<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

Muv-LuvSS投稿掲示板


[広告]


No.30479の一覧
[0] 【第十四話投稿】Muvluv AL -Duties of Another World Heroes-[なっちょす](2014/09/10 01:21)
[1] プロローグ[なっちょす](2012/07/16 02:08)
[2] 第一話[なっちょす](2012/07/16 02:10)
[3] 第二話[なっちょす](2012/07/16 02:10)
[4] 第三話[なっちょす](2012/07/16 02:20)
[5] 第四話[なっちょす](2012/07/16 02:21)
[6] 第五話[なっちょす](2012/07/16 02:20)
[7] 第六話[なっちょす](2012/07/16 02:13)
[8] 第七話[なっちょす](2012/07/16 02:20)
[9] 第八話[なっちょす](2012/07/16 02:16)
[10] 第九話[なっちょす](2012/07/16 02:15)
[11] 第十話[なっちょす](2012/07/16 02:20)
[12] 第十一話[なっちょす](2012/07/16 02:17)
[13] 第十二話[なっちょす](2012/07/16 02:18)
[14] 第十三話[なっちょす](2012/10/28 23:15)
[16] 第十四話[なっちょす](2014/09/10 01:21)
[17] キャラ設定[なっちょす](2012/10/28 23:18)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[30479] 第九話
Name: なっちょす◆19e4962c ID:3f492d62 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/07/16 02:15

