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No.9406の一覧
[0] [ランスシリーズ外伝SS集  魔物隊長編 巫女機関編[zanetta](2009/09/23 23:19)
[1] [~ランス6~][zanetta](2009/06/14 17:16)
[2] [~戦国ランス(ランス7)~][zanetta](2009/06/21 01:44)
[3] [織田家 VS 巫女機関 戦力分析 その1][zanetta](2009/10/07 22:57)
[4] [織田家 VS 巫女機関 戦力分析 その2][zanetta](2009/10/07 23:04)
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[9406] [~ランス6~]
Name: zanetta◆aeb0b303 ID:b54b8d91 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/06/14 17:16

魔王暦LP0004年。
遂に、我ら魔軍は人間領へと侵攻した。
強大にして絶大な支配者でありながら、人間の女を妻とした先代魔王ガイ。
そして、その魔王の死。
そうだ。
これこそが正しいのだ。
我ら魔物の使命は人間を駆逐し、奴隷として扱い、絶対的な支配者として君臨する事。
 
魔物の恐ろしさを知れ!
死ね、死ね!
 
人間ミナゴロシ!
人間タオセ!!
 
「ゼス」と呼ばれる王国に、雪崩れの如く進軍する我が軍。

魔物兵の集団を前に、逃げるしかない人間。

デカントやアイスデカントの怪力で潰されていく人間。

ナマリダマやオウゴンダマに殴られ、貫かれていく人間。

ストーン・ガーディアンの岩石腕にで吹き飛ばされる人間。

巨鉄ちゃんの砲撃に消滅していく人間。

そして、それらを指揮する魔物隊長に処刑されていく人間。

戦場に存在するのは「勝利」「駆逐」「支配」と言う、我が軍が負ける要素がない完全勝利決定の大戦果だけだった。
そして今、私は・・・・・・。





「宴会の準備」と言う「戦場の最後の仕事」を、酒を一滴も飲まずに終えたところです。





そこは、戦勝の宴の場である。
女の子モンスターの雷太鼓が、その名の通りの太鼓を打ち鳴らす。
ちょーちん、ちゃぷちゃぷ、ズかっぱ達がそれに合わせて踊る。
テーブルの上には、中華てんてんが作った数々の料理。
時折、まじしゃんとサワーの魔法が夜空を照らす。
出目金使いの祝砲が、それらに花を添えた。
そこは確かに、宴の場である。
今宵の宴の主賓は3名。

人間界制圧軍第3師団司令官、イスン将軍閣下
人間界制圧軍第4師団司令官、ベプチョ将軍閣下
人間界制圧軍第8師団司令官、ウィスピン将軍閣下

歴戦の猛者を思わせる風貌は、しかしこの場では多少崩れてしまうのは仕方が無い。
主に・・・

「ご、ご主人様のお好きなように、お仕置きしてくださいませ・・・・・・」
「ふおふおふお、いけないメイドさんだのー。ふおふおふお」
「あ~れ~、お許しを~」

ベプチョ将軍閣下のメイドさん苛めとか、

「うむ、良い。ヒンヤリ具合が中々素晴らしい」
「は、はあ・・・」

戸惑うフローズンに、膝枕してもらっているウィスピン将軍閣下とかであるが。
正直、変態親父臭いかもしれんが、口にしてはならない。
我が軍は、上司の気持ち1つで命が終わる事など日常茶飯事なのだ。

「うむ、お前の注いでくれた酒は、何時も美味いな」
「ハッ! お喜び頂けて光栄です」

この御二方に対して、イスン将軍閣下は己の直属の補佐官のバトルノートのお酌を受けるだけだった。
最も、ベプチョ将軍閣下とウィスピン将軍閣下の行動を見ても平然としている事に、違和感を覚える。
イスン将軍閣下にも「特殊な何か」があるのだろうか?。
魔人ケイブリス様直属の師団に属し、今は「人間界制圧軍第3師団第1後方支援連隊隊長」と言う肩書きを持つ私でも、今の所把握してはいない。



我が軍は、どう考えても圧倒的な進軍速度で「ゼス」と呼ばれる国の南半分を制圧し、北半分も8割まで制圧している。
下等生物である人間達は、逃げ惑うだけで大した抵抗は無い。
戦の前に「物資が足りん」「補給路の確保の担当は・・・」と悩んだのは考えすぎだったと認めるしかない。
どうにも、魔人ホーネット派との連戦に勝利出来なかった事が、私の目を曇らせていたようだ。



