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No.43351の一覧
[0] EVAザクラ 新劇場版[まっこう](2019/08/30 22:14)
[1] EVAザクラ新劇場版 序の次 第一話[まっこう](2019/08/30 22:12)
[2] EVAザクラ新劇場版 序の次 第二話[まっこう](2019/08/30 23:59)
[3] EVAザクラ新劇場版 序の次 第三話[まっこう](2019/08/31 12:37)
[4] EVAザクラ新劇場版 序の次 第四話[まっこう](2019/08/31 19:23)
[5] EVAザクラ新劇場版 序の次 第五話[まっこう](2019/08/31 22:22)
[6] EVAザクラ新劇場版 破 第一話[まっこう](2020/06/01 21:04)
[7] EVAザクラ新劇場版 破 第二話[まっこう](2020/06/26 21:46)
[8] EVAザクラ新劇場版 破 第三話[まっこう](2020/07/05 16:22)
[9] EVAザクラ新劇場版 破 第四話[まっこう](2020/07/22 00:29)
[10] EVAザクラ 新劇場版 搭乗人物一覧[まっこう](2020/07/24 19:53)
[11] EVAザクラ新劇場版 破 第五話[まっこう](2020/08/12 15:01)
[12] EVAザクラ新劇場版 破 第六話[まっこう](2020/09/30 19:42)
[13] EVAザクラ 新劇場版 搭乗人物一覧 update[まっこう](2020/09/30 21:52)
[14] EVAザクラ新劇場版 破 第七話[まっこう](2020/10/06 17:44)
[15] EVAザクラ新劇場版 破 第八話[まっこう](2020/10/10 17:16)
[16] EVAザクラ新劇場版 破 第九話[まっこう](2020/10/15 14:10)
[17] EVAザクラ 新劇場版 搭乗人物一覧 update[まっこう](2020/10/15 14:22)
[18] EVAザクラ新劇場版 破 第十話[まっこう](2020/11/05 17:09)
[19] EVAザクラ新劇場版 破 第十一話[まっこう](2020/11/26 17:26)
[20] EVAザクラ新劇場版 破 第十二話[まっこう](2020/12/26 18:14)
[21] EVAザクラ新劇場版 破 第十三話[まっこう](2021/01/31 20:05)
[22] EVAザクラ新劇場版 破 第十四話[まっこう](2021/04/02 22:25)
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[43351] EVAザクラ新劇場版 序の次 第五話
Name: まっこう◆048ec83a ID:ebf4c7d1 前を表示する / 次を表示する
Date: 2019/08/31 22:22
まずは 序は終わり。破はいつ頃になるかな。

ーーーーーーーーーー

「これは」
「DT因子保有者リストよ」
「DT?」

 ホテルのバーでリツコが説明を始めると、レインは直ぐに思い出した。昔、DT理論の論文は読んだらしい。データーの受け渡しが紙の書類なのは、セキュリティーの為か、リツコの趣味かは判らない。
 
「うちのメンバーに五人ね、多いわね」
「推測だけど、木之本サクラが因子を活性化させてるのじゃないかしら」
「あり得るわね。そうすると接触頻度から言って、トモヨちゃんがそのうち大化けするかも」
「あら、変態と超能力者のカップル?カオスね」
「ケンスケ君も悪い子では無いけど、変態はねぇ」
「ま、大道寺トモヨも変わり者だからお似合いかもね」
「……人ごとだと思って」

 レインはカクテルを一気に飲み干した。
 
「スピリタス、ストレートで」
「アル中」
「フリフリ魔法少女」
「それはやめて」




 EVAザクラ新劇場版

 序の次 第五話

修業




「お姉ちゃん、本当の家族と住むことになったんだ」

 学校から帰ってきたシンジはそう言うなり、自室に向かい荷物をまとめだした。素早く風呂敷に着替えなどを詰めていく。
 
「え、本当の家族?」
「父さんが一緒に住もうって言ったんだ。いままでお姉ちゃんありがとう」
「え、お姉ちゃんは一緒に行けないのですか」

 アンズがそう聞いても、シンジはニコニコと笑いながら準備を続けるだけだ。アンズはシンジの周りでオロオロする。だがそのうち昔のことを思い出した。猫だった時、小さなシンジが両親を思って泣いているのを見ていたのを思い出した。先生に迷惑がかからないようにシンジは一人の時だけ泣いていた。アンズだけはそれを見ていた。
 
「よ……良かったねシンちゃん」

 ちょっと笑顔が歪んでしまった。でも何とか笑えた。シンジが嬉しいのだから、笑うべきだと。この子の涙を拭いて、喜ばせるために人間になったのだから。
 
「喜んでくれるんだね、お姉ちゃん」
「あったりまえよぅ!!私はお姉ちゃんなのよ」

 シンジは荷物をまとめ終えた。
 
「じゃーねーお姉ちゃん」
「元気でねぇ」

 そこで目が覚めた。アンズは最近よく夢を見る。猫又になり、人間の姿を手に入れてからは特にそうだ。顔を手で拭うと少し濡れていた。時計を見ると早朝だ。心配になってシンジの部屋に見に行ったが、シンジはまだ寝ていた。自室に戻った。自分のネコ耳を触る。

