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No.38496の一覧
[0] 【真愛編】Battle Over 九州!【Muv-LuvAL×ガンパレ】[686](2019/01/13 20:44)
[1] "BETAの日"(前)[686](2014/10/05 17:24)
[2] "BETAの日"(後)[686](2013/10/05 23:33)
[3] "一九九九年"[686](2013/10/22 23:42)
[4] "異界兵ブルース"[686](2013/10/04 11:47)
[5] "前線のランデヴー"[686](2013/10/27 21:49)
[6] "ヤツシロの優しい巨人"[686](2013/10/08 01:42)
[7] "光を心に一、二と数えよ"[686](2013/10/26 20:57)
[8] "天使のハンマー"[686](2013/10/22 23:54)
[9] "タンク・ガール"[686](2013/11/01 09:36)
[10] "青春期の終わり"(前)[686](2014/10/05 18:00)
[11] "青春期の終わり"(後)[686](2013/11/01 14:37)
[12] "岬にて"[686](2013/11/05 09:04)
[13] "超空自衛軍"[686](2013/11/16 18:33)
[14] "ベータ・ゴー・ホーム"[686](2013/11/25 01:22)
[15] "バトルオーバー九州!"(前)[686](2013/11/29 20:02)
[16] "バトルオーバー九州!"(後) 【九州編完】[686](2013/12/06 19:31)
[17] "見知らぬ明後日"[686](2013/12/10 19:03)
[18] "月は無慈悲な夜の――"[686](2013/12/13 22:08)
[19] "幻獣の呼び声”(前)[686](2014/01/07 23:04)
[20] "幻獣の呼び声”(後)[686](2013/12/30 15:07)
[21] "世界の終わりとハードボイルド・ペンギン伝説"[686](2014/01/07 22:57)
[22] "強抗船団"[686](2014/01/17 14:19)
[23] "異界の孤児"[686](2014/01/17 14:25)
[24] "TSF War Z"[686](2014/01/24 19:06)
[25] "暗黒星霜"[686](2014/02/02 13:00)
[26] "霊長類東へ"[686](2014/02/08 10:11)
[27] "京都の水のほとりに" 【京都編完】[686](2014/02/08 10:32)
[29] "あるいは異世界のプロメテウス"[686](2014/02/13 17:30)
[30] "地上の戦士"[686](2014/03/11 17:19)
[31] "メーカーから一言" 【設定解説】追加致しました[686](2014/03/16 20:37)
[32] "かくて幻獣は猛る"[686](2014/03/29 14:11)
[33] "地には闘争を"[686](2014/03/29 14:14)
[34] "火曜日は日曜日に始まる。"[686](2014/04/07 18:56)
[35] "TOTAL OCCULTATION"[686](2014/04/10 20:39)
[36] "人間の手いま届け"(前)[686](2014/04/26 21:58)
[37] "人間の手いま届け"(後)[686](2014/04/26 21:57)
[38] "きぼうの速さはどれくらい"[686](2014/05/01 15:34)
[39] "宇宙戦争1998" 【改題しました】[686](2014/05/10 17:05)
[40] "盗まれた勝利" 【横浜編完】[686](2014/05/10 18:24)
[41] 【真愛編】「衝撃、または絶望」[686](2014/05/15 20:54)
[42] 【真愛編】「ふたりの出会いに、意味があるのなら――」[686](2014/05/22 18:37)
[43] 【真愛編】「変わらないあしたなら、もういらない!」[686](2014/06/03 11:18)
[44] 【真愛編】「千の覚悟、人の愛」[686](2014/06/07 18:55)
[45] 【真愛編】「ふたりのものがたり、これからはじまる」[686](2014/09/06 18:53)
[46] 【真愛編】「終わらない、Why」[686](2018/10/19 03:11)
[47] 【真愛編】「最終兵器到来」(前)[686](2019/01/13 20:26)
[48] 【真愛編】「最終兵器到来」(中)[686](2019/01/13 20:44)
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[38496] "幻獣の呼び声”(後)
Name: 686◆6617569d ID:8ec053ad 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/12/30 15:07
作中の描写を見る限り、幻獣の非実体化は可能だと思われます。GPMでは戦闘開始時に幻獣軍の戦力が人類軍のそれに対して大きく下回っていると、オペレーターが「敵、非実体化を開始。撤退します!」と報告、幻獣ユニットが消滅して戦闘が終了(その後5121小隊は増援として他地域へ)することがあります。但し非実体化・実体化を繰り返す戦術は、人類軍に大してあまり有効ではないと筆者は考えています。ご存知の通り幻獣は実体化にそれなりの時間を要する以上、人類軍に先手(具体的には「実体化した瞬間に集中砲火を浴びせて殲滅する」といった戦術)をとられやすいからです。……うろおぼえでは幻獣の行動制限は20年前後だった気がしますが、これは単純な稼動限界でしょう。何故ならばゴルゴーンやキメラ、スキュラといった幻獣達は、芝村氏の言葉を借りるならば単なる"乗り物(兵器)"だからです。

