<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

Muv-LuvSS投稿掲示板


[広告]


No.4008の一覧
[0] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION (Muv-Luv オルタ&SRWOGクロスオーバー作品)[アルト](2013/01/21 20:25)
[1] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第0話 プロローグ[アルト](2008/08/28 21:08)
[2] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第1話 異世界からの来訪者[アルト](2008/08/29 21:41)
[3] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第2話 新たなる出会い・・・そして・・・[アルト](2008/08/31 20:44)
[4] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第3話 イレギュラー[アルト](2008/08/31 20:40)
[5] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第4話 再会[アルト](2008/09/16 23:44)
[6] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第5話 姉妹の絆[アルト](2008/09/04 01:33)
[7] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第6話 不協和音[アルト](2008/09/05 08:43)
[8] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第7話 過去、そして現在(いま)・・・[アルト](2008/09/07 08:55)
[9] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第8話 侵入者の影[アルト](2008/10/16 22:13)
[10] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第9話 抹消された戦術機(前編)[アルト](2008/09/12 22:09)
[11] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第10話 抹消された戦術機(後編)[アルト](2008/10/16 22:17)
[12] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第11話 戦乙女再び[アルト](2008/09/21 23:33)
[13] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第12話 白銀の力[アルト](2008/09/23 21:34)
[14] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第13話 激突!孤狼と白銀[アルト](2008/10/16 22:30)
[15] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第14話 失われし記憶[アルト](2008/10/16 22:41)
[16] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第15話 真実が明かされるとき[アルト](2008/10/18 23:16)
[17] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第16話 純夏の想い[アルト](2008/10/22 01:41)
[18] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第17話 拒絶[アルト](2008/10/24 01:19)
[19] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第18話 得られたモノ[アルト](2008/10/24 01:19)
[20] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第19話 とある日常の訓練風景[アルト](2010/10/05 18:39)
[21] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第20話 BETA侵攻[アルト](2008/10/28 21:51)
[22] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第21話 紅き機神来たりて・・・[アルト](2008/10/30 17:56)
[23] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第22話 覚醒[アルト](2008/11/01 01:04)
[24] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第23話 新たなる力[アルト](2008/11/06 00:09)
[25] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第24話 邂逅[アルト](2008/11/06 00:07)
[26] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第25話 忘れられぬ日々[アルト](2008/11/16 21:36)
[27] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第26話 立脚点[アルト](2008/11/16 21:35)
[28] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第27話 運命のあの日[アルト](2008/11/22 00:26)
[29] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第28話 蠢く陰謀[アルト](2008/12/06 21:15)
[30] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第29話 総戦技演習へ向けて[アルト](2008/12/07 00:13)
[31] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第30話 島を行く[アルト](2008/12/20 00:23)
[32] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第31話 動き出す影[アルト](2009/01/12 15:06)
[33] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第32話 南国の激闘[アルト](2009/01/12 23:27)
[34] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第33話 脱出[アルト](2009/02/02 21:19)
[35] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第34話 吹き荒れる熱風、疾風の如く[アルト](2009/03/13 00:46)
[36] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第35話 暴れまわる幽霊達[アルト](2009/03/13 00:45)
[37] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第36話 Dancing dolls[アルト](2009/03/19 22:21)
[38] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第37話 疑念[アルト](2009/04/06 23:14)
[39] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第38話 一時の休息、そして新たなる始まり[アルト](2009/04/09 22:43)
[40] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第39話 悠陽からの招待状[アルト](2009/04/29 20:43)
[41] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第40話 新たなる仲間[アルト](2009/05/04 17:07)
[42] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第41話 天照計画(Project Amaterasu・プロジェクトアマテラス)[アルト](2009/05/18 22:58)
[43] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第42話 武神の産声[アルト](2009/06/10 23:09)
[44] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第43話 彼方への扉[アルト](2009/05/29 18:53)
[45] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第44話 白銀 武の受難[アルト](2009/06/10 23:29)
[46] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第45話 天元山での出会い(前編)[アルト](2009/08/03 18:37)
[47] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第46話 天元山での出会い(中編)[アルト](2009/08/04 00:13)
[48] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第47話 天元山での出会い(後編)[アルト](2009/08/31 01:05)
[49] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第48話 御守岩をぶった切れ!![アルト](2010/01/05 14:14)
[50] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第49話 迫り来る悪夢[アルト](2010/01/07 20:32)
[51] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第50話 数多の可能性[アルト](2010/01/10 23:19)
[52] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第51話 成すべきこと[アルト](2010/01/16 20:49)
[53] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第52話 護りたい背中[アルト](2010/01/31 21:06)
[54] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第53話 歪められた12.5事件[アルト](2010/01/27 22:43)
[55] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第54話 夕呼の企み[アルト](2010/01/31 21:03)
[56] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第55話 共に歩む尊き者よ[アルト](2010/02/04 00:28)
[57] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第56話 月が闇を照らすとき[アルト](2010/02/08 20:21)
[58] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第57話 シャドウミラー包囲網を突破せよ[アルト](2010/03/19 01:22)
[59] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第58話 合流(前編)[アルト](2010/05/02 22:47)
[60] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第59話 合流(後編)[アルト](2010/07/02 00:40)
[61] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第60話 偽りの仮面[アルト](2010/07/03 21:44)
[62] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第61話 DCの遺産[アルト](2010/08/01 22:10)
[63] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第62話 奪還作戦[アルト](2010/09/03 23:00)
[64] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第63話 究極の名を冠したモノ[アルト](2010/09/12 18:29)
[65] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第64話 ゲイム・システム[アルト](2010/10/02 23:51)
[66] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第65話 潰えし野望[アルト](2010/11/01 18:55)
[67] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第66話 開かれた次元の扉[アルト](2010/11/12 20:46)
[68] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第67話 新西暦と呼ばれる世界[アルト](2010/11/15 23:18)
[69] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第68話 導かれた悪意(前編)[アルト](2011/01/08 19:35)
[70] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第69話 導かれた悪意(後編)[アルト](2011/01/20 23:44)
[71] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第70話 因果律の番人[アルト](2011/02/02 21:30)
[75] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第71話 帰郷[アルト](2012/07/15 19:01)
[76] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第72話 A-01新生[アルト](2012/07/15 19:08)
[77] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第73話 明かされた出生の秘密[アルト](2012/11/05 11:54)
[78] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第74話 解隊式[アルト](2013/01/21 20:24)
[79] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第75話 ベーオウルブズ(前編)[アルト](2013/01/28 17:37)
[80] 本編登場機体設定資料(ネタバレ含む)[アルト](2011/01/20 23:46)
[81] 本編登場キャラクター設定資料(ネタバレ含む)[アルト](2010/01/27 22:49)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[4008] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第10話 抹消された戦術機(後編)
Name: アルト◆ceb42498 ID:f0f37b8f 前を表示する / 次を表示する
Date: 2008/10/16 22:17
Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION

