Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION第14話 失われし記憶・・・ブリーフィングルーム・・・模擬戦を終えた武は、夕呼に指示されたとおりにブリーフィングルームへとやって来ていた。ちなみにキョウスケは、先程の模擬戦終了後にアルトアイゼンに若干の不具合が見つかったと言う事で、先に整備に立ち会ってから遅れてデブリーフィングに参加する事になっている。「彼が先程の模擬戦で不知火改型を操縦していた衛士よ」「初めまして、白銀 武です」簡単な自己紹介が終わる・・・ヴァルキリーズの面々の反応は様々だ。誰もが率直に思ったのは『若い』と言う事だった・・・それも当然である。先程の動きを見た限りで想像するのならば年齢を重ねた熟練の衛士だろうと考えていたのである。「ふ~ん・・・アンタがあの無茶苦茶な機動をやってた衛士ねぇ・・・」「そうですが・・・何か問題でもありましたか速瀬中尉?」「別に~・・・って言うか、何でアンタが私の名前知ってるのよ?」「速瀬 水月・・・A-01部隊所属の凄腕衛士って事で有名ですからね。名前位は存じ上げていますよ」「ま、そう言う事にしといてあげるわ・・・ところで白銀っ!」「は、はい?」「私はアンタの腕前に負けたとは思ってないからね・・・負けたのは機体の性能差よっ!同じ機体だったらアンタなんか瞬殺なんだから、そこの所はよ~く覚えておきなさいよ?」「・・・それはどうでしょう?模擬戦での彼の勝利は、機体の性能差と言うより彼自身の操縦技術が凄かったと思いますが」「む~な~か~た~!」「と、涼宮少尉が言ってました」「ちょ、ちょっと待って下さいよ宗像中尉っ!私そんな事言ってませんてば」「じゃあ、築地少尉が・・・」「わ、わ、わ、私もそんな事言ってません!」「はいはい、速瀬中尉も美冴さんもそれぐらいにしませんか?・・・困ってみえますわよ彼・・・」「チッ・・・後で覚えておきなさいよ?」「・・・もう忘れました」「なんだとぉ!」「貴様らっ、いい加減にせんかっ!!」「「失礼しました・・・」」「まったく・・・ところで副司令、もう一方の機体の衛士はデブリーフィングに参加しないのでしょうか?」「彼は遅れて参加する事になっているわ。とりあえず彼が来るまでの間は新型OSの説明をしようと思うんだけど・・・白銀、これはアンタに任せるわ」「え、俺がですか?こう言うのは先生が説明した方が良いと思うんですけど・・・」「何言ってんのよ。このOSの発案者はアンタなんだからアンタがやった方が良いに決まってるじゃないの」その話を聞いたヴァルキリーズの面々は驚きの表情を浮かべていた。新型OSの発案者は自他共に認める天才である香月 夕呼では無く、目の前にいる青年だと言うのだ。そして更に一衛士の話を聞き入れ、それを実行に移したと言う事に対しても彼女達は驚いていた。普通に考えるならば横浜基地副司令であり第四計画の責任者でもある彼女を動かせるほどの人物などそうは居ない。考えられる人物など限られているのだ。それを行わせた人物・・・この男は只者ではないのかもしれない・・・と言う考えが彼女達の頭を過ぎっていた。そんな中、水月が口を開く・・・「副司令、よろしいでしょうか?」「何かしら?」「白銀は一体何者なんですか?私達にはただの衛士にしか見えないんですが・・・」「さっきも言ったと思うけど?彼は私の秘蔵っ子・・・もしくは重要な手札の一つ、と言ったところよ」「・・・」「あまり納得が出来てないようね。まあその辺は追々明かして行く事にするわ。アンタ達は今はまだ知る必要が無いから」「Need to knowですか?」「そう言う事よ。あ、それから言い忘れてたけど、この子はアタシを除けば今ここに居るメンバーの中で一番偉いから」「ど、どう言う事ですか?」「彼はアタシの直属の部下であり、少佐相当官の特務大尉なのよ。