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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近
Name: maeve◆e33a0264 ID:53eb0cc3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2016/06/03 19:25
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'16,06,03 誤字修正



Side △△△(帝国軍第12師団機甲連隊長)


大気が張り詰めている。
海は泡立ち、大地が震えていた。

飛沫を上げて次々と海中から崩れかけた岸壁に這い上がりいくのは、異形のモノ。
旧新潟空港跡、今は見渡す限りの荒地を覆い尽くし競い合い折り重なるように進んでいくその様は、百鬼夜行を目の前にしているかの様。

到底人智及ばぬ――、と畏怖してしまいそうなその光景を唯見送るしか無かった。





Code991の発令以降、我々帝国軍第12師団第2機甲連隊は、先陣を切って担当エリアに駆けつけた。
極低層なら匍匐飛行で速度を稼げる戦術機と違い、此方は足の付いた陸送なのだ。
その為に陣も海岸に近い新発田の山間に置いていた。

元々BETAの上陸地点としては最も北東のエリアを担い、海辺の森から旧新潟空港周辺に上陸し南進するBETA群を、戦術機甲部隊が誘引収束、東側の小高い山を背後に戦車・自走砲の2大隊で構成された機甲連隊が叩く―――それが侵攻初期に於ける段取りだった。

しかし、やがて齎された上陸地点と予測時刻は、その数と位置、共に演習時の設定を微妙に躱していた。



状況は昨日までの“演習”と同じ、佐渡を発端とした大規模なBETAの再侵攻。
H21から湧き出たBETA群は、海底の佐渡海盆を迂回し新潟海岸を目指した。
佐渡北東の海底には大規模な進軍でも通過できるルートが2通り在ることから、BETA群は大きく2つに分かれ、第1波・第2波と微妙な時間差を以て新潟の北東部海岸から南西部海岸に掛け津波のように押し寄せる―――今回の侵攻も、正しくその通りの状況だった。
一瞬これも演習の続きか――? と錯覚してしまいそうな程よく知る似通ったシチュエーションであり、それほどまでに“演習”の設定は精度が高かったと言える。


だが、これは現実のCode991。
侵攻してくるBETAは紛れもない本物で、網膜投影だけの影ではない。
――――喰われれば死ぬ。


その現実は、此処まで精緻な予測を以てしても乖離を生じる。
大きく違ったのは、その総数、そして上陸地点を狭く絞り込んできた事。
“演習”では上陸していた阿賀野川以東、海辺の森や網代浜、次第浜には上陸せず、密度を上げる形で旧新潟空港以西に上陸する、との進路予測が出された。



―――今、目前でその予測は現実のモノと成り、阿賀野川の向こう旧新潟空港周辺の岸壁に取り付き蠕く赤と白を基調とした不気味な色彩の斑模様が、途切れること無く引っ切り無しに上陸を続けていた。


推定上陸総数14,000超―――。

その数字を聞いたとき目眩がした。
大規模な再侵攻にも相当する数字、最大級の師団規模など誰が予測したのだろうか。

否―――!

事によると“紫紺の至宝”で在らせられる殿下の慧眼が、この侵攻の可能性すら看破していたのかも知れない。
この規模のBETA群が前触れなく侵攻を始めていれば、何の準備も無く当地に展開していた部隊だけでは瞬く間に戦線が瓦解しただろう。
今、唐突なCode991に対しこれほど迅速に部隊展開が出来ているのも、ここ2日の“演習”の賜であり、担当エリアを区切れるのも、斯衛や国連軍までが合同と成る演習参加をしているからなのだ。

それでも、今回のJIVES演習に於いて最大の上陸数は10,000に届いていない。
少ないときは、7,000にも満たなかった。
その数でさえ、なんて無茶な設定するんだと毒づき、多大な犠牲を出して漸く殲滅に漕ぎ着けた設定なのだ。


――現実はより過酷で、そして冷酷。


この数は、現在新潟平野に集い展開する部隊を以てしても、殲滅が叶うか否か不明。
昨日までの演習通りなら、寧ろ簡単に崩壊する可能性のほうが高い。
ここの防衛線を突破されれば、首都の最終防衛ラインをも喰い破られ、最悪帝都潰滅も現実味を帯びる数字。

その憂いと焦燥感からすぐさま玉砕覚悟で特攻を申し出た我々に対し、総合司令室[HQ]の応えは“待機”。
それもBETAの侵攻が予測されるルートを僅かに外し、旧新潟空港からは阿賀野川の対岸と成るここ海辺の森。
海辺付近で、電子機器を落としての“完全待機”だった。




今、傍から見せつけられるBETAの上陸と侵攻。
我が祖国の国土を蹂躙すべく進軍を始めた百鬼夜行異形の群れを前に為す術もない。

Code991の発令と共に活性化[アクティヴ]された地雷群も斥候の小型種が尽く炸裂させてしまい、元々の目標でもある突撃級が通過する際には既に何も残っていない。


直ぐにでも砲撃システムを立ち上げ、全隊で一斉砲撃すれば少しでも数を削れる。
気分的にも、さぞやスッキリ爽快であろう。
勿論、それは瞬時に奴等の敵性認識を取り、吹き飛ばした以上のBETAに即座襲撃を受け、総隊殲滅されることを意味するのだが・・・。


