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No.4530の一覧
[0] 俺の道(現実→DQ3トリップ)[緑茶爺](2008/10/21 17:53)
[1] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第一話[緑茶爺](2008/10/21 11:49)
[2] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第二話[緑茶爺](2008/10/22 09:25)
[3] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第三話[緑茶爺](2008/10/22 09:28)
[4] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第四話[緑茶爺](2008/10/22 14:44)
[5] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第五話[緑茶爺](2008/10/22 19:06)
[6] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第六話[緑茶爺](2008/10/23 13:25)
[7] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第七話[緑茶爺](2008/10/24 18:39)
[8] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第八話[緑茶爺](2008/11/06 12:12)
[9] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第九話[緑茶爺](2008/11/29 15:58)
[10] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第九話 番外編[緑茶爺](2008/11/29 15:59)
[11] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第十話[緑茶爺](2009/07/04 20:49)
[12] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第十一話[緑茶爺](2009/12/15 18:06)
[13] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第八話終了時ステータス[緑茶爺](2008/11/06 12:11)
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[4530] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第十話
Name: 緑茶爺◆9b0f1c9a ID:8b4f46b1 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/07/04 20:49

レベルアップ2日目



「…外が白んできたな。…もう寝るのは諦めるとするか…。」



あー、結局一睡もできなかったな。

色々考えたんだが、やはり良い答えが浮かばない。
ハイネの気持ちには応えたい。が、応えることによって、ニルとティファとの関係が微妙に崩れそうでなぁ。
って別に気にすることでもないのかなぁ。やっぱ俺の自意識過剰なのかなぁ…。

男としてみれば、これは嬉しい事だ。
ハイネのように可愛い、しっかりしたコに好きと言われたんだ。嬉しくないワケがない。
個人としては、彼女に対して好意と呼べる感情も勿論ある。

だが、ハイネとつき合うとして、今と何が変わるのか。

同じパーティーメンバーなのだから、四六時中一緒にいることになる。それは何ら問題ない。
むしろ、ハイネをいつでも守れるのだから男冥利に尽きる。

だが、ニルとティファも一緒なのだ。
イチャイチャすることも難しいだろう。ってバカ。そうじゃなくて。

何となく空気が悪くなるような気がするんだよな。
女の子ってちょっちドロドロした所があるし。ってこれは偏見?

まぁ、ニルとティファなら別段、祝福してくれるとは思うんだよな。良いコ達だし。

うーん、今までこういう事で悩んだ経験がないから、にんともかんとも…。にんにん。





「おっはようございまーす」


気怠い身体を起こすため、朝風呂へと向かっていると後ろから声をかけられた。


「あー、おはよう。朝っぱらから元気だな、ニルは。」

「ええ! それが私の取り柄ですからっ」


ホントにこのコは明るいな。
何となくだが性格的に、魔法使いより武闘家なんかが似合うんじゃないかと思うんだけど。


「イルハさんどうしたんですか? まだ朝食に行くには早いですよね?」

「ああ、ちっと目覚まし代わりに朝風呂でも、と思ってね。」


そう言いながら、肩から下げたタオルを指さす。


「あー、なるほど。それはいいですね。あたしも朝のお風呂大好きですっ」


ニルは満面の笑みで同意してくれた。あぁっ、笑顔が眩しいっ。


「そういうニルも、何だってこんな朝早くに?」

「あ、実はですねぇ…。」

「イルハさん。おはようございます。」


そう言われて後ろを振り向くと、そこにはハイネとティファが立っていた。


「ああ、おはよう。二人とも。っていうか三人揃ってどうしたんだ?」

「実はあたし達、トレーニングに行ってきたんですよっ」


トレーニング?


「はい、昨日のレベル上げで痛感したんです。私たちっていうかニルと私がなんですけど、やはり体力が無いな、と。」


それで朝練を?