―3月3日―
――国連軍・横浜基地・地下機密区画・B19フロア――


「…で、白銀。 会談はどうだったの?」


帝都から横浜基地に帰還したタケルと宏一の二人は、一旦ヴァルキリーズの訓練に顔を出した後に会談のレポートをまとめて夕呼のオフィスに来ていた


「会談は一応成功しましたよ。食い付きも良かったんで、後は向こうからの行動を待つだけだと思います。
 詳しくはそこに書いてありますが…」


「へぇ…そう。 ところで飛鳶の発表はしたの?」


「はい。 宏一が説明してました」


「如月、どの程度まで話したのかしら?」


タケルがまとめたレポートに目を通していた夕呼は、宏一の方を向く


「まぁ簡単な説明だけですね。機体の簡単な解説と簡単な性能説明ぐらいです。
 あ、あとECSやマスタースレイブシステムについては“試作装備”としておきました」


「それなら良いわ」


夕呼の口元が少し緩む


「…それと、博士は帝国陸軍の巌谷 榮二中佐は御存じでしょうか?」


「知ってるわよ… それが?」


「…いや、XM3や飛鳶にかなり興味を持っていたらしく、それ故ウチとタケルのどちらかがXM3の開発者ではないかと聞いてきまして…」


「そう…(相変わらずカンがいいわね。 でもアイツが興味を持ったのは逆にこっちに好都合…)」


夕呼はブツブツと小声で呟きながら自身の思考に意識を向けた


「…あの~博士?
 ウチ、何か不味い事しましたかねぇ…?」


「気にすんな、宏一。
 夕呼先生がこうなった時は大抵が良からぬ事を考えている時だから、こうなっちまったら後は待つしかないさ」


「はぁ…」


宏一の肩をたたいたタケルは、そのまま霞の方を向く


「霞~おはじきしないか?」


「…はい」


「宏一、お前もやるか?」


「暇そうだからねぇ…混ぜさせてもらうかな」


自分の椅子に座り思考に暮れる夕呼をよそに、三人は小さな机の周りを囲みおはじきを始めた
しかし、そのノホホンとした状況は夕呼の一言によってすぐに壊されてしまう


「…如月。飛鳶は不知火の発展機よね?」


「正確には“不知火・弐型”と“YF-23”を掛け合わせた発展機ですが、まぁそうなりますね…
 それが何か?」


「白銀の不知火も飛鳶に改修するわ」


夕呼の一言にタケルは一旦固まった


「…へ? 今何て?」


「だから、アンタの不知火を飛鳶にするって言ってんの」


「いや、それはわかりますが… 
 何故俺の不知火を…?」


タケルは夕呼の言っている意味がさっぱりだといった表情を浮かべる


「如月が渡してくれたデータが正確なら、飛鳶の関節強度は不知火の倍以上よ?
 アンタの変態操縦にとっては不知火を強化した物より断然いいわ」


夕呼はそう言い放ちつつ、二人にある整備記録を見せた
その書類はタケルの不知火の整備報告書類であり、タケルが全力機動を行った直後のものだった…
その報告書には、各装甲等の機体の外面には全くの異常が見受けられないが、各関節の…特に脚部関節のフレームや電磁伸縮炭素帯の歪みや劣化、摩耗が激しく、実戦で一戦持てばいい方だと記されていた

それを見たタケルは小さく「ッゲ」っと息を漏らし、一方の宏一は苦笑していた


「…理由はわかりましたが、博士。
 しかし、それは不可能だと思います」


宏一が苦笑したまま言う


「あら、なんで?
 一機分くらいのパーツ生産ならこの基地でもできるわよ?」


「いえ、そういう意味ではなく、飛鳶のベースが不知火・弐型であるってことなんです」


「つまり?」


「前の世界では、弐型の開発計画―XFJ計画って呼ばれていました―が始動したのは2001年5月頃、ロールアウトは同年8月末です。
 高性能機だったんですがねぇ…なにぶん採用されたのは2003年末、帝国には少数しか配備されなかったんで壱型よりも珍しい機体でした」