第10話 抹消された戦術機(後編)



叢雲に乗り込んだキョウスケとエクセレンは直ぐに着座調整を開始する。
網膜投影ディスプレイに表示される情報を一つ一つ確認しながらデータをチェックすると同時にコンソールを操作する。
初期起動が終了し、機体がアイドリング状態になるのを確認したキョウスケは、そのまま各部の動作チェックに入る。

「ジェネレーター出力、アイドリング状態で固定。各フレームならびに駆動系異常なし・・・エクセレンそっちはどうだ?」
「FCS、IFF問題なし、各種兵装、全て模擬弾頭に変更完了。データリンクの方も問題無いわ」
「了解した・・・出るぞっ!」
「了解」

機体をロックしていた装置が全て解除されるとキョウスケは徐々に機体の出力を上げて行く・・・
予定の数値に達すると、ゆっくりとした足並みで機体を前へと動かす。
何せこれが初めての実機だ・・・緊張しているのが自分でも良く分かる。

「どうしたのキョウスケ?随分と慎重じゃない」

彼の動きを察してかエクセレンが口を開いた。

「・・・シミュレーターと実機では勝手が違う。ちょっとしたミスが事故につながるからな」
「貴方らしくないわね?」
「そうかもしれんな・・・」

エクセレンと会話をしている内に少しばかり緊張が解れた様だ・・・
そう感じた彼は、内心彼女に感謝するとともに気を引き締める。

「エクセレン、今の所問題は?」
「・・・大丈夫そうね。行けるわよ」
「解った・・・行くぞっ!」

ハンガーの外に出た叢雲は一気に出力を上げ加速を開始する。

「ちょ、ちょっとキョウスケっ!」
「何だ?」
「イキナリ過ぎよっ!もっと丁寧に扱わないと」
「この程度で壊れる様じゃテストには耐えられん」
「それはそうだけど・・・もっと私を扱う時みたいに丁寧に・・・」

