Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION第34話 吹き荒れる熱風、疾風の如く・・・某所・・・「そうか、伊豆基地はキョウスケ達の捜索を打ち切ったか・・・」何処かの洋館の一室を思わせる場所で一人の男が軍のキョウスケ達に対しての処遇を嘆いていた―――彼にその事を伝えた人物は、ただ短く『ああ』とだけ相槌を打つ。「それで、カイ少佐はなんと?」「少佐の方でも何かしらの手は打って見るとの事だった。恐らくあの人のことだ、単独でも動くつもりだろうな・・・」「あり得ん話では無いだろうな・・・レーツェル、お前の方はどうだった?」「ルスランの話しでは、その後軍内部やそれに関する施設などでの行方不明者は出ていないという事だ。尤も一般人までとなると事件や事故なども含まれる為に一概には言えんという事だが・・・」軍がキョウスケ達の捜索を打ち切ってから数日、元教導隊の面々は彼らが行方不明となった直後から独自に捜索を行っていたのである。元々ゼンガーやレーツェル達と言ったクロガネのクルーは、彼らの影となって活動している為、軍などに入ってこない情報なども手に入れることが出来る。流石に人海戦術といった類の事は無理であるが、裏社会に生きる者達はそれぞれが独自のルートでの情報を持っている為、こういったケースに置いては有利なのである。「ギリアム、お前の意見を聞かせて欲しい」室内の空気が重くなる中、口を開いたのはゼンガーだった。「・・・私の考えでは、恐らくキョウスケ中尉達はどこか別の世界へと転移した可能性が高い。情報が少ないうえに根拠と言える物が存在している訳では無いのだがな」「そうか・・・実はアズマ博士もお前と同じ事を仰っていた。コンパチカイザーが消失する直前、次元の歪みが計測されたそうだ。そして、格納庫内には僅かではあるがこの世界には無い未知のエネルギーが残留していたらしい」「未知のエネルギー?」「重力波に似た物だが、現在これと同じ様な物質は発見されてはいないとの事だった。恐らく時限の壁を越える為のゲートの様な物が開かれた際にこちらの世界に流れ出てきた物ではないかと言うことだ」「なるほどな・・・次元跳躍に関する事に関しては、専門家である博士の意見を参考にすべきだろう。今の話を聞いてキョウスケ中尉達は異世界に転移した可能性が高いと判断しても良いかもしれん」自身も何度かの転移を経験している事とアズマ博士の見解から、爆発事故が原因となってキョウスケ達が異世界に飛ばされたであろう可能性がかなり濃厚な線になってきた。実際、彼らは異世界へと飛ばされ、BETAと呼ばれる敵と戦う中に居る。そんな事を知らない彼らが独自調査の結果、ここまでの場所に辿り着いた事は素直に驚くべきことだろう。「問題はどうやって彼らの居場所を突き止めるか・・・と言うことなんだが」既に彼らはキョウスケ達が異世界へと飛ばされたという考えで話を進めている。あくまで可能性でしかないのだが、彼ら自身はキョウスケ達が死んだと誰一人考えていなかった。そして、その可能性を信じて行動に移すことにしたのである。だが、問題はギリアムの言ったように『どうやって彼らの居場所を見つけるか』、という点だ。現状ではこちら側に次元転移を可能とするシステムは存在しない。システムXNが存在していればそれを利用して彼らを捜索する事も可能だったかもしれないが、無い物強請りをしていても仕方が無い。「・・・その件に関してだが、一度テスラ研やマオ社に相談してみてはどうだろうか?」「そうだな、我々だけで話し合っていても拉致が明かん」「では私がカイ少佐と共にマオ社へ赴くとしよう。丁度RVと改型のオーバーホールが終わる頃合だ。機体の受領と言う名目ならばそこでカイ少佐と合流しても軍に怪しまれる事も無いと思う」「そうか、ではテスラ研へは我々が行くとしよう。ダイゼンガーとトロンベの調整も行わねばならんしな」「了解した。