ま、本人にはあんまり自覚は無いみたいだけどねぇ~」武は夕呼を見て、明らかにこの状況を楽しんでいると感じていた。そして、その事実を知ったヴァルキリーズの面々はさらに驚愕している。目の前の青年は、この若さで少佐相当官の特務大尉だと言うのだ。彼女達の目から見ても彼は新任少尉達と大して変わらない年齢だろう。極端に童顔と言う場合もあるかもしれないが、そんな事はどうでもよかった。この若さであれだけの機動を行い、それが出来るOSの発案者でもあるのならば少佐相当の階級であってもおかしくは無いだろう。だが、その場に居たメンバーの殆どはそれだけでは納得できなかったのだ。それほどの人物が何故これまでの間表舞台に出てこなかったのだろうか?普通に考えるならば、これだけの実力を持った衛士だ。先程同じような質問を伊隅が夕呼にしていたが、白銀 武と言う人物を詳しく知らない人間であるならばそう思うのが普通である。しかし、彼に関する情報は先程夕呼が追々明かして行く事にすると言ったばかりだ。そう言われた直後に色々と聞き出そうとするのは少々問題があるという事を考えるのは皆同じである。彼女達は戸惑いの表情を浮かべたまま、どう対応するべきかで悩んでいる様子が見て取れる。とは言ったものの時間も勿体ない。武はこの後も先程の模擬戦のデータを纏めたりなどと色々やる事があるのだ。限られた時間を有効に使わなくてはいけないので、後で纏めて質問を受けると言う事にして彼は新型OSのレクチャーを開始する事にした。「それでは時間もあまり無いので新型OSの説明を始めさせて頂きます・・・」各自に資料を配布し終えると、武はXM3に関する説明を開始する。元々彼はこう言った仕事は苦手なのだが、前もって用意されていた資料と幾度となく世界をループしている経験や記憶のおかげで新OSのレクチャーは思いの外上手く行ったように見えた。しかし、今一納得できていない様子なのがヴァルキリーズの先任達だ。それも無理はない・・・彼女達は新任達よりも長い時間戦術機に乗っている。と言う事は、頭と体に従来のシーケンスが叩き込まれていると言う事だ。確かに先程の模擬戦での動きを見れば、新型OSの性能と言う物が凄いと言う事は解るのだが実際に乗ってみない事には何とも言えないといった表情を浮かべていた。「とりあえずはシミュレーターのOSの換装が今日明日中には終了する予定ですから、それが終わり次第順次簡単な機種転換訓練を受けて貰う事になると思います。それでなお不都合があるようでしたら俺の方に行って下さい。具体的なアドバイスやレクチャーなどもその時に行うつもりです。何か質問があったら今の内に言って下さい。答えられる範囲内で答えさせて頂きますから」「じゃあ早速質問よろしいですか?」「どうぞ」「新型OSの機動概念ですけど、あれは白銀大尉独自のものなんでしょうか?」「基本的にはそうだな・・・ベースになっているのは俺の機動概念だけど、慣熟させる事によって自身の機動がフィードバックされるから、最初の内は戸惑うかもしれないけど問題は無いと思う。最終的にモノにできるかどうかは涼宮少尉の腕次第ってところかな」「なるほど、解りました」「では白銀大尉、私からも質問をよろしいでしょうか?」「風間少尉、どうぞ」「OSに関しては大体理解できたのですが、改型についていくつかお聞きしたい事があります」「答えられる範囲内であればOKですよ」「ベースとなっている機体は不知火の様ですが、従来機とはどう違うのでしょうか?」「基本的に従来機に比べて出力が約20%増し、関節やフレームに新型の素材を用いる事によって合成の強化と軽量化が主眼に置かれているそうです。また、新型OS搭載を前提としている為、CPUも従来機とは別のものになってます」「それはFXJ計画で開発された不知火・弐型とは違うのでしょうか?」「弐型は帝国軍主体で開発された機体ですが、この改型は国連軍、と言うよりも横浜基地の現地改修機みたいなもんですよ。