<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

Muv-LuvSS投稿掲示板


[広告]


No.18953の一覧
[0]  マブラヴ+SRW α アフター (チラシの裏から移転)[まくがいば~](2014/03/30 23:28)
[1]  マブラヴ+SRW α アフター  プロローグ[まくがいば~](2014/03/30 02:06)
[2]  マブラヴ+SRW α アフター  第一話[まくがいば~](2014/09/14 03:31)
[3]  マブラヴ+SRW α アフター  第二話[まくがいば~](2014/03/30 02:04)
[4]  マブラヴ+SRW α アフター   第三話[まくがいば~](2014/03/31 20:49)
[5]  マブラヴ+SRW α アフター   第四話[まくがいば~](2014/03/30 02:03)
[6]  マブラヴ+SRW α アフター  第五話[まくがいば~](2014/03/30 02:03)
[7]  マブラヴ+SRW α アフター  第六話[まくがいば~](2014/03/30 02:03)
[8]  マブラヴ+SRW α アフター  第七話[まくがいば~](2014/03/30 02:02)
[9]  マブラヴ+SRW α アフター  第八話[まくがいば~](2014/03/30 02:02)
[10]  マブラヴ+SRW α アフター  第九話[まくがいば~](2014/03/30 02:01)
[11]  マブラヴ+SRW α アフター  第十話[まくがいば~](2014/03/30 02:01)
[12]  マブラヴ+SRW α アフター  第十一話[まくがいば~](2014/03/30 02:00)
[13]  マブラヴ+SRW α アフター  第十二話[まくがいば~](2014/03/30 02:00)
[14]  マブラヴ+SRW α アフター  第十三話[まくがいば~](2014/03/30 01:59)
[15]  マブラヴ+SRW α アフター  第十四話[まくがいば~](2014/04/12 00:53)
[16]  マブラヴ+SRW α アフター  第十五話[まくがいば~](2014/04/24 01:00)
[17]  マブラヴ+SRW α アフター  第十六話[まくがいば~](2014/06/16 21:14)
[18]  マブラヴ+SRW α アフター  第十七話[まくがいば~](2014/08/24 21:53)
[19]  マブラヴ+SRW α アフター  第十八話[まくがいば~](2014/08/24 21:56)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[18953]  マブラヴ+SRW α アフター  第十六話
Name: まくがいば~◆498b3cf7 ID:06a0bd21 前を表示する / 次を表示する
Date: 2014/06/16 21:14
 平隊長代理から、緊急の搭乗命令が下ったのと、物凄い水柱が海面から立ち上がったのは、ほぼ同時だっ
た。霧島愛は、砂浜に足を取られながら、慌てて自分の不知火に向かっていると、背後に圧倒的な何かが目
覚めるのを感じて、足を止めて振り返ってしまう。
 そこには、凄まじい存在感を示していたあの神像のようなロボットが、ゆっくりと歩み出す姿があった。
「ジャイアント=ロボ……」
 先ほど、教えられた、その神像の名を呟く愛。その巨大な背の先には、姿を現した三機の戦術機の姿が見
えた。
「え……? 海神……?」
 水飛沫の中、姿を現した戦術機を見て、愛は信じられない思いで、その機体の名を呟く。UNブルーに塗
られたその人型とは言い難い異形の機体は、他の戦術機と見間違えるほうが難しい。
「……あ、もしかしたら、イントルーダー?」
 UNブルーに塗られた海神もあるが、同時にその同型機であるイントルーダーもUNブルーの機体が存在
するはず。
 だからどうだ、と言う話だが、愛の心情としては、これから向き合うどう見ても友好的ではない相手が、
同邦の者でないほうが気楽に思えるので、できれば出現機体は、イントルーダーであってほしかった。
「霧島少尉、早く搭乗しなさい!」
 先任である、ケイコ・リー・ストラスバーグ少尉が、すでに自分の不知火に張り付きながら、叱咤してく
る。他にCPの山岸真弓少尉と、自機が大破のため、雑用係として連れてこられた洞木瑞穂の同期二人が、
今回この島にやってきたデリング中隊のメンバーである。
 デリング中隊は、先月アラスカで起きたキリスト教恭順派による大規模テロに介入した際、隊長以下三名
が負傷により戦線離脱。戦術機も出撃した八機のうち半数の四機が大破という損失を出しており、この島に
いる隊員で稼働人員可動実機は全てになっていた。
 もう、ヴァルキリーズに吸収合併されるのを待つのみと思っていた矢先、急遽決まったこの島への派遣。
正直、状況の三割も理解できてはいない愛であったが、この身は衛士、命令には従うのみ。
 そして、与えられた命令は、どれだけ損害が出ようが完遂するのが、A-01部隊の信条。
 愛は、強き使命感を胸に、己の不知火に乗り込んだ。