行政区分についてはやはり誤りが多いようで、アドバイスを頂いた通り2000年以前の地図が見つかればいいのですが現時点では手元になく、四苦八苦している状況です。ご指摘して頂いた箇所については、多少時間が掛かると思いますが修正させて頂きます。







"幻獣の呼び声"(後)



 時は遡る。
 7月13日2030時。



「武装解除により装備の一切を一旦明け渡し、我らが本土防衛軍、帝国陸軍西部方面軍司令部の指揮下に入って頂きたい。それが最も平穏な道です」

「我々は貴国に駐留する"在日米軍"の如きものだと考えて頂きたい。日本国からやってきた助っ人、といったところです。勿論、正式な地位協定等は後々に締結したいと我々は考えています。基本的に高等学校敷地内を"日本国陸上自衛軍駐屯地"として――」

「政治的な話は小官が云々する立場にはありませんが、おそらく本土防衛軍統合参謀本部及び榊内閣・帝国議会は"日本国"の存在を認めないでしょう。実際に"日本国"との交渉がもてない以上、貴軍は我が帝国領内においては"無法の武装集団"でしかない」

 続いて「共闘した我々とて、いまだに貴方がたが異世界に存在する国家の軍隊である、というお話を信じられずにいるのです」と帝国陸軍西部方面軍司令官、園田衛一郎陸軍中将は異世界の九州軍司令林凛子にそう言った。この言葉を最後に、西部方面軍司令部(北熊本駐屯地)に沈黙が訪れた。

 第一帝都絶対防衛線がおかれている苦境など、彼らは知る由もなかった。
 何せ人工衛星を介した長距離通信網は幻獣軍によって徹底的に破壊されていたし、中部方面軍の混乱と黒い月の影響によってか無線通信に大きな障害が発生していたために、この時九州の防衛を担う西部方面軍と中国・近畿を防御する中部方面軍との間で、情報が完全に断絶していたのである。

 そうして彼らは暢気にも北熊本駐屯地に集まり、今後の協力体制を確認する会議を開いていた。
 日本国陸上自衛軍(生徒会連合九州軍)側からは、九州軍司令林凛子、同参謀長(幕僚長)芝村勝吏、生徒会連合会長幾島佳苗、陸自第106師団師団長、同師団司令部幕僚、海兵第109師団第2連隊連隊長鈴木銀一郎、開陽高等学校生徒会役員、熊本鉱業高等学校生徒会役員といった学兵部隊首脳が出席。
 帝国陸軍側も北部九州におけるBETA撃退が成功しつつあり、相当な余裕が生まれたらしく西部方面軍司令官以下、多くの参謀達が参加していた。

 だが両軍の雄揃うこの華々しい会議も、冒頭から雲行きが怪しかった。
 九州中部戦線で活躍した学兵側としては、早々に日本帝国領内においての一定の地位を認めてもらいたいところであり、そうしなければ食料供給や弾薬の供与も安定して得られないだろうし、状況によっては外貨を稼いでの売買も出来ないのであるから、これは死活問題とも言えた。
 だがしかし地位協定等の締結を求めた生徒会連合に対する帝国陸軍西部方面軍の回答は、ある意味で事務的・常識的なものであり、彼らを失望させた。西部方面軍司令部一存では、日本国陸上自衛軍の処遇についての決定することは出来ない、今後将来のことを考えれば装備の一切を帝国陸軍に引渡し、指揮下に入ることが一番平穏な道だと彼らは答えたのである。
 いちばん初めに沈黙に耐えられなくなったのは、陸自第106師団長であった。
 全国高等学生を死地に追いやる狂気を実践することを強いられ続けてきた中年男は、いま見た目よりも酷く老けてみえる顔面をぐしゃぐしゃに歪ませていた。帝国陸軍西部方面軍司令官の言い草は、熊本鎮台と生徒会連合の板ばさみとなりながらも死力を尽くした苦闘の半年間を否定するようなものだったからだ。屈辱に唇を震わせながら、彼は言葉を紡いだ。

「我々の話を与太話と笑い飛ばすのは結構。ですが改めて強調させて頂きたい、我が陸自本来の任務はあのような下等生物どもを相手にすることではありません。最悪は今後の便宜を図ってくれずとも結構、せめて干渉だけはしてくださるな……」

「そうはいきません。貴方がたが現在"不法占拠"している土地に関してはおそらく、各市町村ともに早々の明け渡しを要求するでしょう」

(これでは本当にボランティアではないか……!)

