<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

Muv-LuvSS投稿掲示板


[広告]


No.18953の一覧
[0]  マブラヴ+SRW α アフター (チラシの裏から移転)[まくがいば~](2014/03/30 23:28)
[1]  マブラヴ+SRW α アフター  プロローグ[まくがいば~](2014/03/30 02:06)
[2]  マブラヴ+SRW α アフター  第一話[まくがいば~](2014/09/14 03:31)
[3]  マブラヴ+SRW α アフター  第二話[まくがいば~](2014/03/30 02:04)
[4]  マブラヴ+SRW α アフター   第三話[まくがいば~](2014/03/31 20:49)
[5]  マブラヴ+SRW α アフター   第四話[まくがいば~](2014/03/30 02:03)
[6]  マブラヴ+SRW α アフター  第五話[まくがいば~](2014/03/30 02:03)
[7]  マブラヴ+SRW α アフター  第六話[まくがいば~](2014/03/30 02:03)
[8]  マブラヴ+SRW α アフター  第七話[まくがいば~](2014/03/30 02:02)
[9]  マブラヴ+SRW α アフター  第八話[まくがいば~](2014/03/30 02:02)
[10]  マブラヴ+SRW α アフター  第九話[まくがいば~](2014/03/30 02:01)
[11]  マブラヴ+SRW α アフター  第十話[まくがいば~](2014/03/30 02:01)
[12]  マブラヴ+SRW α アフター  第十一話[まくがいば~](2014/03/30 02:00)
[13]  マブラヴ+SRW α アフター  第十二話[まくがいば~](2014/03/30 02:00)
[14]  マブラヴ+SRW α アフター  第十三話[まくがいば~](2014/03/30 01:59)
[15]  マブラヴ+SRW α アフター  第十四話[まくがいば~](2014/04/12 00:53)
[16]  マブラヴ+SRW α アフター  第十五話[まくがいば~](2014/04/24 01:00)
[17]  マブラヴ+SRW α アフター  第十六話[まくがいば~](2014/06/16 21:14)
[18]  マブラヴ+SRW α アフター  第十七話[まくがいば~](2014/08/24 21:53)
[19]  マブラヴ+SRW α アフター  第十八話[まくがいば~](2014/08/24 21:56)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[18953]  マブラヴ+SRW α アフター  第十七話
Name: まくがいば~◆498b3cf7 ID:06a0bd21 前を表示する / 次を表示する
Date: 2014/08/24 21:53
 戦艦『加賀』でシンジに饗されたのは、本格的な会席料理。先付から始まり、椀物、向付、と続いていく
料理の数々は、何気に空腹だったシンジを身も心も喜ばせていた。
 悠陽が、食材のいくつかが合成食材だと教えてくれたのも、シンジを驚かせた。刺身や、牛肉がそうだっ
たらしいのだが、言われていなければ、判別ついたかどうか。それほど見事なモノだった。
 食事中、シンジ、悠陽、夕呼、霞たちの会話は、政治的なモノを抜きにした雑談が主であり、その内容は
やはり、シンジが居た世界の話になっていた。
 悠陽は、シンジの世界はどのような政治体制が取られているのかと聞き、統合政府による統治が行われて
いることに、羨望の溜息をついた。
 夕呼は複数の異星文明との間に、銀河を股にかけた交流関係が結ばれていることを、単純に羨ましがった。
自分の知らないどんな異星由来の技術があるのかと思うだけで、興奮してしまうと言う。
 会食も、最後に出された甘味、『抹茶アイス白玉のせ』をもって終了となり、その後は出された煎茶をの
みながら、具体的な協力体制についての話し合いになった。
「……それについては、とりあえず、旧型のタンカーを改造して、彼らに進呈しましょう」
 と、様々な提案は、主に夕呼主導で示されていく。
「タンカーと言うと、対馬級みたいなモノを、と言うことですか?」
 それを悠陽が許諾の判断をし、真耶がそれを記録して後日形にする、という風に会談は進んでいく。シン
ジは自分たちの話のはずなのに、何故か聞き役に回ってしまうことが多い。
 それと言うのも、香月夕呼という女傑が、シンジ達が希望しそうなことを察して、先に言ってくれてしま
うので、自然、シンジはそれに追従する形になってしまうのだ。
「あの、エジプトや一本角、足して重量、どのくらいなの、碇?」
 エジプトはジャイアント=ロボ、一本角はエヴァンゲリオン初号機だと、夕呼には言ってあるのだが、な
ぜか彼女は、自分の付けた愛称の方で両機を呼び続けている。
「2000トンは超えているんじゃないか、と……」
 改修後のロボがどれくらいは分からないが、二機を足せばだいたいこのくらいではないか、とシンジは自
分の予想を言う。