「そうですっ」


いや、そこでビシッとVサインされてもなぁ、ニルよ。


「折角ですから、わたしも一緒に走ってきたんですよ。」


ティファも努力家だねぇ。もともと持っている才能が段違いなのに。
努力する天才って末恐ろしいな。って、いや別に恐ろしくはないか、勇者なんだし。


「それで、これから一旦部屋に戻ってから、お風呂へ汗を流しに行こうかと。」


なるほど。だから、ニルの格好も動きやすいものだったんだな。私服にしちゃラフすぎると思ったんだ。
ハイネとティファもデザインはお揃いの色違いだな。よくよく見れば。


「いやぁ、トレーニングなんて偉いな三人とも。こりゃ俺も見習わないとなぁ。」

「イルハさんはもう十分じゃないんですか?」


いやいや、十分ってこたぁない。身体ってのは一日あけただけでも鈍ってくる。それを取り戻すのは結構大変なんだ。
出来るならば一日たりとも鍛錬を欠かさないようにしたい。
例え、こなす量は少なくとも継続すること。それが肝要だ。
幸いこの世界ならば鍛錬に事欠くことはない。って、幸いじゃないか?

それから俺はまた後で、と三人と別れ風呂へと向かう。

何か三人と話してたら、さっきまで悩んでたのが馬鹿らしくなってきちゃったなぁ。
あのコ達は本当に真っ直ぐだ。裏表がない。純真なんだな。

年長者たる俺がしっかりせにゃどうする。





「イルハさん。」

「ん、おう。」


風呂から上がり、ホテルのロビーで涼んでいるとハイネが声を掛けてきた。
どうやらハイネも風呂上がりのようだ。若干上気して朱くなった頬と洗い髪が相まって、非常に可愛らしい。


「? どうかしましたか?」

「あ、いやいや、何でもないです。」

「…隣、座ってもよろしいですか?」

「あ、気づくのが遅れてスマン、座ってくれ。」


俺がそう促すとハイネは、俺の隣にちょこんと座る、が。

…えーっと、これは…。ちょっと近すぎやしませんか?
膝と膝が触れ合ってしまうような距離なんですが…。

しかし女の子ってなぁ、なんでこんなに良い匂いするんだろうな? 風呂上がりなんかは特にそうなんだが。
同じ様な石鹸やら使っているはずなのに、ホントに不思議だ。

俺がちょっと咳払いをしつつ、少し間を開けようとすると、ハイネもぴったりと横移動してきた。


「…えーと、ハイネさん?」

「…近くに座るのはだめでしょうか?」


あー、そんな上目遣いで見上げないでくれ。女の子のその目線に男は逆らえないんだよ。


「やや、全然ダメじゃないんだ。っていうか、むしろ嬉しい? って、そういう話じゃなくてだな。」


情けない話だが、ちょっち慌ててしまう俺。中学生かっ


「ふふっ、イルハさんのそういうところ、すこくカワイイですよ?」

「ぶっ!」


…こんな十近くも離れているようなコに、よもやカワイイなんて言われるとは…。
嬉しいやら、情けないやら…。

って、そういえばハイネ達の年っていくつなんだ? 詳しく聞いたことなかった気がするんだが。


「あー…、そういえば、年齢については話していませんでしたね。」

「差し支えなければ、聞いてもいいかな?」

「ええ、私とニルは15歳、ティファは二つ上の17歳です。」



……………え?



じうごさいとじうななさい?



じ う ご さ い と じ う な な さ い ! ?



「? …どうかしましたか?」


固まった俺を見て、心配そうに声を掛けてくるハイネ(15)。

いや、確かに若いとは思ってたんだが…。よもやじうごだとは…。
俺の世界の成人と、こっちでの成人の年齢が違う? こっちでは15といえば立派な成人なのか?
そういえばゲームの勇者も旅立ちの年齢は16だったような。
まぁ、その辺りの年齢が妥当な所なんだろう。いや、しかし、よもや…。


「じゃぁ、イルハさんはおいくつなんですか?」

「………………28。」

「えぇっ!?」


コラ。なんでそんな驚くんだよ? あ?