「人間じゃないと本当の家族になれないのかにゃ」

悲しいのでまた寝ることにした。

ーーーーーーーーーー

「お姉ちゃんは修業をすることにしました」

 朝食の最中TVを見ていたアンズがそう宣言した。いつものようにシンジの作った朝食は魚がある和食だ。セカンドインパクト後、赤くなった海では魚はほぼ取れない。ただ世界中の、特に日本人の魚を食べたいという意思は、奇跡的とも言える技術開発を可能にし、ほぼそれ以前に海で取れていた魚の陸上での養殖を可能にしている。また一部では海水を浄化して、そこでの養殖も可能にしている。まだまだ値段が高いため、一般家庭では毎日魚を食べられると言う訳ではないが、幸いなことにシンジやアンズの生活費はネルフ持ちで、特に食費は制限がない。人間良い物を食べないとちゃんと働けない。もしシンジの栄養状態が悪くてEVAの操縦をしくじったりしたら洒落にならない。もっともいつも養殖の高い魚を食べているわけでは無く、組織培養でつくった人工魚肉もよく食卓に並んでいる。

「修業?」

 そう聞き返したのはレイだ。最近レイは休日の朝は、葛城家でごちそうになることが多い。先日のマグロパーティーで白米のおいしさに目覚めたらしい。今まではずっとネルフの完全栄養食の配給を受けていたが、米だけは自分で炊いているらしい。
 
「修業です。お姉ちゃん修業です」

 どうやらTVの番組の僧侶の修業に影響されたようだ。アンズが変な事を言うのはいつもの事なので、誰も驚かなく成ってきている。

「どんな修業をやるの?」

 ミサトは二日酔い気味なので、味噌汁だけ啜っている。

「えっと、お姉ちゃんに成るための修業です」

 中身は考えて無いらしい。ミサトのおかずのアジの干物もどきを当然のように食べながらアンズは答えた。

「お姉ちゃん、何やってもいいけど、みんなの迷惑にならないようにね」
「また上から目線、シンちゃんは弟なのよ」
「はいはい」

 今日は休日で、ネルフの用事もたまたま無い。そのため朝食後は、シンジは遅れている勉強を取り戻すため、勉強をすることにした。ただ家だと色々と落ち着かない。そこで市立の図書館に行くことになった。レイを誘ったところ、珍しく一緒に行くとのことだ。どうせならとケンスケ達も誘ったら、いっそのこと大道寺家で勉強会を開くと言うことになった。あそこなら教師の免許も持っている者もいて、勉強もはかどりそうだからだ。
 
「じゃ、お姉ちゃん後片付けお願い」
「おまかせよぉ」
「ご馳走様」

 シンジとレイは用意をすると早速出かけた。

「じゃ、私は今日は寝るから」

 徹夜続きで二日酔い、今日は急ぎの仕事もないミサトは寝室に直行だ。アンズは朝食の後片付けをした。自分用のジュースのコップを手に、ダイニングでTVを見始めた。

「あっ、この修業効きそう」

 早速試してみることにした。

ーーーーーーーーーー

 思った通り大道寺家での勉強会ははかどった。三年で成績学年トップを維持しているホノカや、イクヨなどが教えてくれる。シンジやレイだけでは無く、第壱中に在学している仲間みんなで勉強会となった。
 昼食は大道寺家の食堂で食べた。食休みの後、また勉強会の再開だ。
 
「EVAに乗るより勉強してる方がいいなぁ」
「碇は二親とも学者だったんだろ、基本的に頭が良いんだよ」

 おやつの時間には豪華なお菓子が出た。アンズにお菓子で餌付けされてしまったレイは、一粒数万円するチョコレートを貪っている。カカオ豆は地球の気象変動のため、超貴重品だ。合成品でないチョコレートがこれだけあるところもなかなか無い。チョコレート以外にもめったに見られないお菓子が山ほど有った。
 シンジやケンスケはおやつ前の目標が済んだため話しているが、課題が終わらないトウジはヒカリに怒られながら課題をこなしている。サクラも苦手な数学をトモヨに教わったりしている。

「そうかな」
「俺はこれと言った特徴無いし」

 変態だが、普段のケンスケは単なる眼鏡のオタクだ。
 
「そうかなぁ」
「それ以上は言うな。ところでお姉さんの勉強はどうだい」
「小学校の三年生の漢字をやってる。何回やっても忘れちゃうらしい。猫だし」
「お姉さんにそんなことを言ってはいけないわ」

 シンジの発言をヒカリが聞きつけてとんできた。

「お姉さんは普通に生まれたかったはずよ」

 先日、ヒカリの前でアンズが派手にこけ、アンズに猫耳と尻尾があることがばれた。その為シンジは、姉は生まれつき、猫耳と尻尾がある遺伝子異常で、その為普通の学校にも行けず、知能も低いと説明した。以前からそのようなことがあった場合に話すストーリーを話したところ納得した。その場は何とかなったが、若干押しつけがましい発言が多くてシンジは困っている。ヒカリの場合全くの善意で言っているだけに面倒だ。
 
「でも本人が猫好きって言っているし、猫って言われると喜ぶんだよ」
「そうかもしれないけど、それとこれとは別問題よ」
「イインチョこの問題判らん、教えてくれんかぁ」