「それに、もう一機、ゲッターとやらもいますし。スペース的にも大型タンカークラスの船舶が調度いいと
思いますわ」
 ゲッターだけは愛称ではなく、ちゃんと呼ぶ夕呼。多分、この人は字数で呼びやすいほうを選んでそうだ
なぁと、シンジは思うのだった。
 こんな感じで、その後も、話し合いは順調に進んでいった。日本帝国は、シンジ達を『独立武装法人』と
言う聞いたことのない名称の存在として容認し、帝国内に組み込むことなく、一独立組織として対等な関係
を築いていくこととなった。
この辺りの采配も、夕呼の独壇場で、この人は本当によく頭が回ると、シンジは素直に感心してしまう。
「では、こちらの準備が整うまで、碇達にはあの島に駐留してもらいましょう。我々と碇達の具体的な協力
関係については、その間に詰めるということでどうでしょうか?」
「私の方は、香月副司令の案に異存はありません、最良の判断だと思います。碇様は?」
 話は、思った以上に早く、そして上手くまとまったなとシンジが思い、同意しようと口を開きかけた時だ
った。
 コンコンコンと素早いノックが三回、そしてこちらの返事を待たず、ドアの外から
「月詠真那中尉です、火急の用件にて失礼します!」
 真那が息を切らせて、ドアを開ける。その後ろには、青いダウンジャケットのようなモノを着込んだ、見
たことがない女性が立っている。歳は自分より少し上だろうか、切れ長の瞳が印象的な、綺麗な女性だった。
「こちらの宗像中尉から、先ほど報告があったのですが……」
「デリング中隊が向かった島に、米軍籍と思われるイントルーダー三機が来襲したそうです」
 ムナカタ、と呼ばれた女性が、真那の言葉を継ぐように、口を開いた。途端、部屋の中に緊張が走った。
 夕呼は目つきが鋭くなり、悠陽は驚愕のあまり、席を立ってしまった。
「で、その状況は継続中、それとも終了?」
 わずかに空いた間、それを破ったのはやはり夕呼だった。
「は! 『じゃいあんと=ろぼ』なる機体が、三機を二分弱で撃破し、搭乗衛士三名を捕虜にしたと報告
がありました」
 ロボが二分かかった理由、そしてこの襲撃相手の意図はなんだ? 大作より、島にいた少女たちと他一名
の心配をしていたシンジは、その報告に頭を切り替える。
「こんな小手先の襲撃の理由は何かしら…… 米軍は、佐渡島ハイヴを破壊したのが連中だって知っている
はずなのに……」
 呟くような夕呼の疑問は、シンジも感じていた。だからか、自分の考えをあっさり口にしてしまった。
「やっぱり、様子見かな……」
「様子見、ありえるわね」
 シンジの独言に、夕呼は納得したように小さく頷く。
「副司令、どう言うことですか?」
 悠陽が勢いこんで訊いてきた。米軍の無断介入という事件は、彼女の中に困惑を生じさせている。
「まぁ、推測でしかないですけど……」
 と言いかけたところで、夕呼はシンジの方を向く。
「まず、アンタの考え言ってみて、碇」
 何故、夕呼が自分に話を向けたのかはわからないが、シンジは思うところを口にする。
「僕が様子見、と思ったのは、米軍か、その上の勢力かわかりませんけど、僕たちのことを実際に見たくな
ったんじゃないかな、と。本気だったら、もっと手の込んだことをしかけてくると思うんですけど」
 イントルーダーとやらが、どの程度の実力かは、想像するしかないが、仮にBF団の怪ロボットクラスの
実力と仮定しても、ロボを攻略するのに三機だけで襲撃は、数が少なすぎる。
あの島をいま、本気で攻略したければ、もっと大規模の軍勢力を動かさなければ無理だろうし、その規模
が動けば、この二人の内のどちらかには、その情報が耳に入るのでは、とシンジは考えた上で、この襲撃は、
物騒な挨拶みたいなモノだろうと仮定したのだ。
 シンジの言葉を聞いた夕呼は、フフンと満足げに笑うと、
「私の予想も、同じですわ、殿下」
 と、シンジの考えに同意を示す。今の夕呼の目つきは、何故かシンジに、今は離れている隼人のことを思
い起こさせた。この人と隼人さんは似ているんじゃないか? とシンジはそんな事を、ふと思ってしまった。
「さて、殿下、頭が痛い問題が増えてしまいましたわね」
「……はい。すいません、碇様、少し席を外します。月詠!」
 悠陽が、初めて見せる厳しい、為政者の顔つきで、立ち上がる。同じ姓を持つ二人が、同時に、
「はっ!」
 と悠陽の言葉に鋭く応えた。そして悠陽はシンジ達に軽く頭を下げると、二人を連れて、部屋を出る。
「なんか、大事だな」
「だね」
 いまだ、扉の両端に狛犬状態で立っていた武と純夏が、顔を見合わせる。この二人と、真耶を立たせて、
自分だけ食事をするのには、多少の抵抗を感じていたシンジだが、上流階級の人との交流で、侍従の人の職
務を妨げるのは、かえって失礼に当たる、と教わっていたので、悪いとは思いながらも、美味しく食事をい
ただいてしまったのだった。
 それと、何故か、ダウンジャケットらしきモノを着た女性も、この場に残っている。宗像、と言われてい
たが、夕呼の部下なのだろうか?
「宗像、アンタなんでまだ、ここに居るのよ?」
「それはもちろん……」
 夕呼に問われた彼女は、シンジに好奇心に光った瞳を向けてきた。
「この少年を、私にも紹介していただけたら、と思いましたので」
 あ、この手のタイプは要注意かも。シンジは本能的にそう感じたのだった。