宏一はやれやれといったポーズをとる


「…つまり改修させる元が無いって事か?」


「御名答。
 弐型は頭部や脚部、肩部装甲…主機と一部のフレームが全くの別もんだからねぇ」


「…それなら心配はないわ」


「「え?」」


「既にXFJ計画は始動しているわ。
 さっき言ってた巌谷ってのは、その計画の中心人物の1人よ」


「「な、なんですとぉー!?」」


夕呼から告げられた事実に、タケルは不審に思った人物がそんな計画の中心人物であった事に、宏一は自信の知っていた“未来情報”と違う事に驚いた


「し、しかし各部のパーツは…」


「設計図があるし、製作機械もあるから問題ないはずよ」


「それにエンジンはFE119-FHI-220というYF-23やF-22にも使われている奴の強化改造型で…」


「元となったエンジンはオルタネイティヴ計画特権でなんとかなるわ」


「…」


「あら、もう終わり?」


「思いつく限りは…も、負けました」


「あらそう」


orzと落ち込む宏一の頭を霞が撫でていた


「…でもアルの代わりはどうすんだ?」


タケルが唐突に自分の頭にひらめいた疑問を問う


「アルは専らマスタースレイブシステム専用の補佐AIみたいなもんだから、普通の管制ユニットを使用するのであれば必要性は無いよ」


「へぇ~」


「…なら問題はないわね。早速手配するわ」


「「はぁ」」


「あ、それと…」


夕呼の浮かべる笑みに武と宏一、そして霞の3人の頭を不吉な予感が横切る


「白銀と如月には明日戦ってもらうわ。…無論実機でね」


「なんでまたそんな急に」


「何でって…横浜基地もXFJ計画に参加しようって事に決まってるじゃない」


「…え? えぇ~~!?」「それはなんとなく想像できましたが…でもなんで不知火と?」


タケルが驚き、宏一は顔をひきつらせていた


「XFJ計画は不知火の改造計画よ~?
ノーマルより強い不知火であれば良いに決まってるじゃない。 その確認よ」


「XFJ計画に参加ってことは…つまり、アラスカに行けと?」


「まぁ、そうなるわね。
勿論白銀の飛鳶が完成してからだけど」


「…さいですか」


「そうそう、一つ言い忘れてたわ。
 「「?」」
 如月、必ず勝たなきゃ駄目よ?
 アンタが負けたら意味をなさないんだから」


「ま、まぁそうでしょうねぇ」


「勿論白銀は本気を出しなさい」


「言われなくともわかってます」


「わかってるなら良いわ。
 それともう一つ伝え…」





十数分後…
二人が夕呼のオフィスを出た時、彼らは疲れ切った表情をしていた


「ウチ、博士の事舐めてたわ…」


「気にすんな。
 あんなのは日常的な事だから」


「…お前、スゲーな」


「ま、伊達に先生と腐れ縁やって無いってことさ」


苦笑しながらそう話すタケルの背中が、宏一にはやや広く感じられた


……






―3月4日―
――国連軍・横浜基地・地下機密区画・モニタールーム――


そのモニタールームは他の物と比べ豪華な造りとなっていた
部屋に置かれている移動可能な椅子には各個に小さなモニターが据え付けられており、各々がメインモニターで流されている映像を自由に再生・停止させる事が出来るようになっていた
又、他のデータを閲覧する事も可能であった


しかし、その部屋を独占していた総勢八名の男女…ヴァルキリーズのメンバーはそんな豪勢な備品には目もくれず、只その部屋の壁一面を占める一つの大型モニターにくぎ付けとなっていた


―モニターには廃墟に一機のUNブルーを身にまとった不知火が映っていた


『―開始まで三分を切りました』


ピアティフの声が流れる


「…まだ来ないね、宏一君」


「なにもたついてるのかしらねぇ?全く」


一向に現れない不知火の対戦相手―飛鳶―に対して愚痴が飛び始める


「速瀬少尉…幾ら早く性的快感を得たいからと言って駄々こねるのはよくありませんよ?」


「む~な~…
 「って平少尉が言っていました」
 し~ん~じ~?」


「って俺かよ!!」


「全く…貴様らは静かに待てんのか?」


「そうはいってもねぇ…
 って、噂をすればナントヤラ…みたいよ?」


沙恵の一言にモニターの一角に視線が集まった


「うそ…あんな重武装で挑むつもりなの?」


「それよりも、よくあんな装備で良く跳べるな…」


「確かに…」


彼女等の注目するモニターには
右手に87式支援突撃砲
左手に92式多目的追加装甲
左右の腰部兵装担架と背部両外側兵装担架に87式突撃砲…計四門
背部内側兵装担架に74式接近戦闘長刀を二振り
を装備した飛鳶が丁度水平跳躍から着地に移行するところが映されていた


機体を起こしつつ出力を絞る―
慣性だけで飛んでいた飛鳶は豪快にアスファルトを巻き上げなが滑るように着地した


『遅れてスマン。
 予想以上に装備に時間がかかってね…』


『掛かり過ぎだわっ!!』


遅れを詫びる宏一と、突っ込みを入れるタケルの通信がモニターから流れた


『それでは今回の模擬戦のルールを説明します。
 通常の模擬戦と異なり、今回搭載する予備弾倉は通常の搭載数ではなく、持久戦―すなわち長時間に渡る戦闘を想定して、両機共にフルリロードです。
 これとは別に、如月機に関しては更にレーダージャミングやダミーフリップ等のECMの使用は禁止とさせていただきます。
ここまでで何かありますか?』


『『無いです』』


『では説明を続けます。
模擬戦エリアは柊駅を中心とした半径5kmの円形。
 エリア外での戦闘は敵前逃亡とみなし、即時大破判定が下されます。エリア外の移動についても同様です。
 勝敗の決定は衛士死亡判定、又は大破判定時のみだけとなっており、行動不能判定だけでは撃墜とみなされません。
 注意をお願いします。


 これ以外については今回は特に定義されません。
 無論、制限時間についても無制限とさせていただきます』


ピアティフが淡々と説明を行う
その説明を聞く両者の顔は、今か今かといった具合だった


静かに説明を聞く二人とは正反対に、モニタールームの方は騒がしかった
通常のケースとは異なる状況設定…
それだけでも異質であったのにもかかわらず、制限時間無制限というこれまた更に異質な条件が追加された事が主な原因であった