「あ、いや、大きい声だしちゃってごめんなさい。…でも、イルハさんがそんなお歳だったなんて…。」


お歳っつーな。やたら歳食ってるみたいじゃないか。
それに28なんつったら、やっとこれから脂がのってくる頃だろう。


「ええ、まぁ、そうなんですけど。」


何だか納得してない様子だな。


「イルハさんの、見た目と年齢のギャップがどうも…。」


まぁ、それはいつも言われてきたよ。何度も何度も、ね。
この世界でも言われることになるとはね。ホント童顔ってなぁ困ったもんだ。


「えー、でも老けて見えるより良いと思うんですけど…。」


世の老け顔の人に怒られるぞ。


「その言い方の方が怒られると思いますけど。」


…確かに。



そういえば、ハイネはまだ冒険者に成り立てなんだったよな?


「はい、私とニルは普通の人より冒険者になるのがちょっと遅かったんです。」


とは言っても、ティファも今17なんだとすれば、旅立ちは16位だったんだろ?


「ええ、そう聞いています。」


じゃぁ、さして遅いともいわんだろう。天下の勇者様が16で旅立ちだったんだから。


「まぁ…、そうとも言えますけど。」


それと一つ大事なことを忘れているぞ?
俺は最近冒険者になったばっかりだっ


「あ、そうでした。ついつい忘れてしまうんですよね。余りにも、イルハさんの立ち振る舞いが自然なもので…。」


まったく、忘れないでくれよ?
しかし、こんなある意味で過酷な世界では、大人になるのも早いんだな。ならざるを得ないというか、なんというか。
俺の感覚でいえば、15、16なんてまだ世間も碌に解っちゃいない、てんでお子様って感じなんだけどな。
でも、この世界ではこんな年頃のコ達が、立派に手に職付けて働いてるんだもんな。文字どおり命を賭けて。
いやはや、今更ながらスゲェ世界だな。ドラクエって。

まぁ、よくよく考えれば少年兵なんてのは俺の世界でも聞いた言葉だったな。
知識としては知っているが、実感としてはやっぱり無いんだよな。画面の向こう側の話というかさ。
俺の半分しか生きていない若い子どもが、殺し、殺されている、なんてのは。

でも今は、こうして俺より十以上若い奴らが必至こいて戦っているんだ。
世界を救うなんて夢物語みたいなことを、大真面目な目標にして。

しかしまぁ、おっさんに入りかけた俺だが、気合い入れて若い奴らに負けないようにせにゃ。うん。


「うっし。」

「?」


俺が一つ気合いを入れ直してる隣では、ハイネが盛大に?マークを浮かべていた。そりゃそうだ。


「なに、俺がお前達を護ってやるって気合いを入れ直したんだよ。ここは一つ、この俺に任せなさいっ」


バンッと胸を反らせて見得を切る。これが男ってもんだってばよ。


「……………。」


軽くポカンとしているハイネ。
いやいやいや、男が啖呵を切ったんだ。何か反応してくれよ。

と思ったらみるみる頬が朱く染まっていく。


「…はい、お願いします。でも私、護られてばかりでは性に合わないので、一緒に戦いますからね?」


ちょこんと首を傾げながら笑うハイネ。


「お、おう。」


そんなカワイイ反応に、思わず軽くどもってしまう俺。…しまらねぇ。








「さて、飯も食い終わったことだし、少し休憩してから出発するからな。」

「「「はい。」」」


ん、いい返事だね。


「今日も、ここ周辺の森でのレベルアップでいいんですよね?」

「ああ、もう暫くはこの辺りで慣らそう。まだまだ学べることは沢山ある。」


そうだ、森での戦闘、草原での戦闘。
場所によって、相手によって戦い方は千差万別。
位置取り、連携、攻撃に移るときのタイミング。
皆で勉強することは山のようにある。

俺だってもとの世界じゃ、しがない一般市民だったんだから、そこら辺には疎いしな。
実地で経験を積まないと。
幸い、能力的にまだ余裕がある。今のうちに色々な対処法を考えておかないと、いざというときに身体が動きませんでした、じゃぁ取り返しがつかないからな。

俺たちは新参のパーティーもいいとこだ。
ちゃんとした経験を積んでいるのがティファだけなんて、危ういことこの上ない。
本当はもっと年長者がいれば楽になるんだろうけどな。指揮官タイプの人間が。

