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No.18953の一覧
[0]  マブラヴ+SRW α アフター (チラシの裏から移転)[まくがいば~](2014/03/30 23:28)
[1]  マブラヴ+SRW α アフター  プロローグ[まくがいば~](2014/03/30 02:06)
[2]  マブラヴ+SRW α アフター  第一話[まくがいば~](2014/09/14 03:31)
[3]  マブラヴ+SRW α アフター  第二話[まくがいば~](2014/03/30 02:04)
[4]  マブラヴ+SRW α アフター   第三話[まくがいば~](2014/03/31 20:49)
[5]  マブラヴ+SRW α アフター   第四話[まくがいば~](2014/03/30 02:03)
[6]  マブラヴ+SRW α アフター  第五話[まくがいば~](2014/03/30 02:03)
[7]  マブラヴ+SRW α アフター  第六話[まくがいば~](2014/03/30 02:03)
[8]  マブラヴ+SRW α アフター  第七話[まくがいば~](2014/03/30 02:02)
[9]  マブラヴ+SRW α アフター  第八話[まくがいば~](2014/03/30 02:02)
[10]  マブラヴ+SRW α アフター  第九話[まくがいば~](2014/03/30 02:01)
[11]  マブラヴ+SRW α アフター  第十話[まくがいば~](2014/03/30 02:01)
[12]  マブラヴ+SRW α アフター  第十一話[まくがいば~](2014/03/30 02:00)
[13]  マブラヴ+SRW α アフター  第十二話[まくがいば~](2014/03/30 02:00)
[14]  マブラヴ+SRW α アフター  第十三話[まくがいば~](2014/03/30 01:59)
[15]  マブラヴ+SRW α アフター  第十四話[まくがいば~](2014/04/12 00:53)
[16]  マブラヴ+SRW α アフター  第十五話[まくがいば~](2014/04/24 01:00)
[17]  マブラヴ+SRW α アフター  第十六話[まくがいば~](2014/06/16 21:14)
[18]  マブラヴ+SRW α アフター  第十七話[まくがいば~](2014/08/24 21:53)
[19]  マブラヴ+SRW α アフター  第十八話[まくがいば~](2014/08/24 21:56)
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[18953]  マブラヴ+SRW α アフター  第十話
Name: まくがいば~◆498b3cf7 ID:1770d12e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2014/03/30 02:01
 地球連邦軍極東基地、司令部内第一ブリーフィングルームには、先ほどの騒動に参加した面々の他、シン
ジやゲッターチーム消失の報を受けて、オーブからキラ=ヤマト。テスラ=ライヒ研からブルックリン=ラ
ックフィールドと、SRXチームのライディース=F=ブランシュタインが駆けつけていた。
 パイロットシートが横五列で並んでいる中、最前列に座っているのは、アスカ、レイ、カトル、五飛。そ
の次の列に座っているのが、キラ、ライ、ブリット、宙、鉄也。
キラが隣に座るライに訊く。
「リュウセイさんや、アヤ大尉は大丈夫なんですか?」
 超電磁ネットワイヤー作戦に先立って敢行された、シベリア通過中の大怪球への超高度からのハイパート
ロニウムバスターキャノンによる、遠距離攻撃作戦。その際、無理な長時間攻撃によってすべての駆動シス
テムに過負荷がかかり、T,LINK系システムも損傷、その為、ライと隊長であるヴィレッタ=バディム以
外の三人が、昏倒状態になってしまっていたのだ。
「あのバカは、もう歩けるところまで回復しているが、アヤ大尉とマイの方は、昨日、ようやく意識が戻っ
たところだ。まぁ、身体的損傷はないから、心配はいらん」
 すぐに回復するそうだ、と腕を組んで相変わらずのぶっきらぼうで、答えるライ。相棒とも言えるリュウ
セイ=ダテをバカ呼ばわりしているところ、本当に心配はなさそうだと安堵するキラ。
「キラも大変だったんだろ?」
 ライの隣に座るブリットが言う。
 実はキラと、この場にいないアスラン=ザラは、連邦軍と国際警察機構の要請を受けて、フリーダムとジ