「制限時間無制限って…
 弾薬とか推進剤が無くなったらどうすんだ?」


「流石に弾薬についてはあれだけど、推進剤が無くなるってことはねぇだろ」


「でも白銀君の機動なら有り得ない話でもなさそうだよね…」


「それに如月の飛鳶だって、RCSだったっけ?あれも推進剤消費してんでしょ?
 有り得なくはないでしょ~」


「でも二人程の操縦技術であれば即座に終わる気もしなくはないのですが…」


「逆に上手いから長引くんじゃない?」


様々な意見が飛び交う


あーだ、こーだと言っている内に模擬戦開始時刻となった


『では、開始まで
 ―5!』


『―4、
 ―3、
 ―2、
 ―状況、開始!!』


二つの機影が一気に動き出した





―タケルside―


開始と同時に俺は突撃砲を殆ど乱射に近い状態で宏一の飛鳶にまっ直ぐと突っ込んでいく

普段だったらこんな事は絶対にしないが、宏一が相手だと一々ロックオンして撃っても意味無いだろうし
第一、今回は特例で予備弾倉はたんまりとある…
だから多少の無駄撃ちは許されるはずだ

宏一は後退しながらスラスターを利用した左右への乱数回避を続けていた
途中、追加装甲を併用して支援突撃砲を撃ってくる
こっちも攻撃しながらの乱数回避…
宏一の放った弾が、正確にコンマ数秒前まで俺がいた場所を通って行く

あいつ、確か基本的にマニュアルで狙ってるって言ってたよな?
良い腕してんな~
…まぁ、たまには劣るが

そうこうしている内に飛鳶に動きがあった
交差点でサイドステップし、ビルに機影を隠した

普通だったら追い駆けてくんだけどなー
宏一の事だから罠でも張ってるでしょう…と、俺の“しっくすせんす”が告げている
カンに従って、俺も少し手前の交差点でビルに身を隠した

レーダーに注目
どうやら動きは無し…と

やっぱりカンってのは信じるべきだな
案の定少し奥の方で待機してるみたいです
あの訓練、役に立ったなぁ

…さてそれはいいとして、ここからは持久戦なのかなぁ~

―数十秒経過―

おかしい…
何も動きが無い
いくら持久戦とはいえ流石アクションが無さ過ぎる
様子見で状況把握を試してみるか
レーダーも単機じゃ信憑性低いもんな!


どれどれ、あっちの動きはな…


ビル角から頭部を出すと、突如頭部真上のビル角がオレンジ色に染まった
それに慌てた俺は再び隠す

損害確認…頭部のセンサーマストに一発喰らったみたいです
左側のセンサーマストが綺麗なオレンジ色にペイントされてますよ?


『白銀機、頭部被弾。小破。
 レーダーに支障なし』


ピアティフ中尉の報告が入った
レーダーに支障が無いのは不幸中の幸いといったところか…

てか今機影見えました、奥さん?
…見えてないですよねぇ
なら、どっから撃ったんだ?

う~む…わからん

…って、そんなことより、俺、もしかしたら手詰まりじゃないですか?
どこから撃っているか分からない以上、むやみに動くのは危険だし…
だからと言って動かないのもあれだし

ともかく、動かなきゃどっちにしろ駄目だ
賽は投げられた!!
行くぞ、俺!

…そういや“賽は投げられた”って誰の言葉だっけ?
まぁ…いいや

俺は隠れていたビルを飛び越え、直接宏一がいるであろう位置に跳躍する

たぶんアイツの事だからこれくらいは想定しているだろう…
が、空中の方が回避にはもってこいだ
だから飛ぶ

レーダーの反応があった場所に追加装甲を構えつつ突撃砲を向ける
トリガーにかかる指に力が入ったその瞬間…


「そこだっ!! …って、あれ?」


其処には追加装甲が地面に突き刺さり、それに支援突撃砲が立てかけられているだけだった

何とも拍子抜けする展開…イヤイヤ、そんなこと言っている状況ではないだろ


レーダーで機影を探すが、反応なし
いつの間に消えたんだ?
…まぁ、とりあえず着地しますか

俺は着地した後周囲を警戒、異常が無い事を確認するとその路地に機を隠す


さて、ECMの使用は禁止されているからこれはECSとかだな
『まだ教えていない機能がある』みたいな事を言ってたし…
これがその機能って奴なのか?