詳しい事は話せませんが、香月副司令が進めている計画の概念実証機の一つと言う事です」「・・・なるほど、解りました」「では他の国連軍基地や帝国軍には配備される予定は無いと?」「宗像中尉の仰る通り、今の所横浜基地だけだと思います。従来の不知火の改造機、と言うよりは夕呼先生の気まぐれで作られた機体みたいなもんですから・・・」「その割には何機か量産されてるんですよね?だったら私達ヴァルキリーズにも回して欲しいもんですけど・・・」「速瀬中尉の仰りたい事は解りますが、基本的にテスト機ですからね・・・安定性と言う面では従来の不知火の方が勝ってると思いますよ?」「どう言う事でしょうか?」「実を言うと、概念実証機と言う事で改良型と言うよりは試作機に近いんですよ。弐型の様に米国製のパーツを部分的に用いて強化改造されている訳では無く、夕呼先生独自の理論を基に改良が加えられていますから、結構無茶な仕様になってるんですよ。おかげで機体毎に若干性能にバラつきが出てましてね・・・安定させる為にリミッターが装備されています。だから唐突に何かしらの不具合が出る可能性もありますし・・・無論リミッターを解除する事も可能ですが、制限時間付きですし、それをオーバーした結果があれですから・・・」「なるほどね・・・それじゃもう一つ質問」「何ですか?」「OSに関する質問じゃ無いけど宜しいでしょうか?」「構いませんよ」「白銀大尉は一体御幾つなんでしょうか?」「一応、速瀬中尉達より年下ですよ。年齢は涼宮少尉達と同い年です。先日昇進したばかりの若輩者なので階級とかはあまり気にしないで貰って構いませんよ。俺に対しては別に敬語とか使わなくても大丈夫ですから」「な、何ですってぇ!!」武の年齢を聞いた水月は驚いていた。いや、水月だけでは無い。その場に居た殆どのメンバーが驚いていたのだ。「そんなに驚かなくてもいいじゃないですか・・・俺自身が堅苦しいのが苦手なんで、できれば『白銀』とか『武』とか気楽に呼んでもらえる方が嬉しいんですよ。それにこの隊は香月博士の命令で畏まった言動は不要で、無駄な事はするなと言われてるんじゃありませんでしたっけ?」彼の言う通り、ヴァルキリーズは基本的に皆フランクに接している。無論、場を弁えた行動はきっちりと行っているが、それほど厳しいと言うほどでもないのだ。しかし、今回ばかりは状況が違う。武はヴァルキリーズのメンバーではないし、伊隅よりも階級が上なのである。彼女達が戸惑っているなか、代表して伊隅が武の問いに答えていた。「確かに形式ばった話し方は他の人間が居る時だけで構わないとは言ってますが、大尉はヴァルキリーズのメンバーではありませんし、階級も私達よりも上です。そう言う部分をいい加減にしてしまっては下の者にも示しがつきません・・・ですが、白銀大尉の御命令と言う事であれば我々も従わねばならないのですが・・・」武は彼女の言い分に『そう来たか』と思っていた。確かに自分の権限を利用すれば彼女達にそう接するように仕向ける事も出来るだろう。だが、それは武自身が望むところでは無い。できるだけ上下関係を抜きに彼女達ヴァルキリーズの面々と接していきたいのだ。207B小隊の面々には仕方なく命令だと言う事にしてしまった部分もあるが、彼女達に関してはその後の関係からも分かるように左程問題にはなっていない。その大きな理由はC小隊の面々や冥夜のおかげである。元々C小隊の面々は、比較的フランクに接してくれる者が殆どであったし、冥夜に至っては以前の世界の記憶があるおかげで前以上に親しく接してくれている。まあ、彼女の場合は記憶云々はあまり関係ないのだが・・・武自身が階級を振りかざすと言う行為が嫌いな為、親しくなりたいと考えている人達にはそう言う手段はできるだけ取りたくないのである。どうしたものかと考えている武であったが、ふと伊隅の顔が目に留まる・・・『・・・やられた・・・これは伊隅大尉がそう言う風に仕向けてるって事か・・・完全に見透かされてるな俺って・・・』やはりここは軍隊である以上、形式と言うものには拘らなければならない。