自己分析するに俺は兵士タイプなんだと思う。
戦闘レベルでの視野ならひとまず問題はないと思うんだが、更に広い、更に上のレベルでの視野はまだ持てそうにない。
まぁ、この世界は基本的に戦闘の繰り返しだから、それでも問題はないと思うんだけどな。

現状の4マンセルの戦闘であればいい。だが、相手は魔物だ。
いつ何時、大量な物量を持って攻めてこないとも限らない。
それに戦闘時、後方に指揮官がいると負担がだいぶ減る。目の前の戦闘に集中できるからな。
これからその辺りも考えていかないとな。
娘っこ達3人は皆、比較的広い視野で戦闘が出来ているから、現状そこまで気にしなくてもいいとは思うが。
年長者たる俺がその役を引き受けるのが妥当だろう。

って、これは俺の気負い過ぎ?





「やっ!」

振り下ろされるティファの一撃。

「たぁっ!」

鋭く繰り出されるハイネの一突き。

「イオっ!」

手傷を負った魔物達を一掃する、ニルの広範囲魔法。

「ふーむ、こりゃ俺の出番が無いなぁ。」

雷神の剣を肩に担ぎながら呟く。



この三人の連携は見事なもんだ
魔法が先制しても、直接打撃が先制しても一気に畳み掛けられる。
ティファが切り込み、ハイネが牽制、ニルがイオを放ち、再びティファとハイネが斬りかかる。

ニルがイオを覚えたことが大きいな。昨日とは打って変わって、戦闘が楽になった。
まぁ、消費MPが大きいのが玉に瑕だが。

「いぇい、いぇーいっ!」

…あー、なんだ、ニル。
イオを覚えて嬉しいのは分かるんだが、戦闘中にはしゃぐな。
俺に向かってVサインを向けるなって。分かった。分かったから。

なんて戦闘を繰り返していたら、ニルが早速ガス欠になった。

当たり前だ、アホタレ。配分を考えろっつーに。


「…あい…、すいませんです…。」


ってことで、ニルは後方待機。魔道師の杖でメラを使って貰う。
ニルに直接打撃をやらせるなんて、余りにも危険だ。
ゲーム中で魔法使いに打撃とかやらせてたが、現実じゃぁ恐ろしくて出来やしない。
杖で魔物を直接殴るとかあり得ん。



そんなこんなで、一旦休憩をすることに。ニルの魔力回復のためにもね。
聖水で簡易結界を張り、休憩。
街で買ってきた保存食、干肉や乾燥させたじゃがいもを火にかけて一煮立ち。
本来水は貴重な物だが、今回はすぐにでも街へと戻れるので惜しげもなく使用することに。
それから、これまた乾燥させ、細かく砕いた香味野菜と香辛料も一緒に鍋に加え、更にニル、もとい煮る。
十分に肉とじゃがいもに火が通ったら、鍋からそれぞれの皿に分ける。

うん、まぁこんなもんか。中々良い匂いだ。味の方は…。
俺は別段、味に頓着しないのでいいんだが、娘っコ達はというと…。


「ん、男の料理ですね。」

「ね。」

「うんうん。」


あんだよ、文句あんなら食うなよ。


「あ、いえいえ、別に文句なんてありませんよぅ!」

「そうですよ、美味しいですよ?」

「うんうん。」


それならば良し。

しかし…。
ニルよ、一心不乱に食いすぎ。なんつーか、もちっと女の子らしく、こう、さぁ。


「えー、何かおかしいですかー?」


いや、おかしいっつうか、なんつうか。
要するに、そんながっついて食べるなってことなワケですよ?


「あり、そんなにがっついてます?」


うーん、ちっとばかし女の子っぽくはないかな? 前々から思ってはいたんだが。
なぁ、とハイネとティファに視線を送るが、ハイネは見慣れているせいか、何か問題が?みたいな顔をしている。
お前に聞いた俺が間違いだったよ。そりゃハイネは見慣れてるよな。付き合い長いし。
ただティファは苦笑。
良かった。このコだけでも共感できて。


「でもでも、元気に食べる姿って、見ていて気持ちよくありません?」


ん、まぁ確かに一理あるな。


「でしょでしょ。ならOKですっ」

この娘は…。
…まぁ、ニルらしいっちゃらしいか。



さて。

「おし。ぼちぼち行くぞ。」

暫し食後の休憩を挟んだ後、行動を再開する。

休憩をしたことでニルの魔力も若干回復。
まぁ、魔道師の杖だけでも結構行けるのが解ったしな。いざって時のために魔力は温存しといてもらう。

結界を解除し、いざ出発。

と、

「ん?」

なんだ? この違和感?
いや、違和感っていうか、なんていうか?

