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No.40706の一覧
[0] ボクラノセカイ (エヴァ二次創作)[名無し](2014/11/17 23:42)
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[40706]
Name: 名無し◆df6f5276 ID:ab7f50ab 前を表示する / 次を表示する
Date: 2014/11/19 13:08
翌朝、いつもの通り朝起きてご飯を作る。
昨日は学校の様子を見るためだったから作らなかったけど、今日はお弁当も作ろう。
栄養バランスを考え、体にいい弁当を作るのが僕の楽しみだったりする。

(……こんなんだから、母さんに“主婦”って言われるんだろうな……)

そうまでして弁当をいそいそと作っている自分の姿が、なんだかとても滑稽に思えた。

(……そう言えば……)

ふと、思い出した。
アスカは、学校でパンを食べていた。友達と話してはいたが、とてもつまらなさそうにかじる姿が、とても印象深く残っている。
考えてみれば、彼女の家はどうやらお父さんはいないようだ。何か事情があるのだろうが、そこまで踏み込もうとは思わない。
だけど、キョウコさんは働きに出ていて、アスカは基本一人。弁当なんて作る暇はないだろう。

「……」

いつの間にか、僕の手は動いていた。普段よりも、少しだけ素早く。


(……さて、どうしたものか……)

見慣れない弁当箱を前に、腕を組んで考える。
とりあえず作ってみたのはいいものの、それから先のことを考えていなかった。
この弁当は、彼女の分として作ったものだ。
だがこれを彼女が食べるには、二つの大きな障害がある。

まず一つが、どうやって彼女に渡すか。
彼女は、おそらく今日も僕を避けるだろう。そんな中でタイミングよくばったりと会い、これを渡す機会があるかどうか……。学校で渡すことも出来るが、ひやかしにより阻止される可能性もある。出来れば、登校時に渡したい。
そして二つ目。これが、おそらく一番難しい。そもそも、彼女はこれを食べるのか。
あれだけ嫌われているなら、受け取る可能性の方が低いだろう。いや、おそらく受け取らない。受け取るはずがない。
それをどうやって食べさせるか……。

(……何やってんだろ、僕……)

ふと、無性に虚しくなった。
そうまでして、なにゆえ彼女に弁当を食べさせなければならないのか。僕は彼女の保護者か何かか?断じて違う。
それなら、そこまで僕がしてやる義理はない。ないのだが、せっかく作ったのだから、作った身分としてはぜひ食べてもらいたい。
気を引くわけでもない。同情……が強いのかも。

(……まあ、受け取らないならそれでもいっか)

最終的には、そんな妥協を脳内で決定し、玄関を出た。

「――あ」

「……あ」

玄関を開けた通路には、彼女が立っていた。ばったりと、偶然。

(タイミングがいいというか、ご都合主義というか……)

何だかあっさりと、彼女に会ってしまった。

「……」

「……」

僕らは通学路を歩く。何も言葉を発することなく。
アスカの歩く速度は早い。昨日と同じだった。後ろを振り返らず、ただ黙々と歩を進める。僕から離れようとしているのだろうか。
このまま離されるなら、それもいいかもしれない。でもその前に、一応声をかけてみることにした。

「――ねえ、アスカ」

「……」

意外にも、僕の言葉に、アスカは足を止めた。そのまま前を向いたまま、言葉だけを向ける。

「……何よ」

「ええと……あのさ、昨日昼御飯でパンを食べてたけど、いつもあんな感じ?」

「だとしたら何?別にいいでしょ。私の勝手だし」

そりゃごもっとも。まさに正論。もはや勝率は限りなく低いだろう。それでも、やっぱり一応言ってみた。

「あ、あのさ……良かったら、これ……」

「……ん?」

そして僕は、彼女にピンク色のハンカチに包んだ“それ”を渡す。
彼女はそれを手に取り、凝視していた。そのうち、それがなんなのか分かったようだら、すごく、驚いた表情を見せた。

「こ、これ……」

「お弁当。良かったら食べてよ」

「な、なんで――」

そこまで言ったところで、彼女は言葉を飲み込む。そして、口をグッと噛み締めた。

(あ、これは突き返されるな……)

半ば諦めの予想が脳裏を過る。仕方ない。トウジにでも食べさせて――

「――仕方ないわね。いいわ。食べてあげる」

「だよね。別にいいよ。あんまり期待は…………って、へ?」

「だから、もらってあげるって言ってんのよ」

「え、ええと……」

……これは、予想外だった。

「もういい?」

「え?」

「私、学校行くから」

そう言い残したアスカは、颯爽と歩いていってしまった。

それにしても、よくわからない。
普通出会って二日目の男子から、弁当を受けとるのか?僕が言うのもなんだが。
これは本来安堵する場面だとは思う。作った弁当を受け取ってもらったことだし。でも不思議と、頭の中は戸惑っていた。
物事がうまくいきすぎると、こうなるのかもしれない。

神様のイタズラか、はたまた彼女の気まぐれか。

ちょっとした超常現象を目の当たりにした気分のまま、僕もまた学校に向かった。


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