それでは私はこの件をカイ少佐に報告し、マオ社へ向かう事にする。何か新しい情報が入り次第連絡をくれ」「分かった」こうして旧特殊戦技教導隊の面々によるキョウスケ達の捜索が開始されたのである―――・・・シャドウミラー前線基地・・・室内にはけたたましく異常を知らせるアラートが鳴り響いていた―――「一体何事だ!」「基地警備用のオートマトンが破壊活動を行っている模様」首領と思われる男の問いに対し、部下の一人が機械的な口調でそれに答える。「何だと・・・原因はなんだ?」「システムの一部にハッキングの形跡アリ。何者かによって制御システムの一部が書き換えられた事が原因と思われます」「クッ、アクセルめ・・・やってくれるではないか。早急にオートマトンの制御を取り戻せ。W12(ダブリュー・ワン・ツー)、貴様は量産型のナンバーズを率いて奴を探し出し、何としても捕まえろ!!」「了解しました」男の命令を受けた彼女は、即座に部隊を編成しアクセル捜索任務に当たる事にした。その直後、オペレーターの口から新たな情報が発せられる。「オートマトンの破壊活動に便乗し、捕虜3名が脱走した模様」「アクセルの仕業か?」「独房周辺にはナンバーズ以外の人影は見当たりません。扉のロックは内部から解除された様子です」「フム・・・その3名に関しては放っておいても構わん。どうせ袋の鼠だからな・・・アクセルの捕縛とシステムの修復を最優先事項とする」「了解」システムの書き換え等といった芸当は、元々この部隊に所属していたアクセルならば容易い事だろう。そして、恐らく彼の元素性を考えれば、その時に基地内部の構造なども把握している筈だと男は考えたのである。となると、この施設内で研究している物に関しての情報も彼の手に渡ってしまった可能性が高い。彼の手によってここの機密が洩れてしまうという事は、男にとっては最悪の事態に発展する。現状で武達を放って置いても害は無いと判断したのは、彼らの能力をアクセルと比べて過小評価した事が主な理由である。そして、是が非でも『アクセル・アルマー』と言う人間を支配下に置きたいというその考えが、後に彼の首を絞める結果になろうとはこのとき彼自身も気付いてはいなかったのだった―――「格納庫はもうすぐニャ」薄暗い通路をクロに先導される形で武達は進んでいる。何かしらの目的があって格納庫を目指しているのだろうと武は考えてはいるものの、その理由を知らされないまま先へ進み続ける事に対して徐々に不安がこみ上げてくるのが分かっていた。「なあマサキ、格納庫に何があるんだ?脱出するための機体でも奪うのかよ?」「いや、俺達が捕まった時に俺の機体も奴らに奪われちまったんだ。そいつを取り戻すのさ」「なるほど・・・」理由を聞いた事により、多少の安堵感に見舞われるものの今のところ状況は不利と言えるだろう。三人と一匹は先程から格納庫への道を走り続けている。偶然かどうかは分からないが、これまで一度も敵兵と遭遇していないのは不幸中の幸いだ。武器も持っていない状況での敵との遭遇は最悪のケース以外の何物でもないのである。「しかし妙なものだねぇ・・・これだけ走り続けているというのに敵兵と一向に遭遇する気配が無い。クロちゃん、ひょっとして君は敵の巡回ルートを知っているのかね?」「流石にそこまで調べている余裕はニャかったわ。敵の気配がしたら身を隠してやり過ごす位しか考えていニャかったもの」「だとすると奇妙な偶然も有ったものだねぇ」鎧衣の口にした疑問も尤もである。いくら基地内部の騒ぎに便乗しているとはいえ、捕虜の脱走に気付かないほど敵も間抜けでは無いだろう。そちらの方がいかに重要であったとしても、こちら側に人員を割く事が出来ない等と言う事は無いはずなのである。「ストップッ!!」そのような事を考えながら走っていると、唐突にクロが皆に対して制止を呼びかける。「どうしたクロ?」「シッ!