 貴賓室とは別に、悠陽に用意された個室に戻ると、帝都から上がってきた報告書を携えた、戎が待ってい
た。
「報告を」
 悠陽が短く促すと、恵比寿は短く頷いて、渡された資料を読み始める。国防省から政府に上がってきた報
告書の内容が、そこには記されている。
 大作たちの居る島に、米軍が襲撃を掛ける三分前に、米国海軍第七艦隊司令部より、佐渡島に置いて無断
で武力行使を行った正体不明の機体二機を補足した報告と、同盟国の権利を護る為に、当該勢力を捕縛する
との報告が、一方的に日本政府に通達されたとの事。
 その通達を、米国政府、米国大使館等に、問い合せているうちに、第七艦隊司令部より、貴国の主権侵害
となりえると判断したので、出撃を見合わせた、という回答があった。
 そこで、戎の報告は終わる。
 だが、夕呼に上がってきた報告では、実際、米軍は武力介入を行い、あっさり退けられている。捕虜や、
鹵獲状態の機体があの島にはあるはずなのに、このような虚偽の報告を行った理由は?
 悠陽は考えを巡らせる。
 米軍、いや米国政府が、同盟国の主権を侵害するとわかっても、襲撃を強行したのは?
 そして、彼女はある考えに思い至った。
「……そういう、ことですか」
 動き始めた世界、その中心に身を置いていることを、悠陽は改めて感じていた。