「ところでだ、ベプチョ、ウィスピン」

宴も終わりが近づいた頃、イスン将軍閣下はこの日初めての真剣な声色を出した。
ベプチョ将軍閣下とウィスピン将軍閣下は、付き合いの長さからか、その声に反応し、姿勢を正した。
そして私は、戸惑っているメイドさんとフローズンに、控え室に戻るように命じる。
イスン将軍閣下直属のバトルノートも、周囲の者達も遠ざかるように指示を出す。

「アベルト様の一件はどうなった?」

イスン将軍閣下の言葉に、ベプチョ将軍閣下が答える。

「ふおふお。ああ、噂通りで間違いない。かつて、レッドアイ様が忌々しい勇者に撃退された時の話だそうだ」

ウィスピン将軍閣下がその後の言葉を続ける。

「諜報・機密情報部隊からの情報だと、司令官のオーロラ様自らが探っていたらしい。むろん、壁の破壊と同時進行でだ」

今回編成された我が人間界制圧軍の指揮系統は、以下の通り。
まず、指揮系統のトップは魔人であられる、

人間界制圧軍本軍司令官(総司令官)、魔人四天王・プラチナドラゴンの魔人カミーラ閣下
人間界制圧軍南部方面侵攻軍司令官(第一副司令官)、ものまね魔人ジーク閣下
人間界制圧軍北部方面侵攻軍司令官(第二副司令官)、氷の魔人ラ・サイゼル閣下

の御三方である。
特に魔人カミーラ様は魔人四天王の一角。
この御方を倒せるのは、同じ魔人四天王のケイブリス様ぐらいであろう。
・・・ケッセルリンク様も強いが、死なないだけで勝負には勝てないと言う噂だ。
そして、この御三方の下に使徒の方々である、

人間界制圧軍参謀総長(総司令官補佐)、使徒七星閣下
人間界制圧軍参謀総長補佐(総司令官補佐)、使徒ラインコック閣下
人間界制圧軍諜報・機密情報部隊司令官(第一副官補佐)、使徒オーロラ閣下
人間界制圧軍特殊遊撃部隊司令官(第二副官補佐)、使徒ユキ閣下

がつく。
さらに下には下級使徒の方々である、

人間界制圧軍本軍総司令官親衛隊隊長、アウレスヒラウ閣下
人間界制圧軍本軍総司令官親衛隊副隊長、イアキユナ閣下

と言った方々が居る。
そして、これらの方々の下に第1~第10師団の魔物将軍がおられる。
なお、それぞれの指揮権は。

人間界制圧軍第1~4師団は、魔人四天王・プラチナドラゴンの魔人カミーラ閣下
人間界制圧軍第5~7師団は、ものまね魔人ジーク閣下
人間界制圧軍第8~10師団は、氷の魔人サイゼル閣下

である。
よって、第8、9、10師団は北部方面の担当に当たる。
今宵の宴は、「イタリア」と呼ばれる場所に集結していた人間軍団に対して、人間界制圧軍第3、4師団が突撃し、退路を北部からの第8師団が殲滅、勝利しての事だった。

今回の話は、ものまね魔人ジーク様の使徒オーロラ様自らが確認している一件らしい。
まあ、私には余り関係が無い話だろう。
使徒の方が増えるのならば、単純に考えて、戦力が増えると考えられる。
どのような御方かは知らないが「アベルト様」とやらは、きっと立派な方なのだろう。
我ら魔軍はこのまま、この「ゼス」と呼ばれる地帯を完全制圧し、そして、残った人間共の国家へと侵攻する。
そして、ゆくゆくは1000年以上前の大陸のように、大陸全土を魔族による統一国家に再構築する。
素晴らしい。
完璧だ。
その頃ならば、魔人ケイブリス様も、魔王様に成っておられるだろう。
うんうん、魔界の未来は明るいな!。
・・・。
・・・。
・・・。





