Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION第2話 新たなる出会い・・・そして・・・「大人しくしていろ」暗闇に無機質な音が響き渡る・・・キョウスケとエクセレンが放り込まれたのは、横浜基地の拘置所。放り込まれた理由は先の取調べにある。この基地に連れてこられた二人は簡単な身体検査の後、直ぐに取調べを受ける事となった。彼らの言う事があまりにもチグハグだらけだった事、そして聞きなれない単語などもあった為、最終的に不審者として連行される事となった。「・・・いったいどうなっているのかしら」「・・・解らん、現状で分かっている事と言えば、あの爆発の後、俺達は謎の組織に拘束されここに拘置されているという事だけだ」「・・・楽観的ねぇ」キョウスケは牢屋の中で今までの出来事をまとめようと思考を展開した。施設動力炉の爆発に巻き込まれたと思ったら、次の瞬間見慣れない土地に放り出された。辺り一面は廃墟・・・最初は施設の爆発の影響で周囲が吹っ飛んだ為だと思ったが、直ぐにそれは違う事だと気付いた。直後にやって来た見知らぬ機体、聞いた事も無い軍事基地名、更には自分が地球連邦軍の兵士でATXチーム所属だと言う事を明かした時の態度もおかしかった。『どう言う事だ。ここは地球の筈だ・・・連邦軍が存在しない?それ以前にATXチームと言えば先の大戦において最前線で戦っていた部隊の一つだ。それを知らない軍関係者が居るだろうか・・・』「・・・ねぇ、キョウスケ・・・」「何だ?」「さっきの取調官が言ってたベータって何なんでしょうね・・・話からすると敵対勢力の呼称みたいだったけど・・・」「それは俺も気になった・・・DC残党や異星人とも違うようだったしな」「・・・それよりも他の皆は無事かしら・・・あの後そんな事確認する暇も無かったし・・・」「負傷者は丁重に扱うと言っていた・・・それを信じるしかあるまい・・・」そのまま二人は黙りこんだ・・・沈黙が続く・・・『・・・今は機会を待つしか無いか・・・』他に方法が無い以上、キョウスケは機会を待つことにした。こう言う時、その機会と言うものは思いの外向こうからやって来る物である。拘束され一日が過ぎようとしていた頃だろうか、牢屋の前に一人の兵士がやってくる。先程、自分達を牢屋に連れて来た男だ・・・「・・・釈放だ、出ろ」「どう言う事だ?」「俺は貴様らを連れて来るように命令されただけだ。それ以上の事は知らん」そう言うと兵士は牢屋の鍵を開ける。そして、キョウスケ達に付いて来るように告げる。状況が飲み込めないがここから逃げ出すチャンスだ・・・キョウスケとエクセレンはアイコンタクトを取ると従うフリをして相手の後に続いた。二人はその後ろを歩きながら周囲の状況を窺う。施設内の通路の造り、兵士の数、警備装置の配置、敵施設で拘束された場合での脱出訓練も行っている・・・二人は慎重に情報を集めていた。そんな二人の行動に気付いたのか、今まで黙っていた兵士が口を開く・・・「そうそう、もう一つ命令を受けていたのを忘れていた。おかしな事は考えない方が貴様らとお仲間の身の為・・・だそうだ」「・・・・・」二人は沈黙で返す他無かった・・・向こうもそれ以上は話そうとはしない。そのまま目的地に向かって足を進める・・・その後ろに続きながら、キョウスケはリスク覚悟で情報を得るべきと考え、大人しく彼の後に続いた。彼の言葉から察するに、自分達の仲間は恐らく人質として囚われている・・・下手に行動を起こせば危険なのは彼らだけでは無いのだ。暫くすると、男が急にエレベーターの前で立ち止まる。すると何やらインカムの様なもので誰かと連絡をとっている様だ。何を話しているのかは聞こえないが、相手の目線は此方を向いたままで、こちらの動きを警戒しているのが良く解った。話を終えたところで兵士はキョウスケ達に受けた指示を伝える。「ここから先は貴様らだけで行って貰う」「何故だ?」「貴様らは指示に従えば良い・・・この先は一本道だ。とんでもない方向音痴で無い限り迷う心配は無い」そう言われるままにエレベーターに乗せられる二人。エレベーターはB19と書かれたフロアで停止した。ドアが開くと、二人はゆっくりと足を進める・・・この先は一本道だと言われたが、用心するに越した事は無い。暫く歩くと、通路の突き当たりと思われる場所に一人の女性が立っていた・・・「やっと来たわね」「誰だ?」「・・・そうね、アンタ達にとって救いの神となるか、絶望に叩き落とす悪魔となるか・・・それはアンタ達次第と言ったところかしら?」「・・・」いきなり現れた女性は、いきなりとんでもない事を言い出す。キョウスケ達は状況が整理できないまま戸惑っていた。それを見てかどうかは解らないが、目の前の女性はニヤニヤと笑みを浮かべている。