ャスティスに乗り、その攻撃の観測を、遠距離から行っていたのだ。
 その際、大怪球の周囲を警戒していたと思われる十傑集が一人、『白昼の残月』と遭遇し、交戦をしてい
た。どういうワザか理解できないが、シベリアの針葉樹林が、矢のように放たれ、次々と二機のMSを追い
立てまくり、必死の回避行動の果て、わずかな隙をみつけて放った二機がかりの一斉掃射は、尽く躱される
という、思い出すだけで悪夢のような戦闘だった。
 それでも、残月から逃げきり、大怪球に関する貴重なデータを提示できたのは、両機のMSの規格から外
れた性能と、キラとアスランの卓越した操縦技術があったからだろう。フリーダムは片腕をもがれただけで
すんだが、ジャスティスのダメージは大きく、アスランも軽傷を負ったので、この場には大事を取ってきて
いない。
 物理攻撃には無敵とも言える耐性をもつPS装甲を、あの仮面の男は自分の十倍はある樹々を投擲しただ
けで破壊してしまった。あんな化け物みたいな人間がまだまだいるんだなぁ、と規格外には慣れたと思って
いたキラは、恐怖を通り越して、感動すらしてしまっていた。
「いい経験になったかな」
 例え人の形をしていても、一片の遠慮もいらない敵がいることを学べた、とキラは思うことにしていた。
「クスハさんとは上手くいっているの?」
 ブリットは、長年の想い人でありパートナーでもあるクスハと、婚約している。結婚は、クスハが自分の
夢を叶えてから、ということになっているので、まだまだ先になりそうだが。
「ま、まぁ、そのあたりは、上手くいっているぞ、うん」
 聞けば同棲までしているらしいが、ブリットのこの純情な反応は相変わらずで、面白くも懐かしくある。
 キラは思う。やはり自分にとってαナンバーズの仲間たちは、いつまでたっても、心の底から信頼しあえ
る仲間なのだと。ブリットに会うのは二年ぶりになるのに、会えばすぐあの頃に戻れるのだから。
 シンジとゲッターチームが『消えた』と聞いた時の喪失感、それはあの戦いの時に味わった、護りたい人
を護れなかったあの思いと同じものだった。
 何かできることがあるかと、オーブからスカイグラスパーで駆けつけてみたら、生きていいるかもしれな
いという朗報をカトルから聞かされた。安堵のあまり、膝をついてしまった。その際、そんなキラを鼻で笑
った五飛が、
「あれくらいで、奴らが死ぬわけがないだろう」
 と言ったのを聞いて、まだ『かもしれない』のはずなのに、そうに決まっていると確信できたキラ。そう
だ、あの霊帝との戦いですら生き残った彼らが、そんなにあっさり死ぬわけがなかった。 
「みんな、お待たせぇ~。あら、キラくんにライくんにブリットくん、お久しぶり」
 上機嫌なミサトが入室してきたのに続いて、ミサトの懐刀日向マコト、それに時代錯誤な中華風の服に身
を包んだ細身の男性と、これまた中華風の格好をした顔にキズがある大きな男性が入ってきて、最後に見た
目にも憔悴しきった早乙女研究所の早乙女博士と、その彼を支える娘の早乙女ミチルが入ってきた。
「初めての人もいるから、一応紹介しておくわね。こちらの二人が、国際警察機構の呉学人先生とエキスパ
ートの鉄牛くん」
 ミサトが中華風の二人組を紹介してくれた。この二人があの超人集団の、と思うと確かに只者ではないオ
ーラが感じられる。だが、鉄牛という男性は、見ただけでこちらの心が痛くなるような悲壮感を滲ませてい
た。
「では、ここからは専門家にお任せしますわ」
 そう言って、ミサトに場を譲られ、一礼をして呉が前に出る。マコトがその横に、情報投影用の中型モニ
ターを引っ張ってきた。
「では、佐渡島での調査の報告をさせていただきます」
 呉の言葉と共にモニターに現れたのは、佐渡島の俯瞰図。そのほぼ中心にXのマークが付いた。
「本日早朝に行われた、『超電磁ネットワイヤー作戦』。その作戦座標がこのXです」
 大怪球迎撃の、最終プランと言われていた作戦。この作戦が失敗したら、地球規模の災害を起こしかねな
い攻撃手段しか残されていないと言われていた。
「この作戦の概要は、縮退炉を搭載したジャイアント=ロボによる超高々度からの攻撃によって、大怪球を
破壊するという作戦と思われている方が多いでしょうが……」
 キラも、作戦に参加はできなかったが、作戦の概要は聞かされている。改めて、ヒドイ作戦だと思った。
搭乗者であった草間大作という人とは面識がないが、αナンバーズ内では、彼のことを知る人は多い。隣に
座るライやブリットは、自分以上に憤りを感じているのかもしれない。
「ですが、このロボの攻撃の真の目的は、この攻撃によって大怪球を破壊することではありませんでした」
 !?