 そして霧島愛は驚愕する。草間大作とジャイアント=ロボに。


「神宮寺教官、エヴァの足元に皆さんを連れて隠れてください!」
 大作は、まりもの方を向かずに、強い声音で指示を出す。
「え、あれの足元、か!?」
 目を凝らして、挨拶なしに来訪してきた戦術機の正体を見極めようとしていたまりもは、呆然と立ち尽く
している訓練兵五人の少女に、
「お前ら、あのエヴァの足元に行け!」
 と取り敢えず大作の指示をそのまま命令する。訓練兵とは言え、衛士を志す彼女たちは、各々まりもの指
示に従い、慌てて片膝立ちのまま待機し続けている蒼い巨人の足元に向かう。
 何も考えずに指示を出してしまったが、言われてみれば、この島の中であの一本角の巨人の足元が一番安
全なのかもしれないとまりもは即座に、その指示を出した大作に感心する。
 再び、大作の一助になればと目を凝らしてみるが、UNブルーに塗られたA-6は、海神かイントルーダー
か区別できない。
「神宮寺教官、アレの出処、わかりますか?」
 大作は厳しい目で、出現した三体の戦術機を見据えている。そして、ロボはゆっくりと、海原へ脚を踏み
出していた。
 ドスン! 身体全体に響く振動。千トンを超えると思われるロボの重量感に、改めて圧倒されるまりも。
「え、えっと、すまない。細かい差異はここからでは…… 平中尉達なら、判別できているはずだが」
 海神と、その元であるイントルーダーの特徴的な差異は、両腕部に装備された35ミリチェーンガンの装
備数、それをここから見極めるのは肉眼では難しかったが、戦術機に乗ったデリング中隊の不知火のセンサ
ーなら、それも判別可能だろう。
「平中尉! アレは帝国の海神か!?」
 二人の背後で、徐々に起動していく四機の戦術機に、まりもが大声で訊いた。
『アレは、海神ではありません! 米軍のイントルーダーです!?』
 慎二の報告に、胸を撫で下ろすまりも。米軍が何を血迷って、この強攻策に打って出たかはわからないが、
帝国が馬鹿な真似をしたのではないのは、一安心だ。
 だが、そうことは暢気に構えてよい状況ではない。米軍が送り込んできたのは、圧倒的な制圧火力を誇る
戦術攻撃機イントルーダー三機。出遅れた現状では、不知火四機でイントルーダー三機を相手にするのは至
難と言える。
 ドスン、ドスンとジャイアント=ロボはゆっくりと、だが確実に前に歩を進めている。
「だ、大作くん。どうするつもりだ?」
 まりもは、動揺を微塵もみせない大作に、遠慮がちに声を掛ける。
「相手が、何を要求したいのか、わかりませんが…… エヴァや皆さんに、指一本ふれさせません!」
 大作は、厳しい顔をイントルーダーに向けたまま、決然と言い放つ。まりもは、その大作の一歩も引く気
がない気迫に、呑まれそうになる。
 この少年は、対人戦闘であっても、一分の迷いも見せていない。その大作の意思を示すように、ロボは重
厚な歩みを止めず、進んでいく。
 イントルーダーは、三機とも両腕の35mmチェーンガン、両肩の120mm滑空砲をこちらに、正確に
歩み進むジャイアント=ロボに向けていた。
『草間くん、とりあえず相手の出方をみたい! ロボを止めてくれ!』
 緊張を含んだ慎二の声が、外部スピーカーから。デリング中隊四機も、起動を終え、臨戦態勢に入ってい