 困っているシンジを見てトウジが助け船を出した。ヒカリはぶつくさ言いながらもトウジの元へ戻っていく。シンジはため息をついた。

ーーーーーーーーーー

 ミサトはその頃やっと二度寝から起きた。二日酔いは収まったが寝汗がひどい。シャワーを浴びに風呂に向かう。浴室内から水音がするので、アンズが使っているようだ。とりあえず顔を洗おうと、洗面所に来たところだった。浴室のドアがいきなり開いた。
 びしょ濡れのアンズが素っ裸のまま飛び出してきた。シャワーを浴びていたらしい。ただちょっと様子が変だ。派手に震えている。
 
「うえくしょん」

 派手なくしゃみと共に、鼻水が鼻からぶら下がった。
 
「どうしたの」
「修業、寒い」

 その後もくしゃみを何度もしたアンズはふらふらと座り込んでしまった。朦朧としている。触れてみると体がやたら冷たい。とりあえず部屋に運び布団を掛けると、すぐに大道寺家に電話した。常駐の医師もいるし、ここからならネルフより近い。アンズを部屋で温めていると今度はやたら体温が上がって来た。やがてシンジが常駐の医師と共に、パーカーの運転するリムジンで戻ってきた。すぐに大道寺家の屋敷に運ぶ。へたな医院より設備が整っているため好都合だ。
 
「凍死?今の日本で?」
「シャワーの浴びすぎで低体温症に成ったようですね」

 医務室の外で待たされていたシンジは、医師に呼ばれて部屋に入った。保護者であるミサトと屋敷の代表であるトモヨもだ。三人に医師が少し呆れ気味に言った。やっと意識がはっきりしてきたアンズに聞いたところ、修業で何時間もシャワーに当たっていたそうだ。それで低体温になり、風邪をひいたらしい。

「滝行をTVで見て真似したそうです」
「何でそんなことしたんだよ、姉ちゃん」
「えっと、秘密だにゃ」

 何か表情にピンときたのか、ミサトはシンジとトモヨに部屋の外に出てもらった。
 
「シンちゃんいないから訳を話して」
「えっと夢を見て……シンちゃんがお父さんのとこ行っちゃって……アンズを連れてってもらえなくて……きっと猫耳だから……修業をすれば猫耳消えるかなと思って」

 熱にうなされながら、途切れ途切れアンズが呟いた。ミサトはアンズのおでこを撫でた。
 
「大丈夫。シンちゃんはアンズちゃんを絶対置いていかないわよ」
「うん」

 少しアンズの表情が楽になった。

「先生、ここ頼みます」

 ミサトが部屋を出た。

「ミサトさんどうですか」
「ちょっと相談があるのよ」

 ミサトはシンジの耳元に口を寄せて、囁いた。少し経ってシンジは頷いた。一人で病室に入ってきた。
 
「お姉ちゃん大丈夫」
「大丈夫、いつも迷惑かけるね」

 アンズは以前ドラマでそう言った病人が慰められていたのを思い出し言ってみる。

「まったくだよ」
「え~」

 予想とは違うシンジの返しにアンズは思わず声を上げる。その時シンジの携帯が鳴った。
 
「お姉ちゃん、ちょっと待って」

 シンジは戸の方に振り返り、携帯を耳に当てた。
 
「はい、あ、父さん」

 よく聞けば、シンジの言い方が棒読みなのが判るが、アンズはそんなことは気づかない。
 
「え、一緒に住もうかだって。こっちに来ないかだって?」
「え」

 シンジの声に、まさに心配していた事だったので、アンズは目を丸くして聞き入ってしまう。

「こっちで、お姉ちゃんと暮らすからいいよ。大丈夫、楽しくやっているから、じゃ切るね」

 シンジは振り返った。
 
「お姉ちゃん、ちゃんと休むんだよ。今日はここに泊めてもらうから」
「うん」

 心なしかアンズの顔色が良くなった。
 
「僕ここにいるからお姉ちゃんは、ちゃんと寝ようね」
「うん」

 アンズは安心したのか、すぐに眠り込んだ。しばらくアンズの寝顔を見ていたが、医師にアンズを任せると部屋を出た。
 
「上手く行った?」

 ミサトは部屋の前で待っていた。

「上手く行きました。姉さん安心して寝ました」
「良かったわね」
「実際父さんとは住みたくないし」
「ま、それは別問題ね」

 ミサトは肩をすくめた。
 アンズは次の日には熱も下がり、シンジと共に葛城亭に戻った。
 
ーーーーーーーーーー

 修業といえば他にも困ったことになっている人がいた。
 
「変態の修業って」

 自室で頭を抱えているのはコノエだ。ケンスケを弟子にしたのは良いが変態をどう指導したら良いか判らない。

「カッシュ師匠は面倒になったんじゃ」

 ともかくこういう時はパーカーに相談だ。パーカーの部屋に行く。パーカーの部屋もコノエと同じように応接セットなどがある。

「あれ、どうしました?」

 パーカーは初老の白髪の陽気な男だ。軍の特殊部隊にいて、そこで得たテクニックを使い、昔は怪盗と言われた男だが、ソノミの父親に捕まって説得されて改心し、今では大道寺家の執事長兼トモヨの運転手をしている。コノエ達の手に負えない事態が起きた場合非合法活動などもする。
 
「あの、ケンスケ君の事で相談が」

 応接セットに向かい合って座る。

「あのぉ、変態ってどうやって指導したら良いでしょうか?」
「変態ですか。それは困りましたね。私の経験でも変態はありませんね。すけべなら言われたことがありますが」
「ですよね」

