ効くはずだと。
気持ちが身体に働きかける意味もある。
精神と肉体に綿密な関係があるということで。
ただのビタミン剤で病が回復したことさえあるしな。
このちっこいのが家に来たときは、毒見させてたのがバレたかと思ったが。
実は俺が毒殺されそうになってたらしい。
ご近所付き合いがうまくいってると思っていたが。
やはり、きちんと挨拶周りしないと、
新参者の風当たりが悪いらしいな。
「で、俺を毒殺しようとしたお前が、何しにきたんだ」
「あの、あのね」
「弱ってるからって、勝てると思ってるんじゃねえーだろうな」
「えーとね」
「なめんなよ、こちとら人間と戦って負けたことないぞ、偶にしか」
その後、一方的な愚痴タイム。
「・・うーー」
「というか、あれはもう人間じゃないから除外しても良いと思うし」
人間凶器、赤い悪魔、黒桜。
人に付いていい称号じゃない。
「すん・・」
「兎に角、用がすんだら俺の家からさっさと出てけよ」
「誰が俺の家じゃーーー!!」
少女の前に甲虫の外皮の盾が出てきて、こちらに怒鳴りだす。
トーテムポール模様のようなそれは、
じーさんぽい口調で喋りだしてきた。
「聞いておれば言いたい放題、勝手にこの子の家に着いた分際で、よくもそのように言えるもんじゃ」
「うっわ、なんだこれ」
口もないのに喋る爺盾。
頭からにゅーとでる、ムシ。
腕に出るトゲトゲ。
人の肉体にあるはずのない器官。
異様なその姿は自分たちに近いからこその怖さがある。
人は自分と違う物に恐怖し、それを自分から遠ざける。
未知なものに対する情などあるはずもない。
原種的なものだからこそ、
傍目からみたこの光景は、より心に深く刻まれ恐怖に彩られるだろう。
ムシ使いという、昔から伝えられし異形の名とともに。
まあ、それは良いとして、頭から出てるあの虫。
卑猥だと思うのだがどうだろう。
触手なんだろうか?
チンコ蟲の一種だな。
勝手に認定していると、これまた勝手に悲壮感に包まれている少女が変な顔をしていた。
「あの、薬が効いてくればお腹も治るから、じゃあね」
頭で変なこと考えているうちに、出て行こうとする少女。
謝罪だけで済まそうとするなんて。
「おい待て、卑猥少女」
「?」
「お前な薬くれたくらいで、全部解決したみたいに出てくなよ」
なぜか、自分の後ろを探す動作をしてるのは無視して。
「そう簡単には帰らせねーよ。
悪いと思ってるなら、菓子折りと慰謝料も用意するべきだろ」
少女だけど、18歳。
二つとも用意できないなら、身体で払え。
「もしかして、カロに言ってるの?」
「お前意外に誰がいんだよ」
そんな、ぶっといの持ってていまさら女の子しても無駄だ。
いや、実は出て行ってもらったほうが良かったか?
受けはやってないぞ俺。
〈カロリア〉
「うっわ、なんだこれ」
その言葉は拒絶に聞こえて、
怖かった。
自分達の習慣は、外からは異様に映る。
自分の普通をすることで、他者からは怯えられる。
その、怯えからムシ使いの虐殺が始まったのだから。
自分に対する拒絶は何時も心に寂しさが襲う。
やはり、自分は受け入れられないと思ってしまう。
早く出てこうとすると、後ろから卑猥少女と呼ばれた気がした。
卑猥。
それはえっちだということだ。
そんな人、他に居たっけ?
その後三十分に亘る口論。
私だったらしい、カロはそんなことないといったのだが。
この触手!うたまろ!後ろは絶対守りとうすと話を聞いてくれない。
そして、卑猥扱いのアゲハはへにょっとしていて、二人とも私同様掛ける言葉がない。
「この野郎俺を視犯し終わって、ぐったりしてやがる」
ますますへなへな。
可哀想だからよしよしすると、少し元気になった。
「やっぱり、卑猥だ!」
喧嘩になった。
グダグダになりながら最終的には日を改めて謝れだって。
話の中に家に関する話も合ったが、
それはそれ、これはこれだそうだ。
一度、話し合うために日時を言うと。
私の家の場所を聞いてきた。
自分の居場所ばかり分ってると卑怯だそうだ。
皆、怒鳴りすぎて考える気力もなく答えると。
今の家の場所を教えて。
バイバイする。
アンリマユと名乗ったその人は。
変な人だ。
話してる内容から、ムシ使いに対する嫌悪はないようだが。
卑猥、えっち、等。
ムシ使いに対する変な認識がある。
チンコ蟲なんてそんなのあるわけないし。
養子が黒くなるとか。
長男がヘタレとか。
爺にヘルパー付けとけなどなど。
変なことばかり言ってくる。だから変な人だ。
話していると、総ての物事を認めているようにも感じるし。
総ての物に喧嘩売ってるようにも見える。
人との久しぶりの会話。
それも拒絶ではなく、自分をそのままに認識してくれる
その人は。
やっぱり、変な人なんだと思う。