「宗像美冴中尉です。香月副司令麾下の戦術機部隊に所属しています」
 静かだが、凛とした響きのある言葉と、綺麗な敬礼で、美冴はシンジに挨拶する。
「碇シンジです」
 とシンジは、相変わらず、短いがしっかりした挨拶を返す。
 社霞のこの場所での役目は、いつも通り、夕呼の為のフィルター。夕呼は彼女を通して、事の虚偽を安易
に見分けることができる。
 霞は、不思議な思いでシンジを見つめている。
 社霞、本名『トリースタ=シェスチナ』 オルタネイティヴ第三計画の落し子である彼女には、特殊な能
力がある。他者の感情と思考を独特の手段で読み取る、リーティングと言われる能力と、他者に自身の思考
をイメージとして伝えるプロジェクションと言われる能力。
 しかし、シンジほど、リーディングのしがいがない人物はいないだろう。感情が、ほとんど揺らがない。
裏表がまったくない。同世代と思われる武や純夏と比べ、シンジの落ち着きは年不相応すぎる。
 それと……
 霞は自分でも不思議なのだが、シンジをリーディングする際、言いようのない、悪寒のようなモノを感じ
ていたのだ。
 この人の中には、覗いてはいけない、何かがある。漠然とだが、そんな予感を霞は感じていた。
「はい、挨拶すんだら戻りなさい、宗像。これでも碇は、超が付くほどのVIPなんだから」
 ほら、出て行ってという風に、手首を振って邪見に美冴を追い出す夕呼。その夕呼の態度に不満も見せず、
「わかりました、失礼します!」
 と敬礼して、回れ右で部屋を出て行く美冴。彼女にしてみれば、夕呼が『超VIP』と言うほどの少年の名
前と容姿がわかっただけで、満足だったようだ。
 それにしても……
 先ほど、夕呼がシンジのことを『アンタ馬鹿でしょ?』と言った時、霞は面にこそ出さなかったが、内心、
かなり驚いていた。
 あの夕呼が、他人をそう評したのは、霞が知る限り、そこにいる白銀武だけだ。彼女は、その能力を認め
た人を『手駒』として使おうとする悪癖があるが、あの馬鹿発言は、認めたけど、『手駒』としては使えな
い人にのみ、彼女が使う最大の賛辞みたいなものだと、霞は思っている。
 たしかに、と霞はシンジに改めて視線を送る。理由は説明できないが、武とは違うタイプで彼は駒になら
ないタイプだ。
 いつの間にか、悠陽が抜けたこの時間は、夕呼や武、純夏を巻き込んでシンジについての雑談になってい
た。夕呼が好奇心にメラメラと燃えているのがわかる、こんな楽しそうな彼女は久しぶりに見た。
「……どこら辺まで、人類は行けるようになったの?」
「一応、銀河系内だったら、ほぼ全域、いけるようになっていますね」
「え、そんなトコまで行けているの? ひょっとして、恒星間移動の便利な航法で確立されたとか?」
「まぁ、フォールド航法とか、クロスゲートとか、まぁ、色々と」
「それも、異星由来の技術?」
「ですね。僕たちの世界で十五年くらい前になるんですけど……」
 と、言う感じで、シンジと夕呼達の会話は弾んでいる。霞はいつも通りの聞き役。だが、彼女もそれなり
にこの場を楽しめていた。
 碇シンジは未来の、違う世界から来た。そんな荒唐無稽な話も、真実であることがわかる。遥か先の世界、
人類はどこまで勇躍しているのか? それを想像すると、霞もわずかに、ときめきのようなモノを覚えるの
だった。
「そういえば、銀河系の真ん中で、宇宙怪獣と戦ったとか言ってたよね、シンジ君」
「宇宙怪獣!? なによ、ソレ?」
「簡単に説明すると、巨大な昆虫みたいなの、ウジャウジャと……」
 シンジが、夕呼たちに説明するために、その『宇宙怪獣』 とやら思い出したのだろう。その思考が、イ
メージとして霞に流れ込んできた。

 !?