なんて、甘く考えていた時期が、私にも有りました。





異変その1

人間界制圧軍第9、10師団が、人間の大難民集団との戦闘で、謎の爆弾が使われて9割が消滅。
第9師団の魔物将軍閣下、討死(爆死?)。
人間界制圧軍北部方面侵攻軍司令官(第二副司令官)、氷の魔人ラ・サイゼル閣下、謹慎。
第10師団の魔物将軍閣下、人間界制圧軍全軍に多大なる損害を与えた事による責任を取らされて、処刑。
第9、10師団の残存の部隊は、第8師団司令官、ウィスピン将軍閣下の指揮下へ。



人間界制圧軍北部方面侵攻軍司令官代行となられたウィスピン将軍閣下は、焦っておりました。

「いや、別に・・・元々、兵が足りなかったのだ。魔物将軍の一個師団は20000が上限。此度は魔物将軍1人に付き、兵数が10000だったからな。問題は、私が「人間界制圧軍北部方面侵攻軍司令官代行」になってしまった事で・・・・・・う~ん、訳の判らない爆弾が怖くて攻撃出来ん」





異変その2

人間界制圧軍南部方面侵攻軍司令官(第一副司令官)、ものまね魔人ジーク閣下、行方不明・・・・・・嘘、です、人間に殺されたそうです。
人間界制圧軍諜報・機密情報部隊司令官(第一副官補佐)、使徒オーロラ閣下、行方不明。

イスン将軍閣下とベプチョ将軍閣下が話し合っておられました。

「ペプチョよ、ココは我が第3師団のみ北部方面へ侵攻させて頂けるように、使徒・七星様に進言を・・・」
「ふおふおふお、ゼス首都で第7軍団が半壊したのを忘れたのか? イスンは心配しすぎだ。慌てるな慌てるな、使徒・七星様の指示を待てば良いはず」





異変その3

マジノラインの稼動を確認。(退路と補給路が無くなりました)
人間軍、各地で蜂起。
人間軍、北部より南下及び西進を開始。
人間界制圧軍本軍司令官(総司令官)、魔人四天王・プラチナドラゴンの魔人カミーラ閣下、行方不明。
人間界制圧軍参謀総長(総司令官補佐)、使徒七星閣下、行方不明。(あとで戦死を確認)
人間界制圧軍参謀総長補佐(総司令官補佐)、使徒ラインコック閣下、行方不明。(あとで戦死を確認)



「私は、私はやはり拠点防衛系なんだーーー!!!」

と、パニックなのは、ウィスピン将軍閣下。

「怯むな! 今一度残存戦力を統合して、反撃を!」

と、凄まじい怒気を振り撒くのは、イスン将軍閣下。(私の直属の上司です)

「ふおー、退却だなこれは。イスン、ウィスピン、ココは「素晴らしい未来を願っての退却」だ」

と、冷静に判断してくれたのは、ベプチョ将軍閣下。
で・・・。

「「ケイブリス様に殺されるーーー!!!」」

と、さらにパニックなられたのは、イスン将軍閣下とウィスピン将軍閣下。

そして・・・私は。

「捨てろーーー! 持ってる物は全部捨てろーーー! 何? 勿体無い!? 餓死する!? アホッ! 敗退のあとの撤退戦ってのはそう言うもんなんだよ! 風林火山の武○家が長篠の後で、戦力激減したのは、終わった後の追撃を受けたからなんだよ! ヤ○グマガジンのセン○クでも読め!」

と、声高々に叫び、逃げた。





マジノラインの未稼動区域とゼス首都の間の荒野。
何故か知らないが、都合良く未稼動の箇所があったのは幸いだった。
現在、マジノラインの未稼動区域には、人間界制圧軍第1、2師団の残党が、立て篭もり、退路を確保している。
我々人間界制圧軍第3、4、8(+9、10)師団の統合軍(と言っても、すでに指揮系統はズタズタ)は、必死にその場所目掛けて進む。
しかし・・・。

「後方で雷撃を確認!」
「7時の方角から白色破壊光線を確認! 主力の魔法使いが居る部隊だぞ!」
「機械です! 何か空に浮く棒っきれが襲ってきます!」
「警備ウォールとか言う奴だ! こっちから手を出さなければ良い! 走れ!」