どうやらこの状況を楽しんでいる様だ・・・暫くして、女が口を開く。「ま、良いわ。入りなさい」「・・・」「随分と警戒されてるみたいね・・・安心しなさい、別に捕って食おうなんて考えちゃいないわ」そう言うと女は部屋の中へと入って行く。彼等にとっては現状が分からない以上、彼女の指示に従う他無かった。意を決した二人は、ゆっくりと部屋の中へ入る・・・二人が連れてこられた場所は執務室のような場所。正面には大きな机と乱雑に積まれた書類の束、見ているだけで目の前の人物がこの基地内の重役だと想像できる。「先ずは自己紹介からかしらね。アタシの名前は香月 夕呼、この横浜基地の副司令よ」「自分は・・・『ストップ』」「アンタ達二人の名前は聞いてるから別に言わなくてもいいわ」彼女のマイペースっぷりに二人は何も言えない・・・「さて、それじゃあ話を聞かせて貰おうかしら?」「・・・既に取調官から聞いているのでは?そもそも、何故俺達をこのような場所に?」「質問してるのはこっちよ・・・まあ、いいわ」そう言うと夕呼は説明を始める。「妙な事を口走る正体不明の人物が数名、そして出所どころか未確認の技術を使った怪しげな機体が複数収容された。こんな面白そうな事下っ端の人間にやらせるには惜しい尋問じゃなくて?」そう言うと夕呼はニヤリと笑う。「で、どっちが事情を話してくれるのかしら?アタシもそれほど暇じゃないのよ」暫く時間をおいてキョウスケが口を開く・・・「・・・俺から話そう・・・」そう言うと、キョウスケは今まで起った出来事を話し始める。自分達の素性、任務の為の作戦行動中に遭遇したアンノウンの事、それからその直後に起こった重力異常と施設の爆発事故。「成る程・・・大体の話は解ったわ。つまり、爆発事故を切り抜けて、気付いたらあの場所に居た・・・そう言う事ね?」「そうだ」「嘘って断定できない証拠もあるしね」夕呼が言う証拠とはキョウスケ達の機体である。明らかに違う技術が使われたその機体は証拠としては十分であった。「少し待っていて貰えるかしら?ああ、ちなみにこの部屋はアンタ達が入った時点でロックしてあるわ。逃げようとしても無駄よ・・・」そう言い残すと夕呼は部屋を出る。「どう思うエクセレン?」「どうって?」「あの女は何かを知っていそうな感じだった・・・少なくとも俺達の話を聞いて、あまり驚くような素振りを見せていない」「確かにそうだけど・・・」そう言うと再び部屋は沈黙に包まれた・・・夕呼が向かったのは隣室。そこには武と社 霞が居た。「白銀、あの二人の話を聞いて何か思い出せた?」「いえ・・・と言うよりも、俺の記憶の中には連邦軍とかパーソナルトルーパーでしたっけ?そんなロボットなんかも存在してません・・・話を聞く限りでは、俺の記憶にある世界とは違う世界から来たんだと思います・・・」「社、あの二人の言っている事は本当?」「・・・はい・・・少なくともあの二人は嘘を付いている様には思えません・・・」「と言う事は、別世界からの来客第二号って事ね」「・・・何か俺の時に比べて随分とあっさり信じますね先生・・・」武は不満を隠すことなく口に出す。すると夕呼は、相変わらずの口調で返す。「そりゃアンタの時と違って確たる証拠があるからね。どう見てもアタシ達の世界とは違った技術が使われた物を見せられちゃ疑いようがないわ・・・」「これですか?」武が示したのはPTの写真だ。様々な角度で撮られた概観はもとより、破損部分の拡大写真、操縦席の内部構造、パイロットが装備していた物・・・殆ど資料となりそうなものは全て撮られていた。無論、許可など得ていない。アルトとヴァイスに関しては、機体の方にロックを掛けられている。しかし、他の機体にまでは手が回っていない・・・だが夕呼は、データ解析等は行わせていなかった。理由は簡単である。ヘタに手が出せないのだ・・・機体側にどの様なトラップが仕掛けられているか分からない。機体を格納庫へ搬入する際に一応は爆発物の有無はチェックしている。だが、自分達の知る技術とは違う物が使われている以上、常に危険性は付き纏う。そう言った点から、現時点では目に見える範囲のみの解析だけを行っているのだ。「まだ全ての解析が終了した訳じゃないけどね・・・関節、装甲材・・・どれも見たこと無いものばかりだわ。極めつけは、この白い奴と赤い奴よ・・・白い方は部分的に機械が使われているけど、動力源は不明・・・更には装甲材質は一種の生物の様でもある。赤いのに至っては、殆ど生物に近いわね・・・こんな物を見せられちゃ信じるしかないでしょ?」「確かにそうですね。戦術機とも違うようですし・・・」「・・・ここでこうやって話していても仕方がないわ。アンタの事も紹介したいから、あの異邦人さん達に状況を説明に行くわよ」「解りました」しばらくして夕呼が戻って来た。