 コノエは極々真面目に相談しているが、内容が内容だけに笑いが混じってしまう。パーカーは口元が歪んでいる。

「変態部分に関してはケンスケ君の才能に任してはいかがですか。コノエさんはあくまで武道の師匠という事で」
「そうですよね、変態は教えられませんし……あの、もしケンスケ君が体を求めてきたらどうしたらよいでしょうか?実は私処女なので、ちょっと」
「それは困りますね、間接的にトモヨ様の思い人を取っていってしまうことになりますし。そこはきっぱり断って、トモヨ様に判断していただくしかないですね」
「でも変態ですよ。トモヨ様の初めての相手が変態なんて」

 本人達にとってはとても真面目だが、端から聞けばお馬鹿としか言えない話がずっと続いた。

ーーーーーーーーーー

「博士、修業と訓練とどう違いますか?」
「えっ、どうって言われても」

 最近ではアンズと義兄弟というか義姉妹のような関係に成りつつあるレイは、妙に修業という言葉が気になってしまった。

「初めミサトさんに聞きました。説明おばさんに聞いてと言われました」
「あら、それ誰のこと」

 相変わらずモニターを見ながらキーボードを叩いての対応だが、リツコの声が上ずっている。
 
「私も誰のことか判らなかったので聞いたところ、やあねえ、金髪の白衣の博士よ、とのことでした」

 最近はレイも空気を読むというか、恐怖心を感じるようになった。この話は何か危険な感じがした。

「あ、そ」

 やっと、リツコは振り向いた。表情はいつもと変わらない。生け贄は成功したようだ。

「修業は、そうね、精神性が高い訓練でいいんじゃないの。定義は無いわね」
「アンズさんが修業で猫耳が消せると言っていました。修業で人間に成れますか?」
「さあ、あの子は超自然的存在だからあり得るわね」

 リツコはディスプレイに顔を戻した。

「あなたは生物学工学的存在だから違うわよ」
「判ってます。単にアンズさんに興味があるだけです」
「そ、そうだ、あなたの内臓の検査結果出たわよ。便がやたら出るのは単に食べ過ぎよ」
「異常ではないのですね」
「ま、食べ過ぎには注意してね。レイが太ったら司令が泣いちゃうわよ」
「はい。気をつけます」

 レイはお辞儀をすると部屋を出て行った。

ーーーーーーーーーー

「碇アンズの正体判ったわよ」
「アンズちゃんの正体って猫又でしょ」

リフトは今日も薄暗い。ただ音が静かなのは近くの工区の工事が終わったからかもしれない。

「まあ、猫又と言えば言えるけど、正確には人と猫のハイブリッド」
「何それ」

 今日は珍しくミサトが端末で調べ物をしている。顔を上げて横を見る。

「レイに聞かれて気になって再調査したの。この前の聞き取り調査で、木之本サクラが次元を超えるとき、背中に背負っていた原形質の塊、あれじゃないかと睨んでる」
「でも、この世界に現れた時期が違うわ。アンズちゃんはセカンドインパクト直後、サクラちゃんは数ヶ月前よ」
「次元を超えたのよ、そのくらいの誤差は出るわ」
「でも、確証がない」
「アンズちゃんの遺伝子を再度調査したのだけど、ジャンク遺伝子部分に、人工的に変更が加えられたとおぼしき部分があったわ」
「それって現在でもそれこそEVAの技術を使えば可能じゃないの」
「他の証拠もあるわ」

 リツコは自分の端末に何やら打ち込んだ、画面にデーターが出る。

「遺伝子って中立的な変化が蓄積されるの。それで相対的な世代の差がわかるわ。で、木之本サクラの遺伝子と比較したわ」
「同じだった?」
「違う。およそ百万年ぐらいアンズちゃんの方が後の生まれ。木之本サクラの話だと、あの子百万年近く魔法の影響で時間が静止していたって言っていた。話もあうわ」
「私たちの遺伝子と比べたらどう?」
「やはり、百万年違う」
「そう、でその情報から何が言える?」
「特にないわ。謎は多いし。何故人と猫の姿を行き来出来るのか判らないし」
「じゃ、今まで通りね」
「それならいいけどね、レイがなついてるし」

ーーーーーーーーーー

 修業とは別の手段で能力を得た者もあった。

「セリカ様、調子はいかがですか」
「特に問題ありませんよ」

 大道寺島の自室でセリカは微笑んだ。第二新東京市にある大道寺総合病院から移ったばかりだ。別に病気に成った訳ではない。病院で脳波通信機の埋め込みの手術を行ったからだ。イオスをレディーに育てるに当たって、人間の感覚を与えてあげてはとの意見がでた。WWR内部で話し合った結果、一番レディーに相応しく、脳の状態も向いているセリカに白羽の矢が立った。手術自体にそれ程危険性は無いが、この手術をすると、セリカのプライバシーはイオスに丸見えに成る。他の世界では義理の姉妹だったかもしれないイオスの為にセリカは了承した。

