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No.43115の一覧
[0] その手に槍を、持つならば[sn](2018/09/04 22:06)
[1] [sn](2018/07/09 02:36)
[2] [sn](2018/07/09 22:15)
[3] 3[sn](2018/07/10 23:30)
[4] 4[sn](2018/07/11 22:02)
[5] [sn](2018/07/12 22:24)
[6] 6[sn](2018/07/14 20:56)
[7] 7[sn](2018/07/17 22:29)
[8] [sn](2018/07/18 22:57)
[9] 9[sn](2018/07/23 01:11)
[10] 10[sn](2018/07/30 21:33)
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[14] 14[sn](2018/08/28 22:25)
[15] 15[sn](2018/09/04 22:03)
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[43115] 7
Name: sn◆be94cdbe ID:b6566aa1 前を表示する / 次を表示する
Date: 2018/07/17 22:29



「ある程度のことはわかった。この男たちはただの誘拐犯ではない。目的ははっきりわからないが、組織でシンジくんの友だちを追っていたようだ。なぜシンジ君の友達を誘拐したのかは分からない。下っ端には、単純な命令しか与えられていないようだな。この男の任務は我々の殺害とシンジ君の監視、必要に応じて監禁。その理由も不明。さて、」

三人は部屋を出てエレベーターの前まで来ていた。ソファーに士郎とシンジが座り、ライダーは周囲を見張っている。士郎はシンジを見る。シンジは己を抱いて、カタカタ震えていた。

「シンジ君。たくさんショッキングな場面を見せてしまい申し訳ないが、これも不可抗力だ。君の命も危険だ。しばらく俺たちと行動したほうがよさそうだな」

シンジは何度も頷いた。目の前で人間が三人も死んだのだ。日常を生きていたシンジにとって、これほど恐ろしいことはない。

「あの男たちの集合場所がわかった。新都の教会だ。あまり気は進まないが、おそらく彼女たちもそこにいるはずだ」

士郎は立ちあがる。すると、それまで黙りこくっていたシンジが口を開いた。

「まさか……む、向かうつもりですか?」

「ああ」

士郎は迷いなく肯定した。

「そんな――いや……そこまで、あなた方に危険を冒してもらうなんて、できないよ!」

「じゃあどうする? シンジ君、君だけで向かうか?」

「……アスカも綾波も、――カヲル君も大事な友達だ。僕は、いや、僕が行かなきゃならない」

その言葉に士郎は二コリとほほ笑んだ。

「俺たちが動くのに理由があるなら、君のその言葉で十分だ。さあ、行こう。早くしないと、ずっと後悔することになるぞ」

「はい――あっ」

 士郎たちが動きを止めた。

「どうした? シンジくん」

「父さんにあるものを渡されていたんです。どうしようもなく困ったときに、使えって」

シンジは走って自分の荷物の元へ行き、ジュラルミンケースを持ってきた。

「ふむ、調べてみよう」

士郎はケースをシンジから預かり、中身を解析する。

「んん?」

士郎は頭をひねった。中身の形は把握できるが、それが何なのか全く見当もつかない。

「どうやっても開かないんです。鍵がついている様子もないし・・・・・・」

力任せにあけようとするが、ケースはびくともしない。

「士郎」

ライダーが催促する。そうだ、自分たちにはまずやることがある。

「これは一応持って行こう。シンジくん、持っていてくれ」
 
シンジはこくり、と頷く。士郎は笑顔でシンジの肩をたたくと、その手でシンジを抱え、窓に向かって走り出した。

「え?」

シンジが次の句を発するまもなく、シンジを抱えた士郎とライダーは、窓を打ち破って夜の闇に飛び出した。




――Interude

計画は予定通り、誤差ひとつなく進んだ。二人を連れ去ることも、シンジ君を置き去りにすることも。彼がどこかに電話するということもわかっていた。おそらく、30分と経たないうちに助けが来るだろう。これもひとつの賭けだ。彼らをおびき寄せることができれば、僕の計画は成功と言えるだろう。

車に揺られている。三人の男と、僕。荷台にはアスカちゃんとレイが転がっている。これから彼女らは国外へと連れだされることになっている。その後のことは僕の知るところではない。僕の目的は彼女たちではないからだ。いわば、二人を餌として彼らを釣ったと言えよう。僕の目的は別にある。彼らに協力したのは、利害の一致があったからにすぎない。

車を降りる。目の前には教会がそびえている。ここは一時保管場所だ。あと10分もすれば本当の目的地へと向かうだろう。シンジ君たちはそれまで間に合うのか。それだけが気がかりだ。