 それを、何と形容すればいいのか、霞は自身が視ているモノを、自身でも理解できないでいた。前に数千
のBETAに囲まれながらも、生き残った衛士の記憶イメージ。アレに辛うじて近いと言えるかもしれないが、
シンジが体験したモノはその比ではなかった。
 数を数えることすら愚かしい、異形の化物の群れが雪崩の如く襲来してくる。この人は、こんな戦いの中
を生き残ったと言うのだろうか?
 こんな絶望的な状況でも、諦めなかったのだろうか?
 刹那の時間のはずなのに、その異形の襲来は霞の意識を徐々に削いでいく。
 終が見えない戦いの記憶。だが、その異形の群れの先に、何かがほんのわずかに、垣間見えたのを霞が感
じた時……。
 霞は、総毛立つのを感じた。
 例えるなら…… いや、例えようのない何か…… 邪悪、暗黒、負の形容しか出来そうのない何か……
 意識が薄れそうになるのを、ギリギリでこらえる霞。ダメだ、この思考は危険だ。
 霞がシンジに対するリーディングを中止しようとした時だった。

 !?

 イメージの流入が止まらない。シンジが何気なく思い出しただけのはずの戦いは、その記憶自体に意志が
あるように、霞へ侵食していく。
「……あ、あぁ」
 本人も気づかぬうちに、うめき声が上がる。霞の意識は、激流の飲まれるように、次第に薄れていった。


「なんだ、宇宙怪獣って言うから、三つ首で金色とかじゃないの?」
「どこの……」
 宇宙怪獣ですかそれは? とシンジが言おうとした時、
「……あ、あぁ」
 今まで、会話の外にいた少女、社霞が呻き声をあげているのに、気づいたシンジ。夕呼や純夏に武に顔を
向けると、三人は素早く霞の傍に近づいていた。
「……思考に取り込まれたの? 碇、アンタすぐに思考を切り替えて!」
 思考を切り替えろと言われても、意味が飲み込めないシンジ。そんな彼に、
「素数でも数えてなさい、早く!」
 何故、そんな勢いこんで言われなくてはいけないのか、理解できないシンジだが、夕呼の剣幕に押され、
頭の中で、2、3、5、7と素数を数え始める。
「鑑、例のアレ、お願い」
「はい!」
 11、13、17、19…… シンジは素直に素数を数えながらも、今の状況を観察している。突然、ウ
サギ耳ヘアバンドの少女が、呻き声を上げて、椅子から崩れ落ちるようにして倒れてしまった。
 それを見て慌てたのはシンジも同じだが、いきなり『思考をかえろ』と無茶な要求をされてしまった。
 だが、シンジは咄嗟に頭を巡らせ、夕呼の言葉の意味を悟っていた。
 社霞という少女には、思考を読む能力がある、そしてシンジの考えを読んでいた、そういうことだろう。
 23、29、31。だんだん咄嗟に素数が浮かばなくなってくる。
 霞がこの場に臨席した理由は、真贋のフィルター役、そんなトコだろうか。だけど、なぜその彼女が、い
きなり昏倒した。その理由は、続いた夕呼の言葉が教えてくれた。
『思考に取り込まれた』
 夕呼はそう言った。つまり、シンジの考えたこと、記憶に飲み込まれた。なんの記憶だと考えると、一
瞬だけ浮かんだ、神一号作戦から、霊帝との戦いについてとしか思えない。
 なら…… 霞は、自分の中の霊帝、ケイサル=エフェスを見たとしたら……
 マズイ! あれは、知ることですら、相手になんらかの影響を与える可能性のある、負の無限力の化身。
何の前知識もない少女が、いきなりそれを知覚することは、それだけで危険に思えるほどの存在だ。
 純夏が霞の手を握っている。彼女も何らかの精神感応能力があるのだろうか、なら彼女にこの情報をと
思った時だった。
 純夏がハミングで、あるメロディを口ずさみ始めた。
「………… え?」
 絶句、驚愕、シンジは一瞬で、頭の中が空白になっていた。。
 純夏の紡ぐメロディは続いていく。ハミングだけのそのメロディは、静かに、伸びやかに、続いていく。
 すると、霞が見る間に、落ち着いてきた。苦しげな呻き声がやみ、安らかな寝息になっている。
「ふぅ、とりあえず、一安心ってトコかしら」
 霞の額に手をあて、夕呼が安堵の溜息を漏らしている。
「純夏さん、ちょっといいですか?」
 とりあえず、霞は大丈夫のようだ。シンジは逸る気持ちを抑えながら、純夏に訊いた。今の目の前で起
きたことは、シンジにとって、ある意味、この世界に跳ばされた以上の驚愕を彼に与えていた。
「いまのメロディ、どこで覚えたんですか?」
 シンジが驚愕した理由。逸る気持ちを抑えられない理由。純夏は、シンジから感じる圧力のような迫力
に多少、気圧され気味に答える。
「え、えっと…… 光神様に助けていただいた後に、自然に覚えていたっていうか、何ていうか…… 
あたしにも、よくわからないんです。ごめんなさい」
それは、純夏が紡いだメロディが、自分たちの世界で、あの霊帝との最終決戦で流れ、自分たちを救って
くれた歌、『GONG』のメロディそのものだったからだった。



