<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.1072の一覧
[0] Fate/HF in paths of the smile[kuro](2007/09/10 22:41)
[1] Re:Fate/HF in paths of the smile[kuro](2007/09/12 21:23)
[2] Re[2]:Fate/HF in paths of the smile[kuro](2007/09/13 16:33)
[3] Re[3]:Fate/HF in paths of the smile[kuro](2007/09/13 16:34)
[4] Re[4]:Fate/HF in paths of the smile[kuro](2007/09/15 02:35)
[5] Re[5]:Fate/HF in paths of the smile[kuro](2007/09/17 01:15)
[6] Re[5]:Fate/HF in paths of the smile[kuro](2007/09/17 01:37)
[7] Re[6]:Fate/HF in paths of the smile[kuro](2007/09/18 14:30)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[1072] Re[4]:Fate/HF in paths of the smile
Name: kuro◆861aa015 ID:0cd0636a 前を表示する / 次を表示する
Date: 2007/09/15 02:35

・・第五話。鬼無瀬 楓の記憶。黒い影の動き。



過去。ある小学校で一人の子供以外、職員含めて全員が殺害されるという事件が起きた。
共通することは、そのどれもが無数の裂傷によっての殺害。四肢や全てのパーツがバラバラの者も少なくなかった。
助かった一人の子供が犯人なのではないか、という声が上がったが小学生にそんなことが出来るはずもない。
第一、発見当初その子供は誰かの血に濡れ、震えながら隠れていて、決して目を開けようとはしなかった。
その子供の名前を、鬼無瀬 楓という。まだ九歳の少女だった。




私の中にはわたしがいた。
本当はわたしの中に私がいたの。

私はわたしが嫌いだった。
わたしは私が好きだった。

わたしはいつも虐められていた。
私はそれを傍観し、わたしに言うのだ。

そんな奴は倒せば良い。殴って、蹴って抵抗する意思を見せるべきだ。
けどわたしはいつもめそめそしてた。わたしがみんなと違うから仕様が無いんだ、って。

私はそんなことしかしないわたしが嫌いだった。
わたしは言葉が悪くても一緒に居てくれる私が好きだった。

誰もわたしを助けてくれなかった。
それは私が言うような抵抗を見せなかったから。

成長するに伴って、わたしはそんな人達を『憎い』という感情で括り始めていたの。
私はそれに対して何も言わない。それは当然の感情だったから。

わたしはお父さんが嫌いだった。
私は母さんが嫌いだった。

お父さんは男の子が欲しかったって、わたしを男の子と同じように育てた。
母さんはそれについていつも五月蝿く言われるのだが、苦笑いを浮かべるだけだった。

ワタシ達は武術も学んだし、ある人と引き合わされて、魔術師の家だからって魔術も学んだ。
わたしは別に知りたくなかった。
私は力が欲しかった。力があればわたしも変わるのではないかと。

眼鏡は外しちゃ駄目だって言われてた。
興味本位で外そうとするたびに叱られて殴られた。

そして、学校でのこと。
わたしが打たれた拍子に、眼鏡が落ちてしまった。

瞬間。わたしの視界は赤かった。
瞬間。私の視界は紅かった。

みんな死んでしまった。
違う。殺してしまった。

助けて欲しくて走った。
そのたびにみんな死んでいく。

そして、全員殺したときにわたしは理解したんだと思うの。
私は全員殺す前から気付いていた。けれど、話したらわたしは死んでしまうだろう。

嗚呼。これはわたしがやったんだと。
共に。それは私がやったことだ。

気の弱いわたしは恐怖と罪悪感で壊れてしまった。
けれどこの身体を捨てるわけにはいかない。だから私が変わりに表に出た。

父さんは喜んだ。急にやる気を出した私に。
母さんは悲しんだ。真実を知ってしまった私に。

わたしは偶に表に出るが、それでもすぐに引っ込んでしまう。
わたしは私に迷惑をかけていると思う。だから、出たいとは思うけど。

また、人から虐められるのが恐い。
違う、人を殺してしまうのが恐い。
共に、それがバレテ、捕まるのが恐い。

一般的には二重人格と言うけれどそれとは違う。一つの体に二つの人格は正しい。
けれど、私はほとんど外に出ない。わたしがそれを拒むから。私が外に出ればわたしを虐めている人を傷付けると思ったのだろう。
だから人格は一つと考えて良い。二つあるのは思考だ。気が弱いわたしと・気の強い私。
けれどあの事件があって、わたしは外にいるのが恐くなった。そうしたら、私が代わりに出て守るからって。
偶にわたしも外に出るけど、やっぱり恐い。私は強いから平気。わたしは弱いから駄目。