もう一度周囲を見渡す
…異常は無いな


しっかし、味方であれば頼りになる奴だけに敵に回すとおっかねぇな…飛鳶って機体は
そんな機体が俺の愛機になるのかぁ~
武御雷とどっちが強いのかな?
当然R型には敵わないだろうけど、スペックデータだけならF型といい勝負だし…


…脱線するなよ、俺

しかし、ステルスってのは厄介だな…いやホントにさ

さてさて、このだだっ広いエリアからどう探せばいいんだ?
無駄に動いても時間の無駄だし、更に余計な隙も作っちまう

…よし、とりあえず飛ぼう
動きがあればレーダーに反応するだろうしな

そう決めると操縦桿を操作して機を垂直跳躍、高度60m程で水平跳躍に移行させた


…反応が無い
レーダーにも何も反応は無い
隠れているのか?
いや、そんなんじゃ模擬戦として意味無いだろ
しかし…確か宏一は“AH戦では焦った方の負け”とも言ってたな


降りるか…
推進剤が勿体無いし


そう思いつくと、俺は機を付近の適当なビルの屋上に着地させた


あいつは俺と結構似たところがあるからなぁ~
俺がここを攻撃するならば…


俺が考える理想な場所をマーキング
それらを中心に周囲を索敵していく


やっぱり何も…


あきらめて新しい場所へ移動しようとした瞬間
初めて宏一の訓練を受けた時に感じた悪寒が俺を引き留めた




――ゾクッ――




たったの一瞬だった…
悪寒が背中を駆け抜ける
一瞬だったが、感じた重さはあの訓練で初めて感じた物の比ではない
一気に全身の毛穴が開き、アドレナリンが分泌…
冷や汗も流れてきた


これがAH戦の経験者ってか…!?
俺も一度体験したが、そんなんじゃねぇ
これが本当の…殺気!


慌てて予めマークしていた個所を確認するが、何もなし
焦りが広がるのが俺にもわかった


早く探し出さなきゃ殺される


模擬戦なのにもかかわらず、そんな考えが頭をよぎった
そのぐらいヤバい


そんな時、俺の全感覚が後ろに何かが居る事を告げる


…宏一か!!


機を急反転させつつ、頭部を動かして後ろを見る
目の前には長刀を振りかざす飛鳶の姿


「いつの間にッ!?」


愚痴を吐きつつ急速後退
牽制替わりに突撃砲も撃つ
エイミング無しの殆ど乱射に近い発砲…
当り前だが、当たってない

飛鳶が長刀を突撃砲に持ち替えた


クソッ…
この距離で二門撃ちされるとキツイってのに


追加装甲を構え、再度後方跳躍
距離を離そうと試みる

飛鳶が発砲
ガンッ!ガガガンッ!!―と思い音を響かせ、装甲の耐久値が削られていく


このままじゃ…やられる!


仕返しと言わんばかりに俺も撃つ
が、かわされた


…ったく、ちょこまか動きやがって


装填の為か、飛鳶が隠れた隙を計らって機体をビルに隠した
そして深く深呼吸…


…ふぅ~


呼吸が落ち着くと、俺は一つの疑問に気が付いた


飛鳶が全く近づいてこない…


もう充分な距離が開いてしまった
いくら撃たれているとはいえ、あの程度の弾幕であれば宏一なら容易く接近・格闘をしかける事が出来たであろうに


おかしいな…


そう思った俺は振動センサーの感度をMaxに上げる
例えレーダーに映らなくても、振動までも打ち消すのは容易いことではない…
そう考えたからだ


「……」


Maxにしたのは良いが、いささか雑音も多く拾っちまうなぁ…


「…まぁ、しょうがないか」


こうなることくらいは分かってたしな


《振動検知、北北西、距離100》


早速来たか!


