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No.30479の一覧
[0] 【第十四話投稿】Muvluv AL -Duties of Another World Heroes-[なっちょす](2014/09/10 01:21)
[1] プロローグ[なっちょす](2012/07/16 02:08)
[2] 第一話[なっちょす](2012/07/16 02:10)
[3] 第二話[なっちょす](2012/07/16 02:10)
[4] 第三話[なっちょす](2012/07/16 02:20)
[5] 第四話[なっちょす](2012/07/16 02:21)
[6] 第五話[なっちょす](2012/07/16 02:20)
[7] 第六話[なっちょす](2012/07/16 02:13)
[8] 第七話[なっちょす](2012/07/16 02:20)
[9] 第八話[なっちょす](2012/07/16 02:16)
[10] 第九話[なっちょす](2012/07/16 02:15)
[11] 第十話[なっちょす](2012/07/16 02:20)
[12] 第十一話[なっちょす](2012/07/16 02:17)
[13] 第十二話[なっちょす](2012/07/16 02:18)
[14] 第十三話[なっちょす](2012/10/28 23:15)
[16] 第十四話[なっちょす](2014/09/10 01:21)
[17] キャラ設定[なっちょす](2012/10/28 23:18)
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[30479] 第五話
Name: なっちょす◆19e4962c ID:3f492d62 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/07/16 02:20
―一時間後―
――国連軍・横浜基地・地下機密区画・B18フロア――


「―まぁアッという間に全滅させられちゃったのは良いとして…
 伊隅、アレが新人だというのは知ってたわよね?」


「はい」


「つまりあんた達は新人にやられたって事よね?」


「…はい」


夕呼の言葉にみちるは縮こまる


「副指令!!
 一体新人は何者なんですか!?」


そんなみちるの姿を見かねた沙恵が言いだした


「あら碓氷…そんなに気になる?」


「はい」


「…まぁ一方の新人は衛士としての腕に関してはSS級。下手したら人類最高レベルの腕前ね。
 もう一方はまだ私の下に来てから時間が経ってないから何とも言えないわ。
 ただ、戦闘ログを見る限りではもう一方の新人とあまり大差無いわね」


夕呼の言葉に一同は唖然とした


―あの副指令に此処まで言わせるほどの新人って…―


「まぁ実際に会ってみた方が早いわね。
 …白銀、如月。入りなさい」


(…白銀、如月!? まさかッ!?)


みちるが目を丸くする
一方の他のメンバーはほんの数秒間ではあったが新人についてそれぞれの意見を言い合っていた


「古参衛士なのかしら!?」


「でも、それで新人と言うのは変じゃないですか?」


「う~ん、でも私達と同世代ってのも考えにくいよね~」


「まさか孝之と慎二君とか?」


「「それはない ですね/ね~」」


水月・遥・美冴の三人は年配の古参衛士であると予想した


「静香はそう思う?」


「えぇ、まぁ多分きっとお若い方なんでしょうね~」


「何でそう思うの?」


「だって新人なのでしょう?
 そうでしたらお若い方と相場が決まってらっしゃるではありませんか…」


「静香…あなた年下好み?」


「フフフ、違いますよ?」


「ふ~ん」


沙恵と静香は若い衛士であると予想する

会議室横の扉が音を立てて開いた
夕呼を除いたその場の者の意識は一気にそちらへと向かい、出てきた二人の姿を確認する


「…で、コイツ達があんたらを相手していた戦術機の衛士よ。
さっき言った通りA-01の新任って事になるわね」


夕呼が親指で入室してきた二人を指差すと、部屋全体がザワついた
主な原因は二人のその若さである事は一目瞭然だった


「右側にいるのが白銀大尉、左側は如月大尉よ」


夕呼が簡単に紹介をし、タケルが一歩前に出る


「この度A-01に配属されることになった白銀 武大尉です。
 ポジションは、前の部隊では突撃前衛隊隊長を勤めていました。
以後よろしく頼みます」


タケルが敬礼すると、皆が立ち上がり返礼する
一歩下がるタケルとは逆に、今度は宏一が一歩前に出た


「(結局大尉のままなのね…)
ウチはこの度A-01に配属されることになった如月 宏一大尉です。
ポジションは…最近ソロで活動いていたので特に決まっていませんね。しかし、一応全てのポジションを担うことはできます。
以後よろしくお願いします」


宏一は笑みを浮かべ、敬礼する
その予想外の様子に一同はビックリするが、慌てて返礼する


「説明すると白銀は不知火に、如月は黒い戦術機―この後で説明するつもりよ―に乗ってたわ」


(白銀があの不知火に…!?)