それでも構わない。
―――寧ろそれを望む。

そう思って再度の具申に返って来た応えは、更に“機を待て”と言うモノだった。


・・・・不甲斐ない―――と臍を噛む以外無い。
“機”など在るのか? と暗鬱の思いを抱きながらただ南進していくBETAを見送るしか無かった。








ここ新潟に来て繰り返されたJIVES演習に於いて、我々機甲大隊である戦車部隊と自走砲部隊の役割は、初期殲滅と後方支援に限られていた。

同じ第12師団に属する戦術機甲連隊“鋼の槍”が誘導するBETA群に集中砲火を浴びせる、言ってしまえばそれだけ[●●●●]の役目だ。
弾薬を効率よく殲滅に充てなければ、物量を誇るBETAに対抗し得ない、という発想からの戦術である。
実際それで殲滅出来るBETA数は多い時で2,000程度あり、戦車大隊・自走砲大隊72輌で総数の2割が削れるならなかなかに十分な戦果と言える。
しかし現実は戦術機が命がけで誘導してくるBETAに火力を浴びせるだけの定点トラップ。
BETAにルートを外されれば何の戦果も見込めず、自らは何も出来ていない。

対BETA戦に於ける戦車や自走砲は、有する火力こそ大きいが敏捷性に欠け小回りが効かず、それが致命的であった。
要撃級や突撃級は勿論、戦車級辺りでも車体に取り付かれればそれまで。
接近されれば巨大なハエトリグモみたいな俊敏な動きに戦車ではついていけず、数で圧倒される事は明白。
それ故、戦車部隊や自走砲部隊は専ら後方から砲撃に徹するか、AL砲弾を撃ち出し重金属の盾を作る役しか無く、BETA攻略の主力が完全に戦術機に移っているのは時代の趨勢としか言いようがない。

今回の侵攻に於いても上陸するBETAに対する定点殲滅をする為に海岸線近くまで来たが、上陸数が余りにも多すぎて面密度が異様に高く、戦術機が分断・誘導戦術すら取れない。
結果、単独では餌食に成りかねない機甲部隊はそのまま側方待機となった、と言うことなのだろう。


―――取り残された疎外感、とでも言うのだろうか?


戦車は、嘗ても航空戦力に対する無力故に衰退し滅亡しかけた。
歩兵や陸戦では無類の強さを見せた戦車であるが、やはりメインの戦場は陸軍中心の第2次世界大戦までだったのだろう。
航空兵器の台頭と共にその戦略兵器としての立場は喪われ、都市制圧や局地戦に特化した形で残ることが多かった。
その航空戦力を一切無力化したBETA大戦に於いて、改めて見直されるかという淡い期待も在ったが、それも儚い夢、BETAに対する主戦力とも成り得なかった。
装甲が有効であればその芽も在ったかも知れないが、相手はその装甲をあっさり貫くレーザーを照射し、鋼鉄さえバリバリと貪る非常識な生物。
速度、走破性、装甲、敏捷性・・・どれをとってもBETAに敵わない。

一方の自走砲もその用途の多様性から発達し、一部はミサイル化により対空戦力としてBETA大戦までは維持されてきたが、光線属種の出現によりBETAに対するミサイルを含む航空戦力が無力化され、今ではALM砲台としての機能しか求められないのが現状。
飽和攻撃で光線属種を倒すには、探索性能と効率が悪すぎた。


それでも機甲連隊が存在しているのは、物量を最大の脅威とするBETAに対してないよりマシ、と言った理由であろう。
機械化歩兵より火力を有し、闘士級や兵士級であれば無視できる防御力もある。

戦術機が貴重で数が少ない上に、戦術機適性が無い兵卒も多数いたことから、与えられた鉄の棺桶、それが戦車部隊だとの揶揄も存在した。

尤もそれを言うなら、戦術機こそカーボンの棺桶と言う方が正しい。
戦術機適性のある者を羨ましいとも思った。
だが、そうして戦術機に移っていった者は、今既にその殆どが居ない。
比較的遠距離から砲弾を撃ち尽くしたらもう逃げるしか無い戦車は、引き際さえ間違えなければその生存率は高いのだから。


――故に何時も死に切れず、取り残される者―――。

この国家存亡の瀬戸際に瀕してさえ力となれない自らが情けなかった。









もうすぐ、同じ第12師団“鋼の槍”連隊が担当する旧新潟空港・西海岸公園のBETA群、その突撃級が第1次防衛ラインに達する。
その後を侵攻する、“本隊”は、BETA侵攻の9割を構成する戦車級・要撃級・小型種の混成部隊。

――今、第1波には光線属種が存在しない――。



MLRS大体を連れてくるべきであったか―――。

今回演習に参加した第2機甲連隊は、データリンクを有する90弐式戦車3個中隊36輌から成る第1戦車大隊と、75式自走榴弾砲2個中隊24輌、そして試験的に導入されたHIMARS4輌とその輸送車輌GPS観測車輌計12輌からなる中隊で構成された自走砲大隊の臨時混合編成だ。

実弾演習とはいえ、射程の長いMLRSによるM30ロケット砲は使いどころがない。
対BETA用に衛星誘導とクライスラー弾で面制圧可能な兵器として有望視されたが、抑々光線属種支配地域では、クラスターをばら撒く高度1,000mに至る前に、尽く撃墜されていた。

故に参加対象から外れたのだが、光線属種が一時的にでも排除されている今の状況なら話は違う。
MLRS1個大隊で、かなり広範囲のBETA殲滅が可能だっただろうと予測される。