 新西暦の世界では。

「え、バサラが来たの!?」
 アスカ、レイ、サニーの三人での入浴をすませ、湯上りの一杯を求め食堂に立ち寄ったところ、席を囲ん
でいた、キラ、ライ、ブリット、カトルの四人が、その情報を教えてくれた。
「えぇ、なんでも佐渡島上空までフォールドしてきたそうです。どうやら、大怪球戦に乱入するつもりだっ
たみたいで」
 苦笑しながら説明してくれたカトル。他の三人の反応も同様だ。
 自販機で、イチゴ牛乳のパックを購入し、四人と同じテーブルの席につくアスカ。色々あって疲れた一日
だが、寝るのは彼らの話を聞いてからにすることにした。
「まぁ、熱気バサラ様がいらしたのですか?」
 と、同じく自販機でバナナミルクを購入したサニーが向かいに座る。その隣には、コーヒー牛乳を購入し
たレイが座った。サニーがいることに、だんだん違和感が生じなくなっているアスカだった。
「それは是が非にでも、お会いしたいですわ♪」
 爛漫にそう言うサニーの横で、レイも無表情ながらも同意の頷きを見せる。
この二年でレイが、ファイヤーボンバーの熱狂的なファンになっているのを知る者は少ない。内心、飛び
上がって、「ぼんば~~♪」と叫びたいんじゃないの、この子は? とアスカは思ったりする。
「まぁ、色々な手続きを吹っ飛ばして地球に来てしまったからな。葛城大佐が頭を抱えているそうだ」
 と紙コップのコーヒーを飲みながら、ライが言う。ミサトには、ご愁傷様、としか言い様がないアスカだ。
 バサラの話題で話が続くのかと思っていたアスカだが、キラがライとブリットに、違う話題を振ってきた。
「ところで、気になっていたんですけど、佐渡島で大怪球消失があった時、そちらでも何かあったんですか?」
 キラの疑問に顔を見合わせるライとブリット。そっちとは、SRXチームとブリットにクスハが席を置いて
いるテスラ=ライヒ研究所のことだろう。今、SRXチームはクロスゲートシステムの確立の為、軍籍を離れ
て研究所に出向という形になっているはずだ。
 キラの問いに、答えたのはブリット。自らの考えをまとめるようにゆっくり話し始めた。
「実は、佐渡島でアレがあった時、俺やクスハ、それにリュウセイも、正体不明の『何か』を感じたんだ…
…」
「何かって、漠然ね」
 アスカが言う。でも、直径一キロの珠と、機動兵器数体が一瞬で消えた変事だ。サイコドライバーのブリ
ット達が何かを感じていたとしても不思議ではない。
「その何かは、昏睡状態だったアヤ大尉とマイも感知したらしい。おかげで目を覚ましてくれたがね」
 と、ライが付け加えた。アスカ自身は強念の欠片も持っていないので、それがどういうモノなのか想像で
きないが、一万キロ以上離れた場所の昏睡状態の人間を覚醒させるなんて、いったいどんな電波が飛んだの
だろうか?
「ブリット様、おとぼけはいけませんわよ」
 そこで割り込んできたのは、バナナミルク片手のサニーだ。フフンと訳知り顔でブリットに言う。
「とぼけるって?」
 言われたブリットは、怒る風でもなく、サニーに聞き返す。
「ブリット様にはわかってらっしゃるのでしょ? あの咆哮の意味するモノが」
 咆哮? 何のことだとアスカは思ったが、キラは別のことをサニーに訊いた。
「つまり、キミもブリットやリュウセイさんが感じたっていう何かを」
「はい、感知しました。と、言うよりこの星に住む感応系の能力を持っていらっしゃる方、全てに届いたと
思いますわよ、あの咆哮は」
 咆哮って、獣の叫びみたいな解釈でいいのよね、とアスカ。ブリットに縁深く、咆哮しそうな存在と言え