予想以上に早くかかってくれたぜ
しかし、こんな近くまで接近されているとは…
正直複雑な心境だな
素直に喜べない
…喜ぶことでもないがな


ともあれ、俺は殺気を押し殺して宏一が即席の罠場に入るのを待った


後、数歩…
飛鳶の陰が目の前の道路に映る
…が、突如飛鳶が止まってしまった


すぐさま照準レクティルをビルの角へ合わせ、何事にも対処出来る体制を取る


気が付かれたか?
…いや


再度飛鳶が動き出す
数歩分の振動の後、ビルから銃口が覗いた
無論俺の方向は向いてない


トリガーにかける指に再度力が入る
…そしてその時は来た


レクティル一杯に広がる飛鳶の胴体
頭部がこちらを向き、発見された
だけどな…


「けど、気が付くのが遅かったなぁ!!」


指に最終的に力が加わり、トリガーを引く


-発砲-


飛鳶は機体を捩らせて回避を取るが、幾分ちょっと遅かったようだ


放たれた砲弾は突撃砲に大破判定を喰らわせ、左腕・肩部にそれぞれ小~中破判定を与えた
…胴体に当てられなかったのが歯痒いぜ


回転しながら突撃砲を破棄した飛鳶が、器用にもそのまま兵装担架の突撃砲ともう一方の腕の突撃砲を撃ってきた


当然そんな事は折り込み済み…
軽く回避して更に撃ち込む


撃ち込まれた弾をアクション映画の主人公さながらの謎な機体動作でかわす飛鳶…


…本当、ナニアレ




そんな機動をとりつつ宏一は機体を俺のキルゾーンから脱出させた
そして、その後を追う俺


照準は楽なんだけどなぁ~
なかなか当たらないぞ!?


突如又もや飛鳶が交差点で曲がり、カメラから機影が消える


「逃がすかっ!!」


俺はそのまま追いかける
角に着くと、飛鳶はビル陰で死角になっている建物の屋上に登ろうとしていた


…なる程、さっきはこうやってたのか


そんなことを思いつつ、トリガーを引く俺

飛鳶は回避がてらにビル壁を踏み台に、こっちに向かってバク宙してくる
その両手には特殊長刀と長刀…

俺はすかさず突撃砲を破棄し、長刀に持ち替えた

振り下ろされた長刀を追加装甲で、もう一方を長刀で受け止める


-衝撃-


追加長刀の一撃を受けた追加装甲の耐久値が一気に激減

しばらくそのまま互いに押し合っていたが、無駄だとみたのか飛鳶は直ぐに離れ、突撃砲に持ち替えようとしている


流石に長刀はキツいなぁ
もう十数パーセント程しかなくなっちまったぞ


追加装甲のパラメーターが真っ赤っかになっていた


多分もう盾としては殆ど使えねぇな
…なら


着地したばかりの飛鳶に向けて装甲を投擲し、フルスロットル
長刀を構えた


一方の飛鳶が発砲
装甲のリアクティブアーマーに命中したのか、装甲が爆発し辺りが爆煙に包まれた


「見えなくてもわかるんだよ!」


そのまま突っ込み、横薙ぎを入れる
…手応えが無い


ヤベッ!?


急遽エンジンを吹かして急上昇
近くのビルの屋上に着地する


「どこ行ったんだ?」


時間的に考えて、後ろに下がったか俺みたいにビルに上がったかの二つ…
だが飛鳶の機影はどっちにも見あたらない


…どこだ


戦術機が通れる近くの交差点までは、少なくとも100m位はある
其処に逃げたとしても何かしらの機影は見えるはずだ

もう一度見渡した
…いない

俺の全神経を尖らせる

ふと違和感を感じた
だが、方位がわからない
感じからして殺気…とは呼べなさそうだな

気が少しゆるんだ

だからかもしれない
俺は眼下に映る機影が二つになっていたことに気が付くのが遅れてしまった…


―同時刻―
――国連軍・横浜基地・地下機密区画・モニタールーム――
―慎二side―


…モニターに映る映像に俺は唖然とした
俺たちが入院してる間に行われた模擬戦の映像でも唖然としたが、ショック的にはこっちの方がやや上かもしれない
唖然しながら見た孝之の表情は俺のさらに上を行っていたが…
…まぁ無理もないはずだと思う
何せ“何もない空間から”宏一の乗る飛鳶が突然姿を現したのだから