その傍らには一人の青年を連れている。『・・・誰だ?』キョウスケが疑問に思っていると夕呼の口が開く。「グダグダ話すのは好きじゃないから結論だけ言うわね。この世界はアンタ達が居た世界じゃないわ。アンタ達はこの世界とは違う世界、並行世界とでも言いましょうか・・・そこから来たって事になるわ」「・・・」「あら、あんまり驚いていないようね・・・?」「薄々は感じていた・・・ひょっとしてそうでは無いかと・・・」「それに、私達の居た世界でも事例が無い訳じゃ無いしねぇ・・・」「理解が早くて助かるわ・・・一つ聞いていいかしら?」「どうぞ」「今、アンタ達は事例がない訳じゃ無いって言ったわよね?それってどう言う意味?」「私達の世界では過去に何件かそう言う事例が起こってるのよ・・・意図的に転移してきた人物が何人かいるって事」エクセレンは先の大戦でのシャドウミラー隊やデュナミス一派の事を例にあげる。「なるほどね・・・」「こちらからも質問よろしいかしら?」「何かしら?」「そっちの男の子は何方?少なくとも私達の知り合いじゃ無さそうだけど・・・?」「ああ、コレ?」「・・・先生、コレは無いんじゃないですか?」「この子は白銀 武・・・アンタ達と同類よ」「うわぁ、スルーですか・・・しかもアッサリばらしちゃってるし・・・」「だったら自分で自己紹介しなさいな」「・・・解りましたよ。俺は白銀 武って言います。なんて言うか・・・俺も前にこことは違う世界から飛ばされてきた経験があるんですよ・・・」彼は過去に二度、この世界に飛ばされて来たと言う事をあえて言わなかった。今まで起った事と違いすぎる為に、下手な事は言わない方が得策だと思ったのだ。「なるほどねぇ・・・じゃ、私達お仲間って事ね。ヨロシク~」「よろしくお願いします」「あ、自己紹介がまだだったわね。私はエクセレン・ブロウニング、で、こっちでダンマリ決め込んじゃってるのは『キョウスケ・ナンブだ』・・・ってもうっキョウスケ、もう少し愛想良くしなさいよ・・・」エクセレンは溜め息交じりに言う。そんなエクセレンを横目にキョウスケが口を開く。「別にダンマリを決め込んで居た訳じゃ無い・・・白銀と言ったか?」「あ、タケルで良いですよ」「じゃあ、タケル・・・先程の君の話を聞く限りでは、君は飛ばされて来た経験が有ると言った・・・」「・・・はい・・・」「少なくともそういう物言いをするという事は、何度も経験しているという風に聞こえたんだが・・・」武はハッとした・・・改めて自分の言い方が不味かった事に気付く。どう説明するべきか悩んでいると夕呼が割って入って来た。「なかなか鋭いわね・・・そうよ、この子はこれで三度の転移を経験している。ま、今回は記憶の転移だけだけどね」「ちょ、先生!!良いんですか?」「何がよ?本当の事だから仕方ないでしょう・・・それに下手な説明をした自分自身のミスでしょ?」武は言い返す事が出来なかった・・・確かに、自分の言い方が不味かったのは認めざるを得ない。しかし、下手な事を言ってしまって未来が変わってしまったりしたらそっちの方が問題だ。どうしたものかと考えている間に夕呼はどんどん話を進めて行っている。「まあ、白銀の事に関しては追々説明していくとして、この世界の事、そしてこれから起こりえる事を話すわ」武はもう任せるしか無いと思い、それ以上は何も言わないようにした。オルタネイティヴ計画・・・人類の英知の全てを束ねた対BETA戦略計画。その計画の最終形・・・オルタネイティヴⅤ・・・地球を放棄し、人類を未知なる惑星に移住させるという物。そして、この計画は一部の選ばれた人間のみを移住可能な他の惑星へ逃がし、それ以外の人類は死を待つしか無いというものだった。武はそんな世界の終焉から再び、世界を渡る事となる。そこは時間の巻き戻った世界・・・先に待つ終末を知っている武にそれを甘んじて受ける事は出来なかった。目的はオルタネイティヴⅤの阻止・・・そして救う事の出来なかった人類を救う事。その為に必要なのは、以前の世界では失敗に終った第四計画であるオルタネイティヴⅣを完遂させる事。その為に武は一人未来を知る者として、再び平穏な地球を取り戻す為に戦う事を決意し、紆余曲折を経て計画を成功させた後、再び元居た世界へと帰った筈であった。・・・しかし・・・武は再びこの世界に戻って来た・・・正確には以前の世界での記憶だけが・・・そして、何が原因なのかを追求する為に、今後どうするべきなのかを話していた矢先に起こった今回の転移事件。異世界からの新たなる来訪者が現れた時、物語の歯車は再び回りだそうとしていた・・・あとがき第2話です。武達とキョウスケ達の初顔合わせとなっております。やはり小説って難しいですね・・・相変わらずの駄文ですが、感想の方お待ちしております。