 驚きが部屋に広がった。皆が、意味が分からず、口々に疑問を唱えて、部屋がざわついていた。前に座る
アスカなぞ、立ち上がって、じゃあ何であんな派手なことしたのよと噛み付かんばかりだ。
 持っていた扇子をわずかに拡げて、口元を隠していた呉が、パチンとその扇子を閉じて、
「お静まりください、皆さん」
 と言う。不満そうなアスカが、大きな音を立てて椅子に座り直し、他の者も口を閉じ注視する。
 モニターの映像が変わった。
 キラが目を見張る。それは、マッハを遥かに超えるスピードで襲来してくる大怪球を、数十の巨大ATフ
ィールドを発生させて受け止めているエヴァ初号機の姿が映っている。次々と破られるフィールド、だが最
後の一際巨大なフィールドが、大怪球を止めていた。エヴァも凄い勢いで後退していたが、シンジ操るエヴ
ァ初号機は見事に大怪球を塞き止めていた。その雄々しい姿に、皆が息を飲んでいる。レイが、
「さすが私のシンジくん……」
と呟いて、アスカに睨まれていたが。
 そして、上空からこのタイミングを見計らって、超高速降下による最大物理攻撃であるジャイアント=ロ
ボの豪腕が繰り出されていた。
 そこで、キラは気付いた。この大怪球の巨大な瞳が、自らを狙うロボに向いていた。そのロボと大怪球が
いままさに交錯しようとした瞬間……
 モニターは白一色になった。そして数秒後回復した映像には、何も映っていない。
「……やっぱり」
 ブリットが何か確認するように小声で言う。ライもその言葉に応じるように頷いている。
「何か?」
 キラが訊くと、後で話す、と短く答えるライ。二人の反応は気になるが、呉学人が再び扇子を閉じて、説
明を始めたので、前に向き直る。
「ロボ、エヴァ初号機、及び目標である大怪球の消失という、想定外の事態により、作戦は失敗しましたが、
目的は達成、という状況が発生しましたが……」
「ちょっと待って、ナヨ男!」
 呉の言葉を、凄い呼び方で遮ったアスカが、
「さっきの、あの作戦の真の目的なんちゃらっていうの、ちゃんと説明してよね! こっちは相方が命張っ
てんだから、聞く権利あるわよ!」
 一気にまくし立て、迫った。その剣幕にわずかに困惑を浮かべた呉だか、やむを得ないと思ったのか、
「わかりました」
 と了承する。これは、キラも訊きたかったことなので、アスカの横槍はありがたかった。
「このロボにより、超高度降下攻撃の本当の目的は、大怪球のエネルギー消滅フィールドを中和させること
にありました」
 モニターも先ほどの映像が巻き戻されて映っている。ロボと大怪球の激突少し前でまた停止した。
「大怪球が発生させていた防御フィールドは、攻撃を仕掛けるすべての存在から、そのエネルギーを消滅さ
せるという恐ろしい特性をもっていました」
 いったいどんなカラクリだよ、と宙がぼやくように言う。周りを見れば、みんな同感のようだ。無論、キ
ラ自身も同感。自身に向かって落下する爆弾の落下エネルギーですら、この大怪球は吸収し、無力化してい
た。資料として投下された爆弾が宙に浮いたまま静止していた映像を見たとき、何の冗談だとキラは思った
ほどだ。
「ですが、そのフィールドの効果も、無限ではないことが、この作戦に先立って行われた、バンプレイオス
の攻撃によって証明されていました」
 すると、モニターにキラが持ち帰った、記録映像が映し出された。上空からほぼ直角に降り注ぐ大光条が、
大怪球に届く寸前で、四方八方にはじかれていた。その光景を見ていた時は気づかなかったキラだが……
「瓦礫が大怪球に、当たっている」
 その事に気がついた。攻撃の余波によって巻き上がった様々な物体が、大怪球に当たっている。つまり、
バンプレイオスの攻撃に消滅フィールドのエネルギーが集中した為、全体の防禦が不可能になっていたのだ
ろうか。なら、あの瞬間に自分とアスランが攻撃を加えられていたら…… と、そこまで考えて、キラは気