――interude out




夜の闇を駆ける。男は、新都の教会が合流地点だ、と言った。そこに誘拐犯の仲間がいる。何人かは分からない。だが、決して見逃すわけにはいかない。

ホテルを出る前、ライダーは桜に連絡を入れた。おそらく彼女の力が必要になる。士郎がそう判断したのだ。桜とは教会前で落ち合うことにした。彼女はもうすでに到着しているはずだ。急がなければならない。
前方を駆けていたライダーが急に止まった。合わせて士郎も立ち止まる。そして、背中におぶっていたシンジを降ろした。シンジは顔を青くして胸をおさえた。

「…ジェットコースターに乗ってるようでした」

「酔ったか?」

「いえ、大丈夫です」

シンジは顔を上げる。士郎はその表情を確認し、ライダーと向き合った。

「士郎、この先に武装した人間が数十名います」

「この先……公園だな。教会へのルートに、か。待ち伏せか? いや、ここが退路の終着点か?」

「私が迎撃します。士郎たちは、違うルートを」

「わかった。俺たちは工業団地のほうへ行こう。ライダーも済み次第進んでくれ」

「了解しました」

士郎はシンジを抱えあげる。二人はその場を音もなく離れた。



公園に乾いた風が吹く。夜の闇を晴らすものは、月の光のほか何もない。ぽっかりと開いた空から降りてきた光は、冷たい地面に降り積もってゆく。そうして浮かび上がるのは生きた光景でだけはない。同様にまた、影も浮かび上がらせる。影は、二人の人間を地面から持ち上げていた。二人は力なく地面に横になっている。月光は、その表情を照らしだした。そこで、彼らの瞳を覗いて、我々は気付く。彼らを持ち上げているのは、影ではない。どす黒く変色した彼ら自身の血であることを――

二人には、己の死の理由を理解する術はなかった。彼らはこの公園に立ち寄っただけだ。それだけで、ただ、邪魔であるというだけで彼らは命を奪われた。背中をナイフで突かれ、それだけでは足りぬと首を真一文字に切り裂かれた。彼らのほかにいくつ死体が転がっているかはわからない。この公園には、何者の存在も許されていないのだ。

ライダーは血の匂いを敏感に感じ取っていた。殺されたのはひとりではないだろう。そして、この公園は世界からすっぽりと切り取られていた。外に出て駅のほうへ向かえば、生きた人間は何人もいるだろうが、ここではそのような人々は立ちいることを許されない。敵に魔術師がいる。ライダーは確信した。

しかし、同時にライダーは違和感を覚えていた。魔術師にしては、手際が悪い。必要以上の死体を出すことは、やり口として3流だろう。

「――」

冷たくなったベンチの足元に、二つの死体を発見した。喉を掻き切られて折り重なるように倒れ、その姿をフィラメントの切れかかった電灯が照らす。傷口に目をやる。凶器は非常に鋭利なナイフのようだ。

「(……魔術師ではない)」

死体はそう語っていた。この二人は、何者かに背後から直接命を奪われたのだ。

「(しかし、何故処理しない)」

不可解なことだった。死体を処理しなければ、目撃者を生んでしまう。殺人とは、ひっそりと行われるべき行為なのだ。わざわざ死体をさらすとは、見てほしいと言っているようなものだ。

周りを見渡す。暗闇の中には、何者かの呼吸を感じる。公園の中に入る前は微かだったその気配は、色濃く自分の周りを取り囲んでいる。

「(やはり――)」

気配は動かない。身じろぎ一つせず、自分を静かに観察している。そのおかげで、敵の数がわかった。12名で間違いない。10人が銃を構えている。1人は魔術師だ。もうひとりは――

「(――!)」

背後の気配が動いた。素早くこちらに近づいてくる。コンバットナイフを手に構えているようだ。接触まで、残り3メートル、2メートル、1――



旋風が空間を切り裂いた。ライダーに近付いた男は、こめかみに踵を叩きこまれ、地面に激突した。ライダーの放った後ろ回し蹴りは、男の生命を正確無比に刈り取っていた。意識の残骸すら許さぬ一撃。男は己の死すら気づくことはなかった。

ライダーの軸足は削岩機のように地面を抉り、捲り上げた。はじけ飛んだ土が地面に落下するころ、ライダーを取り囲んだ男たちが我に返った。一体に何が起こった。何も見えなかった。仲間がひとり死んだ。それだけは、何となく理解できた。

銃を構え、狙いを定める。この敵は、いつもの敵ではない。これまでに培った経験がそう警告してくる。彼らとて、人間以外のものを相手にしたことはある。だが、今回は相手が悪すぎた。

頭部に照準を合わせ、引き金を引こうとした瞬間、ターゲットの姿が煙のごとく消えた。暗視スコープから目を離す。電灯の下には三つの死体しかない。男たちの背筋に寒気が奔った。