「それで、お嬢様自体はどのように成られましたか?」
「世界中が見えるように成りました」

 イオスとリンクしたおかげで、TB5が得た情報は、全て見ることが出来るように成った。文字通り世界中が見えるように成った。

「ともかく、イオスさんもセリカお嬢様を真似れば立派なレディーに成るのは間違いありません」
「お嬢様などと呼ばずに、今では主従ではありませんよ」
「いえこのセバスチャン、今でもセリカお嬢様、アヤカお嬢様の執事でございます」

 セリカと話している初老の男はそう言って頭を下げた。元々栗栖川家は、中堅の精密機器の製造をする企業を持っていた名家だった。規模はそれほどでもないが、ここでしか設計製造が出来ない機器で、その分野では世界シェアをほぼ100%持っていた。だがセカンドインパクト後諏訪に持っていた工場が地震で壊滅し、そのさいセリカとアヤカだけが生き残った。一気にお嬢様から孤児に成った二人を守ったのは、この元執事長のセバスチャンだ。元々ストリートファイトに明け暮れる荒くれ者だったが、セリカ達の父親に拾われて、それからはセリカ達の最強の守護者に成った。ソノミの救いの手が差し伸べられるまで、セカンドインパクト後の混乱を拳一つで守り切った。

「そうね」

 セリカは微笑んだ。

「でも、今は同士でもあります。EUの方を頼みましたよ」
「もちろんでございます。このセバスチャンにお任せを」

 セバスチャンは頭を上げると厳つい顔をほころばせた。今はセリカやアヤカの代わりにEUで諜報活動をしている。

「ですが、今はお世話をさせていただけますか」
「ええ、お願いしますね」

 セリカも微笑んだ。

ーーーーーーーーーー

 三日後セリカの頭の包帯が取れたところでセバスチャンはEUへ戻っていった。

「さてと、姉さんの運動機能のチェックといきますか」

 大道寺島の訓練場で胴着を着たセリカとアヤカが相対していた。側には測定器のある机の前に座っているレイン、何か起きた時の場合にカッシュ、隊長のソノミもいる。
 セリカはおでこに貼ってある小さな絆創膏を剥がした。肌色のためほとんど目立たないそれの下には、小さな穴があり、ガラスのレンズが覗いていた、見た目には装飾用に埋め込んだ宝石にも見えるが、その下にはWWR製の高性能センサーが入っている。TB5に直結のセンサーにも使えるが、セリカ自身にも使える。おかげで、セリカは赤外線視野などを得ている。

「いいわ」

 セリカが言うと早速アヤカが突っかけた。他の隊員の格闘術はカッシュ仕込みだが、アヤカとセリカはセバスチャン仕込みの喧嘩殺法だ。一歩踏み込むと、いきなり半回転して右足で姉の足を払う。セリカが後ろに逃げても、もう半回転したアヤカが体勢を崩したセリカに、手業が炸裂する。アヤカの方が格闘術では遙かに上だ。大体一撃で勝負は付く。
 セリカは後ろに逃げず一歩踏み込んだ。後ろ向きに成っているアヤカの背中に腰を落とした一撃を叩き込んだ。アヤカが吹っ飛び前転で転がる、痛そうに顔をしかめつつも立ち上がり構えを取る。

「今のは、イオスが完全に予知した攻撃だったわ。動きが読める」
「そ、じゃ、予知しても避けられない攻撃はどう」

 アヤカは音も立てず間を詰めジャブを送る。飛燕の様な連打も、セリカが全て避けている。焦って前のめりになったアヤカの拳を横からはじいて、アヤカを横に向け、アヤカの豊かな乳房に横から拳を叩き込んだ。激痛にアヤカは胸を押さえて転がり回る。10秒ほどしてやっと立ち上がるが、涙目だ。

「お姉ちゃん、私は胸自慢なんだから。跡付いちゃったじゃない」

 アヤカは胴着の隙間から自分の胸に息を吹きかけている。相当痛いらしい。

「お姉ちゃんと違って彼がいないんだから、アザが付いたらどうするの」
「ごめんね、大丈夫」

 セリカはあたふたと駆け寄りアヤカの胸をのぞき込もうと顔を近づけた。いきなりアヤカの膝が顔面に向かって飛んできた。

「えっ」

 セリカは横にスライドするように動き、左手でアヤカの膝の裏をすくい上げ、右手でアヤカの顔面を掴み床にたたきつけた。ただアヤカの後頭部は素早く近寄ったカッシュによって受け止められた。

「そこまで」

 カッシュが止めるとセリカは一歩下がって離れた。

「姉さんに触れも出来ないなんて」
「筋肉や視線の動きが完全に判るの。だけど、少し危険」

 そう言うとセリカは座り込んだ。

「ちょっと休んだら説明するわ」

ーーーーーーーーーー

「周りの情報がまったく遅れなく把握できるの。おかげで体機能をフルに発揮できるけど、体力が先に尽きちゃう」

 いざという時は、指令室に成る大道寺島の建物の居間に、島にいる上級の隊員は全員集まっている。居間と言っても、小さい家ならすっぽり入りそうに広い。セリカはソファに座りお茶を啜りながら、自分の経験を説明する。

「ただ、アヤカの動きは完全に判ったわ」
「私、姉さんが格闘家というより魔法使いや仙人に思えたわ」

 アヤカは隣で肩をすくめた。

「その最中TB5のイオスの負荷は有意差はありませんでした」

 TB5にセリカ達の代わりに上っているアオイから報告があった。アオイはアヤカより一つ下で、ナデシコ学園を昨年卒業し、月の半分を大道寺コーポレーションの社員、月の半分をTB5の駐在員をしている。セリカのかわりだ。