今回、この連隊にはその機動性を試す意味で導入されたHIMARS中隊が存在する。
MLRSの面制圧能力は高いが、大柄で機動性が悪く、移動に難儀する。
そのため米国で開発されたのが、高機動ロケット砲システムHIMARS:High Mobility Artillery Rocket Systemである。
主武装はMLRSと同じ227 mm ロケット弾6連装発射機であるが、機動性を重視しランチャーポッドの搭載数は1。
それが4輌で24発、中隊内に随伴する輸送小隊により装填訓練用に持った予備弾が4ポッド24発。
乗員数3名で速度は85km/hまで出すことが出来、自走による長距離移動も可能であることから、今回参加となっていた。

しかし実弾訓練とは言え、クラスター弾の演習使用は無いとされ、4輌のランチャーポッドに収まっているM30ロケット弾は、半分がアンチレーザー用の重金属拡散弾、残り半分が訓練用のバラストを込めた炸裂弾であり、輸送車輌の運ぶポッドの内容も同じ。



―――せめて、これが正規のM30クラスター弾で在ったなら――。

忸怩たる思いに、唇を噛み締めた。














その時、音声通信が繋がった。


『こちら“森羅”―――。
第12師団機甲連隊、戦車[STURM]大隊、自走砲[BLITZ]大隊、感、在りますか?』


何時聞いても不思議な感じのする電子音声。
様々な情報を齎す、“女神の盾[アイギス]”。
全隊に向けたアナウンスはしょっちゅう耳にしているが、個別の通信が繋がったのは初めてだった。


「・・・こちら帝国軍第12師団所属、第2機甲連隊第1戦車大隊、及び臨時編成自走砲大隊を統べる連隊長三隅だ。」

『よろしくお願いします――。
早速で申し訳ありませんが、総合司令室[HQ]より貴連隊に砲撃要請―――。
これよりデータを転送しますので、全システム起動をお願いします。』

「了解した・・・・全車システム起動ッ!」



“森羅”が何者かは極秘事項、今回“実戦検証”する殿下が“横浜”に依頼した装備の一部であるとも聞く。
データリンクに於けるコールサインは〈Thor-01〉、あの“白銀の雷閃”白銀少佐機からの発信であるが、勿論少佐本人ではない。
その独特の電子音声は機械じみて人工知能とも取れる。

しかし、第2回のJIVESから参加した“森羅”は、明らかに総合司令室[HQ]が有するそれを遥かに凌駕する情報収集能力と、それに基づく予測能力を有していた。
JIVES演習であり、設定の電子情報を読み取っているだけではないか、という疑念の声も無いわけではなかったが、そんな実戦では使いものにならない欺瞞を試す意味はない。
その齎される情報の無比な正確さに、3回目の演習では既に絶大な信頼が寄せられていた。


“森羅”の指示には従っとけ―――。


それが、CPや司令室ですら同じ状況だったと隊付CPが教えてくれた。
勿論“森羅”は総合司令室[HQ]内には居らず、データリンクと各種要請だけを伝えてくると言う。
“森羅”は、独自のセンサ網を構築・統合しているらしく、元々帝国の敷いた監視網の何倍どころか、何10倍、何100倍と言う精度の情報をリンクしてくる。
そのデータ量が膨大すぎて、臨時に設置した帝国軍が有しているシステムでは処理仕切れない為、直接メインサーバーへの接続はしていないらしい。


そして“森羅”は今回のCode991に於いても、JIVESで魅せた情報収集能力を遺憾なく発揮している――と言うより、実際の侵攻に際した方が“演習”時よりも更に飛び抜けた情報を提供しているのである。


抑々帝国の監視網では、音紋センサーから判別できるBETAは大型種だけで、戦車級以下の中型種・小型種は判別ができない。
BETA侵攻時の種別構成比率が大きく変動することがないことから大型種の数を元に全体概数を割り出していた。
それが、“森羅”が絡むようになったこの新潟演習では、中型種である戦車級までがほぼ正確にカウントされ、闘士級と兵士級が除かれた数字で示されている。


それは、現在進行している状況でも同じ。

“森羅”の有するセンサでは、現実にも中型種まで完全に補足できている、と言うことなのだ。
しかも、闘士級と殆ど同じ体格の光線級まで追尾している。
その気になれば小型種も捕捉可能だが、都市局地戦でも無い限り無視しても構わないので、カウントしない―――そう言っているように見えた。
歩兵戦など殆ど無いのだから、戦術機の脅威と成り得る中型種以上のみを計上している、と言うことだ。


そしてその情報に基づくBETAの行動予測。
実際目の前で展開されている上陸地点とその時刻、そして概数は寒気がするくらい正確だった。


少し考えれば解る。
今まで出来た試しのない、戦艦の艦砲射撃に依る佐渡島地表の光線属種排除とか、海底侵攻BETAの光線属種選択排除とか、“森羅”情報が絡んでいないわけがない。
“森羅”が広域で光線属種を追尾可能であるからこそ齎された多大な戦果であるのだろう、と。




そう思い至って苦笑する。

―――大体、この待機地点[●●●●]が先ず、おかしい。


“森羅”の予測では、今回の上陸範囲は旧新潟空港跡から、角田山より東のエリア。
だがそれが外れたとき、この海辺の森もBETAに埋まるのだ。
電子機器を停止しているとはいえ、人は乗っているのである。