・・・ダメだニャ、あの扉の向こうが格納庫ニャんだけど、敵兵が二人も配備されてるニャ」突き当りを曲がった先が格納庫へと続く扉だ。あれを潜り抜ければ脱出まで後一歩という場面に来て、遂に敵兵と遭遇してしまったのである。幸いな事に相手はこちらに気付いていない様だが、それも時間の問題だろう。もたもたしていれば更に見張りが増えるかもしれない。そうなってしまえば脱出は更に困難になってしまうのだ。「クッ、格納庫は直ぐそこだって言うのに・・・なあクロ、君はどうやって牢屋まで来たんだ?」「この上に排気用のダクトが流れているニョよ。私はそれを通ってきたんだけど・・・」「じゃあ俺達もそこを通れば良いじゃないか?」「それが出来たら苦労しニャいわよ。至る所に赤外線のセンサーが設置されてて人が通れる隙間なんてニャいもの」「ネコといった小柄なクロちゃんだからこそ出来た芸当という訳だね・・・さて、どうしたものか・・・」「ウダウダ考えてても仕方ねぇ!正面突破で行くっきゃねえだろ!」「ちょ、マサキ、それはいくらなんでも無謀すぎるぞ」「そうよ、相手は銃を持って武装してるニョよ?」「だったらどうしろってんだ!?」『やれやれ・・・貴様らはここが敵地の真っ只中だという事を忘れてないか?』言い争う彼らの背後から聞こえてくる声―――その時誰もが敵に見つかったと思っていた。武は恐る恐る後ろを振り返ってみると、そこに居たのは意外な人物だったのである。「ア、アクセル中尉!?な、何で中尉がここに?」彼が驚くのも無理は無いだろう。この場に居る筈の無い人物が目の前に居るのだ。これで驚かない者は余程肝が据わっていると言っても過言では無いと言える。「それはこっちの台詞だ・・・と言いたい所だが、奴らに招待されて、な。あまりにもツマらん話だったんでこれから帰る所だ」ヤレヤレと呆れた表情で彼は答えていた。「アクセル、まさかお前までこっちに来てるとはな」そして彼は一つため息をつくとこう言い放つ―――「酷い方向音痴だと聞いてはいたが、次元の壁をもブチ破って迷子になったか・・・ここまで来るとあまり笑えん話だな、マサキ・アンドー」「なんだと!?てめぇケンカ売ってんのか?」「スト~ップ!二人ともケンカは止めるニャ」「うむ、クロちゃんの言うとおりだねぇ。今はまず、あそこに陣取っている彼らを何とかしないと」「それなら問題は無い、これがな・・・来たか」彼がそういった直後、武達の背後に1機のオートマトンが現れる。そしてアクセルは、手にしていた端末をそれに接続し、なにやらプログラムを施している様だ。「中尉、一体何をやってるんですか?」「まあ見ていろ。これからコイツを奴らに向けて突っ込ませて道を作る」そう彼が言った直後、目の前のオートマトンは徐々に加速し、扉の方へ向けて進み始める。扉を警護していた敵兵は、始めは巡回中のオートマトンであろうと考えていたのだが、それは速度を緩めることなく彼らの元へと進んで行く―――兵士は暴走している機体の一つだと気付き、徐に手に持っていたマシンガンを乱射するものの、オートマトンはその足を止める事を止めない。破壊は無理だと判断した敵兵は、即座にその場から飛びのき衝突を回避する。そしてそれはそのまま勢いよく扉へと突っ込んだと同時に沈黙したかに見えたのだが―――「伏せろっ!!」アクセルがそう言った直後、通路上に響き渡る爆発音。扉にめり込んでいたオートマトンが勢いよく爆発したのである。無論、その爆発に扉を警護していた兵士達は巻き込まれたのは言うまでも無い。「これで道は開けた、な・・・どうしたお前達?」「どうしたもこうしたもあるかっ!!こんなに派手に動いちまったら俺達がここに居るのがバレバレじゃねえかっ!!」「それで?」「それで、って中尉・・・」「どうせ敵にはバレている。だったら派手に暴れまわった方が脱出もしやすくなると思うんだが、な」「フム・・・なるほど、確かに彼の言う通りかもしれないね」『「納得するなッ!!」』