最後尾が、とうとう人間共の軍勢に追いつかれたようだ。
不味い、このままでは全滅するかも。
こうなれば、後方の部隊を切るしかない。
そう、殿部隊として・・・。

「アコンカグヤよ」
「こ、これはベプチョ将軍閣下!」

何時の間にか、私の目の前に人間界制圧軍第4師団司令官のベプチョ将軍閣下が立っておられた。
接近に気がつかないとは、不覚。
はて? でもなんで私の所に・・・。

「部隊を纏めて、殿を勤めよ」

ベプチョ将軍閣下はそう仰られると、重そうな巨体を、鈍重さを感じさせない素早い動きで去っていった。

「・・・・・・へ?」

今、ナンカ、トンデモナイコトヲ、オッシャイマシタカ?。
疑問符を上げるが、最早、上司は何処にも居ない。
つまり、巡りに巡って、現場の指揮権が補給・後方支援を専門に扱う部隊の纏め役である私に回ってきたのだ。
・・・。
・・・。
・・・。
なに? 殿? 盾になれと? この状況で。

「そんな馬鹿な!」

つーか、私の肩書きは、人間界制圧軍第3師団第1後方支援連隊隊長。
人間界制圧軍第4師団司令官のベプチョ将軍閣下は管轄外である。
つまり、命令に従う義理は無い。
・・・。
・・・。
・・・。
はいはい、そうですよ。
それで、平穏無事に済む訳が無いんですよ。
魔軍は、上からの命令に逆らったら死ですよ。

「ぐぅ!」
「・・・」

我が軍は、上司の気持ち1つで命が終わる事など日常茶飯事なのだ。
やるしかない。
命令に背けば敵前逃亡。
殺される。
だが、だがである。
腹を括るにしても・・・。

「むむむむ・・・」
「・・・」

思わず考え込む。
そう、考え込む。
この私に、どうやって・・・。

「どうやってこの戦力で、殿せよと言うのだ?」
「・・・」

眼下に広がるのは、私の指揮下でかろうじて命令系統が取れている、魔素漢の群れ、兵数・約1200。

「ぱぴゅら ほろり ぱほー」
「ぱひゅー」
「ぱぴぴ ぱぱほほー」

何故、私がこんなに悩むか疑問に思う者も居るだろう。
では、以下のスペックデータ(ランスⅥ)を見て欲しい。

魔素漢
HP  2400
攻撃力    3
魔法力  380
防御力   50
魔抵力    1
回避     0


赤魔物兵
HP  6000
攻撃力 1500
魔法力    0
防御力   30
魔抵力   30
回避     0


魔物隊長
HP 15000
攻撃力 1300
魔法力    0
防御力   30
魔抵力   30
回避     0


魔物将軍
HP 20000
攻撃力 1000
魔法力  200
防御力   30
魔抵力   30
回避     0


以上。
見て頂ければ判るように、魔素漢は、魔法使いの癖に肉弾戦に強く、魔法使いの癖に魔法に弱いのだ。
・・・と言うか、「攻撃力3」とか「魔抵力1」って何だ?。
で、追撃してくる「ゼス」の人間共は「魔法大国」とやらの名に恥じない攻撃魔法を容赦無く頂ける。
つまり、魔素漢では防ぎ切れない。
もしこれが、魔法力が低く肉弾戦のみの軍団(←ヘルマン帝国とか)とかなら、むしろ反撃のチャンスだ。
物理防御力高いし。
しかし、現実的には、そんな都合の良い敵軍は居ない。(←この男はヘルマン帝国の戦力を知りません)

「うむむ!」
「・・・」

しかし、見回しても、他に統制が取れてそうな兵が居ない。
デカントの横に緑魔物兵が居るかと思えば、クロメの横にナマリダマが居る。
皆、逃げる事しか頭に無い。
なにより、魔物隊長とは言え、補給・後方支援を専門に扱う魔物隊長の命令に素直に従うとは思えない。