――まあ、向かってきたら希望通り玉砕覚悟の特攻をするつもりだったから、待機地点については意見具申もしなかったが――。

故に、“森羅”予測のとおり、阿賀野川の対岸にBETAが上陸を始めたときには、逆にBETAにすら相手にもされす、取り残されたのかと言う寂寥感すら感じたものだった。




BETAが襲撃する対象には優先順位が在ると言う。

例えば光線属種は、自らに向かって来る飛翔体を第1優先とする。
次が同族の障害となる飛翔体やその飛翔体を発射する移動体であり、その次に高性能CPUを有する物体と言われる。
光線属種に取っては人類を含む炭素系生命体は比較的順位が低い位置にある。

それが、戦車級や要撃級となると、飛翔体はそれが有人であっても高性能CPUを有していても、高度で50mもとれば無視してくる。
艦艇も同じで、そこから攻撃を受けても自らに攻撃手段がない場合は頓着しない。
今回の様な侵攻では、目的地への到達を第1優先とし、その侵攻に立ち塞がる障害を次点としている。
経路上に対象があれば、高性能CPU+有人>高性能CPU>人類を含む炭素系生命体、と言った優先順位で襲撃の対象となろう。
その他にも、基本平坦地を選んで侵攻するなどいくつかの選択比重があり、その複合した条件判断で襲撃対象が定まるらしい。


機甲連隊が直ぐ脇に居ながら襲ってこないのは、CPUを止めていた時は単なる炭素系生命体で襲撃の優先順位が低く、更に阿賀野川を渡渉することが平坦地侵攻優先に引っかかり、目的地への侵攻に逆方向となることから素通りされた、と言うことか。

そして、今システム立ち上げの為にCPUを起動しても尚見向きも成れないのは、第1次防衛ラインでの戦術機甲部隊による間引きが始まり、敵性障害として彼らがより高位に認識されたため、脅威度の低い対象はスルーされた、と言う事になる。


―――そう、この段階でシステムを立ち上げ、砲撃要請が出ると言うことは、このBETAの反応を完全に予測していたと言う事に他ならない―――。





その時、システム起動が完了し、データリンクが繋がった。

リンク元は“森羅”―――。


そこに在ったのは、海岸線の地図と、ある殲滅目標の上陸時刻予測データ。






「――――砲手、可能か?」

「ダイレクトリンクすれば、自動照準でも行けます。」

「・・・・・・・面白い――!! この為に〈STURM〉と〈BLITZ〉を水際に招いたかっ!!」


口元が緩む。
さっきまでの閉塞感が霧散する。

―――こんな極上の獲物は久しぶりだ。


「第2機甲連隊、総員に告ぐ!―――野郎どもッ! 狩りの時間だッ!!

HIMARS中隊を除く全車輌は、砲撃準備!

目標――上陸する要塞級ッ!

〈STURM-01〉から〈STURM-04〉までは、観測!
〈STURM-05〉から〈STURM-12〉までは第1目標、以降第4目標まで2小隊8輌で集中砲火、外した奴は後で飯抜きッ!」

『『『『い、Yes, Sir! 』』』』

「第5から第8目標迄は〈BLITZ-01〉から各6輌で砲撃! タイミング合わせて狙え!」

『『『『 Yes, Sirッ! 』』』』

「目標が沈黙しない場合、再斉射! 確実に沈めろッ!
被害の少ない目標に第1小隊も援護!
第9目標迄の撃破確認後、〈STURM〉隊は移動を開始する!
以降、4体毎に第40目標まで〈STURM〉隊〈BLITZ〉隊で交互に担当。
最西部の第41以降は〈STURM〉隊で仕留める。
〈BLITZ〉隊は現場待機! 長射程となるが有効射程内だ、何とかしろッ!」

『『『『 ・・・・・Yes, Sir 』』』』

「HIMARS中隊はデータリンク注意、撃ち漏らしを殲滅!
ALMでも訓練弾でも構わん!
直撃炸裂させれば、要塞級でも潰せるだろ。」

『『『『 !! Yes, Sir! 』』』』

「タイムオーダー、キツイぞ!? 気を引き締めろ!」

『『『『 Yes, Sirッ!! 』』』』

「―――目標第1陣接近、自動照準、乗せろ。距離偏差確認っ!」






砲塔が旋回する音がキャビンに満ちる。
外からは射線を確保するために移動するキャタピラの音と、微かな振動。

百鬼夜行は、本隊のケツに差し掛かったのか上陸が漸く途絶えていた。


やがてずらりと海岸線に並んだ90式戦車が8輌づつ、一斉に同じ方角を狙っている。
有するのは120mm滑空砲。
射程は12km程であり、所持弾数も40と限られている。

後方からその先を狙う自走砲隊の75式は、155mm榴弾砲。
射程は19km程だが、連射性能は毎分6発まで。
機動性や連射性、徐々に遠くなる目標を考えれば、足を止めての砲撃専念が妥当。


対する第1波残存要塞級は49。
体高が高いため沖合海面にポップアップする射的。
元々他種に比べれば緩慢な動作は、海中に在って更に制限されている。



データリンクの中には、まだまだ獲物が見えている。
第1波の後詰めであった光線属種を海底で殲滅したことで、本体と殿である要塞級の間が開いたのだ。
その隙間を戦車であれば、抜けられる。
だが、第1波が過ぎれば、やがて第2波の上陸が始まる。
それも此処旧新潟空港跡地から順次。

戦車隊が再度戻る隙は無い。

第2波に対しては、戦車大隊は角田山、自走砲大隊はこの海辺の森からの挟撃となろう。
正直、射程も残弾薬数もキツイ戦いとなるのは必至。

第1波は、側方からの不意打ちとなるが、第2波に対しては正面からのノーガード戦法。



けれど―――、想像するに、それもまた楽しそうだった。



“森羅”が齎すのは飽くまで情報、基本“要請”はするが“命令”はしない。
その情報を如何に使い、戦果に結びつけるか、それは各隊が自らの装備に照らして構築すべき項目だ。


一時、たった一時ではあるが、最前線で持てる全てを以て戦える―――。
その高揚感に、口元がニヤニヤ緩むのをどうしても抑えきれなかった。


―――殿下・・・、この[●●]新潟の地への招聘、心より感謝致します―――。






「第1目標、浮上まで10秒! タイミング、合わせろッ!