彼女がそう言いかけた直後、更に加速する叢雲・・・

「ちょっとぉー!私の話聞いてるの?」
「お前を扱う様にだろう・・・違うのか?」
「もーッ!誰もこんな激しく扱ってくれだなんて頼んでないわよっ!」
「いちいちうるさい奴だ・・・そう言うのは後にしろ」
「えっ・・・『後で・・・ってヤダ、キョウスケったら・・・』」
「それよりも黙ってないと舌を噛むぞ・・・聞いているのかエクセレン?」
「な、何?」
「・・・黙っていないと舌を噛むぞと言ったんだ・・・いきなりボーっとして、大丈夫か?」
「だ、大丈夫よ!」
「なら良い・・・『まったく・・・テスト中に何を考えているんだこいつは・・・』」

キョウスケは心の中でそう呟くとディスプレイに目をやる。

『出力は安定している。各部関節やシステムも問題無さそうだ・・・それにしても少しばかりピーキーな機体だな。OSのせいで即応性が3割増になっていると聞いているが、シミュレーターで使った不知火より反応速度が速い気がする・・・だが機体は重いな。恐らく内蔵火器が多い分重量が増えているからだろう・・・今の所はさほど問題は無いように思えるが、実戦で使えるかどうかはテスト次第・・・と言ったところか』

そう呟きながら彼は自分の愛機であるアルトアイゼンと叢雲を比べていた。
重装の陸戦タイプと言う点で、それぞれの機体は似ている。
流石にスペックでは叢雲の方が劣るが、コンセプトは非常に似ている機体だと彼は感じていた。
そう考えながら彼は機体を左右に旋回させたり、低空のブーストジャンプなどを繰り返しながら機体の挙動を確認する。

「どう?いけそう?」
「どうだろうな・・・今の所問題はなさそうだが、こればかりは実際にテストをしてみない事には解らん」
「確かにそうよね・・・でもこの機体、なんで正式採用されなかったのかしら?」
「資料には詳しく書かれていなかったが、班長の言っていた欠陥が一番の原因だろうな」
「あと、考えられるのは扱える衛士が居なかったとか、コストとかシステム面なんかでしょうね」
「・・・恐らくな」

そうしている間に指定された演習区域が見えて来た。
演習場には既に準備を終えたスタッフが彼らの到着を待ち侘びているのが確認できる。

『南部大尉、ブロウニング中尉、お待ちしておりました』
「遅れてすまない」
『いえ、時間にはまだ余裕がありますから問題ありません。本日のテストでオペレーターを務めさせて頂きますイリーナ・ピアティフ中尉です。宜しくお願いします』
「こちらこそよろしく頼む中尉」
『では、今から指定するポイントへ向かって下さい。御二人が到着次第簡単なブリーフィングを行った後、テストを開始させて頂きます』
「了解した」

通信を終えると彼らは指定されたポイントへと向かう。
今回オペレーターを務める事になっているピアティフとは何度か面識がある彼らだが、通信を聞く限りでは夕呼は一緒に居ないようだ。
試作機のテストを自分達に頼んでおいて、当の本人がこの場に居ないのはおかしいものだが、その程度のテストと言う事なのだろう。
後で上がって来たデータさえあれば問題無いと言うのであれば、態々自分達がテストをする必要など無いのではないかと考えたのだが、
そう言う訳にもいかない。
一応彼らは彼女直属のテスト部隊と言う位置付けであり、軍人は上からの命令には従わねばならない。
自分達は協力者とは言え、国連軍に身を置いている以上はそれも仕方が無いのである。
その様な自問自答を繰り返すうちに、気付けば指定されたポイントへと到着していた。


簡単なブリーフィングが終了し、いよいよテストが開始される。

『それではこれよりテストを開始します。なお、テスト中はコールサインを使用します。大尉のコールサインはアサルト1と聞いていますが、間違いありませんでしょうか?』
「問題無い。自分をアサルト1、エクセレンをアサルト2と呼称してくれ」
『了解しました。それではアサルト1、アサルト2、テストを開始します・・・状況開始っ!』
「アサルト1、了解」「アサルト2、りょ~かい」

