【この話を読まれる方に】
・5月末頃からチラ裏に投稿した作品『異世界自衛隊A.D.3199』を改題したものです。
・エルフの住む異世界に西暦3199年の自衛隊が現れますが、現代から千年以上未来なので、無茶苦茶チートです。(マクロスFが西暦2059年ですから)
・その異世界は、いわゆる中世レベルの科学力しか持たない世界で、エルフや獣人、亜人、モンスターなどが暮らしています。
・そこは平和な世界ではなく、争いごとが頻発し、弓矢や剣、槍、棍棒、銛などが武器に使われています。
・自衛隊は無敵ですが、憲法第9条があるためか、自衛隊が直接戦うことは(多分)なく、20世紀後半の自衛隊の兵器類を使ってエルフや獣人達が戦う形になります。
・このため、エルフ娘や獣人娘が、機甲師団などを率いて戦うことになるかもしれません。
・ただし、味方は少数で敵の戦力はかなり強大なため、必ず勝てるとは限りません。
・戦記というタイトルでありながら、26話現在で、本格的な戦闘はまだ行われていません。
・魔法を出すかどうかは、まだ決めかねています。
・ご都合主義な展開になることが多いと思ってください。
・シリアスな展開は、たまにありますが、あまり多くないと思います。
・自衛隊である必然性はありません。ここだけは突っ込まないでください。
・更新は頻繁ではなく、長く続かないかもしれません。
・R15表記をしました(9/21)。その方が良いとの意見がありましたので。
・「小説家になろう」にて、改訂版を投稿しています。(上記 HOME からリンクしています)
以上を読んだうえで、続きを読んでください。
【あらすじ】
エルフや獣人などが暮らしている異世界で、一つの国が滅びようとしていた。エルフの亜種であるガイアエルフの一族、ガルフ族は、ダークエルフ率いるダークナー帝国との長い戦いで疲弊し、滅びの時を迎えようとしていた。彼らの最後の希望である勇敢な娘も、戦いの中で倒れてしまう。誰もが絶望に打ちひしがれたその時、奇跡が起きた。異世界から、救いの主が現れたのだ。彼らは、西暦3199年の自衛隊であった。果たして、ガルフ族の運命はいかに?
プロローグ1
あるところに、美しくて勇敢な娘がいた。彼女は幼い頃、自分の国が敵に攻め続けられていることを知り、神様に何度も祈った。強く逞しい勇者を遣わしてください。そうすれば、私は彼の妻となって夫と共に戦い、敵を討ち滅ぼしますからと。しかし、祈りはかなえられなかった。そこで彼女は、自ら勇者になろうと決意した。剣を学び弓矢の練習をし、武器を自由自在に扱い、馬を手足のように乗りこなせるようになるまで、さほど時間はかからなかった。
そんなある日のこと、とうとう敵は彼女が住む城塞都市にまで攻めてくるようになった。既に騎馬隊に入っていた彼女は勇敢に戦い、何度も敵の攻撃を退けた。しかし兵力に勝る敵は、いくら撃退しても繰り返し攻撃を仕掛けてきたため、味方兵士の数は減る一方だった。そこで彼女は、再び神に祈った。どうか勇者を遣わして、私達を救ってくださいと。
翌日、彼女の率いる騎馬隊は優勢に戦いを進めていた。だが、それは敵の巧妙な罠だった。勢いに乗って攻め込む彼女は、いつの間にか味方から距離が離れていた。気付いた時にはもう遅かった。伏兵が彼女に次々と襲い掛かってきたのだ。
彼女は懸命に戦ったが、多勢に無勢。四方八方から攻められて、防戦一方となってしまう。身体中を斬りつけられて、耐え難い痛みが彼女を襲うが、それでも彼女は戦った。味方が近づいてくるのが見えたからだ。あともう少し凌げば、生きて帰ることが出来る、そう思って彼女は死力を尽くした。
「・・・・・様!ちくしょう!」
部下の罵声が聞こえたが、すぐに理由が分かった。激しい痛みと共に。彼女の左腕は、盾を握ったまま敵に斬りおとされてしまったのだ。
「げぼっ」
彼女は、ついに血を吐いた。これでもうおしまいだと、彼女は気付いた。しかし、味方はなおも必死になって彼女に近づいてくる。もういい、無理をするなと言いたかったが、彼女は声を出すことすらかなわなかった。
「・・・・・様!こっちです!」
いつの間にか彼女の腕を拾っていた部下が、数人の部下と共に敵を物凄い勢いで倒していき、血路を開いていく。朦朧とする意識の中で、彼女はなんとか部下についていく。しかし、敵は逃げる彼女を執拗に追いすがってきた。もう駄目だ、何度もそう思ったが、その度に部下が一人ずつ追っ手から彼女を逃がすために、我が身を犠牲にしていった。
「・・・・・様!どうか逃げ延びてください!」
そう言った部下は、馬から引きずり落とされて、棍棒で滅多打ちにされた。
「・・・・・様!私に構わず行ってください!」
そう言った部下は、何本もの槍に串刺しにされて果てた。
もういい。もうやめて欲しい。自分を助けるために、犠牲にならないで欲しい。彼女はそう言いたかったが、声を出すことすらかなわなかった。
「・・・・・様!いつか、私達の仇を討ってください!」
そう言った部下は、敵に正面から突っ込んで行き、滅多切りにされた。彼女は、悔しくて悔しくて悔しくて、とめどなく涙を流し続けた。
彼女は、最後に一人残った部下と共にどうにか城塞都市に戻った。だが、部下に声をかけようと思ったとき、彼女はようやく気付いた。斬り落とされた彼女の左腕を宝のように大事に持っていた部下は、背中に何本も剣が突き刺さっており、既に事切れていたのだ。おそらく、彼女を守り通したと思ったのだろう。部下は、笑顔のまま逝っていた。
その時彼女は、重大なことに気付いた。彼女の腹から、何本もの剣が生えていることに。そう。既に彼女も致命傷を負っていたのだ。部下達は、一体なんのために死んでいったのだろう。無駄死にではないか。彼女はやり切れずに思わず拳で足を叩くと、既にボロボロになっていた彼女の右足は、千切れて落ちてしまった。彼女は最期の瞬間まで祈った。勇者でも誰でもいい。残された者達に、愛する姉や妹に、救いの手を差し伸べて欲しいと。
「・・・・・様!」
何人もの兵士が彼女に駆け寄っていったが、彼女は既に事切れていた。彼女の死を悼んで、周りの者は大いに泣いた。彼女は気高く美しく、それでいて誰よりも勇敢に先頭に立って戦ったため、みんなから愛されていたからだ。
彼女の死によって、城塞都市の住民はいやおう無く気付いた。このままでは、1年と経たずに自分達が滅ぼされるであろうことを。だが、彼らには何ら打つ手は無かった。