る。だが、未だ何の要求もしてこない米軍相手に先制攻撃を掛けるのは躊躇われるのか、大作に自制を促す。
「ダメです! 皆さんにわずかでも危険があるなら、僕は引きません!」
『だが…… あ、待ってくれ、通信が入った!』
 慎二と大作のやり取りを聞いていると、大作はエヴァや自分たちだけでなく、デリング中隊の四機も護ろ
うとしているのでは、とまりもには思えた。
『連中は、我々の即時武装解除を要求している!』
『同盟国内での、無断での武力行使を容認できないとか、なんかこじつけがついているぞ!』
 慎二の言葉に孝之が続いた。帝国政府に了承をとっているのかどうかわからないが、米軍は思ったより早
く強硬手段に訴えてきたようだ。ここで、その要求を蹴ることは、米国を敵に回すことになるのでは、とま
りもは事を大きさに気後れしてしまうのだが……
「了承できないと返して下さい! それと、怪我したくなかったら、即撤退しろと!」
 大作はきっぱりと、何の躊躇も見せずに要求を一蹴してしまった。
 ロボはすでに、膝下まで海面に沈み、イントルーダーと自分たちの中間あたりまで歩みを進めている。そ
して、止まる素振りを一切みせない。
『だ、草間くん! 停止しないと、攻撃すると言って来ている!』
「やってみろ、と言って下さい!」
 慎二の言葉に、ほぼ即答で返す大作。度胸が座らなない慎二と違い、大作は既に臨戦モードに入っている。
『だ、だが、それでは……』
『わかった! 慎二、覚悟を決めようぜ!』
 躊躇う慎二に、孝之が声を掛ける。この様子では、大作の『やってみろ!』は孝之の方から米軍に向けて
発信されるかもしれない。
 その証拠に、イントルーダー三機からは、先ほど以上の緊張が見られる。このままでは、ほどなくジャイ
アント=ロボに向けて集中砲火が始まるだろう。
 120mm滑空砲6門、35mmチェーンガン12門が一斉に火を噴いて、ロボは大丈夫なのだろうか?
 間近で見たジャイアント=ロボの重厚感は、艦砲の直撃すら跳ね返しそうな迫力があったのだが、それで
もまりもは不安を感じてしまう。
『草間くん、とりあえず君の要求はオブラートに包んで向こうに伝えた! どうする!? 相手からは熟慮
せよとか、後悔するぞとか、うるさいんだが!? ちなみに、こっちの腹は決まっている、やるなら言って
くれ!』
 慎二ではなく、孝之が言ってきた。デリング中隊の不知火も、圧倒的不利とわかっていながら、大作に加
勢する覚悟を決めたみたいだ。こういう覚悟の決め方は、慎重派の慎二と違い直情的な孝之の方が早いなと、
まりもは感心する。
「皆さんは、ここを動かないでください! ロボの実力を見せつけてやります!!」
 だが、大作はその申し出も一蹴する。
 ロボとイントルーダーの距離は、すでに300メートルを切っている。戦術機とロボの全長から考えたら
至近といっても過言ではない距離だ。
 再三、警告を放ちながら、米軍側からの発砲はまだ無い。あちらも、高圧的な態度を取ってはいるが、正
体不明のロボットと砲火を交えるのに、気後れしているのか。それとも恫喝だけが目的で、実力行使をする
つもりはないのか。
 様々な憶測がまりもの中で飛び交う。
 だが、米軍がロボにいまだ砲火を開かない理由は、実に単純なモノであった。
 イントルーダーに搭乗している米軍衛士が、ジャイアント=ロボの威容に、気圧されビビっているだけだ
った。