みちるは夕呼からの説明に驚いた
が、それと共に“あの戦術機”の対処に出撃した際に浮かべた笑みについてを理解する


(強者は強そうなものに惹かれる…そういう事か)


「そうそう、白銀には新概念OSの教導を…
 如月にはAH戦の教導を行ってもらうわ」


この夕呼の説明には水月が食らいついた


「副司令。
 新概念OSとやらの教導を受けるのは理解できますが、AH戦の指導を受けることについては理解しかねます。
 AH戦に関しては我々の訓練で事は足りるはずです」


夕呼はため息をつきながら質問に答えた


「ハァ~…
ならなんでさっきたったのワンエレメントに…それも三倍の戦力だったのに敗退したの?速瀬?」


「…ッゲ」


「…でしょ?
 だからアンタ達のAH戦能力を底上げする為に、数少ないAH実戦経験者である如月に教官として指導してもらうんじゃない」


光栄な事よ―と夕呼は続けるが、すでにその言葉は彼女等の耳には聞こえていなかった

AH戦経験者
それも訓練では無く、実戦…

その肩書きに彼女達は言葉を失っていたのだ
そんな様子を見ていた宏一はそれだけこの世界は混乱していなかったのだとうれしく思う一方、胸が痛んだ


「白銀、如月、何かアンタ達からある?」


夕呼が二人の方を向く


「あー、なら一点ほど」


タケルが手を挙げ、夕呼が許可する


「え~とですね…
一応、俺達の階級は大尉ですが、堅っ苦しいの苦手なんです。
だからプライベートの時とか休憩時間の時等、他の部隊が居ないところでは敬礼とか敬語とか、そういったのは無しで御願いしたいのですが…」


この発言に夕呼と宏一を除いた全員が唖然とする


「それに俺達、年下ですし…」


「「「なっ!?」」」


この一言が更にA-01の面々を驚愕させた


「大変失礼なことをお聞きしますが…た、大尉は今お幾つなのですか?」


美冴が顔を引きつらせながら聞く


「昨年末に16になったばっかりです」


「ウチも去年の9月末で16に」


タケルが答え、それに宏一も便乗した


(((16…!!)))


(あの若さで大尉って…彼等はいったいどれほどの修羅場をくぐり抜けてきたというのだ?)


皆が驚愕を隠せない中、みちるは驚愕しつつも疑問を感じていた


「まぁ驚くのはわかるし、いろいろと聞きたいだろうけど、コイツ達の過去は第弐種軍機よ。
 だから少なくとも私から教えることは出来ないわ」


夕呼が真顔で補足する
第弐種軍機…
その機密性から、想像できないほど過酷な過去だということをその場にいる者全員が理解する


「それじゃ、私はオフィスに行ってるから~
後はヨロシク~☆」


「「…へ?」」


「白銀と如月は済んだら来てね~」


夕呼が笑顔で部屋から出て行く


((な…何だとぉぉぉ!?))


思わず二人は心の中でハモる
二人は新型OSの説明などを夕呼と一緒にする気でいたため、このサプライズは心外であった
特に宏一はタケル以上にそれに頼っていた為に、ショックが大きい

サーっと二人の顔から血の気が引いて行き、冷や汗が出始める
その様子を察知したのか、みちるが突如切り出した


「では白銀、如月。
 次は我々の紹介をさせてもらうぞ」


「え? あぁ、お願いします」


この切り出しに二人の顔に一気に血の気が戻り、パァァァっと表情が明るくなった


((助かった~ ))