「そんニャ事より、早く行かニャいと敵が来ると思うんだけど・・・」「おお、クロちゃんの言うとおりだ。ここまで来て敵に捕まってしまっては意味が無い。さっさと行くとしよう」『「好きにしてくれ・・・」』鎧衣の相変わらずのマイペースッぷりに項垂れつつも、彼らは再び格納庫へと向かう事にした。急いで破壊された扉を潜ると、彼らの目には見た事も無い機体が数機飛び込んで来る。中でも目を引くのは西洋の甲冑を着込んだような機体だ。その中に在る機体の中でも群を抜いて異質な存在―――『風の魔装機神・サイバスター』風の精霊サイフィスと契約した風の魔装機神。魔装機神の中では最後に完成し、最後に起動した機体であり、最もバランスに優れた機体である。また比類無き潜在能力を持つと言われており、風の精霊の力により機動性は凄まじく、神鳥ディシュナス(龍と隼を掛け合わせた姿をしている)を模したサイバードという巡航形態に変形できる他、全魔装機の中で、唯一単独でラ・ギアスと地上世界のゲートを作り出すことのできる機体である。実を言うと、マサキがこの世界にやってきた理由はここにあった。彼は地上での仕事が一段落した為、一度ラ・ギアスへと帰還しようとゲートを開いたのである。ところがゲートを潜り抜けた先は地上、再びゲートを開こうとするものの、一向にゲートが開かれる気配が無い。おかしいと思った彼は、地上界の仲間と合流すべく日本を目指していたのだが、運悪くシャドウミラーの部隊と遭遇してしまッたのである。そして、そのまま戦闘に突入してしまい、彼自身のプラーナも尽きてしまった事もありサイバスター共々捕獲されてしまったのだった―――「敵は居ないみたいだな・・・よしっ!」一足先に自分の機体へと走り出したマサキは、見慣れた愛機であるサイバスターの元へと近づいて行く。『マサキ、遅いニャ』コックピット内で待機していた彼のもう一人の使い魔であるシロは、到着の遅れた彼を攻めるような口ぶりをしているものの無事だった事に安堵していた。「悪い・・・シロ、サイバスターはどうだ?」『問題無いニャ』「よし、シロ!コックピットへ上げてくれ!」『了解』機体に搭乗したマサキは、コンソールを操作し機体の状況を改めてチェックする。その頃、武達はというと―――「こ、この機体は・・・特機!?」武の目の前には見た事もない機体がハンガーに固定されていた。それは赤銅色を基調としており、外見的なイメージからは渋い印象が受け取れる。中でも目を引くのが背部にあるドリル状の物体だ。それに気を取られている彼の背後からアクセルが話しかける。「ほう、参式か・・・丁度良い。白銀!!」「は、はい!?」「確かシミュレーターでのPTの操縦経験はあったな?」「経験って言ってもキョウスケ大尉達に1、2回触らせてもらった程度ですよ」「動かせれば問題は無い。貴様はこの機体でその男と共に脱出しろ」「ちょ、ちょっと待ってくださいよアクセル中尉!!戦術機ならまだしも特機の操縦なんて無理ですって・・・どうせ奪って逃げるならこの機体より戦術機のほうが良くないですか?」このとき武は、とんでもない事をアクセルが口にしたと思っていた。確かに以前、キョウスケとの模擬戦の後にPTと戦術機の違いをその身で体験する為に機体のシミュレーターモードを使わせてもらった事があった。しかし、規格の違いもあって動かす事は出来ても戦闘を行う事は無理だったのである。そんな状態である以上、彼ならまだしも自分にこの機体を満足に動かせるとは到底思えないのだ。反論してしまうのも無理はないだろう。だが、そんな彼の言い分など聞く耳持たないといった様子でアクセルは話を続ける―――「この機体は俺達の世界で開発された対異星人用の人型起動兵器だ。こんな物を奴らが保有していると分かった以上、見過ごすわけにはいかん、これがな。後々の事を考えて俺達で有効に使わせてもらおうと言うわけだ」「じゃあ、中尉がこれに乗って下さいよ。