そんな。弱い思考しかできないわたしが私は嫌いだ。
だから。強い思考が出来る私がわたしは羨ましい。

事件の後、お母さんが来て言ったの。
事件の後、私は初めて出る外に疲れて眠っていた。

『母さんが守るからね』って。

わたしは意味がよく分からなかった。
私はその言葉を聴けなかった。

その後、お母さんは死んでしまったの。
その後、私が表に出るようになった。

わたしが外にいると誰かを殺しちゃうから、私に代わってもらった。
私でもそれは変わらない。わたしは現実から逃げているのだ。

その後、私は父親を殺した。今まで以上の憎悪でその身を切り裂いた。
わたしはそれに何も言わなかった。こうなるのは分かっていたから。

わたしを守ってくれる私が好きだ。
私に守られるわたしが嫌いだ。

立ち向かう私が羨ましい。
愚図るわたしが鬱陶しい。

けど、私はわたし。
そうだ。わたしは私。

なのになんで違うんだろう。

それはわたしが私を拒絶するから
それは私がわたしを拒絶するから

子供は生まれた当初、必ず二つの人格を持っている。育つにつれて、片方は弱くなる。
大雑把に分ければ、否定と肯定。肯定が強い人物は優しく穏和な。否定が強い人物は厳しく冷たい。
そして、二つが中立した場合。それが二重人格となる。

だが、互いが互いを拒絶した場合は?
それは二重人格ではなく、二人の人間となる。ただ、身体は一つしかないため二重人格と間違われる。
二重人格は互いに会話できないし、記憶の共有をしない。だが、この場合は意思疎通が出来るし記憶も共有できる。
そう、あくまで『できる』のだ。それは絶対ではなく、見たほうの人格が拒絶すればもう一つの人格には残らない。

だからわたしは知っていた。事件の後、お母さんがわたしに何をしたのかを。
だから私は知らなかった。事件の後、母さんが私に何をしたのかを。

ワタシ達の家系、『鬼無瀬』は母が当主だった。父も『鬼無瀬』の血筋だが、直結はしていない。
魔術刻印を持っているは母で、父が母に勝るわけが無いのだ。なのに、父は家で態度がでかかった。理由?それは偏に母が弱かったからだ。
そして事件の後。母はわたしが表に出なくなることを予想したのだろう。そして、魔術刻印を使ってワタシ達の瞳に封印をかけた。
つまり、私が力をセーブできて、使った後に身体に問題が生じるのはこの封印のせいだった。
きっと。母は私が表に出れば人を殺すと考えたのだ。それはそうだろう。まず真っ先に父が殺され、その後はどうなるか分かったものではない。
けれど、母の封印は消えた。それは、護ると言う意思が確立したからだろう。
私はわたしに代わって表に出ることで理解したのだ。力は傷つけるものではなく、何かを護る為の物だと。
犯罪を犯すものの力は金や名誉や地位。英雄やヒーローと呼ばれるものの力は人や国を護るために。

だから、母はもう封印に必要性を感じなくなり、ワタシ達の封印は解かれ、そのお蔭でライダーを助けられた。
母は、私が弱いと思っていただけで、自分を犠牲にしてまで見知らぬ人を、そしてワタシ達を護ることができる、強い人だったのだ。

そしてわたしも。自分が傷つくことで、それは誰かを護っていたんだ。それはきっと、私だろうけど。

アリガトウ母さん。今は少し、貴女を好きになれそうだ。






「んっ・・・」

目を開ける。何か、よく分からないことを『視て』いた。
映像ではない。それは、記憶と意識の濁流。
今はすっきりとしている。今までに無いくらいだ。

「目が覚めましたか、カエデ」
「ライダー…私はどれくらい寝てた?」
「二日ほどですね。心配しましたが、元気そうで安心しました」
「そうか……状況に何か変化はあったか?」

いえ、特に何も。とライダーが応える。
部屋は変わっていないし、ライダーに怪我は無い。ランサーが追って来たということは無い様だ。
起き上がり、縮まった筋肉を伸ばす。人間、眠りは必要だが過度の睡眠は逆に体調を崩す。

「それじゃあ、久しぶりに食事でも取ろうか。ライダーも食べる?」
「いえ。私は大丈夫です。それより、カエデ」
「ん?」
「なんだか、変わりましたね?」
「そうか?きっと、私が『わたし』を好きになれたからだと思う」

首を傾げるライダーに軽く微笑み、電話を取る。取り合えず時間は昼時なので、ランチを頼み、テレビをつけた。
変わった、か。もしかして・・・

「ライダー、今の私は変だろうか?」
「いいえ。むしろ、今のほうが良いでしょう。そのほうが、本当のカエデなのでしょうから」
「そっか。じゃあそうする」

大した番組もやっておらず、取り合えずニュースを回した。
そこで報道されていたことは、今までのガス漏れによる意識不明者ではなく、行方不明。もしくは身体の一部のみが発見された人物が増えているとのこと。
まるで証拠も無く、最初の頃は現場に多量の血痕もあったが、最近はソレすらも見られず、一夜に10人ほど消えたらしい。
つまり、それは・・・