―――3,2,1,発射[ファイエルッ]!!」


第2小隊以下、轟然と火を吹く8門の主砲。

車体が軋むが跳ねる程ではない。

一瞬の間を置いて、200mほど沖合で丁度海面に頭を出した要塞級が盛大な水柱と共にその一部吹き飛ばされる。


「命中――。・・・目標侵攻、止まらずッ! 着弾に依る損傷認るも中破ッ!」

「追撃照準ッ! 第1小隊も合わせっ! 第2目標以下、筆頭小隊長が砲撃指揮ッ!!」

『『『『 Yes, Sirッ!! 』』』』

「第1目標、可能なかぎり関節を狙え!」

「偏差修正ッ!ヨシッ!」

「第1目標第2射、

―――3,2,1,発射[ファイエルッ]!!」


一瞬於いて、少し先に浮上した第2目標への斉射がゴンゴンと響く。


「! 第1目標傾斜ッ!! 足が止まりましたッ!」

「よしッ! トドメは4射でいい! 第2小隊、任す!」

『 Yes, Sir! 』


続けて放たれた砲弾が炸裂し、漸く第1目標の要塞級が海中に崩れ、大きな水飛沫が上がるのを見た。


Sideout




Side 晴子(国連太平洋方面第11軍A-01中隊)


ちらと時計をみる。
―――07:05。


『―――総隊、掃射後噴射跳躍ッ! 後方300mまで距離を取れッ!!』


中隊長の指示が頭の中に響く。
反射的に、目前に迫った悍ましい津波―――妙にヌメるような生白と、暗い朱色、その中に混じる赤く光る複眼や、蛸の様な頭に突撃砲の掃射を放ち、そのまま後方に飛び退る。
バーナーが噴いて、グン、と加速し目玉やその他を置いて行かれそうな間隔を強引に抑え込みながら、目前に迫っていたBETA群を下方に引き離す。



連合艦隊と機動艦隊が光線属種を排除してくれたお陰で、噴射跳躍でもある程度の高度を取れる分、広く視野が取れるのだが、その光景は津波と言うか、蠕く大地とでも言うのか、正直見ていて余り気分のいいもではない。
見渡す範囲、数100mの規模で大地そのものがのたうち、そのまま襲ってくるような錯覚に捕らわれる。
ついでに放った突撃砲の1掃射が、その津波に対しなんと無力なことか―――。

BETA本体はそんな豆鉄砲の迎撃になどひるむことなく、その60km/hに達する進軍速度を微塵も緩めず怒涛のように内陸へと押し寄せている。
圧倒的な物量というBETAの基本にして恐るべき戦術に改めて無力感を感じずには居られなかった。




Code991―――。

ここ新潟に来て、既に3回のJIVES演習を熟し、その全てでBETA侵攻を阻止できていた。
最初の演習こそ帝国軍には多大な損害が生じていたが、それも回を追うごとに減少し、実際手際よい殲滅が可能になっていたのは確かだ。
国連軍の一兵卒に過ぎない私なんかが全体を見る事など出来はしないが、少なくともA-01部隊にはA-00部隊含めて損耗もなく、部隊内の連携や戦術に破綻は無い。
今ではエースである白銀抜きでも担当戦域内の光線属種を優先排除し、群れを誘引、集中殲滅、という一連の動作がほぼ滞り無く実施出来るまでになっていた。
レーザー照射回避も中隊長、副隊長、そして何故か築地の3名が出来るようになり、初めこそぎこちなかった段取りも、昨日の3回目にはスムーズに進められ、隊の雰囲気は否応にも明るくなっていたのだ。
――シミュレーションじゃない、本物のBETAを殲滅したいよね、そんな軽口が茜から出るくらいに・・・。

その台詞が引き金[フラグ]だった訳ではないだろうが、早朝の寝ぼけた頭を張り飛ばしてくれたCode991[ホンバン]は、驚くべき数字を告げられた。


―――14,000超―――。


簡単にいえば、想定の倍!
そして予測される上陸区域は、想定の半分!
つまり面密度で演習の4倍を相手にする! ――と言うことだ。

中隊長を含め、先任同期、皆の顔が引き攣った。



上陸地点は、旧新潟空港跡地から角田山に近い越前浜海水浴場迄の約25kmの海岸線。
北東側の海岸から順次上陸を始めたBETAは、次第に上陸地点を南西にずらしながら、南方向燕三条、を通って関東を目指すと言う侵攻ルートを取る公算が極めて高い―――と言う事で、駐屯地を飛び出したA-01は上陸の遅い担当エリアに移動する前に、指示位置に一仕掛けを済ませて来ていた。