「まあ、イオイオスの能力なら、誤差範みぃでしょうね」

 やはりお茶を啜って解説するのは、レインだ。レインは徹夜続きなどで疲れてくると、どもる時がある。

「戦っている最中、イオスちゃんの行動予測はまるで自分の考えのように感じたわ」

 セリカは、茶碗を置くとおでこを撫でた。

「私は相当頑固で我が強い方と思います」
「お姉ちゃんって外見と違って凄い頑固だよね。まっ、人のことは言えないけど」

 アヤカはアイスコーヒーを啜っている。

「そんな私でも、私とイオスちゃんの考えの区別が出来なくなるのは、この技術の危険性を表していると思います。未成年の隊員は自我の形成が終わっていないのでこの技術を使うのは危険です」
「その危険性は考えには入れてはいたけど、やはりそうなのね」

 レインはジャスミン茶を啜っている。隊員達はそれぞれお茶の好みが違う。さきほどからお茶を給仕しているのは、小型の四本足のロボット、マックスだ。簡単なAIを積んでいて、隊員達の家事を一手に引き受けている。

「じゃあ今後の方針としては、被験者の自我レベルを何らかの手段で、計測して耐えられると判断できる指標が出来るまでは、この手術は封印ね。セリカちゃんはどうする?通信機は取り出す?」
「イオスちゃんの様な素直な妹が欲しかったところですので、このままで結構です」
「あれ、私が生意気みたいじゃない」
「自覚があるのならいいんじゃないの」

 ソノミにそう言われて微笑まれて、アヤカは口をひん曲げた。

「いいもん。私は脳波通信機なんて無くても世界最強をめざすから」

ーーーーーーーーーー

 翌日、セリカの姿は富士山麓のネルフの野外実験場にあった。ここはネルフ技術部の管理下にある実験場で、EVAの装備品などを野外で試験する時などに使うところだ。WWRからレインとイクヨの師弟とTBシリーズのメカニック達、ソノミの名代としてトモヨ、ボディーガードにカッシュとトウジが来ている。カッシュはトウジをたった一人の弟子にした時から、出来るだけ場数を踏ませるため、いろいろな場所に連れて行っている。ネルフからはリツコ、マヤなど技術部のメンバー数人と作戦部と警備課の者が数人、セリカとイオスの知り合いと言うことでレイも来ている。

「それにしてもレイン、無茶な物を開発したわね。脳波通信機ってうちの被験者は発狂したわよ」
「ネルフと違って安全第一に開発した上に、被験者が精神修行ばっちりだから。ま、ネルフの限界よね」
「あ~らその割にはこの実験のパワーソース準備出来なかったようね」

 三十路理系女子の頂上決戦のような嫌みの言い合いをしているのは、リツコとレインだ。

「まあ、上手く行けば、WWRは現場での新しいパワーツールが手に入る。ネルフは脳波コントロールの細密化の技術が手に入る。一挙両得でしょ」
「そうね、こっちの準備はいいから、いつでもいいわよ」
「了解、セリカちゃんいいわよ」

 実験場の見晴らしがいい広場の中央に立ったセリカは頷いた。現場の測定係と土門夫妻とトウジ以外は側の強化プラスチックの建物に避難した。実験が失敗の場合広範囲の被害が出る可能性があるからだ。
 セリカは頷くとぶつぶつと何かを呟き始めた。TB5のイオスと通信しているらしい。測定のため黒いボディースーツを着て、上空からの誤射に対応するため防御用のツバの大きい帽子を被り、防護用の黒マントを身につけ、指輪の形の照準装置を右手中指に付けたセリカは魔法使いのお姉さんにも見える。

「エイトロン・シュート」

 セリカがそう言って、指で30mほど離れた的の中央を指さした。そこには一台の中古の小型車があった。上空よりキラキラとしたエネルギービームが照射され、小型車が輝く。ネルフが現在では使っていない静止軌道攻撃衛星月影一号機と極軌道攻撃衛星星影の三号機から発射されたエネルギービームだ。今回の実験に最適なため廃物利用をさせてもらった。
 エネルギービームが小型車を組み替えていく。それは人型のロボットの様な形に変わっていく。30秒ほどでセリカと同じぐらいの身長のアンドロイドに成った。姿は驚くほどアヤカに似ている。セリカが一番見ている人間だからかもしれない。ただ両耳の上にアンテナの様な物を付けている。アンドロイドはできあがってからは動かずただ立っている。

「第一段階成功っと」

 レインは測定器のデーターを見つつ呟いた。

「じゃセリカちゃん、動かしてみて」

 セリカは頷くと脳波通信機で、アンドロイドに指令を送った。アンドロイドは側にあった国連軍払い下げの中古装甲車に近づいた。下に潜り込むとあっけなく持ち上げた。今度はゆっくり下ろす。

「じゃあ装甲車に人が閉じ込められたと仮定して、救助行動してみて」

 アンドロイドは装甲車の装甲に貫手を放った。簡単に手首まで埋まる。そこから装甲をひん曲げて、穴を大きくしていく。

「それにしても無茶な物を開発したわね、レイン。エネルギービームでスクラップを再構成、脳波コントロール型のアンドロイドを現場で作るなんて。でもあれもたないでしょ」
「まあね、無理矢理結合させているから、5分ぐらいでおじゃん」