 これでは何のためにBETAなる宇宙生物と戦ったのか、これでは本当に自衛目的だけの戦闘ではないか。――何とか西部方面軍司令部からも便宜を図ってはくれないかと言葉を紡ごうとした第106師団長は、次の瞬間呻くばかりで喋ることが出来なくなった。1999年1月以来、過度なストレスによっておかしくなった彼の肋間神経を、強烈な痛撃が駆け巡ったせいである。
 神経痛に苛まれる脇腹を押さえながら、怒りから今度は苦悶の表情を浮かべる第106師団長を横目に、九州軍司令林凛子は仕方がないですね、とつぶやいた。

「まあ貴国が法治国家である以上は、譲れぬところもあるのでしょう。我が軍の処遇に関しては我々自身が貴国内閣・議会に対して交渉をもち、超法規的措置を引き出せるよう運動していくつもりです」

「……ご理解感謝します」

 熊の如き体躯をもつ西部方面軍司令官、園田陸軍中将は無理やりその巨体を折り込んで頭を下げた。はっきり言って異世界からやって来たと名乗る彼らの処置は、西部方面軍司令部の手に余る。九州地方からBETAを退けた現在、正直なところさっさと内閣なり外務省なりに彼らの処置を丸投げしたいところであった。
 制服の下からでも分かる鍛え抜かれた肉体をもつ園田陸軍中将とは対照的に、肥満体もいいところの芝村勝吏参謀長(幕僚長)は皮肉げに口の端を歪めた。

「その"不法武装集団"の手を借りて、BETAを撃退した貴官らが法治国家だの議会だのと言い出すとは全く予想だにしなかったがな」

「……」

 帝国陸軍側の参謀達は眉や唇を僅かに震わせ、何か言おうとしたがすぐにやめた。芝村と名乗る参謀長の言うとおり、戦況逆転を優先するあまり、不法に土地を占拠し武器を所持している武装集団に独断で協力を求めたのは事実であった。戦いは終わったから、お前らは出て行くか装備を明け渡してウチの指揮下に入れ、とは確かに身勝手極まりない。
 また彼ら"不法武装集団"、日本国陸上自衛軍の助力がなければおそらく西部方面軍は、北部九州に着上陸したBETA群と中部九州に強襲上陸したBETA群に挟撃されて潰滅していたであろうことは間違いなく、それを思えばとても無碍に扱うことは出来る立場ではなかった。
 ……だがしかし彼らはあくまで一法治・民主国家の組織であり、独断で陸自の処遇を決められる訳ではない――西部方面軍司令部所属の参謀達は、非常に心苦しい思いでいた。

「ふん。だいたい我々"不法武装集団"と貴官らは現に交渉をもっているではないか、大いなる矛盾だな。さっさと警察とでも協力し、我々10万の凶悪犯罪者を捕縛してみたらどうだ? ――やれるものならな」

 そんな彼らの胸中を知ってか知らずか、遠慮ない芝村参謀長(幕僚長)の毒舌は止まらない。
 西部方面軍司令部が気まずい雰囲気に陥りかける中、生徒会連合本部の長にして武人、幾島佳苗が話題を変えた。

「ところで九州北部戦線の戦況は如何ですか。先日に頂いた情報では、所謂"防人ライン"の損耗率は想定を大きく上回っていたようですが」

 眼鏡を掛け事前に準備してきた資料を片手に質問する姿は、一見どこにでもいる委員長・生徒会長タイプの女性であるが、その眼光は"稲妻の狐"の名前に恥じないほどに鋭い。
 自然と気圧された作戦参謀は、気づけば粉飾することないありのままの情報をべらべらと喋り出してしまっていた。

「長崎県松浦市から佐賀県唐津市に至る海岸線に着上陸したBETA群は、既に殲滅しました。無人航空機による偵察行動を継続していますが光線級は勿論、戦車級以上の目標は掃討し終えたと判断してもいい状況です。博多湾に押し寄せていた2万のBETAに対しては我が軍は水際防御に成功しており、あとは福岡市街に侵入した2000体前後の小型種を掃討完了を待つばかり――といったところでしょうか」

「BETA群追上陸の可能性は?」

「断言は出来ないでしょうが、重慶・鉄原の敵策源地に収容されているBETAの数を鑑みるに可能性は低いと考えられます。……既に中国地方にも相当数のBETAが上陸しているはずですから」

 中国領内・朝鮮半島に存在する敵策源地としては重慶・鉄原ハイヴが挙げられるが、フェイズ4の状態にある前者(後者は未だフェイズ4に達してはいない)であっても、BETA収容個体数はせいぜい20万から25万程度である。今回はこの両ハイヴからあぶれた個体が日本列島に雪崩れ込んできたわけであり、その飽和個体数は多くとも10万から15万程度であろうと推測されていた。つまり既に来るべき数のBETAは、九州戦線だけでもその半数以上を駆除し終えた計算になる。

(嫌な予感がする)

 と、鈴木銀一郎は思った。
 理由はない。だがしかし卓上遊戯を病的なまでに嗜む白い髭が印象的な老将は、どこまでも直感に優れていた。その勘の鋭さは、もはや一種の未来予知に近い働きをするほどである。

(もしも自分がBETAならどうするか)