俺は奥のF-23Aで脱出しますから」「生憎だが、俺はこっちの機体を使う。それにグルンガストシリーズより俺にはアサルト・ドラグーンの方が扱いが慣れているんでな」アクセルが指差した方には、戦術機と同サイズ程の機体が固定されていた。『ASK-AD02・アシュセイヴァー』指揮官用機として製造された強襲用人型機動兵器。搭乗者の脳波パターンを解析・記録した後、機体側からのフィードバックによって半強制的に同調させるシステムを搭載しており、更に戦況分析や戦闘パターンを搭乗者の思考にフィードバックするD.P.S(ダイレクト・プロジェクション・システム)により操縦をサポートさせる事で比較的誰にでも操縦が可能な機体である。むしろ参式よりもこちらの方が武に適していると思うのだが、アクセルにはこの機体の危険性を考えて彼に参式に乗るよう指示を出したのである。この機体はD.P.Sによるサポートが有るのだが、解析しやすい脳波パターン、更にはパイロットが強靭な意志力を持たなければ適応できず、これらの要求に応えられない場合はシステムがパイロットの精神をデバイスとして取り込んでしまう危険性があるのだ。そしてこの機体は、ソウルゲインに乗る前に愛機としていた機体でもある。脱出の際には間違いなく戦闘になるだろうと彼は予測していた。そのような状況にあって満足に動けない者が何人も居ては脱出は不可能になる。そういった点から彼は、堅牢な装甲を持つ参式に武を搭乗させる事で脱出を優先させ、追撃してくる敵をマサキと一手に引き受けようと考えたのである。その事を武に伝えると、彼は渋々ながらもそれを了承する事にしたのであった。「鎧衣課長、そちらは問題ありませんか?」『うむ・・・しかし、本当に強化装備無しで大丈夫なのかね?』「機体そのものにGキャンセラーが搭載されているそうですから大丈夫だと思います」『では操縦は君に一任するとしよう。やってくれたまえ』「了解・・・マサキ、アクセル中尉、そっちはどうですか?」『俺の方は問題ないぜ』『こっちはもう少し時間が掛かる・・・少々面白いものを見つけたんで、な』「面白いもの?」『なんだか知らねぇけど早くしろよ。グズグズしてたら敵が来ちまう・・・っ!!』マサキがそういった直後、唐突にアシュセイバーの背後に居た機体のカメラアイが点灯する。彼はいつの間に敵が乗り込んだのかと焦ると共に急いで臨戦態勢を整えようとするのだが―――『安心しろ、後ろの3機は敵じゃない・・・これがさっき言った面白いものだ』「どういう事です中尉?」『マリオネット・システム、以前俺が居た世界で研究中だったシロモノだ』『マリオネット・システム』その名が示す通り、AI制御の無人機を操るシステムである。AI制御の無人機は様々な戦闘データを基に作られた戦闘アルゴリズムが組み込まれており、完全な自立行動がとれる他、有人機と違い、人体が耐え得る以上の高G機動が可能であり、精密無比な攻撃力と併せ運用次第では強力な兵器となる。しかし、従来機以上の機動が可能となる反面、次々と状況が変化する戦場においてはそれらに対処できなくなる事がしばしばあった。それを打開する為に開発されたのがこのマリオネット・システムなのである。親機である機体に搭載された管制システムによって集中制御され、優れた戦術センスを持つ者が操作する事によって戦況に応じて細かな指示をだす事で柔軟に対応させる事を目的として開発されたのだが、機械的な動きが読まれやすいといった弱点も持ち合わせており、量産型Wナンバーズの量産態勢が整った事も相俟って研究途中で開発は一時中断されたのであった。『ゲシュペンストMk-Ⅱに・・・その白い機体はヴァイスリッターか?』『こいつはゲシュペンストMk-Ⅳ・・・俺の居た世界でプランだけ存在していた機体だ。こいつもシステムの支配下に置けるようなのでな。手数が多いに越した事は無いだろう?・・・これでこちらも準備OKだ。