ば、思い浮かぶのは一つだ。
「……俺は、確信が持てなかったが、十傑集の貴方が言うのなら、そうなのかもしれないな」
 つまり、その可能性は、ブリットも感じていたということか。ブリットも感じたということは、クスハも
同じだろう。アスカの考えをまとめて口に出してくれたのは、カトルだった。
「龍虎王が、目覚めたのですか?」
 ブリットとクスハ、その二人と長き大戦を共にした超機人、真龍虎王と真虎龍王は、二年前の霊帝戦を最
後に、その姿を消していた。だが、人界に災い在るとき、再び彼らは蘇る。そう、二人は信じていると、ア
スカは聞いている。
 なら、大怪球を、いや、もしかしたら真ゲッターの暴走を人界の危機と察知して、復活したのかと考えた
アスカだが、その考えを打ち消すようなことをブリットが言う。
「俺とクスハが、あの念を察知しても、確信が持てなかったのは、その一瞬だけで気配が消えてしまったか
らなんだ」
「消えちゃったの?」
 なら、サニー曰くこの星の感応系能力者全てに届いたという咆哮とやらは、どんな意味があったのか? 
アスカが考えを巡らせていると……
「……ひょっとして、龍虎王たちも行ったのかも」
 と、ポツリとレイが呟いた。いつもの習性で、
「何処へよ?」
 とツッコんでしまうアスカ。レイが、赤い瞳をアスカに向けて、答えた。
「シンジ君の行ったところに……」
 そんな事あるわけ、と口にしようとしたアスカだが、その言葉を飲み込む。レイの思いに、共感が芽生え
たからだ。
「ありえますわね、それは……」
 と、考え込む顔で、同意を示すサニー。こうやって見ると、サニーの面差しは可憐さだけでなく、知的さ
も垣間見え、同性でもドキッとさせられる。
「そう仮定したとして、なら龍虎王はどうして、シンジ君たちの元へ?」
 レイの考えは、この場にいる皆に、ある程度の共感を与えたようだ。カトルが、さらに考えを進めるよう
に言った。
「だとしたら……」
 答えたのは、その操者であったブリット。
「シンジや竜馬さん達の行った先に、いるのかもしれない。人界に仇なすモノが……」
 証拠も何もない、内輪での予想、であるはずなのに、その言葉は、事実を語られたようにアスカの胸に響
いた。
 真ゲッターは何故、シンジや大作まで異界に誘ってしまったのだろう?
 疑問は尽きない、わからないことだらけの出来事。また不安が胸に渦巻いてしまうアスカ。
「何はともあれ、全てはこれから、だ」
 そんなアスカの不安を察したのか、ライがわずかに笑顔を見せて言う。
「そうですわね、大作様は無事なのは確かですし、大作様がいらっしゃれば、他の方々もきっと無事です。
皆さま、一丸となってがんばりましょう♪」
 元凶の組織に籍を置くサニーが言うセリフではないとは思うが、もうツッこむのも疲れたアスカ。苦笑が
思わずもれた。
「αナンバーズの仲間が、皆を救う為に、動き始めてくれています。ですから、きっと」
 カトルが、最後まで言わずとも、アスカにはその先の言葉はわかった。
あの仲間が再び集まれば、不可能すら可能にできるはずだ。だって、人類滅亡の危機ですら救った、最高
の仲間たちなのだ。
だから、きっと、大丈夫。



【ちょい後書き】
 前回、ここに書いたこと、感想の方で皆さんが書いてくださった通りです。一人、合体して女性化して
いますが、深い意味はありません。そのままじゃつまらないかなぁと思っただけです、うん。



前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.025292873382568