 レインの予想通り、5分と13秒でアンドロイドは自然分解し砂状の堆積物に変わった。

「セリカちゃん、ご苦労様」

 測定器から離れてレインはセリカに近づいていく。

「ところで、あのアンドロイドの名前は?なぜエイトロン?」
「私の分身、私はTBシリーズ8人目のパイロットだから、それでエイトロン」
「なるほどね、ま、セリカちゃんが作ったからセリオあたりもいいかな」
「レインさん、センスないです」
「う」
「こいつは昔からセンス無いんだ。いて」

 近づいてきて減らず口を叩いたカッシュの足をレインが踏んづけていた。

「ほんま、師匠は尻にひかれてるなぁ」
「うるさいトウジ、こいつの尻はデカくて潰される、いて」

 今度はレインが持っていた工具で思い切り腹を殴られて、カッシュはうずくまった。何故か昔から妻の一撃だけは食らってしまう拳法の達人だった。

ーーーーーーーーーー

「へ~それってシンクロみたいな物?」
「EVAのシンクロとは少し原理が違うみたい」

 翌日は休みだったので、朝食を食べにレイが葛城家に来ている。最近は振りかけにもはまっている。レイが白米にはまっていると聞きつけたソノミが、レイに日本の各地に残る、郷土品のふりかけ詰め合わせを送ったところ、またまたはまってしまった。今日は貴重品の鰹のそぼろを振りかけて食べている。魚系のふりかけなので、アンズにもお裾分けしている。また、友好関係は食べ物からというわけか、葛城家には大道寺家から、美味しい物、美味しい酒がお土産でよく届く。その為か心情的にはミサトは随分WWRに好意的に成っている。

「あまり、EVAとは関係ない」
「そっかぁ」
「シンちゃん、何の話をしてるの」
「ネルフでのお仕事の話」
「ふ~ん」

 アンズはそれほどは興味が無いらしく、それ以上は聞かなかった。レイのふりかけのうち、鯛そぼろを勝手にご飯にかけて食べ始めた。今日はまた徹夜仕事だったミサトはまだ寝ている。

「そう言えばお姉ちゃんは修業はやめたの?」
「うん」

 嬉しそうにアンズは答えた。

ーーーーーーーーーー

 穏やかな休日を楽しんでいる者もいれば、そうでない者もいる。
 よほどこの銀行とは相性が悪いのだろう。その日の午後トモヨは、以前銀行強盗にあった銀行を訪れていた。預金をどうしようか考えていたところ、銀行よりセキュリティーと金庫を新しくしたので、預金の引き上げは待って欲しいとの連絡があった。その為訪問して確かめることにした。お供はケンスケ一人だ。ポケットにはパンティーも入っているので、何かあっても大丈夫だろうというコノエの判断からだ。ただ移動にはパーカーが運転するリムジンを使用した。パーカーはリムジンで待機している。
 交代と成った銀行の支店長の案内で、支店内のセキュリティーの改善点などを見て回った。問題は無さそうだったので預金の引き上げは無いと支店長に告げると、支店長はほっとした表情を隠さなかった。大道寺家の預金額など取引額は洒落に成らない額だからだ。
 一休みした後、新型の金庫室の案内と成った。特殊合金製のその金庫はWWRやネルフでも穴を開けるのに一日はかかると説明され、トモヨは思わず苦笑いをした。秘書兼ボディーガード兼オタク友達として来ているケンスケもだ。

「実際入ってみましょう」

 支店長とその秘書、トモヨとケンスケで金庫室の中に入った。鰻の寝床のように細長いが、しっかりとした作りだ。目に付いた点をトモヨが質問していく。その為結構時間がかかった。

「あれ?変な音」

 金庫室の一番奥のあたりで説明を受けていたケンスケは、入り口から聞こえる異音に気がついた。

「あっ」

 金庫室の入り口が閉まっていく。ケンスケは室内にあった椅子を掴んで、入り口に走った。戸に椅子を挟み込もうとしたが、その前に戸は完全に閉まった。

「閉じ込めてやったぞ、大道寺トモヨお前のせいで……」

 スピーカーから調子の外れた、何か背筋の冷たくなるような響きの声が響いてきた。

「あれは前支店長の声です。この前の事件の責任をとって当行をやめています」

 支店長の顔色が青くなった。

「やめた?」

 良家のお嬢様そのもののトモヨだが、このような時はぞっとするような冷たい声がする。支店長の体に軽く震えが来た。

「いえ、事実上の解雇です」
「逆恨みですね。金庫は内側から開きますか?」
「無理です。それに空気は30分すると、強制排気され気圧が0.1気圧まで下がります」
「落ち着いて、きっと外でパーカーが気がついていますから」

 その通りだった。一流には独特の直感という物がある。執事としても諜報員としても一流ならなおさらだ。そのころ駐車場のリムジンで待っていたパーカーだが、何か胸騒ぎがした。銀行の玄関から入っていく。何か変な匂いがした

