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No.484の一覧
[0] あの素晴らしい日々をもう一度(セガサターン版ときめきメモリアル~forever with you~)【逆行】[牙草 流神](2011/02/16 15:02)
[1] Re:あの素晴らしい日々をもう一度 第二幕[流神](2006/03/20 00:38)
[2] Re[2]:あの素晴らしい日々をもう一度 第三幕[流神](2011/04/14 13:17)
[3] Re[3]:あの素晴らしい日々をもう一度 第四幕[流神](2006/03/19 16:44)
[4] Re[4]:あの素晴らしい日々をもう一度 第五幕[流神](2006/03/19 16:48)
[5] Re[5]:あの素晴らしい日々をもう一度 第六幕[流神](2006/03/19 16:51)
[6] Re[6]:あの素晴らしい日々をもう一度 第七幕[流神](2006/03/19 16:56)
[7] Re[7]:あの素晴らしい日々をもう一度 第八幕[流神](2006/03/19 17:00)
[8] Re[8]:あの素晴らしい日々をもう一度 第九幕[流神](2006/03/20 00:45)
[9] Re[9]:あの素晴らしい日々をもう一度 第十幕[流神](2006/03/19 17:10)
[10] Re[10]:あの素晴らしい日々をもう一度 第十一幕[流神](2006/03/19 18:12)
[11] Re[11]:あの素晴らしい日々をもう一度 第十二幕[流神](2006/03/19 18:26)
[12] Re[12]:あの素晴らしい日々をもう一度 第十三幕[流神](2006/03/19 18:33)
[13] Re[13]:あの素晴らしい日々をもう一度 第十四幕[流神](2006/03/19 18:41)
[14] Re[14]:あの素晴らしい日々をもう一度 第十五幕[流神](2006/03/08 10:41)
[15] Re[15]:あの素晴らしい日々をもう一度 第十六幕[流神](2007/07/22 02:21)
[16] Re[16]:あの素晴らしい日々をもう一度 第十七幕[牙草 流神](2011/02/16 15:03)
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[484] Re[14]:あの素晴らしい日々をもう一度 第十五幕
Name: 流神 前を表示する / 次を表示する
Date: 2006/03/08 10:41
バスケットボールがゴールリングに当たることなくその間をくぐり抜ける。歓声が上がるのと審判の笛が鳴り響くのとどちらが先だったろうか。
ボールを放った、バスケ部のユニフォームを着た少年が小さくガッツポーズを取る。対してディフェンス側だった、ジャージに身を包んだ少年は膝に手を付き、息を整えている。

(公…)

少女は肩を大きく上下させる背中を見つめながら、その名を口に出すことなく呟く。
残りは10秒を切っている。得点は7-8。今の一投によってとうとう逆転されてしまった。いや、ここまでよく持たせたと言うべきなのだろうか。
試合開始後半分を経過し、公が3ポイントを決めた辺りから戦況は一変する。得点の上では圧倒的優位を保っていた公だったが、その動きが目に見えて悪くなってきたのだ。それでも追加点こそ取れないものの、何とか攻撃を防ぎきり相手を抑えてきた公だったが、さらに時間が経過し試合も終盤に移って来た時点でとうとう点を与えてしまう。そこからは雪崩を打つように得点を許してしまい…今に至る。

「もう…無理だよ」
「早乙女君…ッ!」

彼女の横に立って観戦していた好雄の声に抗議の色を示す。しかし好雄はそれを受け入れる事を是としなかった。

「俺にだって、いやバスケ初心者の俺だから余計に分かるのかな? ここから公の逆転だなんて無理だ。どう見ても限界だよ、アイツは」

言葉に詰まる。そんな事を言われずとも彼女にも分かっていた事だ。ただ言葉に出す事は憚られた事実を好雄は口にしたに過ぎない。それに彼とて望んでそんな事を言った訳ではない事は、彼の握り締めた右手そしてその中にある半券を見れば明らかだった。
だが…彼女には、長く彼の幼馴染をやってきた彼女にだけは確かにブランクはあるし、しかもそのブランクは彼女が思っているよりも『3年』長いのだが分かる事がある。

でも公は、まだ、諦めてない」

そう、公の瞳は諦めた者のそれではなかった。その眼差しは前を、相手とそしてゴールを見据えており、このままで終わらない事を彼女に信じさせてくれた。ていうか普通、前髪に隠れて目なんて見えないし。