俺が見るともなしに辺りに視線を向けると、森の奥、だいぶ離れてはいるが何かがある。
あるというか、居るというか。「何か」を「知覚」したというのか。
なんだこれ? 
なn…

「うおっ!」

考えるより先に体が動いた。動いてくれたと言った方が正しいか。
一瞬前まで俺が立っていた場所を何かが通過する。
ハッキリとは見えなかったが、恐らくだが炎? 鋭利に尖った矢のような炎?

「え?」

急に伏せた俺を三人が振り返る。

ヤバイ。よく解らんが何かヤバイ。背中を何かが這い上がってくる感じ。良くない予感だ。

「伏せろ! 三人とも伏せろ! 今すぐ!」

俺が怒鳴る。
三人とも一瞬ビックリしたような顔を浮かべるが、俺の表情を見て現状を理解してくれたのか、直ぐさまその場に伏せる。
幸いにも次の炎の矢は飛んでこなかった。

飛んではこなかったんだが。

「うん、やっぱりスゴイね。アレ避けるんだ。」

頭上からの声で俺は、直ぐさま伏せていた場所から横に転がる。
と、そこに突き立てられる無数の氷の矢。

なんだってんだ! くそ!

体勢を何とか立て直し、雷神の剣を抜く。

「へぇ、これって雷神の剣?」

今度は俺の真横から聞こえてきた。
横に視線を向ける前に、後方に倒れ込むように転がる。
と、前方から迫っていた短剣の横薙ぎの一閃を、間一髪でかわす。

「くっそ!」

後転の勢いそのまま立ち上がり、木を背負うように立ち上がる。

どうなってんだ!

「ホントよく反応するね?」

また上かっ。

咄嗟に左に飛び退く。と、立っていた地面が爆ぜ、土煙が上がる。
なんだ今のは!?

視線を上に向けた時、そこにはもう影も形もない。が、

「だっ!」

再び悪寒を感じ、地に伏せる。すると、頭上を何かが一閃した。

「…嘘だろ、オイ。」

俺の立っていたすぐ傍の木が、横に両断され、倒れてくる。

こんにゃろっ!

木を避け体勢を調えると、下段に剣を構える。
そして視線、意識を周囲に巡らせる。

木の倒れる音が響き渡る中、ふと背後に感じる気配。

「りゃぁっ!」

振り向きざまの下段からの切り上げ。

ギィンと鈍い、金属がぶつかり合うような音が辺りに響く。

「っとと、よく分かったね?」

剣と盾。その向こうに見えるは襲撃者。だが、俺はその姿を見たとき思考が一瞬止まってしまった。

「…え…?」

一瞬、ホントに時が止まったように感じた。
その直後、腹部に感じる衝撃。まるで、でっけぇ木槌で殴られたみてえだ。
堪らず、体ごと吹き飛ばされてしまう。

「ぐぁっ!」

直後、背中に感じる衝撃。木にぶつかったか。
肺から空気が一気に抜け、呼吸が止まる。視界が薄れる。
ヤバイ。ヤバイヤバイ。こいつは拙いぞ。

無理矢理、途切れそうになる意識を繋ぐ。

「っは、ぐっ」

あー、キッツイの貰ったなぁ。
体が上手く動かねぇ、なんてことは言ってられないな。だって、

「じゃぁ、次でオシマイ、ね?」

おいおい、なんだそれ。その凶悪なモノは。

そいつが掲げた右手の先にあるモノ。

紫電を放つ球形の物体。
人の背丈位は楽にありそうだ。

なんだろう、アレは。
稲妻を、捏ねくり回して丸く集めれば、あんな形になるのか?

「バイバイ。」

その何とも軽い一言と共に、ソレは俺に向かって放たれた。


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