始まりは白銀の不知火が急旋回し後ろを振り向いたあたりからだ

そのカメラアングルからでは何を見ているか分からなかったが、丁度カメラアングルが白銀と同じものに切り替わってれたおかげで理由を見る事が出来た

最初に映ったのはビルの屋上からの廃墟となった柊町の風景…
しかし、一瞬の後異常に気が付いた

その風景の所々に初めはうっすらと…しかし、だんだんにはっきりと白線が浮かび上がる
それらの線はいくつも現れ、繋がり、肩部装甲や脚部といった戦術機の特徴を描き、そしてそれらは見た事のある形になる

…飛鳶

線図ではあったものの、廃墟の柊町を背景にはっきりと飛鳶の特徴を描いていた

すぐに線で囲まれた部分が白く濁り、変色
最終的に飛鳶独特の色である黒っぽい紺色になってゆく

最終的に表れたのは腕のナイフシースから05式特殊長刀を抜かんとしている飛鳶だった


直後固まっていた不知火がバックステップ
飛鳶の抜刀しながらの斬撃を紙一重でかわす

白銀の着地と同時に飛鳶から突撃砲が撃ち込まれた
しかし、故意にかはわからないが放たれた弾は不知火から外れていた
バックステップしつつ距離を稼いでいた不知火がビルの縁にくると、120mmが狙ってましたと言わんばかりに数発も撃ち込まれる

120mmが炸裂すると、その周囲の足場が崩壊
崩落は不知火の足下まで及び、瓦礫と共に不知火が落ちた


再度飛鳶の方に視線を移す
飛鳶は120mmの弾倉を切り換えていた
切り換えが終わると空いた手に再度05式を装備…
ゆっくりと歩き出す

その光景を見ていた俺は、いつの間にか自分が冷や汗をかいている事に気が付いた
興奮からかと思ったが、どうやらそうでもないようだ

モニターの画面にはアングルが変わると此方に歩いてくる飛鳶が映し出された
逆光になっているためか機体は更に黒く映り、センサーの蒼い光が強調されて映る


―飢えた猛獣―



その姿が俺にはその様に見えた

―慎二side end―


「…一体なんだありゃぁ!?」


それが俺の第一声
実際あんな光景は目にした事もない

…訂正、目にした事はあったな
無論アニメとかゲームとかで似たようなものをだ

たしか光学迷彩…って言ってたっけな?
初めて聞いた時は「何それ、スゲーカッケッー!!」と思ったが、現実的でないと聞いて落ち込んだっけ…

理由は…まぁ男の子にはありがちな奴だ、追求しちゃだめだぜ☆


しかし、そんな代物をどうやって…
まさか宏一の世界では実現してたのか!?

あとで聞かなくちゃ!!




…|||orz


とりあえずこっから離れ…


操縦桿を握りなおそうとすると、軽い衝撃と共に目の前に飛鳶が降りてきた
反射的に突撃砲を構えるが直後に繰り出された回し蹴りで真っ二つにされる

更に強い衝撃
…横道から大通りに蹴り飛ばされる


回し蹴りで真っ二つって…
それに回し蹴りからの更に蹴りとか、彩峰じゃあるまいし…っと!


機を転倒させないようにバク転、両手に唯一のまともな武器となった長刀を装備し着地
と同時にジャンプユニットに火を入れ一気に距離を詰め、蹴りからの姿勢回復途中であった飛鳶に切り下ろしと横薙ぎの斬撃を入れる

しかし、片手の突撃砲を盾として、もう一方の腕の05式に受け止められる事によって回避された


あの腕の早さ…モーターか何かを強化してるな、絶対
普通だったら防げないぜ?