第1波最初の上陸は、旧新潟空港付近で0648、我等伊隅ヴァルキリーズが担当するAREA-7四ツ郷屋海水浴場は0657、A-00が担当するAREA-8越前浜海水浴場は0659に始まると予測された。
そしてその定刻通りに始まった侵攻は、全てのエリアで上陸数、時刻とも寸分違うこと無く推移し、このAREA-7にも700体余りが先刻上陸していた。



けれど、この現実の侵攻に於いては、今までのJIVES演習で経験していない状況が齎されていた。

それは、絶望的な数字に対する、救い―――。



たまたま[●●●●]佐渡海峡を通過中の連合艦隊第2艦隊の援護を受け、佐渡本島地表面に点在していた光線属種の排除が出来たこと、更に湧出していたハイヴ周辺の2,000体を砲撃で殲滅してくれたこと。
それを以てBETAの湧出は停止したらしいから、侵攻数の最終的な数字は15,000弱で止まった。

―――第2艦隊様々である。


そしてこの佐渡本島地表面の光線属種排除によりレーザー照射を免れた帝国海軍機動艦隊は、海中を侵攻するBETA群から光線属種と要塞級の最優先撃破を敢行した。
結果、第1波では残存光線属種0と言う偉業、要塞級残存も49にまで頑張ってくれちゃったのだ。

搭載可能魚雷数の関係で第2波では潰しきれず、残存光線級:42、残存重光線級:37、残存要塞級:93との事で、完全な排除には届かなかったし、BETAの密集度よりも光線属種殲滅を優先した為に総殲滅数も今までの様に全体の1割に届かない837と言うことだったが、少なくとも第2波上陸まで“空”の安全が確保された事は、戦術機に取って極めて重要な戦果であった。


さ・ら・に、である。


BETAの進軍に対し、突撃級を効率よく殲滅した戦術機部隊が、BETA本隊を誘引し出したその隙に、つい先ほどその本体後方の海岸に展開した帝国軍の戦車大隊シュトルム隊と、自走砲大隊ブリッツ隊が、残っていた第1波の要塞級を砲撃殲滅してくれちゃったのだ。
その際、撃破した3体の要塞級に隠れていた光線級4体も、海岸から顔を出す前にブリッツ隊に所属するHIMARSからM30ロケット砲でピンポイント撃破されたらしい。

これにより第2波で光線属種が上陸し始めると予測される時刻まで、“空”の安全は確保された。







―――恐らくは、佐渡本島の光線属種排除も、海中侵攻するBETA群から選択的に光線属種を狙い撃ち出来たのも、そして今回の機甲連隊による要塞級撃破も、全て“森羅”が絡んでいるんだろうケド・・。

リアルタイムの海底侵攻を把握していなければ、上陸地点と上陸数、時刻まで予測できるはずがない。
ならば位置が判って当然。
勿論そのシステムは総数把握だけではなく、追尾性能も兼ね備えている。

中でもずば抜けているのは、光線属種に対する追尾性能。
大型種である重光線級はまだ解る。
けれど体格上小型種である光線級をどうやって捕捉できるのか?


以前御子神大佐に聞いたところによると、BETAは工業製品[●●●●]のように規格が揃っていて、地球上の動物種に見られるような体格差や個性が殆ど無い、と言うことだった。
つまりそれは、移動の際の振動パターンが非常に似かよっていて、同種の選別が遣り易いと言う事に繋がるらしい。
様々な振動パターンが重畳された信号であっても、各々のパターンが予め判っているのなら区別は付きやすく、それをデジタル・ビーム・ホーミングと言う技術で追尾するのは、さして難しくないと言うことだった。

一つのセンサーでは重畳され判別が付かない信号でも、空間的に離れた位置にあるセンサ間の時間的信号差を見る事により動いている対象の距離や方向、数などが判別できる。
勿論対象が複数と成れば、方程式の未知数が多くなるので1個や2個の観測データでは同定できないが、センサを空間的なアレイとし、その個々の位相差を利用すれば、膨大な数の方程式を得ることが出来る。
理論的に言えば、設置されたセンサ数nの3乘の半分に近いn(n-1)(n-2)/2個の方程式を構築出来る事になる。
それが現実にいくつに成るのか知らないが、その膨大な方程式を解くことによって複数の動体の動きや、地殻の伝達関数、動いている作動面まで推定できる、と言う技術だそうだ。
この時、種別ごとの規格が揃っている、と言うことは大幅な演算量の削減に繋がるらしい。
勿論リアルタイムで膨大な方程式を解くことなど人間の頭なんかじゃ到底計算できないが、超並列処理可能な超弩級高性能コンピュータ“森羅”なら可能―――とのこと。


―――その総てを統合しているのが、鑑。



そこから海底に於ける光線属種の位置も割り出したのだろう。
空気中では無敵に近い光線属種も、水中では唯の的。
アレだけ高出力のレーザーを水中で照射すれば、即座に目前で水蒸気爆発を起こして自滅する。
惜しむらくは、機動艦隊が艦隊として所持する魚雷数が96本しか無かった事。

佐渡海峡哨戒に当たっていた3機動艦隊合計でも300本弱しかなく、補給していたのでは間に合わない、という。
それでも残った機雷だけで第1波の要塞級を半分まで減じたのだから、腕も良くモチベーションも高かったのは想像に難くない。