「あらま」

 行員が三人ほど入り口ロビーで倒れていた。パーカーはポケットから簡易ガスマスクを取り出し付けた。水中眼鏡みたいなグラスもかける。赤外線で熱源も見え、周囲の大気組成も計れる優れものだ。行員の様子を見てとりあえず命に別状は無いようなので放っておく。空気中のガス濃度も高くないのでマスクは外した。
 耳をこらすと狂った様な笑い声がするため、そちらに忍び足で近寄っていく。金庫の管理室に来た。そこではよれよれの背広を着た中年男が、モニターに映るトモヨ達を罵っていた。
 パーカーは男の後ろに近寄ると指輪を首筋に当てた。WWR特製の気絶装置だ。暴れて助けにくい遭難者などを気絶させるために開発されたため、気絶はさせても全く後遺症はない。モニターには支店長と秘書、トモヨが床に転がっているのが見えた。

「ケンスケ様、どうされました、トモヨ様は?」
 
 唯一ケンスケだけが目を覚ましていて、カメラを見ていた。

「金庫に閉じ込められた。もう空気がない。三人は酸欠で倒れた。僕もそろそろ危ない」
「この金庫はわたくしでも1時間はかかります。本隊を呼びますので、お気を確かに」
「頼む、パーカーさん」

 ケンスケも座り込んでしまった。意識も途切れ途切れだ。

「WWR、聞こえますか。こちらパーカー」

 TB5を通じて大道寺島および大道寺家に連絡が入ったが、いまTBシリーズも隊員もほとんど出払っていた。かわりに1.2リッターのモンスターバイクに乗ったカッシュとトウジが五分でやってきた。この二人しか屋敷にいなかった。

「カッシュ様」
「ようは、この金庫の扉をぶち抜けばいいんだな、ケンスケ、起きろ」

 カッシュの声に意識が飛びかかっているケンスケが、目を覚ました。

「いま、この戸をぶち破る。この戸の前から三人をどけろ」
「はい」

 ケンスケは何とか全員を運んだ後、自分も気絶した。

「トウジ、これから最終奥義を放つ、よく見ておけ」
「はい、師匠」

 トウジは一歩下がってカッシュを見ている。手にはパーカーから渡された酸素ボンベを持っている。

「我が流派、東方不敗は最終奥義」

 カッシュは腰を落として構えた。右手を前を払うように動かし、気をためていく。トウジには師匠の拳が輝いて見えた。

「石破天驚拳!!」

 放たれた突きは一見普通の突きだが、威力は凄まじく、幅1mはある巨人の拳で叩かれたような大穴が特殊合金の扉に開き貫通した。えぐれた部分は金庫室の奥の壁にぶち当たった。パーカーは自分も酸欠に成らぬように気をつけつつ扉の中に飛び込み、素早くトモヨの鼻と口に酸素マスクを当てた。

「いまのは」

 トウジは唖然として、その大穴を見ていた。

「東方不敗流の最終奥義、石破天驚拳。この世に破れぬ物は無し」
「石破天驚拳」
「何をぼけっとしている、早く助けてこい」

 言われてトウジは慌てて大穴から飛び込んでいった。

ーーーーーーーーーー

 酸欠で倒れたトモヨとケンスケ、行員達は第二新東京市の大道寺総合病院に入院と成った。念のためNMRやCTなどで脳障害などが起きてないか検査したが問題は無かった。カッシュとトウジは二人を見舞った後、病室を後にした。長い廊下を歩いて行く。

「トウジ」
「はい、師匠」
「昨日見せた技は、東方不敗流の奥義だ」
「わいにも出来ますか」
「出来る、だがなトウジ」

 カッシュは振り返った。

「強い力は、それだけでは駄目なんだ」
「使い方ですか」
「まあそうなんだが、少し違う、簡単に言うと、愛なんだけどな」

 言っていて恥ずかしいのか、カッシュは鼻をかいた。また前を向いた。

「それが判ったのは俺も随分経ってからだからな、お」

 廊下の向こうからヒカリが歩いてくるのが見えた。

「ま、とりあえずクラスメイトには、優しくだ。ヒカリちゃんを案内してやれ」
「はい、師匠」

 トウジは早歩きで廊下の向こうのヒカリの方に向かった。

「愛ですよね、師匠」

 カッシュは呟くと、病室に戻っていった。

ーーーーーーーーーー

「さてと、日本に行く用意をしようかな」

 その頃、ネルフの関係施設で眼鏡の少女は呟いた。その部屋は現在の自室だが、机とベッドとビルトインのクローゼットがあるだけの簡素な部屋だ。

「それにしても、花の乙女に密入国しろってめちゃくちゃよね。ただでさえ美少女は目立つんだから」

 少女は机にある日本のアニメ雑誌をめくる。

「日本のアニメってメガネっ娘が人気あったりするから、私ももてちゃったりして、そしたら目立っちゃって、ま、現実とアニメは違うわよね」

 少女は雑誌を大きなくずかごに投げ入れた。

一方地球の反対側では、一人の少女が夢の国にいた。いつもは華やかと言うよりは騒がしい美貌の持ち主の少女だが、今は年相応と言える、幼さも見える寝顔で寝言を呟いていた。




次回予告

変態に始まり美少女で締めるという無理やりな外伝は終わった
。だがやっぱり題名と内容がミスマッチなのは作者が歳だからだろうか。
レイとアンズばかり仲良くなっているがシンジはどうなるのか。
次回「EVAザクラ新劇場版 破」
さぁて、この次もサービス、サービス!



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