「まずは私から。
 白銀とは一度会っているが、正式に名乗るのは初めてだな」


「えぇ、そうでしたね」


タケルは頷く


「私の名は伊隅 みちる。
 階級は同じ大尉だ。このヴァルキリーズの部隊長を勤めている。
 如月、先程はスマなかった…まぁよろしく頼む」


「いいえ、大尉。此方こそ無礼な言い方で済みませんでした。
こちらこそよろしくお願いします」


「そうか。
…では次だな」


みちるが水色のショートヘアーの活発そうな女性を指す


「彼女は碓氷 沙恵大尉。ヴァルキリーズの副隊長でポジションは強襲掃討だ。
 なかなか頼りになる奴だぞ」


「よろしく、白銀君、宏一君」


「よろしく、大尉」


「(…何故ウチだけ名前?)よろしく、碓氷大尉」


宏一は碓氷に自分だけ名前で呼ばれた事を不審に感じるも、そのまま流した


「そして彼女が綾瀬 静香中尉。ポジションは制圧支援だ」


みちるがワインレッドの髪を後ろ結びにした女性の紹介をする
そして二人に近づくと口に手を当てながら小声で補足した


「あと奴は普段は穏健な性格だが、コックピットに入ると人が変わる。
その点に注意するように」


あれは手がつけられんと言わんばかりの言い方に、二人は「はぁ…」としか言えなかった


「2人ともよろしくね」


「よ、よろしく…」「よろしく、綾瀬中尉」


「次は宗像だな。
 彼女は宗像 美冴少尉。ポジションは本来ならば私と一緒の迎撃後衛なのだが、見ての通り人員が少なくてな…
 火力不足を補うために強襲掃討を担当してもらっている」


茶髪を肩まで伸ばした、おっとりとした女性を眼で指しながらみちるは紹介する


「よろしく、白銀大尉、如月大尉」


「よ…よろしく(汗」「よろしく~」


口元を緩める美冴にタケルは苦笑いをし、宏一は全くその意味を分かっていなかった←この事を後に宏一は思い知る


「次は…」


「あ~~~!!
あの時病院に来てた奴じゃない!!」


「水月、相手は大尉だよ!?
指差すのは不味いよ~」


みちるの言葉を遮り、水月がタケルの事を指差し大声で叫んだ


「速瀬!! 
 貴様上官に指差すとは何様だ!!」


「…ッハ!
 申し訳ございませんでした!大尉殿!!」


「いや…別に良いですよ? そのぐらい…」


「白銀大尉…?」


「…ハイ、スミマセンデシタ。 オレガワルカッタデス」


みちるの笑顔(背後に黒いオーラ付き)にタケルは片言なってしまう


「ん、んん!! …すまない。
 白銀とは既に面識があるようだが、この問題児―
「ヒドッ!?」
―は速瀬 水月少尉。
性格はごらんの通りだ。しかし、この性格の相まってポジションは強襲前衛と優秀でもある」


「よろしく!如月!!」


「よろしく、速瀬少尉」


宏一に挨拶を済ませた水月はにこやかな顔つきでタケルの許へと向かい、OHANASHIを始めた


(タケル…ご愁傷様w)