包囲網を解く。目標を見失った以上、円陣は無意味だ。逆に全員が一点に集まりお互いの背中を預ける。11人が散開する。集合地点は決めてある。不規則な動きで、敵を撹乱する。ある者はジグザグに、ある者はまっすぐに集合地点へと向かった。

だが、それが裏目に出た。最後尾を走っていた男は、その目で確かに見た。前を走る仲間が、次々と地面へ沈んでいく。その際に響く鈍い音が、彼らはもう起きあがることはないということを示唆している。男はそれでもペースを変えず走った。1人がペースを崩せば、全員を危機にさらす。それを、重々に理解していたのだ。

集合地点までたどり着くことができたのは4人だけだった。分隊の指揮官である軍曹と、魔術師、そして狙撃手の二人だ。敵の姿はない。暗視スコープを持ってしても、捉える事が出来ない。狙撃手はスコープとライフルを捨て、ハンドガンを構えた。敵がどこにいるかわからない。加えて遮蔽物がほとんど存在しない。状況は非常に不利だ。ライフルなど構えている暇はない。そう判断したのだ。

そこまで考えて気がついた。1人殺られてからわずか30秒の間、次々と7人が殺された。初め、我々は目標を全方位で取り囲み万全の態勢で始末しようとしたのではなかったのか。たった1人の、武器も持たない女に追い詰められている。

狙撃手のひとりがベルトに装備していた閃光弾に手をかける。こちらの位置は間違いなく敵に把握されている。その証拠に、敵は姿を現さずこちらの様子を窺っている。ならば光であぶり出し、一瞬のうちに仕留める。閃光弾のピンに歯をかけた、その時だった。

ひゅう、と何かが空を切り、鮮血が飛び散った。ごとり、と閃光弾が地面に落ちる。続いて、眉間にすっぽりと穴をあけた狙撃手が崩れ落ちた。
何かが飛んできた方向に弾丸を撃ち込む。しかし、弾は暗闇に吸い込まれ、何の手ごたえもなく消えていった。

1人減った。次は、誰か。

再び静寂が訪れる。敵の気配はない。軍曹は震える足を押さえつけた。逃げられない。脱出できない。命乞いも無駄。生還するには、あの化け物を打ち倒すしかない。

恐怖に耐えきれなくなったのか、もう一人の狙撃手が叫びながら闇雲に銃を撃ち始めた。軍曹と魔術師はあわてて身を屈める。この状況では、己が撃たれかねない。

弾を撃ちつくし、それでもなお引き金を引き続ける。ちょうど空撃ちを4回数えたところで、狙撃手の頭部を巨大な釘が貫いた。軍曹ははっきりとその目で見た。狙撃手の頭部を破壊し、その中身をぶちまけ、綺麗にあいた穴から覗いた凶器は、一息の間に己の主のもとへ引き返した。残ったのは抜け殻のみ。またひとり、死んだ。

残された二人はお互いを背に武器を構えた。お互いに仕事仲間以上でも以下でもない関係であり、必要以上に口をきくこともなかった。が、今は奇妙な連帯感を感じている。背中のぬくもりが、彼らの心の支えだった。
1秒が1分のようだ。まだ、最初のひとりが殺されてから5分も経っていない。蝕むように焦燥がつのり、集中力が削られていく。だが、この二人のプロはピクリとも動かない。じっと耐えて敵の動きを待つ。後手になっていることは明白だ。ならば、ひたすら待ち、出方を窺う。先手の誤差を出来るだけ圧縮するのだ。一ミリも動いてはいけない。神経は策敵のみに全力を注いでいる。

だが、彼らの誤算はひとつ。敵を見誤ったことだ。彼らは知らない。己と対峙しているのは人ではない。文字通りの怪物であることを。そして、それが仇となった。

曹長の手に衝撃が走った。怪我はない。構えていたハンドガンが吹き飛んだのだ。僅かな破片をまき散らせ、銃はひしゃげた。手には痺れのみ残る。武器を失った。そう認識する前に、魔術師の鮮血が神経を叩いた。視界が赤く染まる。かろうじて動く左手でナイフを取り出す。魔術師の心臓が止まる。曹長がもたれかかる魔術師を弾き飛ばす。その時間で十分だった。ターゲットである、女は彼の目の前に立っていた。

彼はその時、確かに感じた。走馬灯のように時間が反比例的に減速していく。左手を振り上げる。その動作が、どこまでも遅い。水の中にいるように、見えない糸が絡みついているように、体は感覚に追い付かない。彼の振り上げたナイフが女へと旋回した時、女はすでに自分の両腕を捕らえていた。

一撃で上腕骨が砕ける。その激痛が脳に到達すると同時に、大腿骨が砕けた。それで終わり。最後に首を掴まれた曹長は、まるでスイッチを切るように、命を刈り取られた。





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