そう、光線属種・要塞級は排除されたとは言え、第1波の侵攻予測数は中型種以上で約7,000―――。小型種まで含めれば10,000に届く。

その中核を為す本体が、今目の前にしている“津波”のようなBETA群なのだ。



本隊の面密度が異様に高く、光線属種が居ない第1波では、今までの各個撃破に変わり後退しながらの漸次殲滅を行う様指示が下った。
海岸線から離れ、第1次防衛ライン付近で迎撃を開始した各隊は、先鋒である突撃級をフライパスし、その後方から掃射を仕掛けた。
基本的に[●●●●]、だけど。

比率としては7%と言われる突撃級は後方からの攻撃には弱く、侵攻速度差から本隊との距離もソコソコあり、戦術機が“空”を使える状況にあっては脅威と成り得なかった。
A-01中隊を含む各部隊に於いて“初陣”を迎えた新人[ルーキー]は、“空”が使える僥倖のような状況の下、“初撃破”“死の8分越え”も達成できた、と言う事になる。

A-01中隊も、上陸地点の最西端である四ツ郷屋海水浴場や越前浜海水浴場から上陸したBETA群を待ち受け、先行した突撃級を早々に片付けた。

確かに、突進してくる突撃級の群れをその目で見たときは、正直ビビった。
JIVESで見慣れていても、跳ね飛ばされれば死ぬ。
シミュレーションではない―――、その“現実”それだけで足指が丸まった。

リアリティで言えば、JIVESと全く変わらない状況であるのに、本当の“死”を目の前に竦んでしまったのだ。


『―――怖いか!?』

『『『『『『「 !! 」』』』』』』

『―――恥じることは無い、私も怖い・・・』

『『『『『『「 ! 」』』』』』』

『だが、私は自分が死ぬことよりも、私たちの後ろに居る大切な人達や、何よりも隣で戦う貴様らを喪う事の方が怖い!』



――その時の伊隅大尉の言葉がリフレインする。

A-01中隊・・・。
今は中隊だが、元は連隊規模で構成された部隊であったと聞いた。
数が充足したことは無いと言うが、雑把12/108―――。
その言葉通り、幾度もその隣に居る人を喪う“怖い”事を経験してきたのだろう。


その隊長の指示と共に、一糸乱れず空を翔け、突撃級の群れをフライパスしながら反転、その装甲を持たない背中に夢中で掃射を浴びせた。
両翼上空から追い立て、包囲殲滅し、最後の1体がその動きを止めたとき。


新人[ルーキー]諸君、初撃破、そして“死の8分越え”、お目出度う。
―――そして、“地獄”へようこそ』


いつの間にか、緊張も解けていた。
漸く“衛士”に成った、成ってしまったんだな、と実感した瞬間だった。



そう、突撃級殲滅の余韻もつかの間、振り向けばそこに迫っていたのは、夥しいまでのBETA本隊の津波。
後から聞いた話では、その余りの圧力に、再度操作を誤り掛けた新人も何人かいたらしい。
既に排除された光線属種や要塞級まで含めても、全体の10%しか殲滅出来ていないという事実。
この物量を捌き切らない限り人類の存続は無いのだ。

確かに、とても斬り込んで分断したり誘導したり出来る数では無かった。
今までのように、足を止めての殲滅など到底叶わない。
止めた瞬間に包囲殲滅される、それ程の侵攻密度。


―――故に、先の作業も意味を持つ。








新潟の北東から南西に伸びる海岸線に、北部から順次上陸を始めたBETAは上陸後等しく南を目指し、徐々に隣り合う群と合流することによって、その面密度を更に増している。
一番遅かった西南端の上陸であるが、南進の位置は先頭であり、北東側に追従するように合流していく。

今のところA-01にも隣のA-00にも損害はない。
他隊でも軽微な損害は在っても、重大な損耗は発生していない。

戦術機が“空”を使えることで、絶対的な回避が可能になっているからだ。


それでも“森羅”が告げた第2波の上陸が、もうすぐ始まる。
光線属種が上陸を果たせば、“空”と言う退路を断たれる。



総合司令室[HQ]通達――。
データリンクに明示する旧県道55号ラインにS-11を地雷として敷設。
第1波BETA本体に対応中の各隊は、引き続きBETA本体を誘引しつつ避退ラインに到達後噴射跳躍により3km後退せよ。
BETA群が到達し次第、順次西側より起爆する。
尚、第2波光線属種上陸は0721と予測、別途優先殲滅を実施するが、0721以降光線属種の排除が確認されるまで飛行高度は高度20m以下の匍匐飛行とする。』


私はまた、ちらと時計を見た。








自画自賛ではないが、伊隅ヴァルキリーズの練度は高い。
新人が居る今の状況を鑑みても、技能も連携もかなりの水準である。
XM3の導入が何処よりも早く、そして発案者や開発者が直接指導にあたり、時間制限もなく打ち込めた。
既に隊のレベルは全員が3以上、先の3人以外でももうすぐ4に上がりそうなメンバーが何人もいる。


―――それでもA-01は、A-00とは違う[●●]

A-01は、偏差値で言えば60からいいところ70前後の、まあ秀才レベル。
平均的な人よりは出来るし、その為の努力もしている。
それでも偏差値が意味を持たない天才ではない、普通の女子なのだ。

それは白銀や鑑、御子神大佐と言った突き抜けちゃってる人達や、教官や“紅の姉妹”、篁大尉と言った彼らに着いて行ける二つ名持ち級とは違う、と言うことだ。

それをこの新潟侵攻で、[つくづく]思い知った。



何しろA-00は中隊とは言え実質3個小隊でも8騎、しかも半分は仮任官したばかりの新人[ルーキー]と言う構成に於いて、砲弾の温存と新装備の検証と言う名目で、AREA-8では50体以上の突撃級に長刀1本で挑んだらしい。
勿論、新人はフライパスして援護、と言うことだったが・・・。