 米軍の急襲作戦に参加した三機のイントルーダー。そのうちの一機に搭乗していたラッセル=スミス中尉
(24歳)は、後にジャイアント=ロボとの邂逅について、簡潔にこう語った。
 あれは、悪夢だったと。
 フィリピンの国連軍基地に出向していた彼らは、母艦であるソードフィシュと共に本国に帰投中だったの
だが、突然、米軍第七艦隊と合流、そしてこの島への出撃を命じられた。
 この島に在る、大型人型兵器の接収、もしくは破壊が彼らに課せられた任務だった。大型で人型の兵器が
どのようなもので、それをどのように接収するのか、ろくな説明もない、今までにない曖昧な命令に戸惑っ
たスミス中尉だったが、すでに歴戦の域に達したベテラン衛士である彼は、命じられるままに出撃した。
 目標の島の十キロ手前で、母艦よりパージ。そのまま水中航行モードで接近、そして上陸。そこまでは、
順調だった。
 島には四機の不知火がいることもわかっていたが、それもイントルーダーの圧倒敵な火力をもってすれば、
障害にはならない。
 自分は、速やかに目的を達成するのみ。
 だが、地上に姿を現した彼らを迎えたのは……

 自分たちを睨みつける、鋼鉄の巨人の姿だった。

 スミス中尉は 網膜投影モニターに映る、自分たちを睨みつける巨人の眼差しに、射止められたかのよう
に凍りついてしまった。
 それが人を模した人工物であることを理解するまで、数秒、そしてそれが戦略目標であることに気づくま
でさらに数秒を要してしまった。
『な、なんだ、アレは……』
 僚友の呟きに、我に返るスミス中尉。改めて、その巨人に意識を向ける。
 全長は、イントルーダーより大きく三十メートル前後。だが、その機体の重厚さは、イントルーダーの比
ではない。
 神像。そんな言葉がスミス中尉の脳裏を過ぎる。その威容は、BETAと異形で醜悪の姿とは違い、厳かな
威圧感を彼に与え続けている。
イントルーダーのセンサーは、様々な情報をスミス中尉にモニターに映し出していく。その自分たち睨み
続ける巨人、その先に、その巨人よりさらに大きい、一本角の巨人が、片膝立ちで控えている。さらに、そ
の先の砂浜には、起動中の日本帝国の戦術機不知火が四機。
 だが、その情報は形となってスミス中尉の中で形をなさない。明らかに彼はその目標に呑まれていた。
 ドスン!
 その彼の硬直を解いたのは、目標である巨人、いや巨大ロボットが一歩前に脚を進めた震動だった。
 僚機に、武装の展開、安全装置の解除を指示。自身もそれを行う。
 ドスン!
 また一歩、目標が脚を踏み出した。スミス注意は逡巡する。投降と武装解除の勧告を出したほうが良いの
かと。
 ドスン!
 さらに一歩、目標が前へと進む。作戦は、この巨大ロボットと、さらに後方に控える巨大ロボットの接収、
もしくは破壊であったが、それはこの三機だけで可能なのか? スミス中尉は任官以来初めて、上層部の作
戦に疑問を覚えた。
 ドスン! 
 巨大ロボットは歩みを止めない。この状態が威嚇の意をなしてないのではと、スミス中尉は考えを巡らせ
る。攻撃等の決定は、最先任である彼に一任されている。だが、この状態で問答無用で銃口を開くことを彼
は躊躇った。
 通じるかわからないが、彼はオープンチャンネルで、武装解除と投降の勧告を行うことにした。
 通信の文言は、あらかじめ作戦司令部から出された定形の物を読み上げるだけにした。なるべく、感情を
込めず、抑揚を抑えて送った通信を受け取ったのは、目標でなく、その先にいる帝国の不知火だった。
 不知火の衛士は、自分たちは国連軍新潟基地所属であり、この島は日本帝国の領土である。貴官らは国際
条約に違反云々と、意外にも常識的な反応が返ってきた。
 慌てているのは向こうも同じなのか? その疑問がスミス中尉をある程度、冷静にさせた。
 少し高圧的に、これまた作戦部が用意した侵攻理由を述べ、武装解除を迫った彼は、あることに気づいた。
 ドスン! ドスン!
 目標である巨大ロボットは、ゆっくりと前進を続けていたのだ。そして、再び凶悪な眼差しが自分たちを
捉えていたことに、背筋が凍りつく思いがした。
 勧告を続けていると、先ほどの衛士とは違う声での返信があった。
『ヘイ、ヤンキー! 怪我したくなかったら、帰ってママのオッパイでもしゃぶってな!』
 自動翻訳機を通さない、かなり発音の怪しい英語での返信。中指突き立てている衛士の姿が想像できそう
な内容に、カチンとくるスミス中尉だが、その怒りも迫り来る巨大ロボットの眼光に萎縮してしまう。
「即時停止しないと、攻撃を加える!」
 声の震えを必死に抑え、最後の警告。だが、それも
『やってみな!』
 と即答で返されてしまった。こうなっては、攻撃を行う以外、彼らに選択肢はなくなってしまった。ここ
で何もせずに撤退するということは、米軍の威信を傷つけることになるからだ。
「全機、攻撃用意!!」
 腹を決めて、僚機に通達。網膜モニターに映る、すでに300メートルの距離に迫っていた目標に全兵装
をロックオン。あとはトリガーを押すだけで、両肩の120mm滑空砲と両腕の35mmチェーンガンが目
標に向かって火をふく。
 モニターに映る巨大ロボットは、ただ前に緩慢に脚を進めている。内蔵火器の有無は判断できないが、あ
の非常識なバランスの腕で殴られたら、イントルーダーといえど無事に済むとは思えない。
「攻撃用意!」
 未だ、スミス中尉の中には、この目標に対する攻撃を躊躇する思いがある。だが、軍人が個々の感情で行
動することはありえない。司令部の命令を至上とし、受け入れるのみ。
 自分の中の迷いを振り切るように彼は叫んだ。
「攻撃開始!!」
 三機のイントルーダーの一斉攻撃が始まった。