付いた。
「ジャイアント=ロボの攻撃が、最終フェイズじゃなかった……」
 キラの呟きは、思いのほか大きく部屋に響き、皆がキラに注目する。
「あの無茶な攻撃の後に、本命の攻撃があったんですね」
 勢いで、そのまま呉に質問をぶつけるキラ。呉学人は、無言で頷くことで、それを肯定した。
 何故、そのことについて説明がなかったのか、自分は作戦参加者ではなかったが、納得できない思いがあ
る。前に座る参加者の身内の少女は当然激昂し……
「どういうことよ、ナヨ男!?」
 と、また立ち上がって掴みかからんばかりになっているアスカをカトルが必死に抑えていた。レイが「ど
うどう……」と言っているのは、落ち着かせているつもりなのだろうか。
「その件は、私が口止めしてもらったのよ」
と割って入ったミサト。
「最終フェイズを説明しちゃうと、シンちゃんや大作君が反対する可能性が大きくてね」
 ミサトは皆の注目を集めたまま、その作戦を簡潔に説明した。
「最終フェイズは、エキスパート銀鈴による、宇宙空間への大怪球の強制テレポートだったの」
 強制テレポート、銀鈴という人を知らないのでキラには判断できないが、聞いただけでは作戦に反対する
理由は浮かばない。むしろ、そんな事が可能なのかという疑問が浮かぶ。
「銀鈴って、そんな凄い能力もっていたの?」
 立ったままのアスカが訊くと、ミサトは沈痛な面持ちで頷き、一言付け加えた。
「彼女自身の命と引き換えだけどね……」
 !?
 ミサトの一言で、彼女が最終フェイズの説明を省いたのか理解できた。大作は知らないが、シンジが人の
命が確実に犠牲になるような作戦を容認するはずがない。
今まで最終フェイズと思っていたロボの特攻作戦も生還の可能性はゼロに近いが、ゼロではない。コンマ
1%でも助かる確率があるなら、それに全てをかける。きっと今回もシンジはそのつもりで作戦に臨んだ
はずだ。
「……大作を死なすわけには、いかねぇのさ」
 今まで岩のように黙っていた鉄牛が、口を開いた。
「アイツは、次代の九大天王になれるヤツなんだ…… 戴宗のアニキだって、そう思ったからこそパリで…
…」
 戴宗。国際警察機構の九大天王の一人、神行太保の戴宗と言われる人が、パリの大怪球第一次攻撃の際に
殉職していることは、情報として知っていた。が、その死の意味は、知っていなかったと今の鉄牛の言葉を
聞いてキラは思った。
「この作戦は、銀鈴の望みでもある…… そう、」
「すべては大作のためってわけか……」
 鉄牛の言葉を鉄也が継いだ。鉄牛と呉学人が、重々しく頷く。二人の瞳を見てしまうと、人道云々という
陳腐な意見を言えなくなってしまう。強い覚悟が宿った瞳だった。
 納得できないけど、口出しはできない。アスカはまた不満をありありと見せながら、大きく音を立てて、
椅子に座る。
「……本来、ジャイアント=ロボの攻撃フェイズでは、攻撃はフィールドに遮られ、拮抗状態が生じると思
われていました」
 呉の言葉を、キラは想像してみる。大気を引き裂くほどの勢いで降下したジャイアント=ロボの一撃を、
フィールドエネルギーが対消滅させる。大怪球に渾身の拳は届かず、ロボは一瞬、宙に浮いた状態になり、
隕石アタックによる自壊は免れる。そして、フィールドが消滅した一瞬の隙に、銀鈴が何がしかの手段で、
大怪球をテレポートさせる。その図式が、本当の超電磁ネットワイヤー作戦の成功だったのだろう。
 しかし、実際には……
「しかし、実際には、ジャイアント=ロボの攻撃とほぼ同時に、暴走状態だった真ゲッターロボの介入によ
り、あの場にいた全機消失、という事態になってしまいましたが」
 キラの内心を代弁するように、呉学人が言う。この真ゲッターロボの乱入という変数が、何を意味するの
か。考えてみるが、これは、という答えはキラには浮かばない。