そこで白銀少佐は、超低空倒立飛行で突進する群れとすれ違い様、数体を背開きにすれば、篁大尉はその向こう、鮮紅に輝く長刀で真っ向前面装甲半ばから水平に切り飛ばしたらしい。
そうして出来た突進の隙間に、神宮司教官がスルリと入り込むと、一切ムダのない動作で左右を走る突撃級の前肢を断ち、バランスを崩した120km/hの大質量は周囲を巻き込んだ多重クラッシュを引き起こす。
尚も暴れる突撃級は、“紅の姉妹”が同じく鮮紅一刀の下に首を落とす――――。

・・・上空の援護など必要もないままに秒殺だよ、とつぶやくように語っていた鎧衣は妙に遠い目だった。

正直、見たかったような見なくて正解のような気がしないでもない。




ただ、そんなA-00も今は一エリアを担っているだけだ。

その中で、鑑だけは違うのである――――。





14,000ものBETAを向こうに回し今のところ有利に進めていられるのは、主に圧倒的とも言える情報処理能力を有する“森羅”の恩恵である。

元々その力は、JIVES演習でも、その前のV-JIVESに於いても、薄々感じられた。
実際それまで、BETAの精緻な位置情報や行動予測がこれほど有用とは思って居なかった。



けれど、今目の前に展開している状況はそんなチャチなもんじゃ無い。
現実として起きた新潟侵攻。
Code991の発令に、“森羅”の能力が初めて実感できた気がした。




――恐らく侵攻の勃発を此処まで正確に予測したのだって、“森羅”なのだろう。


そして、その防衛の為に斯衛まで巻き込んだ周到な用意と、事前の演習による教練。
実戦に於ける優位性を保持するために、連合艦隊すら誘導したのかも知れない周囲。

今の優位は、それが功を奏している。
知らぬ間に存亡の危機に在った帝国を救ったのは、紛れもなく“森羅”なのだ。
“森羅”が量産されれば、BETA戦略は変わる―――御子神大佐がヤッちゃった米軍ドクトリン破壊と同じくらいの衝撃になる。




そう―――。

実際、A-01部隊員は、全員“森羅”適合性を検査したのだ。
それは思い出すだけでも身体が震える程の体験。
起動後数秒で貧血やら吐き気を催し、のたうち回るような強烈な頭痛に意識さえ喪うことが出来ず、誰もが10秒と保たなかった。

その“森羅”を装備して平然と居られる鑑。
この“森羅”の力を齎したのは、[ひとえ]に〈Thor-1〉のコールサインを持つ白銀のバディ、鑑の力に他ならないのだ。

努力とか根性とか、そんなモノを全てぶっちぎった天賦の才―――。



勿論、それと引換にどれだけの物を失ったのか、或いはこれからどれだけ喪う事になるのか。
それは個人の幸福とは全く異なる次元の事だと頭じゃ解っちゃいるけど。

その“才”を開花すべく集められたのがA-00――そんな気がして成らなかった。


極めて重要な任務に就く、最初にそう紹介された鑑。
その意味と重さを、改めて慮った。





―――ホント、私は“普通”で良かった。



そして、ホンの数日前に仮任官したばかりだというのに、そのA-00としてこの防衛戦に参加している同期達を思う。

榊や御剣、彩峰に鎧衣、珠瀬―――。


半年前の総合戦技演習に落ちて憮然としていた彼女たち。
潜在能力はあるのに、上手くそれを出すことが出来ない、みたいな個性の集まりだった207B。
・・・茜は無意識にその才に嫉妬し、対抗意識を燃やしているみたいだけど。


きっとその才故に、任官したら華々しい武勲を挙げて、そのままパッと逝っちゃうみたいなチームだったから、実は落ちて良かったね、とも思っていた。
皆、その才に振り回され空回りばかりしていて全然余裕が無かったし。

けど、白銀という“目標”を得て、彼女たちは変わった。
機密規定から同じ基地に居ながら任官後半年顔を合わせなかった彼女たちは、明確に変わった。
それが、今居るA-00と言う破格のポジションに届くかどうかは解らないけど、この先“化け”れば、イケルだけのモノを持っている気がする。




『A-01、避退ライン、到達!』

『―――総隊、噴射跳躍ッ! 後方3,000mラインギリギリまで跳ぶぞ!!』


CPの指摘に、中隊長の指示が飛ぶ。
反射的にスロットルを蹴飛ばし、バーナーを開ける。


そう、鑑が幾ら凄くたって情報だけでは勝てない。
情報を活かすも殺すも“凡人”である大多数の部隊次第。

偉業とも言える光線属種の優先殲滅―――。
それだって位置情報を齎したのは“森羅”だが、実際に光線属種を撃破したのは、連合艦隊であり、機動艦隊であり、機甲部隊なのだ。


そして押し寄せるBETA群を殲滅するのは、私達、戦術機甲部隊の仕事―――。


鑑には鑑にしか出来ない事があり、私は私の出来ることをすればいい。
そうすることで、初めて今は見えない未来が拓ける――――。


そう信じて目の前に迫るBETAの群れに36mm砲を掃射しながら後方噴射跳躍に移行した。


Sideout




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