…やばい、ますます乗ってみたくなった


にやけるのを防ぎつつ、側面約20m程の位置にいる飛鳶を見る
いつの間にか長刀と05式を装備していた

周囲を横目で確認
…二刀流のままでも大丈夫そうだな

少ししゃがみ、同時にエンジン全開
…飛鳶が構えた

長刀の射程範囲ギリギリで軽く逆噴射、タイミングをずらしたことで長刀を受けようとした飛鳶の右脇が開く
それを見逃さず右脇に向かって長刀を振るが、左手の05式で受けられた
が、受けたことで左脇が完全にがら空きとなる


「そこだぁ!」


受け止められていた長刀をそのまま破棄

飛鳶が時計回りに回転し、背を見せる
其処にもう一方の長刀で機体全体を使った地面から切り上げる様な一閃を入れた

…しかし、その渾身の一撃は当たらなかった
目の前には前宙中の飛鳶


今飛鳶の踵に見えたの…何だ?


エンジンを軽く吹かす
バク宙し機を起こそうとするが、途中、回転しながら迫ってくる長刀が見えた


「うぉとぉ!?」


バランスを崩しつつも回避には成功、長刀を地面に突き刺すことでバランスもなんとか取り返す
着地した後突き刺した長刀を回しゅ…


…ぬ、抜けない!?
クソッ!


短刀を装備…
のつもりが、ナイフシースのアームの基部に飛んできた05式が見事に命中、短刀ごと吹き飛ばされてしまった

急ぎもう一方を使おうとしたが、今度は急接近してきた飛鳶に腕を掴まれ阻止された

掴んだ腕を振り払おうとするが、反動を利用され逆に機体全体を引き寄せられてしまう
更にもう片方の腕で頭部のレーダードームを押さえられた


何のつもりだ?


メインカメラから飛鳶が消え、突如襲いかかる強い衝撃と高-G
更に空が見えたと同時に再度の強い衝撃…

揺れる視界を振り払うと、自分を見下ろす飛鳶が視界に入る
それと同時に突撃砲の銃口も…


何が起きたのかはよく分からない
だが、倒された事と負けた事…これだけは分かった


『ハイ、王手』


宏一の声と共に視界がオレンジ色に染まった


―タケルside end―


第九話END
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





こんにちは!
なっちょすです


今回もなんだか会話が多い内容になってしまいました。
もしかしたら以後も会話がメインの無いようになってしまうのかな?
無論、戦闘シーンもありますよ~!!
…しかし、戦闘シーンの描写は難しいですね。
更に文の構成もおかしいし…
読書不足ですね…ハイ


さてさて自虐もこれまでにして、補足設定です
・AL世界でバビロン作戦以前に帝国に採用された弐型の数は4個中隊分48機
 宏一が配属されていた中隊は帝国で4番目に弐型が配属された
・XFJ計画は1999年5月に計画が承認される

・飛鳶やその他機体のエンジン出力は下記の設定のとおり
 
 不知火:127.7Nt [FE108-FHI-220]
 [参考データ:F-2(実機)…F110-IHI-129 … 28700lb … 127.7Nt]
 
 壱型丙:172.4Nt
 
 武御雷…
 C:153.2Nt
 A:172.4Nt
 F:197.9Nt
 R:217.1Nt

 YF-23 :156.0Nt(YFE119-PW-100)

 F-22 :156.0Nt(FE119-PW-100)

 飛鳶 :185.2Nt(FE119-FHI-220)

・飛鳶のエンジンはアメリカに避難した富嶽重工のエンジン部門関係者が“たまたま”入手したラプターのエンジンを改良・強化したもの
・モニタールームに流されるカメラアングルはオートで切り替わる
 勿論手動でも可

このくらいでしょうか
何か御質問等ありましたら、気軽に感想掲示板まで!!


次回予告

模擬戦を終え、各々の思いにふけるタケルと宏一…
二人は自分たちに向けられていた興味の視線に、まだ、気付かない
…次回『再会』
―出会いはそれぞれの心に追憶を呼ぶ― 【Cv. 社 霞】


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.045984029769897