いつでも発進できる』「了解、それじゃあ格納庫の壁をブチ破ります!!」『やれるのか白銀?』「多分大丈夫です・・・行きますよ!!」ゆっくりと武の乗る参式が隔壁へと足を進める―――彼が自分から隔壁の破壊を言い出した事には理由があったのだ。使い慣れない機体を用いて脱出を謀らねばならない以上、少しでも機体に慣れておく必要がある。更に言うならば戦闘になった際、何も出来なければ良い的になってしまうのは明らかだ。武が念動力者であったならば機体に装備された念動フィールドが使えた可能性はあるかもしれないが、図体がデカイ分いくら堅牢な装甲を持つ参式とはいえ、集中砲火を浴びてしまえば一溜まりも無い可能性が高い。短い時間で戦術機と同じく自分の手足のように動かす事は無理であっても、動き回れる位にはなっておきたいと考えた結果からこの様な事を言い出したのだった。『ところでタケル、お前どうやって隔壁を破るつもりなんだ?』「え・・・それはこのまま拳でぶん殴ろうかと思ってたんだけど」その発言に対し、モニター越しのマサキは呆れていたのは言うまでも無い。アクセルに至っては溜息をついている。「な、だって仕方ないじゃないか!!動かし方は多少とはいえ分かるけど、どうやって操作すれば兵装が使えるのかとか分からないし・・・」『呆れた奴だ・・・時間が無いから簡潔にレクチャーしてやる。基本的に特機の兵装は音声認識によるマルチ入力だ、これがな。戦術機の様に兵装を自分で選択する必要は無い・・・兵装のチェックは逃げながら自分で確認しろ』『という訳だ。お前は機体の制御だけ考えてれば良いってことだな。隔壁は俺がブチ破る』「・・・了解」『じゃ、行くぜ!!』参式の前に出たマサキは、二人に少し下がるように伝えると隔壁の前でいつの間にか剣を身構え、それを地面へと突き立てる―――『コール・フェニックス!』彼がそう叫んだ直後、サイバスターを中心に魔方陣が展開される。展開されたそれの中から炎を纏った不死鳥の様な物が飛び出すと同時に隔壁へ向けて跳躍を開始するマサキとサイバスター。『いっけぇぇっ!!』そのままサイバード形態へと変形し、更に加速するマサキ―――『アカシック・バスターッ!!』炎を纏った不死鳥と同化し、青白い炎の鳥へと変貌したサイバスターは、そのまま更に加速し一気に隔壁へと距離を詰める。『おりゃぁあああっ!!』次の瞬間、格納庫を塞いでいた隔壁は爆音と共に崩壊し、その周囲には青白い炎だけが残っていた―――「す、スゲェ・・・」『何を呆けている・・・俺達も行くぞ』「り、了解!!」こうして彼らの脱出劇が始まった―――しかし、このまま易々と彼らを逃がすシャドウミラーではなかったのである―――あとがき皆様、お待たせしました。第34話です。一ヶ月以上も間を空けてしまい、本当に申し訳ありませんでしたm(__)mさて、今回の冒頭で登場した教導隊の方々、待ちに待ってた方もいらっしゃると思います。今回は顔見せ程度の出演でしたが、今後間違いなく再登場する予定です。いつになるか・・・と言うことはまだ言えませんが、かなりオイシイ登場をさせる予定ですので楽しみにお待ち下さい。以前、掲示板に書かせて頂いたように武ちゃんには戦術機以外の機体に乗ってもらいました。何にするか散々迷った挙句、参式をチョイスしたのですがいかがでしょうか?ちなみに今後の彼の乗機になる予定はありません。今回限りの限定搭乗という形とさせていただきます。アシュセイヴァーもそうですが、ゲシュペンストMk-ⅡやMk-Ⅳの登場に関しては理由があります。これは追々明らかにする予定ですのでその時をお待ち下さい。ちなみにMk-Ⅳは無限のフロンティアに登場したアーベントをそのままPTサイズとして出したものと考えて頂ければと思います。サイバスターを含め、劇中での活躍は次回に持ち越させていただきますので楽しみにお待ちくださいませ。それでは感想お待ちしております^^