最初のテストは市街地を想定したこの演習区域での運動性能を見るテストだ。
この演習区域はG弾の影響で廃墟となってしまった柊町の一部が使用されている。
周囲は倒壊を免れたビルなどの建物で覆われており、それが丁度良い具合の障害物となっている。

『HQよりアサルト1へ、これよりデータを送信します。指定されたポイントを通過しつつ、目標地点へ向かって下さい』
「アサルト1、了解」

データを受信したキョウスケは、スロットルを踏み込み徐々に加速を始める。
操縦方法はシミュレーターで訓練した不知火と大差は無い。
大きな違いと言えば、この機体に装備されている無限軌道だろう。
匍匐飛行に比べて速度は遅いものの、単純に歩いたり走ったりするものと比べればその速さは全然違う。
推進剤の消費量を抑える為と言う事で採用された装備であるが、その走破性に今の所は問題を感じられない。
感覚で言うならばホバー走行しているような感じだ。
しかし、彼には匍匐飛行と大差無い様に感じるこのシステムのどこに問題があるのか解らないでいた・・・
実はこのシステムの弱点は急旋回時の挙動にあったのである。
従来のOSでは、機体のオートバランサーが反応すると一時的に機体側が制御を受け付けなくなる。
これは体勢を立て直そうとする時に起こる現象で、従来のシステムであれば何の問題も無かった。
しかし、無限軌道と言う新しいシステムに対しては別だったのである。
急旋回時に働く慣性によって、Gの掛かっている方向に倒れこみそうになると機体側が認識しオートバランサーが作動する。
その結果、機体を立て直す事に時間がかかる分、次の行動に対しての遅れへと繋がってしまい、それが弱点になると指摘されたのであった。
だが、OSをXM3に換装した事により、そのタイムラグは大幅に削減される事となったのである。
この事は、従来のOSを搭載した叢雲に搭乗した事のある者にしか分からない欠点であり、初めからXM3を搭載した機体を前提として訓練を行っていたキョウスケ達には解るはずも無いのである。
彼は急旋回時に機体の上半身を使い、バランスを取ることでGを上手く打ち消していた。
そして、XM3にはキャンセルと先行入力と言う物が存在する。
オートバランサーをキャンセルし、先行入力を用いてマニュアルでバランスを取る事で無意識にこの弱点を打ち消していたのだ。

「アサルト1よりHQ、現状でこちらには特に問題は感じられない。そちらの方はどうなっている?」
『こちらHQ、送られてくるデータには異常は見られません。引き続きテストを続行して下さい』
「了解した」
「無限軌道には問題無さそうよね・・・一体何処に欠陥があったのかしら?」
「そうだな・・・欠陥は他の所にあるのか、またはOSを換装した事によって解消されているのかもしれないな」
「OSが違うだけでそんなに変わるかしら?」
「その辺は俺にも解らん。だが、制御系が変われば機体も劇的に変わる。従来型のOSとXM3の資料、読んでないのか?」
「確かタケル君が考えた『コンボ、キャンセル、先行入力』だっけ?それのおかげで即応性が3割増になったんでしょ?」
「ああ、それのおかげで姿勢制御にかなりの柔軟性が出たそうだ。一概には言えないが、それによってこのシステムの弱点を克服したのかもしれん」
「なるほどね・・・そうやって考えるとあの子って凄いわね」
「まったくだ・・・この様な柔軟な発想はそう簡単に思いつくようなモノではないだろうな」

XM3が開発された理由は武が元の世界で遊んでいたバルジャーノンと言うゲームと同じ様な動きを戦術機で再現したいと言う考えからであった事を彼らは知らない。
だが、それを知らない者からすれば白銀 武独自の機動概念は今までの常識を覆すものであったのだから驚くのは無理も無い。
機動概念と言った面だけで考えるのであればPTパイロットであるキョウスケ達も同じような機動を描く事は可能だろう。
しかし、この世界のパイロットたちは違う。
元々彼の様な三次元機動を行う様な者は居なかったし、上空へと回避行動を行えば即座に光線級のレーザー照射を受ける事となる。
そう言った点を考えれば、武の発想が柔軟で今までの常識を覆すものと言われてもおかしくは無かったのである。