彼女は口ではああ言っているものの、その表情からは武の意を酌もうと言うのが見て取れる。『間違いなく俺は試されてる・・・だったら・・・』武はそう心の中で呟くと、相手の出方を見ると言う事も含めて考えだした答えを彼女達に伝える事にする。「うーん・・・じゃあこうしましょう。これは命令では無く俺個人として皆さんへのお願いです。階級は俺の方が上かもしれませんが、俺自身ここに来て間がありませんし、まだまだ学ぶべき事が沢山あります。そう言う訳ですから俺としても尊敬できる先輩方に色々とご教授願いたい訳です。ですから階級は関係無しに新しくヴァルキリーズに配属された一人として考えて下さいませんか?」ちょっと下手に出過ぎたかも知れないと思った。案の定、新任達はざわついている・・・しかし隊長の伊隅はそれほど驚いては居ない。むしろ上手い方向へ持って行ったなと言う様な表情を浮かべている。「・・・なるほど、そう言う事ならば我々もそう接するべきだろうな。了解した白銀大尉。これからは君を上官としてではなく、我々と同等に扱わせて貰う。しかし、時と場合は弁えさせて貰うがそれで構わないか?」「はい、俺としてもその方が助かりますのでよろしくお願いします」「お前達もこれからは彼と気楽に接しても構わん。呼びたいように呼んでやれ」『『「了解っ!」』』ちょっと無理があったかもしれないが、隊長である伊隅がこう言うのであれば問題は無いだろう。むしろ、彼女がそう接してくれる事でほかの隊員達も接しやすくなる筈だ。後はなるべく接する時間を作れるようにして親しくなって行けば上下関係などあまり気にならなくなって行くだろうと彼は考えていた。「タケル君ってばなかなかやるわね」「はい、ですが伊隅大尉がそう言う風に仕向けた様にも思えますが・・・」「確かにね・・・でも、伊隅大尉も彼がどう出るか試してたみたいよ?」「腹の探り合いと言った所でしょうか?」「うーん・・・そんなもんじゃ無いと思うけどねぇ・・・ま、上手く行ったんだからこれでヨシって事で」「そうで御座いますわね」エクセレンとラミアがその様な会話をしていると、ミーティングルームのドアが開く。「失礼します。副司令、遅れて申し訳ありません」そう言いながらドアの所で敬礼をしているのはキョウスケだった。「南部・・・毎回言ってるけど敬礼はいいって言ってるでしょ?いいから早く中に入って頂戴。皆お待ちかねよ」「ハッ!」そう言うと彼は部屋へと入り夕呼の隣りに立つ。「彼が先程の赤い機体を操縦していた衛士よ。簡単に自己紹介してくれるかしら?」「ハッ!・・・A-01部隊第三中隊所属、隊長の南部 響介大尉です」「A-01部隊第九中隊、通称伊隅戦乙女中隊(ヴァルキリーズ)隊長の伊隅 みちる大尉だ。よろしく頼む」「ハッ!、こちらこそよろしくお願いします大尉」「敬礼は無しだ大尉・・・先程副司令にも言われただろう?ここではそう言う畏まった態度は抜きにして貰って構わん。それに階級も同じだしな」「了解しました」同じ階級と言っても彼女の方が先任だ。必要最低限の敬意は必要だろうとキョウスケは考えていた。そして、他のメンバーの簡単な紹介が始まる。隊員全員が女性で構成されているのは珍しい・・・彼はそう思っていた。しかし、この世界の情勢を考えるとそうも言っていられないのだろう・・・殆どの男は徴兵され戦場へ赴き、更に女性までもが出兵しているのだ。挙句の果てには徴兵年齢が下げられているのが現状である・・・例え自分達の世界とは違っていたとしても、キョウスケ達はこの泥沼の様な世界を救いたいと言う思いが強くなっていたのは言うまでも無かった・・・キョウスケが参加した時点で今回のミーティングは次の作戦へ向けてのミーティングへと移行する。「次の任務から彼等にはヴァルキリーズと行動を共にして貰うわ。