 "第一に必勝の信念、第二に投入量"――もしも自身が敵陣営の将であれば人類の極東における背骨を叩き折る為にあらゆる手段を用いるだろう、それこそ自身の占領地を空にしてでも。







―――――――







 重厚な陣容を誇る幻獣軍が、ひたすら東進する――。

 第一帝都防衛線崩壊以降、帝国・国連両軍は組織的退却もままならずただひたすらに壊走を続けた。組織だって前進すればまるで潮の如く押し寄せる破壊光線の洗礼に遭い、後進すれば後背に回り込んでいる空中要塞スキュラによる執拗な爆撃の対象とされ、さりとて動かなければ生体弾を雨霰とぶつけられるのだからどうしようもない。
 逆に700万の幻獣軍は、大した損害もなく東進を継続していた。
 彼らの目的は、大阪府・京都府といった第5世界でも有数の人口密集地を破砕することにある。幾ら工場で人間が製造出来るとはいえ、日本国の人的資源が枯渇しかかっている(何せ熊本戦では3月に中学2年生を卒業させ――つまり義務教育を打ち切り、"高校生"として戦線に投入したくらいだ)ことを幻獣軍もよく理解していた。一気に日本国民を根絶やしにせんと攻め上り、その過程で工業地帯、特にクローニング施設を破壊することが幻獣陣営にとっての勝利の近道であった。
 一方の帝国陸軍は、何としても幻獣軍を兵庫県内に押し止めなければならなかった。
 兵庫県が抜かれれば、次の戦場となるのは未だ民間人の避難が終了していない神戸・大阪といった人工密集地だ。また大阪に侵入を許せば、兵站維持に大きく貢献してきた日本海と瀬戸内海を結ぶ琵琶湖運河を失陥することにもなる。

 7月14日0000時。
 後に姫路攻防戦と呼称されることになる戦いが生起した。

 道中赤穂市にて帝国陸軍第125師団を粉砕し、まさに破竹の勢いで姫路前面に押し寄せた幻獣軍先遣軍集団100万と、姫路市西側を流れる揖保川を盾に防衛線を敷いた帝国陸軍第17師団・第54師団合計4万の将兵による決戦は、両陣営とも何としても勝利を掴むべく知謀と勇気の限りを尽くした戦闘となった。
 第17師団司令部の参謀達は無人航空機等を用いた偵察によって、新種BETA群の圧倒的なまでの物量を認知していたが、命欲しさに退くつもりは一切なかった。姫路(ここ)を抜かれれば明石――神戸――大阪と一直線、特に明石・神戸間を失えば四国からの援護が見込めなくなる。

「予定通りにやれ。砲撃開始せよ」

 両師団司令部の参謀は、それこそ最後の一兵まで100万の軍勢を姫路に釘付けにする腹積もりであった。

 とはいえ姫路を防衛を念頭に置いた揖保川を巡っての戦闘は、最初の10分で大方の趨勢が決まった。
 彼我の砲撃戦は、帝国陸軍側の2個師団が有する155mm榴弾砲138門と大小迫撃砲、そして幻獣軍側が有する人類側で云う砲兵科の役割を果たす中型幻獣ゴルゴーン5万(生体ロケット弾携行数約450万発)によって演じられたが、物量の桁が違い過ぎていた。
 陣地に立て篭もる旧日本軍と圧倒的な米軍が如き……第5・第7世界の大東亜戦争で見られた事象が、10倍酷くされてこの異世界でも再現された。帝国陸軍側が砲撃を加える度に、幻獣軍は飛翔してくる砲弾の弾道から帝国陸軍の火砲の所在を割り出して、10倍の火力で反撃する。陣地転換が間に合わなかった火砲は、次々と生体ロケット弾の餌食となる――。

 あとは草食竜を髣髴とさせる外見を持つ中型幻獣ゴルゴーンと、中型光砲科幻獣キメラによる一方的な火力投射が続けられた。あらゆる防御施設が吹き飛ばされ、蒸発していく。歩兵達は積み上げた土嚢の裏側で肉片ひとつ残らず蒸発させられただろうし、投影面積の広い戦術歩行戦闘機や主力戦車は激しい砲撃の中を生き残ることなど出来なかっただろう。