「…(全く、あの娘は)
この娘は涼宮 遙少尉。
彼女はOPとして有能なため、主に迎撃後衛にて状況分析と簡易管制を担当している」


みちるが栗色の長髪の女性の肩に手を乗せつつ、その女性の紹介をする


「よ、よろしく御願いします!」


「此方こそよろしく。涼宮少尉」


やや緊張気味の涼宮に対し、宏一は柔らかく答えた


「あと男勢が二名居るのだが、今は入院中でな…
 多分来週あたりに帰ってくると思うから、紹介はその時に」


「了解です」


みちるが孝之と慎二の事を簡単に説明した

紹介が終わると、一時的にその場の空気は自由タイムの様なものとなった
何をすればいいのか迷っている宏一の下に静香が近づいてくる


「如月大尉。
 一個質問しても良いですか?」


「別に今は呼び捨てで構いませんよ
「あら…そうだったね」
…それで質問とは?」


「さっきの模擬戦でのあなたの機動についてなのだけど…」


「ウチの機動について、ですか?」


宏一が聞き直すと同時に部屋が静まり返った


「あの機動も…その…実戦で身に付けた物なの?」


綾瀬が何か聞きづらいことを聞くような口振りで聞く


「ん?
 何でそんな聞きづらそうな口振りなのかは知らないけど、まぁ基本形はそうですね。
 でも今回の作戦は即興で閃いたのをやってみただけですよ?」


「即興で!?」


やや驚いた口振りで沙恵が聞き、宏一はそれに対して笑顔で「そうだよ」と答える


「けど、普通の不知火じゃ無理だったね~。
 飛鳶かタケルの不知火じゃなきゃ」


「白銀大尉の不知火…?
 普通の不知火とどこか違うのですか?」


美冴が問う


「簡単に言えばソフトの違いですかね。
 まぁ詳しくはタケルが説明してくれるかと」


そう言いつつ放置されていたタケルの脈を確認し、脈が(辛うじて)あることを確認すると無理やりたたき起した


「ほら!シャキッとする!
 男の子だろぅ?」


「…い、いや…流石に男でもキツイッス」


「言い訳はいいから、さっさと説明を始める」


「こ、この鬼がぁ~」


タケルがよろけながらモニター横のPCに移動しモニターを起動させると部屋全体が暗くなる


「…そ、それでは新概念OSの説明を始めますね」


XM3の説明が始まると同時にヴァルキリーズの表情が引き締まる


「先ほど説明があった通り、自分の機には新概念OSが搭載されています」


モニターに新型OSの簡単な機能と名称が映し出された


「モニターに映っている通り名称は“XM3”
 簡単に機能の説明すると、従来のOSに…

・キャンセル機能
・コンボ機能
・先行入力機能
・動作予測機能

等の機能の搭載したものです」


モニターの画面が変わる


「まずはキャンセル機能についてから。
例えば倒れそうになった際に従来のOSでは自動で受け身、あるいはそれを防ごうとしますよね?
しかし、この間は動作を一切受け付けなくなるという欠点がある。
―それを無くす機能がキャンセル機能なんです」


「しかし、それでは受け身などがとれないではないか?」


「いえ、ただ単にキャンセルできるようにするだけなので何も入力しなければ受け身を取ります」


「なるほど…」


「これを応用すれば着地した際の硬直を無くせます。
あの硬直は隙がデカいですからねぇ~」


おぉ―とざわめきが走る


「次はコンボ機能について。
 これは一定の入力をした際に、通常とは違う動作を行う機能で、簡単にいえば―
 パンチを三回繰り返すように入力したとすると、ただ三回パンチを繰り出すのではなく
パンチ→アッパー→回し蹴り
と言う様に一種の連続技を繰り出せるようになるんです」


「その連続技はどんなものなの?」


沙恵が聞く


「一応オレの機動をベースに作ったので、今のところそれと似た様な機動コンボを登録してます」


「へぇ~
 わかったわ。ありがとう」


「他に質問は?」


タケルが見渡すが質問の手は上がらない


「…居ない様なので、これから先行入力の機能の説明をします」


「先行入力機能とは、その名の通り予め動作を入力する機能です。
 なので着地する際に予め攻撃の入力をしておけば、着地と同時に攻撃が出来るようにもなる…
 つまり入力のタイムラグを無くす事が出来ます」


おぉ―という声が再度響き渡る


「最後に動作予測機能。
 これは特定行動後に比較的行う動作を予測し、その入力を簡素なものにする機能です。
 例えばですが、
 長刀で前方の敵を切った後に後ろの敵を切ろうとします。
 普通なら、
 斬撃→旋回→目標選別→ロックオン→斬撃
 と入力しますが、この機能を使えば…
 斬撃→旋回
 と入力した際に後の入力を予測し、この後の目標識別・ロックオン・斬撃の入力を纏めて一つの動作で入力する事が出来ます。
 また他の入力も受け付けるので、状況に合わせて使用できます。
 …いわばコンボ機能の簡易版みたいなものでしょうかね」


「そして、これらを応用すれば…」


タケルがEnterを押すと、動画ファイルが展開した
読み込みが完了すると一機の撃震が演習場で立っている映像が流れる


カメラの端を鳥がかすめると、同時に撃震が動き出した

ホライゾナルブーストから地面を蹴り上げて跳躍、同時にビルの隙間からほんの一瞬見えた的に向かって87式をバースト射撃を繰り出す
着地すると同時にその運動ベクトルを水平方向に移行させ主脚で移動