「名誉の死に場所にもならんぞ」
「・・・」

と言うか、死にたくない。
こんな訳の判らん状況で、訳も判らなく死んでいきたくは無い。

「ん?」
「・・・」

そこで、視線に気がついた。

「そろそろ、よろしくて?」
「は!?」

そこに居たのは、イスン将軍閣下直属の補佐官、バトルノートだった。
・・・だから、何で私の所に来るのだろうか?。

「援軍なら、あるわ」
「はい?」

何か今、とんでもない事を言われなかったか?。

「マジノラインに配備されていた、ストーン・ガーディアン、巨鉄ちゃんを前線に回せるように手配したわ」
「何と!?」

ストーン・ガーディアン、巨鉄ちゃん。
我が魔軍も最高峰の戦力部隊。
では、以下のスペックデータ(ランスⅥ)を見て欲しい。


ストーン・ガーディアン
HP 10000
攻撃力 3000
魔法力 3000
防御力   60
魔抵力   60
回避     0

巨鉄ちゃん
HP  8200
攻撃力 3700
魔法力    5
防御力   70
魔抵力   30
回避     0


腹が立つが、スペック的にも魔物隊長の私より上である。
それが、援軍として来る!?。

「本当か!? 本当なのか!? それなら下手すれば巻き返しも夢ではないぞ!」

私の喜色が混じった言葉に、バトルノートは・・・。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ええ、その通り。後は私の指揮が加われば、問題ないわ」
「・・・」

凄まじい沈黙の後で、頷かれた。
そうか、よく判った。
最早、どう足掻いても負けなのだ。
数の暴力。
軍としての統制。
全てが、敗戦を決定的にしているのだ。
補給・後方支援を専門に扱う魔物隊長でも、それぐらい判る。

「大丈夫。そう、大丈夫。私は、「私達」は負けない。負けるもんですか」

部隊の統率、敵部隊への索敵及び分析を主任務とする、名参謀であるはずのバトルノートが、己に暗示をかけていた。
願い、夢、幻想。
極めて現実的に動くはずの、この女の子モンスターが、恐らく・・・生まれて始めて奇跡や運に縋ったのだ。
そして・・・気がついた。

「私達?」

私は、バトルノートの言葉に視線をさらに動かすと、皆がマジノラインの未稼動区域に向かう中、止まっている連中が居る。
それは、女の子モンスターの集団だった。
ああ、見覚えがある。
メイドさん、フローズン、雷太鼓、ちょーちん、ちゃぷちゃぷ、ズかっぱ、中華てんてん、まじしゃんとサワー、出目金使い・・・。
皆が、宴の席で花を添えた者達。
なるほど。
確かに、未だ彼女達は戦っていない。
戦力として数えていないからだ。
ならば、頼りにはなるだろう。



そして、もう1つの理由で、彼女達は生き残る可能性がある。
女の子モンスターは、人気があるのだ。
魔物たちからも・・・人間共からも・・・。
まあ、乱戦となれば、無事である保障は無いが。



「・・・」

我が名は、魔物隊長アコンカグヤ。
人間界制圧軍第3師団第1後方支援連隊隊長。

「・・・」

ココで退いては、魔軍に属する者として何かを失うだろう。
脆弱にして惰弱にして貧弱な、人間共。
群れるだけで強くなったと思う、救いようが無い愚者共。
たった1人では、迷宮にも入れない弱者。
そのくせ、複数になれば、のんびりと生を謳歌する我らを虐殺、または奴隷として売り捌くクズ共。

「思いっきり、足手纏いだな」
「・・・」

バトルノートは、頭が良い。
彼女は、私の言葉に答えない。

「ちょーちんやメイドさんは力が無いし、ちゃぷちゃぷとズかっぱは水が無い場所で戦えるのか? 中華てんてんなんて、料理人として呼んだだけだし」
「・・・」

バトルノートは、私の言葉に返答しない。

「連中は魔法抵抗のある魔法使いの集団だ。フローズンやまじしゃん、サワーの魔法など、効果があるとは思えん」
「・・・」

バトルノートは、私の言葉に反応しない。

「雷太鼓の雷撃は、乱戦では邪魔だ。出目金使いによる砲撃?・・・無理だ、弱すぎる」
「・・・」

バトルノートは、私の言葉を無視する。
全て、真実だった。

「ストーン・ガーディアンと巨鉄ちゃんが来るのならば、貴殿らに用は無い。行け」
「・・・」

そこまで言って始めて、バトルノートの口が動きかけた。
だが、何も言えない。
やはり、バトルノートは、頭が良い。

「私に、人間界制圧軍第3師団第1後方支援連隊隊長アコンカグヤに、恥をかかせるつもりか?」
「・・・」

本当に彼女は、頭が良い。
だから、最後の発言は決まっていた。

「・・・そう・・・・・・そう言うことなら・・・行かせて貰うわ」





「チーフ。魔軍の一部が反撃体制に移行しているそうです」
「GPSの座標は?」
「問題は有りませんけど、大丈夫なんですか?」
「まあ、このぐらいの距離なら、何とかね」