 帝国陸軍の有する2個師団は、戦わずして潰滅した。

 渡河命令が出たのであろうか。
 それまで中型幻獣の足元で待機していた小型幻獣達が戦列を組み、粛々と行軍を再開する。彼ら万単位の小型幻獣による一糸乱れぬ戦列は、古代ローマにおける所謂密集陣形ファランクス等を連想させるものであった。
 百人長よろしく、小型幻獣の中でも抜きん出て巨大な体躯をもつ亜人、ゴブリン・リーダーが士気高揚を狙ってか、自身の戦斧を掲げて見せた。その先にはおそらく途中で屠ったのであろう、人間の首が括りつけられている。見れば周囲の亜人ゴブリン達も手に手に戦利品と思しき人間の四肢を掲げ、ある者は鉄帽を被ったままの首を弄んでいた。
 彼らは異界軍は、BETAとは性質を違える。
 捕食はいっさいせず、人間をひたすら殺し、殺すどころか残虐な、捕虜や非戦闘員を嬲るような行動までとってみせる連中だ。仮に彼らが帝都まで達することがあれば、京都は残虐行為の嵐に蹂躙された都市として一生記憶されることとなるであろう。……無論、人類の系譜が続いていく限りだが。
 もはや姫路は陥ちた。
 この後も彼らは物量に任せて、大阪を、帝都を、どこまでも帝国の版図を叩き潰していくであろう。有り得ない話ではない。幻獣軍は実際に、第5世界の殆どを手中に収めていたのだから。

 先頭の亜人達が、いよいよ揖保川に架かる橋梁を渡り始める。
 だがしかし万単位の小型幻獣は当然、短時間で橋梁を渡りきれる筈がなく、自然と橋の手前で大渋滞が発生してしまった。これは敵前においては絶対に避けるべき事態であった。部隊単位の行動は阻害されてしまうし、集中射を喰らえば死傷者が大量に出ることになる。

「キョーキョキョキョキョ!」

 下士官役のゴブリンリーダー達が頭蓋を震わせ、周囲に指示を出すも渡河を前にした混濁状態はよりいっそう深刻なものになっていく。整然とした密集状態から混沌とした密集状態へ――茶けた亜人どもは押し合い圧し合い、積み重なって我先へと橋梁へ向かう。だがしかしその雰囲気は、そこまで緊迫はしていなかった。

 なにせ既に帝国陸軍各部隊は全滅して――。













『HQより全部隊へ、ジャコウアゲハ飛ぶ! 繰り返す、ジャコウアゲハ飛ぶ!』









――いなかった。

「食い放題だ! 撃て撃て撃て撃て!」

「逆襲掛けるぞ、続け!」

「受けてみやがれ、下等生物ども!」

 揖保川東岸が爆発した。
 度重なる砲爆撃によって廃墟と化した姫路市街のあらゆる場所から銃口が突び出し、5,56mm小銃弾が、12,7mm重機関銃弾が、40mm擲弾が、ありとあらゆる種別の大小口径弾から成る火線が水面上を迸り、亜人どもを喰らい始めた。
 橋梁に取り付いていたゴブリン達は勿論、橋梁前で大渋滞を起こしていた小型幻獣の群れはドミノの如くばたばたと斃れ、屍を曝すことなく無に還っていく。同胞の死体が幻に還っていく中で遮蔽物などありはせず、哀れゴブリン達はただその場に伏せって銃弾をやり過ごす他にしようがなかった。
 普段ならば中型幻獣キメラやナーガが光砲により、この抵抗を粉砕するタイミングであるが今回に限ってそれはかなわなかった。歩兵科による伏兵どころか74式戦車改、90式戦車改までもが倒壊した建築物の裏から湧き出て、榴弾と榴霞弾を立て続けに食らわして小型幻獣を蹴散らすと、徹甲弾を以て前衛を張るキメラを乱打したからだ。
 全弾撃ち尽くさんとばかりに連続射撃を実施する戦車部隊を相手にした砲撃戦に中型光砲科幻獣は拘束され、小型幻獣群の支援にまでは手が回らなくなってしまう。

 突然の事態に何も出来ないままに硬直しているゴブリン・リーダーが、次の瞬間に見たのは小銃弾どころかこちらへ向かってくる巨弾――155mm榴弾であった。もし彼らに口があったのならば、(ふざけるな、敵火砲は全滅したのではなかったのか!)と叫んでいたであろう。

 そうとも彼ら帝国陸軍野戦2個師団は、圧倒的な敵火力から戦力を防護しつつ、敵を引き付ける目的からいとも容易く全滅した"演技"をしていたのである。倒壊した建築物の後背に、大都市に張り巡らされた地下空間に息を潜めていた彼らはただひたすら幻獣軍の歩兵たるゴブリン達を手ぐすねひいて待ち構えていた。
 幻獣軍は帝国陸軍将兵約4万の一世一代の大演技に、まんまと騙されたのだった。

 次の瞬間、密集陣形をとっていたゴブリンの戦列が崩れに崩れた。
 155mm榴弾一弾一弾が飛び込む度に、百単位の小型幻獣が霧散していく。そしてこの火焔の洗礼を生き延びた小型幻獣達は、今度は高速で吶喊する機械化装甲歩兵達を相手にしなければならなかった。