「それで、シンジ君たちがこの状態で無事だ、というのは?」
 カトルが場を変えるように訊いてきた。キラもその言葉に思考を切り替える。この場でこの事を考え続け
ていても意味はない。今、考えるのはシンジたちの消息と安否だ。
「その件については、早乙女博士から……」
 呉が場を早乙女博士にゆずる。前に出た早乙女博士は、疲労が体を蝕んでいるとひと目でわかるほど、憔
悴している。もうすぐ四日前になる真ゲッター暴走から、ろくに休養をとっていないのだろう。
「ちょっと、大丈夫なの、博士?」
「早乙女博士、お気持ちは察しますが、無理はされないほうが……」
 アスカや鉄也が言うが、早乙女博士は重々しく首を横に振る。ここで、現状を語ることが義務だと、自ら
に課しているように、キラには見えた。
「まずは、佐渡島での……」
 モニターがブラックアウトする。ここで佐渡島でのデータがでると思っていたのだが……
『いつまで無駄なお話に興じていますの!?』
 聞いたことのない少女の声が突然、響いた。どこからだ、と探すと声の発信源はどうやらモニターのスピ
ーカーからだった。
 その声を聞いて、鉄牛は掌で顔を多い、呉学人も頭を抱える。
「やはり来ましたか……」
「大作絡みで、アイツが出てこねぇわけ、ねぇもんな……」
 よくぞ今まで出てこないでくれたな、と深い溜息をつく鉄牛。その態度には、今までとは別の疲れが出て
いた。
『大作様は生きています! 二世の契りを結んだ私には、その事がはっきり感じられています!』
 二世の契り、とは古風な言い回しだな、とキラが思っていると……
「……え?」
 よいしょ、と言う声と共に、ブラックアウトしたモニターから、赤毛の独特の結い方をした頭が、ニョキ
っと生えてきたのだ。非常識にはなれている、と自覚していたキラだが、これには言葉を失った。
 頭、そして次に白い手が生えてきてモニターの端を掴んで、そこから一気にモニターから全身を引っ張り
だした少女。こんな非常識な登場があっていいのか、とキラは呆然としながら思った。歴戦の仲間も同様で、
皆が呆然とその少女を見つめている。
 少女の歳は、自分たちより少し下、多分十代半ば位。着ているのは黒のフリル過剰のワンピースに、太も
もまで隠れるニーソックスに赤い靴。可憐で勝気な面差しをしている。
 少女は何もないところから、黒い三角帽を取り出し、頭にのせるとポーズを決め、高々と名乗りを上げた。
「大作様の愛の下僕にして、BF団十傑集が一人、サニー・ザ・マジシャン。華麗に参上ですわ!」
 愛の下僕とのあとに、すごい肩書きが出てきた。なんでBF団の、しかも最高幹部が、ここに現れたのだ
ろうか……
 予想を遥か斜め上をいく急展開に、キラの思考は、完全においてけぼりを喰らっていた。


 そして、その愛の下僕の対象の跳ばされた世界では。

 シンジと武たちが瑞鶴改で旅立ってのち、皆が空腹を感じ始めたこともあり、大作がロボのシェルターか
らカレーの缶詰とインスタント米を持ち出してきて、残された皆で遅い昼食を取っていた。
 缶詰でありながら、合成食材の入っていない異世界のカレーは、訓練兵の少女たちとその教官に無言の絶
賛と、旺盛な食欲をもって迎えられていたのだが……
「……あれ?」
 いきなり身震いを始めた大作。心なしか、顔色が青くなっている。
「……どしたの、大作?」
 無言でウマウマとカレーを食していた慧が、となりの大作の異変に気づき、声をかける。
「いや、なぜか元の世界で『最恐の敵』と対峙した時の感覚が蘇ってきて……」
 何でだろう、と自身の感じている悪寒の正体を掴めないでいる大作だった。



【ちょい後書き】
 作者、暴走モードに突入気味。皆さん、ついてきてください。


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