「ぱぴゅら ほろり ぱほー」
「ぱひゅー」
「ぱぴぴ ぱぱほほー」

魔素漢の群れ、兵数・約1200。
方向転換し、布陣。
とは言っても、整列するだけだ。

「まさか・・・人間なんかに・・・」

思わず、私は口に出していた。
魔人四天王・プラチナドラゴンの魔人カミーラ閣下を筆頭にする、最凶の戦列による大強襲撃。
負けるはずが無い布陣。
それが、打ち破られ、逃げ惑う我ら。
我らの横を、多くの魔物兵やデカント、多種多様な魔物が通り抜ける。
そして、多くの者達が、我らに気づきながらも通り過ぎて行く。
そして、多くの者達が、悔しさからか、憎悪からか、誇りからか、我が殿部隊の後ろに並んで行く。

「・・・」

次第に、列が割れて行く。
去る者。
残る者。
戦う者。
人間共も、コチラに気づいているようだった。

「・・・」

人間共の魔法攻撃が、一端止む。
それはそうだ。
すでに、魔素漢たちは魔力を溜め、攻撃出来る段階。
六色破壊光線。
本当に、六色に輝く、魔素漢たちお得意の破壊光線。
人間共は、慌てて防御魔法(バリア)を唱えている。
術者の前面に、半透明の魔法障壁が出来上がって行く。

「・・・」

黒剣。
魔物隊長たちが扱う、刃の部分こそ紫だが、刀芯は黒い鋼になっている、グレートソード。
それを手に、私は叫んだ。

「人間ミナゴロシ! 人間タオセ!!」

続いて、背後に居た魔物たちが、叫ぶ。

「「「「「グォェェォォォォ! グィィガガガ!」」」」」

咆哮。
怒号。
絶叫。
我らの魂の声が、荒野に響き渡る。
私はさらに、叫んだ。

「魔物の恐ろしさを知れ! 死ね、死ね!」
「「「「「ぱぴゅら ほろり ぱほー」」」」」

魔素漢たちの、六色破壊光線が放たれた。

ビーーーーーーーーーーーーーー・・・・・・・・・・ドカーーーーーン

見事直撃!。
先制攻撃は成功!。
人間共は、バリアの守られながらも、ダメージを受けている。
あとは、突撃するのみ!。
私は、黒剣を空に向かって掲げ、そして突撃のセリフを・・・。

「下等生物よ。我が剣を受け―――――」



ピューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ん?」


ぼっかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん


「ぎゃああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!」





チューリップ2号・マレスケ(突貫修復済み)。
ヒララ鉱石をエネルギーとしたバズーカ(大砲)、「チューリップシリーズ」の最新強化版。
設計者は、「チューリップシリーズ」の生みの親、マリア・カスタード。
マレスケは固定式長距離砲であり、地盤のしっかりした場所に設置する必要あり。
また、移動させる場合は、分解した後、最低でも「うしトラック」4台、「うしクレーン」1台が必須。
なお、場所に到着後の組み立てには、6時間は欲しい所。
砲撃目標は、GPS(レアアイテム)を使用して決定。
量産を考えていないため(量産する場合はコスト削減、分解と組み立ての簡略化等々が必須)、パーツ(砲身部品)がかなり良い変わりに、パーツ損傷の際の交換用予備パーツがほとんど無い状況。
先日、マジノライン復帰計画で魔軍の部隊の攻撃を受けて半壊。

「報告します! 砲撃は敵部隊へ直撃しました」
「ご苦労様。第二射はいけそう?」
「いけます! 砲身温度は安定していますし、有爆の心配は有りません。しかしチーフ、よく代用品だけでココまで出来ましたね?」
「まあね。マリアさんは一品物の方に目が行きやすいから、量産プランは私が考えないと」
「さすがチーフ! 感激です!」
「突貫工事だったし、本当に予備パーツを使うとは思わなかったから粗悪品も混ざってるし、威力こそ何となってるけど、距離も精度も半分程度に落ちちゃってるのが問題ねー。この点もマリアさんと確認しないと」
「座標調整完了。マレスケ通常弾装填します!」



ぼっかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん



「うぎゃああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!」



ぼっかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん



「ぱぴぴーぱぱほほー」



ぼっかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん



「ギュピピピ・・・」



ぼっかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん



「まさか・・・人間なんかに・・・」



ぼっかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん



「クラウン様、ごみん」



ぼっかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん



「ケケケケケケケ!!! 脳髄、脳髄、脳髄グシャー!!」



ぼっかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん



「って、ちょっと待て! 最後の方がおかしくなかったか!?」

ぼっかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん

「はんぎゃああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!」




・・・。
・・・。
すべての魂はルドラサウムに還り、再びこの世に戻ってくる―――――。





―――――。





[コノ魔物隊長ハ、南アフリカニテ散ル運命ニアル ―――――完―――――]










「なわけあるかああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!!」

爆風で吹き飛ばされ、結構な距離を移動させられた私。
当然ダメージはデカイ。
だが、私は起き上がった。
何と言うか、理不尽な世界に対し、頭にきたのだ。
と言うか、誰だってそうだろう。

1、勝ち戦が、いきなり負け戦になった
2、殿部隊を指揮する羽目になった
3、訳の判らん、空から砲撃でまともに戦えずに死に掛けた

やはりアレだ。
なれない事はするもんじゃない。
バトルノート達に格好つけたのが間違いだったな、うん。
こんな状況で、格好つけるもんじゃないな、うん。
皆も、戦争に巻き込まれたら、死亡フラグは回避するように勤めようね。

「生きてやる! 生き抜いてやるうううううーーーーーーーッッッ!!!」

私は、マジノラインに向かって走り出す。
戦線維持が困難な以上、それしかない。
そうだ。
コレで良い。
今は引くのだ。
そして、何時の日か、必ず復讐してやる!!!。





ちなみに、魔物将軍閣下の皆様がどうなったかを纏めると・・・。

第1師団の魔物将軍閣下・・・・・戦死。(マジノライン)
第2師団の魔物将軍閣下・・・・・行方不明。(マジノラインに居た筈)
第3師団のイスン将軍閣下・・・・・素晴らしい未来を願っての退却。
第4師団のベプチョ将軍閣下・・・・・素晴らしい未来を願っての退却。
第5師団の魔物将軍閣下・・・・・撤退拒否、ゼス首都付近に居残り。
第6師団の魔物将軍閣下・・・・・戦死。(日曜の塔)
第7師団の魔物将軍閣下・・・・・戦死。(ゼス首都)
第8師団のウィスピン将軍閣下・・・・・素晴らしい未来を願っての退却。
第9師団の魔物将軍閣下・・・・・戦死。(アダムの砦近く)
第10師団の魔物将軍閣下・・・・・処刑。

と、なりました。
ぐすん。





「バトルノートを引かせるとは、思い切ったことをしたな。負けたとは言え、無駄な犠牲者が出なくて良かった。うぬぬ、あ奴は前線で使っても良いかもな」
「ふおふおふおー、メイドさんを引かせるとは、男気があるのー。しかし、カミーラ様が未帰還である以上、ノコノコ帰ってきた我らは、ただではすまんのう」
「フローズンが無事だったのは奴のお陰が。ふむ、取り合えず、当面の物資補給は奴にやらせよう。ケイブリス様の下へは帰りえないし」





数か月後。




大陸西部に位置する、魔が統べる広大な森の中。
南側の東半分を占めるこの森林部分は『魔の森』、『魔物の森』とも呼ばれる。

「お、おおおお。ひひひひひ久しぶりだすなーーー。さささてさて、ザ、ザビエル様の、たたたために戦ってくれる奴を、さささ探すだす」









~注釈メモ~
 
●陸軍系の集団単位の一例を、魔軍に当てはめた場合の予想(ウィキペディア(Wikipedia)より)
 
・部隊
班 (team) ・・・4~6人(指揮官は伍長~上等兵)
分隊(squad)・・・8~12人(指揮官は軍曹~兵長)
小隊 (platoon) ・・・30~60人(指揮官は中尉又は少尉、2以上の分隊又は複数の班)
中隊(company, battery, squadron) ・・・60~250人(指揮官は少佐又は大尉、2以上の小隊)
※通常の魔物隊長、魔物が率いるレベルと思われる(ランスⅥの魔物隊長は皆この辺り)
 