「キョーキョキョキョキョキョ」

『このバケモンがあああああ!』

 飛翔する機械化装甲歩兵にゴブリン達は組み付くも、その優速を得た鋼鉄の塊を前にして逆に弾き飛ばされ、あるいは機関銃弾をお見舞いされて幻へと還っていく。徒手空拳による残忍な集団暴行を得意としウォードレス兵でさえ撲殺してしまうゴブリン達も、鋼鉄の鎧を纏い跳躍しながら突進してくる機械化装甲歩兵には手も足も出ない。
 小型幻獣で機械化装甲歩兵に対抗し得るのは下士官役のゴブリン・リーダーと、大型犬が如き外見を持ち、眼からレーザーを放つコボルトくらいなものであったが、帝国陸軍の砲撃によって密集陣形が寸断された影響もあってか如何せん対応する数が少ない。

『こちらアゲハ・リーダー、死んだふりごっこはおしまいだ!』

 そしてあろうことか、崩落した高層ビル街の陰からはF-4EJ改"撃震"と"不知火"の混成戦術機甲部隊が時速400kmの高速で飛び出し、歩兵の頭上越しに揖保川を渡河、一気に幻獣軍の中心へと斬り込みを敢行する。その数は、144機(4個戦術機甲大隊)にも及んだ。

『ロケット弾を背負ったトリケラトプスみたいなのをやるぞ! あれさえ潰せば、こっちにも勝機はある! 全機、武器使用自由! 一発ぶちかませ!』

『了解ッ!』

 大隊単位での楔形陣形、所謂アローヘッド・ワンで敵中へとその身を投じる彼らの狙いは、遮二無二中型幻獣ゴルゴーンであった。とにかく曲射が可能な砲戦力を潰すことさえ出来れば、未だ100門近い榴弾砲と重迫撃砲を残している帝国陸軍にも勝機が生まれるかもしれなかった。逆に幻獣軍の砲戦力を潰すことが出来なければ、彼らはまた圧倒的火力に捻り潰されるだけだ。
 対して殺到する戦術歩行戦闘機を迎え撃つは、密集陣形をとって前衛を固める中型幻獣、ナーガとキメラであった。だがしかし74式戦車改や90式戦車との砲撃戦に拘束されている個体も多く、また彼らの射撃性能は残念ながら光線級程優れてはいなかった。
 1000は下らない数の光条が迸る。
 しかし実際に撃墜出来たのは、僅か十数機であった。彼らキメラはこれまで時速数百キロで、低空を、なおかつ複雑な機動を以て肉薄する敵機と交戦する機会などなかったのだ。目標は人型戦車よりも遥かに巨大であったが、キメラの眼は戦術機の挙動に追いついていなかった。
 FOX3、FOX2、といった宣言が無線上で飛び交うごとに、36mm機関砲弾と120mm砲弾がナーガとキメラを粉砕していく。キメラはともかく、ナーガは機関砲弾にも抗堪することが出来ない。高速で肉薄されたが最後、光砲科の幻獣は殆ど一方的に撃破されてしまう。

 だが幻獣軍は、すぐに陣形を変更させることでこれに対応した。
 光砲科幻獣は引き続き破壊光線を連射、弾幕を張りながら後退を開始。
 それに入れ替わる形で対人型戦車(アクター)を念頭において開発された中型幻獣、牛の如き体躯をもつ二足歩行のミノタウロスが前進する。

『ノロマさん、撃墜数を稼がせてもらう!』

『ブロッサム4、逸るな! まずは様子を』

『だいじょ――なあ゛っ!』

 のそのそと現れた中型幻獣ミノタウロスに対して、正対する位置で突撃砲を構えた不知火。だが不知火を駆る衛士はレクティカルにミノタウロスを収めた瞬間に、胸部装甲――兼生体誘導弾が離脱するのを目撃した。すぐさま亜音速にまで加速したその生体誘導弾は、脇目も振らずに不知火へと突撃する。本能的に衛士は機首を廻らしてこれを回避せんとしたが、時速約600km程度の速度で引きずられる全高18mの巨体では、これを振り切ることは不可能であった。

『ブロッサム4ォ!』

『ミサイル来るぞッ! 散開(ブレイク)しろ! 散開!』

『駄目だッ! 振り切れない!』

 対戦車陸戦兵器の雄として開発・量産された中型幻獣ミノタウロスは、撃震と不知火の携行火器によく抗堪して盾の役割を果たすと同時に、その生体誘導弾の飽和攻撃で以て戦術歩行戦闘機を足止めすることに成功した。対して生体誘導弾の回避に躍起になる戦術機の群れは、あとは圧倒的な物量とBETAにはない組織力の前に押し潰されるだけであった。
 そして誘導弾との生死を賭けたダンスに臨む戦術機達に対して、半包囲する形に陣地転換を終えたナーガ・キメラ集団の光砲、その全てが火を噴いた。次の瞬間、幾千本の破壊光線がまるで巨大な網の如く、高速飛翔する人型兵器達を絡めとった。