それでも

「残り5秒ッ!」

彼女、藤崎 詩織は

残り時間を告げる審判の声に弾かれたように、それまでお互いの出方を窺って静かに対峙していた二人が一斉に動き出す。

自らの立場を忘れて、彼女の幼馴染の名を呼ばずには居られなかった。

「公ッ!」


あの素晴らしい日々をもう一度


第十五幕 彼の本気




目の前に立つ公のシュートコースを巧みに防ぎながら、彼は今の状況に満足しつつ、同時に不満も抱いていた。
3ポイントを決められた直後から、彼は公を強敵として認識し、もう一切手を抜かない事を誓った彼のプライドに賭けて。
そして明らかに自分より体力的に劣っているという点に着目し、残り時間の半分を使って公を引っ張り回して運動量を増やし、一層体力の消耗を狙う。そしてその後に一気に得点の挽回を狙ったのだ。
その作戦は功を奏し、残り10秒の時点で逆転に成功、後はこの公の攻撃を凌ぎきれば彼の勝利である。出来得るならばここで公の攻撃を阻止し、再度攻撃権を得て駄目押しのもう1ゴールを決めたい所であったが…

(いや、駄目だ)

その考えは危険だ。無理にボールを奪いに行くと、どうしても隙が生じてしまう。いくら体力的に消耗しているとは言え、目の前の男主人 公を甘く見てはいけない。それだけの警戒を抱かせるには十分な相手だ。
前半の3ポイントまでの流れも然ることながら、その後にも見るものが見ればはっと(・・・)させられるようなプレイが各所に見られた。あのまま油断…いや、奢ったままでいたならばもっとヤバい状況に追い込まれていたに違いない。ここは守りに徹して、時間一杯逃げ切ることだけを考えるべきだ。
理性的にはそんな考えに納得しているが、感情面ではそうはいかない。「こんなヤツに」「どうして俺が」そんな思いがあるのも事実だ。だがそれらも理性が押し込めており、残り時間はこのまま時間稼ぎに徹するつもりだった。
残り時間を告げる女子部のキャプテンの声と同時に公が動き出すのを見、その動きを妨害する為に動き出した瞬間までその考えは変わらなかった。
彼女の声を、聞くまでは。

「公ッ!」

多数の歓声の中から、その声を聞いて、その声の主に思い至り、その声の内容を理解し、そして彼女を視界の隅に入れてしまう、その数瞬。
想い人が、自分と敵対している相手を応援するような声を聞いて、思わずそちらを見てしまった、ただそれだけの事。時間にしても1秒にも満たない間だっただろう。だが、それは致命的な隙だった。

そして、風が吹いた。

自分の横を駆け抜ける疾風に我を取り戻し、咄嗟に手を出す。公に当たったとしてもファールを取られてしまうような動作だったが、それでも構わなかった。彼の中の何かが、公をこのまま行かせてしまっては手遅れになる事を告げていた。
しかし結局の所、その手は何も掴むことはなく、従ってファールを取られることもなかった。
手を出す勢いのまま振り返った彼の目の前で、公の身体は高く跳躍()んでいた。




好雄はこの瞬間の事をしっかりと思い出すことが出来る。だが同時にその記憶が確かな物なのか、確証が持てない。
コード上の二人が同時に動き正確にはオフェンス側が先に抜きにかかり、それを阻もうともう一人が動いたのだろうが、その様子に彼の横に立っていた少女が声を上げ、他の歓声に掻き消えるハズのその声が届いたようにディフェンス側の少年の動きが止まり、そしてもう一人は声を上げた少女の『大切な幼馴染』はその速度を上げた。
そして次の瞬間には、何故かオフェンスの少年彼の親友の主人 公の服装がジャージからバスケ部のユニフォーム、しかも通常の部員用のものではなく公式試合のメンバー用のもの好雄もこの時は知らなかったのだが、後で調べて分かったに変わっていた。いや、実際に変わっているハズはないので錯覚だったのだろうが…。
その時、ディフェンスがまるで思い出したかのように腕を振り回してくる。それを公は背中に目が付いているかのように跳んで躱す。『跳んで』という表現は適当でないかもしれない。何故ならその跳躍は彼の身長分にも達していたから。『飛ぶ』と言っても過言ではないかもしれない。もしくは『空中を歩く』か。

「ナイアガラーーッ」

そのままの勢いでゴールへと接近、片手でボールを掴んだ公は、その手をゴールリングへと叩きつけるッ!!