「サーヴァントか、もしくは魔術師に殺されたと考えるべきだろうな」
「そうですね。けれど、サーヴァントといは言え、血も残さずに殺せるとは思えませんが」
「これも気になるが、まずは桜だ。大聖杯…管理人に聞けば早いだろうけど、恐らくマスターになっているだろう」

冬木の管理者…たしか遠坂家だったか。あそこは何度も聖杯戦争に出てるらしいから、恐らく今回も入っているだろう。
よってそこから情報を聞き出すのは不可。

戦うことになるかもしれない……戦う?
そういえば・・・

自分が二日前に身に着けていたものも漁る。
探しているのは、子供の頃から魔力を込めてきた無銘の短剣。
あるにはあった。が、刃毀れが激しく、潰れているように歪んだ部分もある。
研いでも、使い物にならないだろう。

「はぁ…私の苦労の結晶がこれか・・・」
「どうかしましたか?」
「いや。これからの戦いに備えて武器が欲しいところだが……私の短剣でさえ刃毀れするのだから、普通の刀など一撃も持たないだろうな」

使うならば刀が良い。片手でも問題ないし、父に習ったのも刀だ。
刀か……どっかで見た気がするが・・・どこだったか。

「ライダー、傷はもう良いのか?」
「ええ。二日ほど休んでランサーの傷も治りました。戦闘にも、支障は無いでしょう。宝具も、問題ありません」
「そっか。じゃあこれからはきっとライダーに戦ってもらうしかないな……」
「構いません。それが正しい形です」

「はぁ……取り合えず、模造刀でも探しに行くか」
「わかりました。では、私は・・・」
「勿論、ついてきてもらうぞ。服、洗濯してるなら違うの貸すし」
「やはり、そうなるのですね」
「当然」

溜息をつきながらもライダーは着替え、昼食を食べている間に戻ってきた。
今までの印象からして、マスターには絶対服従かもしれない。まぁだからってどうもしないけど。

昼食後、予定通り模造刀を見に来たのだが、やはり大した物は無い。
強化(フェフュー)のルーンを刻んでも攻撃は『斬』ではなく『打』になってしまうだろう。
だからと言って、サーヴァントの攻撃を防げるか否かといえば、防げ無くはない。
そういえば、通販と言う手もあるな……が、考えてやめた。私の身分証明では買える筈も無い。

「仕方が無い。とりあず・・・」

刀身二尺(70cmほど)の刀を手に取るが、やはり碌な物ではないな。
だが、背に腹は帰られない。何かしらの目処が立つまで……師の所在を思い出すまではなんとか持たせるしかない。
手早く刀身に強化(フェフュー)のルーンを刻んで、魔力を通す。
こんなものではあまり多くの量を一度に通すと内部崩壊を始めるからそこはなんとか感じ取るしかない。

「さて。そろそろ戻るとして……ライダー」
「はい。終わりましたか?カエデ」
「ああ。それと、明日の夜は冬木を少し廻ろう。あの失踪事件も気になるものではあったから」
「わかりました」

外にいたライダーが返事をする。見張り、という役目だが、ただ人目に付きたくなかっただけだろう。
なんだかこそこそしてるし。
帰ったらもう眠る時間だな。
夕暮れの中、さらに紅い……煙草の火をつけた。

‐interlude‐

飼育箱の中の夢だ。
廃墟の巣穴。
誕生の記憶など無く。
繁栄もなく。
ルーツは原初からして不明瞭。
滅日の記憶も無い。

ひたひた散歩。
ゆらゆら頭は空っぽで、
きちきちした目的なんてうわのそら。

ドクンッ――

ぶるぶる震えてゴーゴー
からからの手足は紙風船みたいにころころ地面を転がる
ふわふわ飛ぶのは大人になってから。

ドクンッ――

ごうごう。
ごうごう。

夜の街を歩くのは何回目だろうか。そろそろ聖杯のほうも身体に馴染んできてるし。
これならもう。セイバーさんだって目じゃないなぁ。

「おい ――き  」
「あ 。… だな  ハ」

きいきい誰かが近寄ってくる。
ぞろぞろ人が寄ってくる。それは、古い記憶をよみがえらせた。

からからと笑い声。これも古い記憶を蘇らせる。
私から誘った覚えはありません。
恐くなったので帰りましょう。

ドクンッ――

「おい――なに てんだ  まえ」
「待て  ? あた――かよ こ」
「――ゃねえの? ったらしそん  歩か  って」

てくてく。てくてく。
きんきん五月蝿く響くから。
くうくう…お腹が鳴りました。

        死んじゃえ。

アアアアアアアアああああああああぁぁぁぎぁぁぁ!!!

蟲を潰すように、簡単だ。

飼育箱の。夢を見る。

ドクンッ――

‐interlude Out-


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.02751898765564