彼らは試作機のテスト部隊も兼ねててね、基本的にはアンタ達と同じで私の直轄部隊って事になってるから。特に事情が無い限りはヴァルキリーズと同じ任務をこなして貰う予定だけど、形式上は独立部隊扱いだから任務の優先順位は異なると思っておいて頂戴・・・何か質問は?」「南部大尉の乗ってみえた機体について質問があります。あれは戦術機なのでしょうか?」そう言ったのは水月だ。いや、この質問をしたかったのは彼女だけではないだろう・・・機体の外観は戦術機に似ているが、開発コンセプトは戦術機とは全く違う様にも見て取れる機体だ。試作機と言う事は解るのだが、あまりにも従来の機体とは一線を画している。特に水月は改型とアルトの模擬戦を間近で見ていただけに興味津津と言ったところだ。「そうよ。ただし、普通の戦術機とは違うわ。とある計画に基づいて開発された試作機で、従来機とは異なったコンセプトで開発された機体よ。現時点では彼の機体しかロールアウトしていないけど、今後ロールアウトする機体は色々な意味で従来の機体とは違う物になる予定よ」「ひょっとして私達の部隊にも配備されるんですか?」「悪いけどそれは無いわ。アンタ達ヴァルキリーズには引き続き従来機で任務に当たって貰うからそのつもりでいなさい。その代わりと言っては何だけど、新型OSの換装と改型のデータを基に改良した不知火を配備するつもりだから・・・とは言っても、マイナーチェンジ程度だけどね」「・・・了解しました」アルトの性能を間近で見て居ただけに新型機の配備は無いと聞かされた水月はガックリと肩を落としていた。「ほ、ほら水月、そんなにがっかりしないの・・・新型は無理でも改良型が配備されるんだから・・・ね?」「分かってるわよ遙・・・ちょっとだけ私も新型に乗ってみたかっただけだから・・・」「速瀬中尉は新型に乗ってみたいんですか?」「そりゃそうよ。別に今の機体に不満が有る訳じゃ無いけど、あれだけの性能を目の前で見せられちゃね・・・」「うーん・・・先生、俺から一つ提案があるんですけど良いですか?」「何?・・・大体予想は付くけど」「テスト用に改型を何機かロールアウトさせる事になってるんですよね?」「ええ、データ収集も兼ねて現状では3機ほど用意する予定よ」「だったらそのうちの1機を速瀬中尉にテストして貰うのはどうでしょうか?」「・・・仮に速瀬にテストして貰うとしてもこの子に扱いきれるかしら?」「確かに最初は振り回されるだけでロクなデータも取れないかも知れませんが、中尉の実力は折り紙付きだと言う事は誰もが解ってます。それに様々なデータが有る方が今後の為にも役立つと思いますけど・・・」「・・・確かにアンタの言う事も一理あるわね・・・解ったわ、2号機をヴァルキリーズに配備しましょう。速瀬、やれるわね?」「もちろんです!!そこに居る白銀よりも上手く扱って見せますよ!」「随分と大きく出たわね・・・ま、頑張りなさい。ロールアウトしたら即テストに入るからそれまでに新型OSを慣熟させなさいよ。あの機体は新型OSの能力をフルに発揮できない衛士には到底乗りこなす事は不可能な機体だからそのつもりでね」「了解しました!!」「良かったですね速瀬中尉」「あんたのおかげよ白銀ぇ~・・・ロクなデータも取れないなんてちょっとムカツク言い方されたけど、まあ許してあげるわ」「ありがとう御座います。でも俺も負けませんよ」「・・・やっぱコイツムカつくわ・・・」「もう水月ったら・・・」「とりあえずアタシは2号機の手配に行くから後の事は伊隅に任せるわ。それじゃ後はよろしく・・・あ、いつも言ってるけど敬礼とかはいいからね」夕呼が部屋を出て行くと今後の任務についてのミーティングが開始される。「ではミーティングを開始する。近々、偵察任務を兼ねて我々A-01部隊は新潟へ出撃する。本日のミーティングは各隊の受け持ち区域などの打ち合わせだ」「偵察任務でありますか?」