Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION第3話 イレギュラー「こんなところかしら・・・私の話はこれで終わりだけど、何か質問は?」これまでの出来事をおおよそ話し終えた夕呼に対し、エクセレンが率直な疑問をぶつける。「・・・えーっと、副司令さん?」「何かしら?」「今私達に話してくれた事って、ものす~っごく機密性の高い話だと思うんですけどぉ・・・」「ええ、そうよ」夕呼はあっさりと答える。暫くして今まで沈黙を続けていたキョウスケが口を開いた。「香月副司令・・・貴女は俺達に何をさせたい?この様な重要な話、おいそれと部外者に話して良い様なものでは無いハズだ・・・貴女は我々に何を求めようとしている?」キョウスケの問いは尤もな話である。夕呼が自分達にした話、オルタネイティヴ計画、武の転移、数度に亘る時間の逆行、更にはそれらの世界での記憶の維持・・・どれもこれもおいそれと他人に話して良い様なものでは無い。こんな事を話すという事は、必ずしも裏がある・・・キョウスケはそう考えていた。「察しが良くて助かるわ。アンタ達にお願いしたいのはね、この世界で下手に動かないで欲しいって事よ。本音を言うとね、私の監視下に居て貰いたいって事」『・・・やはりそう言う事か・・・』ここまでの情報を明らかにしたのだ、ここで断るような事をしてしまっては力付くにでもそうするつもりだろう・・・それ以前に、キョウスケ達には断る理由が見つからなかった。元の世界に帰るにしても方法がない。この世界で生きていくにしても情報が少なすぎる。ましてや、この世界はBETAと呼ばれる侵略者に襲われている。『ここは下手に動かずに情報収集の意味も含めて素直に従う方がよさそうだな・・・』キョウスケはそう頭の中で考えを纏めると、チラリとエクセレンの方に目をやる・・・無言で頷くエクセレン・・・「了解した」「助かるわ・・・私と白銀の目的の為にはある程度、世界は私達の知る通りに動いて欲しいわけよ。ところが今回は、アンタ達っていう不確定因子が紛れ込んだ・・・これは非常に良くない事だわ・・・例えばアンタ達の行動が発端となってオルタネイティヴⅤの発動が早まる可能性もある。もしもそうなってしまったら取り返しがつかなくなってしまう・・・それどころか、そうなってしまった先に何があるか今の私達じゃ見当もつかないわ・・・」キョウスケは、ふと武の方へ眼を向ける・・・そこには絶望した未来だけは迎えたくない・・・この世界を救いたいという意思が感じ取れた。『この少年は強い意志を持っている・・・少なくともあの眼はそういう眼だ・・・』キョウスケは心の中でそう呟くと、夕呼に対して自分達の要望を伝える。「貴女の監視下に居ろと言うのは解りました。しかし、我々にも条件があります」「アンタ達の要望次第だけど?」「先ずは、我々のこの基地内部での行動などを制限付きでも構いませんので許可して頂きたい。それから転移に関する情報が入り次第、包み隠さず教えて頂きたい。後、我々の使用している機体の情報を外部に漏らさないで貰えると助かります。軍事機密の塊ですし、そこから得られる情報が原因で何かしらのトラブルに巻き込まれる事だけは遠慮したい・・・」それを補足するようにエクセレンが付け加える。「後は衣食住の確保・・・と言ったところかしら?」「それだけ?」「今の所は・・・」「それ位ならお安い御用よ・・・と言っても、私としてもアンタ達に色々と協力して貰いたいし・・・」等価交換とはまさにこう言う事を言うのだろうなとキョウスケは思った。「具体的には?」「今、世界は滅亡の危機に瀕している・・・ぶっちゃけ少しでも戦力が欲しいってワケ。アンタ達は機動兵器のパイロットみたいだしね。それから、士官になればこの基地内でのある程度の自由は保障されるし、衣食住も確保できるわ」「・・・それに関しては一度仲間達と相談させて貰えませんか?流石に自分の一存で全てを決定する訳にはいきません。」「当然よね・・・、そろそろ来る頃だと思うけど・・・」夕呼がそう言い終えた時、執務室のインターホンが鳴る。『香月副司令、例の方々をお連れ致しました』「部屋へ通してくれる?」執務室のドアが開く音と共に見慣れた人影が入って来る。