「そろそろ目標ポイントに到着するわよ」
「解った。今の所何か問題は?」
「そうねぇ・・・特にこれと言った問題はなさそうだけど、機体の内部温度が少し上がってきている位かしら」
「内部温度が?」
「ええ、許容範囲内だと思うけど・・・ジェネレーター周辺の温度が規定値より若干高めになってるのよ」
「解った、確認を取ってみる。アサルト1よりHQへ、確認したい事がある」
『こちらHQ、アサルト1どうかしましたか?』
「許容範囲内だとは思うんだが、ジェネレーター周辺の温度が規定値よりも高い数値を示している。指示を仰ぎたい」
『了解しました。こちらの方でも確認してみますので少々お待ち下さい』
「了解した」

ピアティフは即座にデータを確認する為、端末を操作すると叢雲の機体データが表示される。
確かに彼らの言う通り、モニターの数値は規定値よりも高めだ・・・
彼女はその場に待機している整備員に詳しい説明を求める。

「恐らく出力を上げた為による一時的な上昇だと思います。現状では問題無いと思いますが、もしもこの状況が続くようであれば一度テストを中断してチェックしてみた方がいいですね」
「解りました。HQよりアサルト1、聞こえていた通りです。このままテストを続行して下さい」
『アサルト1、了解』

暫くして目標ポイントに到着すると続いてのテスト内容が説明される。

『次のテスト内容は、各種兵装のテストです。機体の方はどうですか?』
「今の所は大丈夫そうね。内部温度も正常値に下がって来てるみたいだし」
『了解しました。ではこれより兵装テストを開始します。ターゲット用のドローンを射出しますので、そのまま待機して下さい』
「了解」

暫く時間をおいてターゲットが射出される。
ターゲット用のドローンはバルーンを用いて浮遊している物や、ビルの残骸に固定されている物の他にレール上を動いている物がメインである。
今回は兵装テストと言う事で相手は攻撃してこない。
しかし、こちらの機体を補足し照準用のレーザーを照射して来るタイプだ。
テスト前のブリーフィングでは、このレーザーを光線級のレーザ照射に見立て、同じ個所に連続して被弾した場合は大破扱いになると説明を受けている。

『それではテストを始めて下さい』
「了解」

テストが開始される。
先ずは比較的近くに居る目標からだ。

「兵装選択はお前に任せる。こう言ったものはお前の方が得意だからな」
「分かったわ」

お互いの役割を確認すると彼らはまず一番近いドローンに対して照準を合わせた。
ターゲットがロックされ、右腕部内蔵のチェーンガンが火を噴く・・・

「・・・照準がやや左にずれている。修正してくれ」
「りょ~かい」

そのまま数機のドローンを破壊、次の目標に移ろうとした直後にコックピット内に警告音が鳴り響く。

「キョウスケ、レーザ照射警告が来たわ」
「分かっている・・・」

そのまま回避行動に移る叢雲。
遮蔽物に隠れ、レーザーをやり過ごすと次のターゲットに照準を合わせる。
次々と目標を破壊し、続いて240mm迫撃砲のテストに入る。

「次、3時の方向、距離があるから迫撃砲を使うわよ」
「了解だ」

轟音とともに240mmが火を噴く・・・
しかし、ターゲットは沈黙しない・・・

「照準補正は?」
「問題無いと思うけど・・・あ~、迫撃砲って風とかの影響受けちゃうからそれで流されちゃったのかも・・・」
「なるほどな・・・この武器は扱い辛い。射撃が苦手な俺には向かないな・・・」
「そうかもしれないわね・・・それよりも戦術機で運用するのには少し無理があると思うわコレ・・・」
「どうしてだ?」
「威力は確かにあると思うけど、命中率が悪いもの・・・私だったらまず使わないわね」
「・・・砲撃支援には使えるかもしれんと言う事か」
「そうね、これを使うぐらいなら手持ちの87式突撃砲に装備されてる120mm滑空砲か別の固定武器を使うべきでしょうね」
「後で提出する予定の報告書に記載しておく」
「りょ~かい」