ビルの陰から的が二つ飛び出てきた
両手の87式であっという間に撃破

今度は左右
腕を左右に広げ、発砲

前後至近距離に更に二体
機を捻りつつ腕をクロスさせて短くフルオート

背後に一体
捻った反動を生かしつつ回し蹴りで的を蹴り割った

―映像が終わる


「…あの撃震でこんな機動を出来るなんて…」


遥がボソッとつぶやく
これはヴァルキリーズ全員が感じていた事だった


「一応この撃震には幾つかの改修を施してますが、僅かに反応速度が向上し関節強度がUPしただけなので通常の撃震との性能差は大差ないです。
因みに、この時のテスパは俺です」


やや誇らしげに言うタケル


「…関節強度?
確か撃震を含むF-4シリーズの関節強度は、歴代の戦術機の中でも高いレベルのはずだが…」


みちるが聞いた


「そうなんですけどねぇ~
XM3の欠点として機動性が向上する代わりに関節系の疲労が尋常じゃ無いものになっちまうんですよ…
例えば俺が全力で機動戦闘を行った場合、改修無しの不知火だと二回でオーバーホールが必要になりますね~」


一同唖然


(((アンタがおかしいだけ!!)))


あははとタケルは苦笑する
一方のヴァルキリーズの顔は引き攣っていた


「まぁそんな訳で、今回このOSを搭載するに当たって皆さんの不知火を改修します。
 大体期間は速くて明後日、掛かって数日だと思います。
 
…それと最後に一つだけ。
 従来のOSとはかなり違うものとなってます。なので、はじめは戸惑うかもしれません。
 けどXM3は一人一人に合わせて成長していきます。
 絶対にあきらめないで、必ず乗りこなせるようにしてください!!」


タケルが力を込めて言う
みちるはその意外な姿にキョトンとしていたが、かるく息を吐くと口元を緩ませた


「…ッフ、何を言い出すかと思えば…
 あきらめる…?
 何を言っているんだ白銀は?」


みちるが腰に手を当てると同時に、その後ろにヴァルキリーズのメンバーが一列に整列した


「ヴァルキリーズ、隊規復唱!!」


「死力を尽くして任務にあたれ!!
 『死力を尽くして任務にあたれ!』
 生ある限り最善を尽くせ!!
 『生ある限り最善を尽くせ!』
 決して犬死するな!!
 『決して犬死するな!』」


その姿に、タケルには自身の目尻に熱いモノが溜まっていきそうなのを感じ根性でそれを抑えていた


(ははは…やっぱスゲーや)


(皆さん体育会系だナ~)


タケルがかつて共に闘い、教えを貰った事を思い出している隣で、宏一は呑気なことを考えていた

……


「操縦すればするほど自分専用になるOSに改修された不知火かぁ~ すごいね」


「OSだけであの様な機動が出来るとは…思いもしませんでした」


「けど実装まで数日かかるのがねぇ~」


「しょうがないよ~
 我慢、我慢」


「うぅ~~~」


休憩の為席をはずしていた水月、遙、静香が改修案の不知火とXM3についての感想を述べる


「白銀の機動はこれらのおかげでもあったわけか…」


「でも腕は確かみたいですよ?」


「それは認める。
 だが、私にもこのOSと改修された不知火を使ってあんな機動ができるとは到底思えない」


「それもそうですね…」


「…しかし、如月大尉の機体―えぇと確か飛鳶という名前でしたっけ?―にはXM3は搭載されていたのでしょうか…?
 私にはまったく別の物の様に思えたのですが…」


「そうそう!
 質問しても『後で説明します』の一点張りだったし」


(それもそうだな…
 あの白銀とは別の機動といい、ステルス機能と言い…確かに奴の機体については不明点が多すぎる)


一方のみちる、沙恵、宗像らも感想を述べるが、そんな中飛鳶への疑問が浮かんだ


「すみませ~ん。
そろそろ次に行きたいのですが、良いですか?」


宏一がタケルに代わってPCの前に座り、聞いた


「わかった」


みちるが答えるとほかのメンバーも雑談を止め席に着く、
再度部屋が暗くなった


「では次はウチの戦術機とについて説明しますね」


モニターに飛鳶の三面図と各部の説明が表示される


「ウチの戦術機はTSF-TYPE97-05K…通称“飛鳶”と言います」


「この機体はそもそもは不知火・壱型丙をベースにした次期主力戦術機の実験機でした。
 しかし、実験そのものが破棄された事により機密保持の為にスクラップにされる事となります。
そんな時、丁度いい“素材”を探していた“ある”技術屋と研究者の目に留まり、回収・改造されて今のスタイルに至りました。
 …まぁそのお陰で生産には向かないワンオフの機体になってしまたんですがね」