 幻獣軍の規模に対して、帝国陸軍側の火力は僅少に過ぎた。
 戦術歩行戦闘機と機械化装甲歩兵が吶喊を繰り返して幾ら敵戦列を撹乱しようとも、隠蔽していた砲兵で敵密集陣を叩こうとも、それは100万の軍勢を突き崩すにはどこまでも足りなかった。幻獣同士は同調能力によって連携を緊密に保ち続け、また一時は恐慌状態に陥っていた小型幻獣達も頭蓋を震わせて指示を出し続けるゴブリン・リーダーの必死の指揮によって、密集陣形を取り直すことに成功していた。

『こちらブラヴォー、チャーリー! そっちに小人どもがいくぞ!』

『デカイ奴とイヌをさっさと殺れ! 斧といいレーザーといい、こいつらなんでもありだ!』

『駄目だ、身動きがとれん! 前面にイヌが大量にきやがった――こちらデルタだ!』

 橋梁を伝い、あるいは水流をもろともせずに強硬渡河をした小型幻獣と、帝国陸軍歩兵連隊との間で激しい戦闘がはじまった。結局のところ中型幻獣と戦術機の決闘は、この姫路を巡る戦いの勝敗にはあまり関係がない。実際には幻獣軍の兵卒と人類軍の歩兵、どちらの勇気が優っているかが問題であった。
 帝国陸軍歩兵連隊はかつての姫路市街をそのまま要塞として活用し、重火器を多用した抵抗線をそこかしこに築いていた。崩れかけた雑居ビルが監視塔となり、平屋建ての建築物が軒並みトーチカとなり、路地という路地は銃弾吹き荒ぶキルゾーンに、地下道という地下道が連絡路に、放置された大型バスがバリケードとなり――市街は幻獣を殺戮せんが為の巨大な存在に変貌、主たる人類に与する。
 対する小型幻獣群はとにかく数頼み、所謂ゴリ押しの戦術で姫路市街の攻略を試みる。亜人ゴブリンを主力に、三つ目の犬とでも形容しようか獣の如き小型幻獣コボルトと空中を往く人頭、ヒトウバンから成る彼らはとにかく建築物をひとつひとつ虱潰しに占領せんとする。

「ふざけんなよ……新手来るぞ!」

「馬鹿ぁっ! 頭下げろ!」

 路肩へ積み上げた土嚢に雑多な小火器を据え付け、前方100m先の瓦礫の山を乗り越えて来る小型幻獣達に凄まじい銃弾を浴びせていた歩兵達目掛け、レーザーと斧、人の頭、腕、脚、鉄帽、あらゆる物体が投げつけられた。
 歩兵が撃ち出す大小口径弾と小型幻獣達の雑多な反撃の応酬は、そこかしこで行われてた。5,56mm小銃弾がゴブリンを引き裂いて無に還したかと思えば、次の瞬間にはゴブリン・リーダーが投擲した戦斧が鉄帽ごと歩兵の頭をかち割る。擲弾が小型幻獣をまとめて吹き飛ばしたかと思えば、コボルトの集団が眼からレーザーを照射して歩兵にとっての生命線といえる遮蔽物を削り取る。

「撃てッ! あのデカいやつを狩れ!」

 大通りを進軍していた小型幻獣の合間を12,7mm銃弾が奔り、ゴブリンの群れの中でも頭ふたつみっつ抜きん出た体格をもつゴブリン・リーダーの頭部をぶち抜いた。脳漿も血液もごったになったものが霧状にぶちまけられ、ぶちまけられた瞬間にはゴブリン・リーダーの死骸は空に消える。
 突然の出来事に動けなくなった小型幻獣の群れをいいことに、更に次の凶弾がどこからか飛んできては、他のゴブリン・リーダーを貫いていく。

「キョーキョキョキョキョ!」

 対物ライフルによる狙撃だ――すぐにゴブリン達はそう気付いたが、だからといって何が出来る訳でもなかった。狙撃手の位置を割り出そうにもどちらの方向から銃弾が飛んでくるかも分からず、ただ恐怖の中で立ち尽くす他なく、また対物ライフルといえば有効射程は1000mを超える――このコンクリートジャングルにおいては狙撃手の位置を確認することなど不可能に近かった。

 幻獣軍にとって分かっていても、苦戦を強いられるのが市街戦であった。
 物量で幾ら優っていても市街地における戦闘では、戦術に幅のある人類軍の方がやはり一枚も二枚も上手。中型幻獣を投入すれば対戦車火器あるいは肉薄攻撃で忽ち撃破されてしまうし、得意の制圧砲撃も障害物が林立する市街地に立て篭もる敵には大した効果をもたない。熊本戦で敗北を喫した理由も幻獣軍がこの泥沼の如き市街戦に引きずり込まれ、人型戦車やウォードレス兵の市街地を活かした戦術に痛手を負わされたからであった。
 ……だがここは熊本ではない。
 この状況を引っくり返す策が、幻獣側にはあった。