暫く240mmを試してみるが、直撃するケースは低かった。
これはキョウスケの射撃能力にも関係しているが、全てがそうとは言えないものだ。
直撃ぜずとも爆風などでダメージを与える事が出来るのだが、それでは効率が悪い。
密集地帯へ向けての砲撃には使えるかもしれないが、初速が遅い為に回避されるケースも多いだろう。
これならば先程エクセレンが言ったように120mmを使うか92式多目的自立誘導弾システムを用いる方が効果的だ。

『HQよりアサルト1へ、続いて近接兵装のテストに移行して下さい』
「アサルト1、了解」

近接兵装テスト用のドローンは固定されたものだ。
しかし、今までのターゲットと同様のシステムとなっている。
攻撃を回避しつつ目標へ接近すると、キョウスケは右膝から65式近接戦闘短刀を引き抜く。
そして彼は一気に間合いを詰め懐に入ると、次々と目標を破壊していく・・・
10体ほどのターゲットを破壊した頃だろうか、ジェネレーター周辺の異常加熱にエクセレンが気付いた。

「キョウスケ、またさっきの症状が出てるわ。どうするの?」
「整備班の方は問題無いと言っていた。お前はそのままデータチェックを行ってくれ。続いて電磁粉砕爪のテストに移る」
「解ったわ」

キョウスケは右腕の電磁粉砕爪を展開させる。
この装備は腕部に装備された折り畳み式のクロ―である。
ジェネレーターから生じる余剰電力を攻撃に転換する事を目的として開発された兵装で、クロー部分を目標に突き刺した後、超高圧の電撃を放つと言うものだ。

「行くぞっ!」

目標に向けて突進するキョウスケ。
自分の愛機であるアルトアイゼンリーゼと同じ様にブーストを全開にしターゲットに向けて接近、相対距離と自機の速度を調整するとそのまま目標に対してクロ―を突き刺すと、そのまま躊躇せずトリガーを引く・・・
その直後、最大出力で放出された電撃がターゲットを一撃で粉砕していた。

「私が一緒に乗ってる時はアルトちゃんみたいな使い方をするのはやめて貰いたいわね・・・キョウスケらしいって言えばキョウスケらしいけど、これって結構キツイのよ?」
「何故だ?ヴァイスに乗っているお前からすればこの程度のGは問題無いだろう?」
「・・・Gの掛かり方が違うのよ・・・これじゃブリット君がダウンするのも無理無いわねぇ」
「そうなのか?だが、アルトに比べればこれでも軽い方だ・・・もう少し突進力が欲しいな」
「ハイハイ・・・次のターゲット行くわよ」
「了解だ。次は少しアプローチを変えてみる」
「お手柔らかにね・・・」

そう言うとキョウスケは次のターゲットに向けて機体を動かす。
今度は脚部の無限軌道も使用し、先程よりも突進力を加味していた・・・

「ちょ、ちょっとキョウスケっ!お手柔らかにって言ったじゃないのっ!!」
「これもテストだ・・・我慢しろ」
「もうっ!」

続け様に次のターゲットを破壊、そして別のターゲットに目を移したその時だった・・・
コックピット内部に響き渡る警告音・・・

「っ!キョウスケっ!ジェネレーターがオーバーヒートしそうになっているわ。直ぐに停止してっ!」
「何っ!?」

跳躍ユニットを逆噴射させ急停止する叢雲・・・
コックピット内部に強烈なGが掛かる・・・

『HQよりアサルト1、南部大尉どうしました?』
「こちらアサルト1、トラブルだ・・・ジェネレーターがオーバーヒート寸前になっている。どうやら先程の異常加熱はこの前兆だったようだ」
『了解しました。一度テストを終了します。そのままこちらまで戻れそうですか?』
「・・・少し待ってくれ。エクセレン、どうだ?」
「うーん・・・駄目ね、さっきから温度が下がらないわ。ここは下手に動かさない方が良いかも・・・」
「解った。ピアティフ中尉、すまないが整備班をこちらへ回してくれ」
『了解しました。そのままそこで待機して下さい。直ぐにスタッフをそちらに向かわせます』
「了解だ」