宏一は飛鳶の生まれを(一部変更して)説明する


「この“飛鳶”の特徴として

・ステルス機能
・機体各部にRCSの搭載 
・新型跳躍ユニットの搭載
・電子戦装備の搭載
・兵装担架の増加
・新型管制ユニットの搭載
・新型兵装の搭載

等が挙げられます。
 まぁステルス機能についての説明は要りませんね」


画面が切り替わり、機体各部に矢印が伸びていく


「ご覧になっている図のように肩部、胴体部、脚部にRCSが搭載されています。
 これらは跳躍ユニットとは別に噴射させることが可能であり、これによって旋回やジャンプ等の速度を向上させる事が出来ます。
また、跳躍ユニットに搭載されている二次元ノズル・可動式前進翼とを併用すれば、このような三次元機動が可能です」


モニターいっぱいに飛鳶がさまざまな-無論ヴァルキリーズの面々には想像できない-三次元機動を行う映像が流れた


「ここまでで何か質問は?」


静香から手が挙がる


「そのRCSとはなんですか?」


「すんません、説明不足でした。
 RCSは飛行姿勢制御用のスラスターだと考えてください」


「なるほど、ありがとう」


「いえいえ」と返礼しながら次の画面に移行させる


「次に電子戦装備についてです。
 まぁ~、主にAH戦を前提とした装備ですのでBETAにはあまり意味のない装備ですが…

飛鳶には攻撃用のECM、防御用のEPMとECSの三種類が搭載されております。
ECMは相手の電子装備を狂わせるもので、簡単に説明しますと先ほどの模擬戦でのダミーフリップのように、短時間で相手の機体を電子的に乗っ取ることができます。
 流石に操縦系統まで奪うのには多少時間がかかりますね」


この説明に面々は納得する一方、少し恐怖を覚えた


「防御用のEPMについては対ECM用の防御装置ととらえてください。
電子攻撃をされても、防ぐ事が出来ます。
そしてECSについてです。
 これはEMPとは別の防御装置なのですが、詳しくは軍機によって教えられません。
 しかし、簡単にいえばステルス機能に近い装置ですね」


部屋が「へぇ~」という声に包まれる
しかし、それはすぐに違う声になった


「なお、ヴァルキリーズの不知火にはこのECSの簡易版を搭載することになりました」


「「「…なんだって/ですってー!?」」」


一同が唖然とする  
タケルも唖然とする
―水月に至っては思わず席から立ち上がった


「どういうことだ、如月?」


みちるがその意味を聞く


「これは香月博士からの指示でもあり、自分からの要望でもあります」


宏一は一旦言葉をそこで切り、一呼吸してから説明を再開する


「我々は、いわば香月博士の直属の特務隊であり、逆にいえば香月博士の私兵ともいえます。
そして、香月博士の研究に対して良い印象を持たない輩は様々な組織に存在していることは周知の事だとウチは思います。
 それ故、香月博士の研究や生命を死守するのが我々の任務でもあるのです。

…ここまで説明すればその本意が分かると思いますが…」


一同の顔を軽く見る
その顔は既に本意を悟ったような顔つきだった


「つまり“本物”のAH戦を行う可能性が存在するわけです」


「「「……」」」


部屋の空気が一気に重くなる


「しかし…」


「「「…?」」」


「流石にこんな時期にそんなことしようとする輩はいないしょ~☆」


「「「…!?」」」


宏一の切り替えに、部屋の空気が一気に迷走する


「まぁ“一応念の為”に装備すると思ってください☆
 はい!質問のある人~!!」


さらに続く謎ノリによって数十秒前まで充満していた空気は一気に呆けていった


「無い様なんでこのまま続けま~す」


タァーンッと某三沢ごとくEnterを押す宏一


「さてさて、次は兵装担架についてですね☆
 この三面図を見ていただければわかると思いますが、飛鳶には兵装担架が四基装備されています。
 コンセプト元はYF-23。
 《長刀も欲しいけど突撃砲も捨てがたいな~》
 という我儘を見事に叶えたものです。
 