「ダーンクッ!!」

公の掛け声と、壊れるのではないかと思えるほど激しくゴールの揺れる音。それがこの魔法の時間を解く合図だった。
一瞬の後、得点を告げる短いホイッスルが、続けて試合終了を告げる長い、永いホイッスルがコート内に響き渡った。




「どうして……?」

目の前で行われた一連の出来事に目を白黒させている好雄好雄だけでなく、この場の誰もが歓声を上げるのも忘れ、そのような状態であるの耳に、そのような呟きが入ってきた。
その声の主を探す…までもなく、見つかった。

「キャプテンさん?」

好雄の呼びかけにも反応する様子を見せない。どうやら先ほど得点及び試合終了の笛を吹いたのも半ば反射的なものであり、彼女も茫然自失としているようだった。
さらに彼女の独り言は続く。

「有り得ない、有り得ないわ…。あの………はウチの部活奥義。どうしてあの子が…? ウチの部員でもない、新入生でしかない、あんな子が…っ!?」

部活奥義。その単語が好雄の耳に強く残った。
確か聞いたことがある。部活を極めた者だけが使える技、それが部活奥義。門外不出の技で、部活において極めたと認められた者のみが、口伝によって部の先輩から伝えられるという幻の技。それゆえ部活をしない生徒、それどころか普通に部活をしている程度の生徒にはその存在すら知られていない技。好雄だからこそ聞き及んでいたのだ。実際には3年間合宿に参加すれば身に付くんだが…

(公、お前は一体…?)

好雄は、自分は親友やってる公の事を何も知らないのではないか、そんな思いに囚われていた。
なので、キャプテンが先ほどまでの様子とは一変して、

「欲しいわね、あの子」

とか言ってニヤリと邪な笑みを浮かべていたり、またようやく我に返った詩織が幼馴染の少年の下に駆けて行った事などに全然気付かなかった。
ちなみに、これを切っ掛けとして部活奥義を追い求めた彼が、他校の剣道部の部活奥義(モドキ)を修める事になるのは別の話。不動明王唐竹割り! の事ですな。マジで使えねぇ。




豪快なダンク所謂スラムダンクを決めた公はしばらくゴールにぶら下がっていたものの、すぐに力尽きたように落ち、今は床の上に座り込んでいた。動き回ってすぐに座り込むと痔になるぞ?
荒く、ひたすら荒く息をついている公の頭上に影が射した。のろのろと顔を上げると、そこには今まで対戦していた相手が立っていた。
酸欠と疲労でいまいちハッキリしない頭だったが、それでも『今まで』の経緯と今回のやり取りを鑑みて思わず身構える。と言っても身体は動いてくれなかったが。しかし、目の前の相手は公が思いもしなかった台詞を発した。

「完敗だよ、主人 公」
「えっ……?」

有り得ない、『今まで』ならば決して有り得なかった台詞。そんな言葉を聞いて公は混乱し、頭の中は一層ぐちゃぐちゃになる。騙されてる? 幻? そんな詮のない考えすら浮かんでくる。

「俺の、負けだ。っとに、あんな奥の手まで持ってるんだもんな。手に負えねぇよ」

そう言って、髪をかき上げる。その仕草、声には嫌味な調子はなく、どこか晴れ晴れとした印象すら受ける。

「だけど、次やれば俺が勝つ。少なくとも…お前が居れば楽しそうだ」

そう言って、座り込んでいる公に手を差し出す。
『次』? 『お前が居れば』? 公には彼が何を言っているのか分からない。それではまるで…。
考えがまとまらないまま、反射的にその手を掴もうと腕を伸ばす。その手が触れ合おうとしたその時…

「公ッ!」

その聞き覚えのある声に振り向くと、そこには彼の幼馴染が満面の笑みで立っていた…がッ!

「こぉぉうぅぅぅぅぅ!」

何を思ったか、そのお嬢さんは公に向かってダイビングをぶちかましてくれました。

「ちょ、待て、詩織ッ! ぐはっ!?」

力を使い果たして座り込んでいた公に詩織を受け止める力が残っているはずもなく、かといってすぐ後ろは床な為に衝撃を逃がせるわけでもなく、その恩恵を一身に受けることとなった。救いは詩織が軽かったことか。何Kgかって? そんな事聞く人嫌いです。

「凄い、凄いわ、公ッ! やったわッ!!」
「がはっ、ぐほっ、げへっ、ちょっ、し、詩織ッ!? またキャラが変わってる? ていうか柔らかっ!?」

何が柔らかいかは公の名誉の為に伏せておく。
ともあれ、凄まじい勢いでスイッチの入ってしまった詩織さんは回りの視線に気付くまで突っ走ったままだった事のみを記載しておく。




あと、差し出していた手をその拳から血を流しそうな程固く硬く握り締めながら

「やっぱりお前は俺の敵だッ! 主人 公っ!!」

と人知れず叫んでいた負け犬が一匹居たことも付け加えておく。


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