通信を終えるとピアティフは整備班に現状を伝え、直ぐさま87式自走整備支援担架を現場に向かわせるように指示を出す。
実は叢雲の最大の欠陥はここにあった。
試作型兵器である電磁粉砕爪はジェネレーターの出力を最大まで高め、その余剰電力を放出する。
その為、機体内部温度が必要以上に上昇するのだが、これを冷却する為のシステムに問題があったのだ。
当時の技術者はこの問題点を改善すべく、色々と手を考えたのであったが、それらは殆ど失敗に終わっていた。
最終的に新型の冷却システムを開発する事に成功したのであるが、完成時期が遅すぎた為にこれ以上の開発費の投入は採算が合わないと言う理由などからテストを行う前に計画は中止される事となったのである。
今回のテストでは、その新型の冷却システムを搭載した機体が使用された。
しかし、この新型を用いてもその欠陥は解消される事は無かったのである・・・
それには理由があった。
それは装甲である・・・
この機体は防御性や耐久性を重視した結果、従来の装甲よりも重装甲の機体となっている。
その為余剰熱が外部に逃げ難い仕様なのだ・・・
これは第一世代型戦術機によく見られた原因の一つで、装甲を厚くした分、その排熱が追い付かなくなり機体がオーバーヒートを度々起こすと言うものだった。
近年の戦術機は、新素材や新型の複合材の開発によりそう言った問題点は改善されているのだが、この機体が開発された当時はそう言った点が全て改善されていたとは言えず、結果として冷却システムを大型化するなどして対処する他無かったのである。

「・・・なるほどな、確かにそのような欠陥を抱えていては正式採用するのは難しいな」
「そうねぇ、下手をすれば中のパイロットもろとも大爆発だもんね・・・」
「別の意味で特攻兵器と言えない事も無いと言う訳か・・・だが、この機体の改善点はこれで明らかになった」
「どういう事?」
「装甲に関しては第三世代機の物を流用すれば解決が可能だろうし機体の軽量化に繋がる。機体が重い分はどうしても負荷がかかるからな。それからジェネレーターだが、これも出力が叢雲の物よりも高いものに換装すればさほど出力を上げなくても電磁粉砕爪は使用可能な筈だ。それでも駄目なら、装備そのものを排除する他無いな・・・それにこの無限軌道、これはかなり使えると判断した。このまま眠らせておくのは勿体ない」
「さっき最後にテストしたアレね?」
「ああ、跳躍システムと併用する事でかなりの突進力を得る事が出来る。それ以外にも地上での機動に関してはかなり有効なシステムの一つだと感じた」
「・・・なるほど、解りました。この件に関しては私の方からも報告書を副司令の方に提出しておきます。それから申し訳ないのですが、今日のテストはこれで終了させて頂きます。本来ならテストをして頂きたかった装備があったのですが、整備班からの報告ではジェネレーターと冷却装置にかなりの負荷がかかっているそうです。このままテストを続けるのは危険と言う事ですので・・・」
「解った。報告書に関しては俺の方も副司令の方に提出しておく。ピアティフ中尉もそれで良いだろうか?」
「はい、では私はテストに関する報告書を書きますので、大尉には機体の方に関する報告書をお願いしても構わないでしょうか?」
「ああ、俺の方は問題無い。エクセレンは火器管制や武装面に関する報告書を提出してくれ」
「ええ、私も?」
「当然だ・・・」
「わ、解ったわよ・・・」



叢雲のテストは意外な形で終了した・・・
しかし、このテストのおかげで様々な改善すべき点が見つかった事は事実だ。
従来の機体にXM3を搭載する事によってかなりの性能向上が見込めると言う事も改めて分かった。
そう言う点で考えればこのテストによって得られた収穫はかなりのものであろう。
そしてこのテストを踏まえ、後にType90・叢雲は新たな力を手にし、人類を守る為の盾として・・・人々を救う為の剣として・・・生まれ変わる事となるのだった・・・


あとがき

後編です。
前回に引き続いて叢雲のお話です。
今回の話で叢雲の欠陥について色々と書かせて頂きました。
欠陥については本当に考えさせられました・・・
書き終えた今でも何となく矛盾が生じてそうな気がしてなりません・・・orz
ピアティフ中尉が最後の方でチラッと言った装備ですが、これは叢雲専用の装備と言う訳ではありません。
詳細はまだ明かせませんが、近いうちに登場させる事が出来ればと思います。
次回はタケルちゃんが乗る事になる新型試作機について書かせて頂こうと思ってますのでそちらの方もお楽しみに^^
それでは感想の方お待ちいたしております^^


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.034040927886963