「そうだ・・・最近、佐渡島のBETA共の動きが活発になっているらしいとの報告があった。もしもに備えて我々が偵察及び警戒任務に就く事となる」「場合によってはBETAとの戦闘もあると言う事ですか?」「そうだな・・・だがそれは最悪の事態を想定した場合だ。だが、我々に出撃命令が下ると言う事は、その最悪のケースが起こる可能性が高いと思っておいた方が良いだろう」「了解しました」「今回はヴァルキリーズをA小隊、B小隊の二つに分け、南部大尉達の部隊をC小隊とする。A小隊の指揮は私が、B小隊の指揮は速瀬に取って貰う。無論C小隊は南部大尉だ。受け持ちの区域は後日、小隊長に連絡する」「了解です」「それからもう一つ、次の任務までに新型のOSが搭載される事になる。今後の任務にはそのOSのデータ収集なども含まれる予定だ。よって今後は出撃が無い限り新型OSの慣熟訓練がメインだと言う事になる。各自気を引き締めて掛かる様に・・・以上だ」『『「了解っ!!」』』「では解散」「敬礼っ!」水月の号令と共に全員が敬礼しミーティングは終了する。各自がそれぞれ部屋を出て行く中、武はとある人物に呼び止められた・・・「久しぶりだよね白銀。元気してた?」「あ、ああ。久しぶりだな」「あれ?ひょっとして私の事忘れちゃった?」「そんな事無いよ柏木・・・ちょっと驚いてただけだって」「本当かなぁ・・・?」「本当だって、まさかお前がヴァルキリーズに居るなんて思っても無かったから・・・」「そう言う事にしておいてあげるか・・・でも驚いたよ。君が大尉だなんてさ」「俺自身が驚いてるんだからそりゃそうだよな」「アハハ、確かにそうだね」『・・・何故だ・・・何故柏木が俺の事を知っているんだ?この世界の柏木とは面識はなかった筈だ・・・まさか柏木にも前の世界の記憶が?』「どうしたの白銀?ボーっとしちゃって」「い、いや・・・あのさ柏木・・・『あらあら、タケル君も隅に置けないわねぇ・・・』・・・え、エクセレン中尉?」「いきなりヴァルキリーズの女の子をナンパだなんて、国連軍のエースは伊達じゃ無いって事かしら?」「な、何でそう言う事になるんですか!!」「アハハ、違いますよ中尉。白銀とは同級生だったんですよ」「え、そうなの?」「はい、中学時代の同級生で、久しぶりに会ったんで懐かしくて私の方から話しかけたんです」「な~んだ、てっきり私はタケル君がまた撃墜数を稼いでるんだと思ったのに」「ちょ、ちょっと何て事言うんですか!!」「知ってるわよ~訓練生のえーっと、冥夜ちゃんだっけ?あの子と良い関係なんでしょ?」「ちょっと待って下さい!!それは誤解ですって!・・・って、何でその事を中尉が知ってるんですか?」「アラド君が言ってたわよ」「・・・アラドの奴・・・今度の訓練の時覚えてろよ・・・」その頃訓練校では・・・「!!!」「どうしたのアラド君?」「い、いや、何か急に悪寒が・・・」「どうせまた変な物でも食べたんでしょ?」「あのなぁ!そんな事で寒気がする訳無いだろっ!」「風邪でも引いたんじゃないのか?」「そんなんじゃ無いッス・・・なんて言うか、殺気の様な物が・・・」「周りには訓練生しか居ないですの・・・気のせいだと思いますのよ?」「あまり深く考え込まない方が良いと思う」「だと良いんだけど・・・なんか激しく嫌な予感がする・・・」「ほらそこっ!何をサボっているんだっ!」「ヤバいっ!訓練に戻るぞ。このままじゃ連帯責任でまた腕立てだ」『『「了解っ!」』』「へぇ~そうなんだ・・・御剣に手を出すなんて、相変わらず度胸が良いんだか何も考えていないんだか・・・私も気をつけないとなぁ・・・」「ちょっと待て柏木・・・お前なんか凄い誤解して無いか?」「別に~。それよりさ、鑑や剛田は元気?」「え・・・?」「え、じゃなくてさぁ・・・久しぶりに白銀に再会できたんだし、二人も元気なんでしょ?」「すまない柏木・・・その話はまた今度な・・・この後もまだ仕事が残ってるんだ。悪い・・・」そう言うと武は逃げる様に部屋を後にする・・・「ちょ、ちょっと白銀!」