 三機のイントルーダーの一斉攻撃が始まったのを、霧島愛は、不知火の操縦席でただ見つめていた。
 自分たち四機の不知火が、牽制の為に動けば、この惨状は回避できたはずなのに、平、鳴海の両トップは
待機を彼女に命じていた。
 外部スピーカーでの大作とのやり取りは聞いてはいたが、やはりここは無茶だと分かっていても攻撃阻止
の行動を取るべきではなかったか。
 もっと強く上申すべきだったと、愛は唇を噛んで、着弾の爆炎に包まれているジャイアント=ロボ。いく
ら頑丈でも、あれだけの集中砲火を喰らって無事なわけが……
 そこで、愛はふと、視線を大作とまりもが居る場所に落とした。
 まりもは後ろ姿で分かるくらい困惑しているようだが、大作は、まるで動じていない。
 どうして、という疑問を抱えたまま、しつこい集中砲火が続くロボに視線を戻すとあることに気づいた。
 ジャイアント=ロボは、数十秒に渡る直撃の嵐を受けているはずなのに、いまだ壊れる様子を見せていな
かった。あの鋼の身体は身じろぎすらしていない。
 いったい、何が起こっているのだろうか?
 そして愛は、さらに驚くことになる。砲撃開始と同時に歩みを止めていたロボが前進を再開したのだ。


『な、なんだって言うんだ!?』
 僚友の呻きが、どこか遠くに聞こえる。トリガーを押し続ける指が、レバーを握る手が震えているのがわ
かった。
 網膜モニターには、減っていく残弾と、爆炎に包まれた巨大ロボットが映っている。攻撃開始から一分は
経っただろうか。だが、怒涛の攻撃を受けている巨大ロボットは、その形をわずかでも変えているようには
みえない。
 この至近距離で、これだけの砲銃弾の直撃を受けているはずなのに、だ。
 BETAが雲霞の如くあふれる中、死を覚悟しながらその攻勢を受け止めたこともある、歴戦の衛士である
スミス中尉。だが、その衛士としての矜持が、徐々に崩れていくのを、彼は感じていた。
 自分は、自分たちは、何かを間違ってしまったのではないのか?
 いまだ、崩壊の兆しすら見せない巨大ロボット。そのロボットが初めて歩く以外のリアクションをした。
 怖しい太さを持った右腕をゆっくりと上げ、その拳を開いてみせたのだ。
 鋼の掌を見せられ、自然、そこに砲弾が集中していく。が、その数メートルの掌さえ、この至近距離の攻
撃で破壊できていない事実が、さらにスミス中尉の背筋を凍らせる。
 掌が、細かいディテールがわかるほど近くに見える。何故、そんなに近くに、と焦るスミス中尉は、ある
事実に気がついた。
 掌の先に凶悪な眼差しが見えた。目標は、すぐそこまで迫っていたのだ。
 