・小単位の指揮専門の司令部又は本部(火力支援を担当する小単位でもある)
大隊(battalion) ・・・300~1000人(指揮官は中佐又は少佐、2~6の中隊)
連隊(regiment)・・・500~5000人(指揮官は大佐、2以上の大隊又は複数の中隊)
※纏め役の魔物隊長が率いるレベルと思われる(戦国ランスの魔物隊長は皆この辺り)
 
・軍/方面隊(ココから戦略単位の扱い、補給と戦闘支援のために必要な人員装備が備わっており、単体で完結)
旅団(brigade)・・・2000~5000人(指揮官は少将又は准将又は大佐、2以上の連隊又は大隊)
師団(division)・・・10000~20000人(指揮官は少将、2~4の旅団又は連隊)
軍団(army corps) ・・・30000(指揮官は中将、2以上の師団又は複数の旅団)
※下級魔人、使徒、魔物将軍が率いるレベルと思われる
 
・総軍(2以上の軍集団)/軍集団(2以上の軍団)/方面軍/戦線
軍(army)・・・50000~60000(指揮官は元帥又は大将、2以上の軍団)
※魔王、上級魔人が率いるレベルと思われる
 
 
※他にも「独立混成旅団」の存在や、国によっては師団から戦略単位扱いになっているなど、結構説明が面倒臭いので、正式な説明ではなく簡単な目安とお考え下さい。










[番外編 コノ魔物将軍ハ、カイロニテ散ル運命ニアル]



私は、魔人カミーラ様直属の護衛隊第2軍団の司令官、魔物将軍ベプチョである。
本日未明、同郷にして同僚のイスンの連絡兵が、我が元を訪れた。

「ふおふおふお、イスンめ。一体何を・・・」

などと呑気に話を聞いた私は・・・絶望した。
そして、連絡兵が帰った後も、しばらく動けなかった。

「な、軟禁・・・・・・ケイブリス様の城に・・・・・・夫婦生活」

何と言う事だろう。
よりにもよって、我が主を大怪我させた張本人が、看病しようなどと。
・・・。
・・・。

「ふおふおふお・・・・・・やばいのー。本当にとばっちりが来そうだ」

と言うか、絶対来る。
我が軍は、上司の気持ち1つで命が終わる事など日常茶飯事なのだ。
さすがは、イスン。
よくぞ、この危機に気がついた。

「ふおー。どうしよう?」

私は、「戦略LV1」と言う便利なスキルを最大限利用して、考えた。
・・・。
・・・。

「うむ。これはアレだ。カミーラ様には別件に集中していただいて、忘れてもらおう。うむうむ。計画を前倒しすれば・・・・・・・人間界制圧軍を再編成するように・・・うむ、ケイブリス様の思案を、七星さまを通じてお知らせすれば・・・」

人間界制圧軍がこのような理由で作られた事を知る者は、一部の者を覗いて、居ないのだった―――――。



(次回に続かない)





ベプチョ(設定は妄想と戦国から)
 
登場作品:戦国
種族:魔物
性別:男
年齢:(推定)20歳ぐらい?
才能限界Lv:27/32
技能:魔法LV1、戦略LV1
身長:(推定)200cm以上(鎧込みで、ランスⅥのパットンと同じくらい?)
体重:(推定)110kg以上(鎧込みで、ランスⅥのパットンと同じくらい?)
職業(役職名):魔人ケイブリス派所属の魔物将軍
LP0003年:カミーラ軍第4突撃師団司令官
LP0004年:人間界制圧軍第4師団司令官
LP0005年:魔軍アマゾン方面軍司令官
特技:魔軍団の指揮
趣味:メイドさんと遊ぶ事

勝手な設定:
魔人の命令に忠実な、典型的な魔物将軍・・・かどうか疑問があるが、将軍としての状況判断能力は確か。
適切な人員配置が可能であり、自ら軍を指揮又は鼓舞させる事も出来る。
イスンとほぼ同じ能力だが、魔物将軍の中では先陣を味方に譲る面があり、どちらかと言うと主役ではなく補佐に徹するタイプ。
良く言えば万能で満遍なく、悪く言えば半端で器用貧乏。
JAPANでは、カイロとモロッコの魔軍の補佐に徹するために、アマゾンの拠点防衛の司令官になる。

セリフ(戦国)
「お任せを。」のみ(涙)
「ふおふおふお」は完全にオリジナルです(汗)




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