「行っちゃったわね・・・私なんか悪い事しちゃったかしら?」「いえ、中尉のせいじゃありませんよ・・・ひょっとしたら私、聞いちゃいけない事聞いたのかもしれない・・・」「さっきの二人の事?」「はい・・・鑑は白銀の幼馴染で、剛田は彼の友人です」「そう・・・」「・・・ひょっとしたら二人はもうこの世に居ないのかもしれない・・・だからそれが伝えられなくて行っちゃったのかも・・・」そう言った柏木の表情は暗い・・・「大丈夫よきっと。彼忙しいみたいだし、本当に時間が無かっただけなんじゃないかしら?」「でも、あの表情・・・きっと私には伝えられない何かがあるんですよ」「例えそうだったとしても結論を出すのはまだ早いわ。だから、ね、元気出して」「・・・はい」エクセレンは何とかして彼女を元気づけようとするが上手く行かない・・・そして武は自室に戻っていた・・・「・・・なんで柏木が純夏の事まで知ってるんだ?それに俺と柏木が同級生だったってどう言う事だよ・・・アレ・・・何だ・・・何で今になって中学時代の事が浮かんでくるんだよ・・・」武は困惑していた・・・自分の記憶の中にあるこちら側の世界の柏木との出会いは、任官後ヴァルキリーズに配属されてからだ。それが中学生時代の同級生だったと言うのだ・・・そして更に驚くべき事は、今になってその時の記憶が浮んで来たと言う事だ・・・「落ち着いて考えよう・・・俺の中には確かに柏木と共に中学時代を過ごした時期がある・・・でも、今までその事は全く覚えていなかった・・・この際、剛田の事は後回しにするとして、何で今の今までそこの記憶が抜け落ちてたんだ?・・・いや、違うっ!おかしいぞ・・・何で今まで気付かなかったんだ・・・俺の中の記憶・・・何で無いんだよ・・・何で10月22日以前の記憶が浮かんでこないんだよっ!!浮かんでくるのは前の世界やその前の世界での出来事ばっかり・・・何で・・・何でなんだ・・・それじゃあ一体俺は誰なんだ・・・いや、俺は俺だ白銀 武だ・・・それ以上でもそれ以下でも無い筈だ・・・クソッ!訳がわかんねぇ!!一体どうなっちまってるんだよっ!!」柏木との出会いによって甦った記憶の一部・・・それは白銀 武本人の記憶である事には間違いないのだが、彼はそれ以上に自分の中に在るべき筈の記憶が欠落していると言う事実に戸惑っていた。そして、これがまた新たなる事件の発端となろうとはこの時は誰も知らなかったのである・・・そう・・・彼女を除いて・・・「・・・不味い事になったな・・・急がないと駄目かもしれない・・・」そして物語は急激に動き出すのであった・・・あとがき更新が停滞して申し訳ありませんでした><何かネタは無いかとブラブラしていたらブレイクザワールドに巻き込まれて多元世界へ飛ばされてしまいまして、やっと帰って来た次第であります(マテwと言う冗談はさておき、プライベートで色々とありまして、小説を書く時間が取れなかった事が主な原因でありまして、楽しみにされていた方、本当に申し訳ありませんでした。さて、今回はヴァルキリーズとタケルちゃん、そしてキョウスケ達の出会いを書かせて頂きました。本当は207小隊の話を書く予定だったのですが、デブリーフィングの話を書かない訳にはいかなかったので、今回はそっちの話にさせて貰いました。ほんの少しだけブリット達207C小隊の面々を出したのでそれでご容赦くださいTT改型2号機はヴァルキリーズの速瀬中尉に乗って貰う事になりました。これは当初から予定していた事で、3号機にはキョウスケ達の誰かに乗って貰う予定となってます。今後、彼女がどのように活躍するか楽しみにしていてください。さてさて、記憶が欠落している事に気付いたタケルちゃん・・・何故彼の記憶が欠落しているのか・・・そして今後どのようになって行くのか・・・この辺は近々明らかになると思いますのでお楽しみに。それでは感想の方お待ちしております^^