 戦術機であったら、数秒で粉砕されているであろう、三機のイントルーダーの集中砲火を一分の間、耐え
切ったのち、大作は、
「ロボ、反撃開始。真ん中の機体を狙え」
 と、淡々とした口調で、ロボに命じたのを、まりもは至近で聞いていた。そして、攻撃開始前に、大作は
こうも命じていた。
 少し時間を戻す。
「ロボ、止まれ! オートガード、任せる! 装甲破損の危険がない限り、一分間、その場で待機!」
 その命令が、大作の口からでた時、まりもは唖然とし、呆然としてしまった。大作は、自らの下僕である
ジャイアント=ロボを轟火に晒そうとしているのだ。
 大作に、意見を言おうと口を開いたのと、イントルーダーの集中砲火が始まったのが、ほぼ同時であった
為、まりもの言葉は口を出ることはなく、そのまま飲み込まれてしまった。
 爆炎と衝撃音が耳をつんざく。まりもは最初、正視できずに顔を背けてしまったが、前に立つ大作があま
りに平静なので、気になって向き直ると……
 そこには、攻撃開始と変わらぬ姿で、その砲火を受け続けるロボの姿があった。
 あの至近距離で、あの火力の総攻撃を喰らい続けたら、大和級の戦艦でさえ轟沈は免れないだろう。だが、
それほどの砲火を喰らいながら、ジャイアント=ロボは身じろぎすらしていない。
「バリヤー稼働率レベル1、か。一般的な火砲って感じかな。これなら気にするレベルじゃないか。核でも
打たれたらマズイけど、核ミサイルとか搭載していますか、あの機体?」
 いきなり物騒なことを訊かれたまりも。慌てて首を横にふる、そんなモン、搭載されていてたまるか。
 そして、一分間、黙って攻撃を受け続けていたロボが、再び大作の命令を受け、脚を前に踏み出した。
「だ、大作君…… ロボは、いったい何で出来ているんだ……?」
 目の前で起きていながら、その出来事を信じることを理性が拒否しているまりも。自らを落ち着かせるた
め、何でもいいから大作に訊いてみることにした。
「G型特殊鋼三式です。試したことはないけど、バリヤーなしでも対艦ミサイルの直撃を跳ね返せるという
触れ込みです」
 返ってきた大作の答えが分かる訳もなく、ハハハと力ない笑うまりも。ここまで来ると笑うしかない。
「加減しろ、ロボ。センサー系と肩の武器を優先して破壊するんだ。パイロットは狙うな」
 大作の命令を受け、ロボが右腕を上げる。そして、いつの間にか、怒涛の集中砲火が終わっていた。三機
で扇陣形を組んでいたイントルーダーだが、その砲火が自機に及ぶ範囲までロボが来てしまった為、攻撃が
できなくなってしまったのだ。
 そして、ジャイアント=ロボによる、苛烈な反撃が始まった。

 結局、出番なく待機のまま、事が終わってしまった。その一部始終を眺めていた愛だが、事が終わったの
に、まだ夢を見ていたような気がしてならない。
 ジャイアント=ロボが、わざと攻撃を受けた時間が一分。だが三機のイントルーダーが沈黙するまではそ
の半分の時間しか掛からなかった。
 まず、正面のイントルーダーの、顔とも言えるセンサーを掴み、わずかに力を込めたように見えたら、そ
のセンサー部位が潰れ、イントルーダーがなす術なく、そのまま倒れてしまった。
 二機のイントルーダーが、その隙にロボに肉薄、近接戦闘装備であるスパイクアームを、同時に繰り出し
たが……
 右腕、左腹部に命中したイントルーダーのスパイクアームが、そのまま砕けてしまった。ロボには傷一つ
ついていない。
そして、軽く振ったようにしかみえない右腕の横殴りの一撃で、右に居たイントルーダーが吹っ飛ぶ。
その攻撃と同時に、ロボの腹部を攻撃し破損した腕を掴まれた最後のイントルーダーは、そのまま宙に釣り上
げられてしまった。大人と子供、そんな言葉は愛の呆然とした頭に浮かんでいた。
そして、その腕が砕かれ、イントルーダーは海原に叩きつけられる。
まだ、攻撃は可能かもしれないが、三機のイントルーダーがロボに歯向かうことはなかった。衛士の心が、
折れてしまったのだろうと愛は感じた。
『ケイコ、霧島、連中の武装解除、いくぞ!』
 副隊長格である鳴海中尉からの通信が、一喝のように愛を目覚めさせる。
「は、はい!」
『りょ、リョーカイでス!』
 完璧な日本語を話せるはずのケイコが、妙なイントネーションになってしまっているのは、きっと彼女も、
ジャイアント=ロボの桁外れ、いや常識外とも言える迫力に気圧されてしまったのだろう。
 平機を除いた三機の不知火が戦闘の行われていた場所へ向かう。愛は網膜モニターに映る、突撃砲の残弾
表示を見ながら、これが減っていくことはないだろうなと確信していた。あの場に鋼の守護神がいる限り。
 近づいていく、自分たちの不知火に気づいたようにジャイアント=ロボが首だけを動かしてこちらを向い
た。 
 自分の乗る不知火を相変わらず睨んでいるようなロボの瞳が、やっぱり怖く感じてしまう愛だった。



【ちょい、後書き】
 霧島愛、ケイコ=リー=ストラスバーグ、山岸真弓、洞木瑞穂、
どっかで聞いたことある名前ですね、うん。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.038909912109375