「ごろ゛じでぐれ゛よ゛おおおおおぉおおお」

「畜生ォ! お望みどおり殺してやれ!」

「くそが……この下等ォ生物が! てめえら許さねえぞ!」

 生かしたままに人の顔を自身に張り付ける球体型の小型幻獣、ヒトウバンの群れは帝国陸軍の将兵に恐怖と憤怒を呼び起こすことには成功していたが、だがしかし非力に過ぎる。何の飛び道具も持たず腕も脚もなく、ただただ接近戦を挑むやり方は現代戦においてはほとんど無謀というものだ。
 県道27号を往く500あまりのヒトウバンは、小口径弾の集中射を受け続けて無為に全滅した。

「こいつらなんなんですか!」

「こっちが聞きたいくらいだ……こうわらわらと新種が出現するとはな」

 放置車輌を利用してつくった即席のバリケードに張り付く歩兵達は、一時ではあるがようやく息をつくことが出来た。押し寄せる赤目の小人どもと飛び交う人頭の化物は数こそ多かったが、正直なところ闘士級や戦車級に較べれば遥かに組み易い敵であった。
 だがしかし、従来のBETAよりも遥かに厭らしい。
 暗視装置越しに見やれば、路地のあちこちに奇妙なオブジェが出来ているのが見えた。
 それは、人で出来ている。肉塊によって築いた土台に四肢を突き刺して、まるでかかしのようなものを彼らは方々につくっていた。……中にはまだ生きているオブジェもある。
 だがそれを助けに行くことは、絶対に許されない。

「だ……けてくれ……!」

 腕があるべき場所からただただ夥しい量の血を流し、電信柱に吊るされるままにされた友軍兵士をじっと見ていたひとりの歩兵はつぶやいた。

「連中、あれをやって俺らを誘き寄せようとしてやがんだ」

 ……小型幻獣ゴブリンの常套手段であった。防御陣地に立て篭もった歩兵に対し、突撃するのは愚の骨頂。ならば引きずり出せばいい――わざと敵兵を生かしたまま辱めることで、救出しようとする陣地に立て篭もる歩兵達を誘き出す。それが彼らのやり口であった。

「くそったれが」

 せめてもの慈悲、銃弾が飛んでそれまで生きていたオブジェの一角が吹き飛んだ。

「BETAとは思えませんよ、こいつら……それともなんですか? 俺たちの座学には"戦場の真実"ってのはあんまり反映されてなかった、ってことですかね」

 さあな、と分隊長が呟いた時であった。

「……っ! 地震か?」

 到底立っていられない震動に襲われた歩兵達は、土嚢や放置車輌で作った即席のバリケードにしがみついた。大口径弾の着弾時とは明らかに異なる種別の震動に、勘のいい古参兵達は「地中侵攻かもしれん、全周警戒!」と怒鳴ったが、実際には地中侵攻の比ではない悲劇が迫ろうとしていた。

「分隊長ッ! 前方――山が、動いています……!」

「何を馬……くそっ、ここに来て要塞級か!」

「違います! シルエットが違い過ぎる……!」

 遥か前方にそびえる小山が、舗装路を踏み潰し建造物を文字通り押し退けて粉砕しながら迫る光景は、歩兵達を畏怖させるのに充分過ぎた。

「いいか、ありったけの対戦車火器を浴びせてやるぞ! 撃ち方用意しろ!」



 際限がない市街戦に付き合うつもりのない幻獣軍は、早々に切り札を投入した。
 第5世界の人類軍をして「逃げるしかない」と評され、実際に戦術核や第7世代クローンの投入でしか撃退出来た例のない怪物、大型幻獣がそれである。
 歩兵に"山"と称された大型幻獣オウルベアーは後脚でその10000トンの自重を支えながら、姫路市街を一望した。全高140mの怪物は、市街地に潜む歩兵達からすれば脅威に映ったが同時にいい的でもあった。すぐさま対戦車榴弾が、どこからともなく叩きつけられる。けれどもそれらは全て無駄弾でしかない。

「直げ――違う!」

 歩兵達の眼には、自身らが放った砲弾が空中で爆散したように見えた。
 実際にそうであった。
 オウルベアーは腹部を中心として前面に物理障壁を展開することが出来、これは歩兵が携行する火器では到底破ることの出来ない高度な防御力を有している。
 "災害"とも形容される大型幻獣は――オウルベアーは、G・トードは、ヘビモスは――姫路に投入された50体の大怪獣達は、軟弱に過ぎる市街地の路面に苛立ちながら大蹂躙戦をやってのけた。実際のところ彼らがローラーの如く歩調を合わせて東進するだけで、姫路に立て篭もる人類軍を全滅させることは容易かったであろう。
 光学・物理共に遮断する障壁と数十門有する大口径レーザーを備え、攻守ともに隔絶した戦力を有する彼らは帝国陸軍から組織的な継戦能力の一切を奪い去った。









――――――――



次話、「世界の終わりとハードボイルド・ペンギン伝説」(予定)ガンパレ・マブラヴ両原作に登場した人物を主人公として幻獣の青森上陸を描こうと考えているのですが、多分にご都合主義になりそうです。ご理解ください。


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