今までの担架部は長刀用・突撃砲用と別れていましたが、ノッキングボルトや伸縮アーム、副腕を一個に纏める事で突撃砲・長刀関係無く装備する事が可能となっています。
 なので戦場でも87式×2+長刀×4の接近重視型や87式×6という超弾幕重視型、極めつけは長刀×6などという、最早訳もわからない装備に換装出来るわけです。
 
 更に腰部装甲の端には簡易兵装担架が一対装備されており、これによって長刀を装備する際に破棄されていた突撃砲をマウントさせておく事が出来ます。
 …いわばホルスターみたいな感じですかね」


「…尚、この兵装担架や簡易兵装担架もヴァルキリーズの不知火に搭載します」


「はいはーい!!
これは四基付けていただけるのでしょうか~?」


水月が聞く
長刀を多く持てると聞き、その目は輝いていた


「う~ん、ウチとしては搭載させたいんですがねぇ…
 不知火(素体)だとスペース的にキツイかなぁ~
飛鳶でもかなり無理したし…」


「えぇ~~」


ブーブーと文句を言うが、みちるに後頭部を叩かれることで収まった


「次は新型の管制ユニットについて。 …まぁ新型と言いつつまだ試作品ですがね。
 
飛鳶には従来の戦術機とは異なる管制ユニットが試験的に搭載されています。
 管制ユニットの名前は“マスタースレイブシステム”…
 その名の差す通りマスター-衛士-の動きにスレイブするシステムであり、真の意味で機体を思いのままに動かせるようになります」


おぉー!!―とどよめきが走った


「…しかし、かといって簡単に動かせるようになるわけじゃないんですよねぇ~」


今度はえぇ~と言った空気になる


「だってあんな狭い空間で、自由に腕とか足とか振りまわせるわけ無いじゃん?
だから、自身の動きを倍増させて動かすんですけど…これがまた厄介なもので…」


「どう厄介なのだ?」


「…生活に支障が出ます」


「「「え゛!?」」」


「だって少し腕とか足を動かしたら普通に動けるんですよ?
 そしたら機体降りた後でもそう錯覚するじゃないですか!」


あ~―と納得する一同


「この切り替えできるようになるのに半月以上かかりました…はい」


項垂れて話す宏一
みれば目の幅ほどの涙を流していた


「それに強化外骨格が搭載されて無いので、脱出した際の装備は全身装甲化された“だけ”の87式フィードバックインターフェイスだけですよ?
 まぁ細部は87式と異なりますけど…」


「そ、それは嫌だな…」


「でしょ?
 だからあんまりお勧めできないんですよ…これ」


モニター映像が切り替わり、マチェットの様な短刀が映された


「最後は新型兵装についてです。
 この長刀の名は“試05式特殊長刀”
 短刀ではリーチが短く、長刀では逆に長すぎるといった状況が多々見受けられた為に試作された“長刀”です。
 長刀とは言いますが長さは74式長刀のおおよそ半分…65式短刀なら倍の長さと言ったところで、刀身も74式よりは僅かに厚くなっている為に耐久力もあります。
 ただ、欠点として従来のナイフシースが使えない事ですかね…
 なので使ってみたい人はシミュレーターで使ってみてからウチに相談してください」


最後に質問は?―と宏一が聞くが、特に手は上がらなかった為に此処で解散となった

……


「さてと…
 タケル、博士のところに行こうか」


「だな」


ヴァルキリーズが居なくなった部屋に残った武と宏一の二人は、片づけを終えると夕呼のオフィスへと向かっていった


第五話END
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

補足説明
・綾瀬は“部隊一のKY”と酷評された事もあるが、実際はそんなでもない
・簡易版ECSの全機搭載は、宏一と夕呼が武のいない場で決めたことであり、提案→即決であった。
もちろん言いだしっぺは宏一
・ECSの設定は俺設定

こんなものですかね
何かあったら感想掲示板まで


次回予告
夕呼の部屋へとたどり着いた武と宏一
宏一はそこであるものと出会い、その姿に困惑する
次回、『ドッペルゲンガ―』
同じ容姿の者がそこにいた時、君は何を感じるのか 【Cv.如月 宏一】


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