壊れたシェルターの中にはもう一人碇シンジの親友がいた。
クラスの中でもトップクラスの変わり者で
カメラマニアの少年、相田ケンスケだ。
目の前に浮かぶエヴァンゲリオン初号機と紅の空
以前の彼であれば鼻息荒く興奮してカメラを向けていただろう。
しかし彼はその風景から目を離すことができなかった。
それは絶望でも哀しみでもない、ただただ惹かれていたのだ。
カメラで撮影しても意味のない状況でもあるが
彼の頭の中にはそんなことはどうでもいい
その目に焼き付けたかった。
ケンスケ「(撮影があんなに好きだったのに、私利私欲の為に撮影してたのに…。自分がしていたのは何だったんだ?オモチャを振り回すだけだったってこと?)」
俺は悲劇のヒーローの誕生の瞬間を目にしているのだ
あの中には親友の碇シンジがいる
世界を守ろうとしたものの世界を滅ぼしてしまった存在
ああ、なんと儚い、なんと尊いのだろう。
ケンスケ「(事実は小説より奇なりと言うもんだな…)」
ケンスケ「これで終わりなのかな?どう思う?トウジ…?あれ?」
鈴原トウジの姿が見当たらない、よく探すと委員長と一緒に居る。
ケンスケ「(ようやくくっ付いたか、やれやれ遅いっての)」
彼らは彼らの時間を過ごしたいのだろう
茶々をいれるつもりもないし憤りもない。
むしろ嬉しい。
気が逸れたが
また先程の思考に戻る
彼の頭には親友の心配しかないのだ。
ケンスケ「(碇の活躍で世界は守られるのか?それとも地球は滅ぶのか?)」
シンジの活躍で世界が助かると思いたいのだが
いかんせんこの状況だ、世界が滅びてしまうという思考にもなる。
ケンスケ「(まあどうでもいいか、碇の笑顔を見れて悩みをたくさん聞いてやれてよかったよ)」
親友の写真を平気で売り飛ばしたりする彼だが
性根は腐ってないようだ。
自分の心配ではなく親友の心配しかしていない。
だが皮肉なことに彼の思いは碇シンジには届かない
彼は親友や多くの人を殺してしまった事を深く後悔するのだから…
ケンスケ「(もう俺が助からなくてい、あいつの救済さえあれば何もいらないね。せめてもの、生きてもっとあいつとバカやりたかったなぁ)」
当然同シェルターからは誰一人として生存者は見つからなかった。
終劇