「キョウスケ中尉、良かった、無事だったんですね・・・」「ブリット、再会の挨拶は後回しだ・・・」「・・・はい」「・・・一体どうなっている、キョウスケ」「アクセル、俺達も先程説明を受けたところだ・・・これから順を追って説明する。みんなも聞いてくれ・・・」キョウスケは先ほどまで夕呼に説明された事を仲間達に話した。驚き戸惑う者・・・比較的あっさり受け入れる者・・・反応は様々だ・・・しかし、アクセル・アルマーとラミア・ラヴレスの二人に関しては驚いた様子も無く、落ち着いた反応を見せていた。「やはり、な・・・あの時の感覚、あれは俺達が向こうの世界から転移して来た時の感覚に似ていた」「はい・・・状況は違えど、あの感覚は間違いなく時限転移の感覚と似ていたと思ってみちゃったり・・・いや、思います」そして、夕呼からの提案を受けるかどうかの相談を持ちかけたキョウスケであったが、皆の反応は聞いてみるまでも無かった・・・「満場一致・・・そう受け取っても構わないかしら?」夕呼が問う。「少々、強引な手口ではあるが、な・・・しかし、それ以外に方法はあるまい?」「自分達には他に手段がありません。それに侵略者に襲われてると聞いて、黙って見てるなんてできませんよ」夕呼はアクセル、ブリットの話を聞きながら秘書官の持ってきたファイルに目を通していた。ざっと資料に目を通しただけであったが、そこに書かれた記述に面白い部分を発見すると思わず口に出す・・・「へぇ、なかなか興味深い資料ね・・・そこの赤髪のアンタと金髪のアンタ、それからそっちの女の子。ここに書かれた身体検査の結果だけど・・・」三人は何を言っているのか分からないと言った表情だ・・・「人体を構成している成分の約8割が不明・・・と書かれているわ・・・どう言う事かしら?説明してほしいんだけど」三人は黙り込んでいる・・・「別に変な意味じゃないわ。私も一応科学者の端くれだし・・・興味本位、と言ったところかしらね?」どうしたものかと悩んでいるアクセルとエクセレンを他所にアルフィミィが口を開く。「簡単な事ですの、アクセルとエクセレンは一度死んでしまってるんですの。それを私がペルゼインの力を使って蘇生したと言う訳ですの・・・ご理解頂けましたでしょうか?」「・・・なるほどね。死者を蘇生する事が可能な技術。この世界の科学者が聞いたら卒倒するような話ね。アンタ達の世界じゃそんな技術が発達しているの?」「そんな都合の良い技術は無い・・・そんな事が可能ならば、人類全てが不死者になってしまう。俺達が助かったのはそこのアルフィミィの気まぐれだ・・・これがな」「気まぐれとは酷い言われ様ですの・・・」アルフィミィがシュンとして肩を落とす・・・「そんな事は無いわアルフィミィちゃん・・・貴女のおかげで私はこうしてまたキョウスケと一緒の時間を過ごす事が出来るようになった。それに、アクセルだって口ではあんな風に言っているけど貴女に感謝している筈よ・・・」そう言われたアルフィミイは彼の方を見る。口ではああ言っているものの、その表情からは感謝をしているという様子が読み取れる。基本的に自ら礼を言うといった行動をあまりしない彼のその表情を見ただけで、アルフィミィには伝わったようだ。「それじゃ、そちらのお嬢ちゃんはどうなのかしら?」「私はエクセレンを元に創られた存在ですの・・・言うなればエクセレンのコピー、複製人間と言ったところですの」アルフィミィの表情が暗くなる・・・「前にも言った筈だ・・・お前はお前、自分の好きなように生きれば良い、とな」おもむろに口を開いたアクセルが彼女にそう告げる。「なかなか良い事言うじゃない、色男さん・・・そうよアルフィミィちゃん、貴女は貴女、私は私なんだから・・・ね?」「茶化すな、エクセレン・ブロウニング」「・・・御二人とも、ありがとうですの」そう言うとアルフィミィの表情が明るくなる。「・・・あまり聞いて良い話じゃ無かったようね」「そんな事ありませんの。私達の事を知って貰うには仕方のないことですので・・・それより、お話を進めて下さいですの」「そう?・・・じゃ、ちゃっちゃと進めちゃいましょうか。白銀っ」話の輪に入れずにボーっと眺めていた武は、いきなり自分の名前を呼ばれてハッとした。「は、はい・・・」「・・・何ボーっとしてんのよ・・・まあ、いいわ。ところでアンタはどうするつもり?」「どうするも何も、前と同じで先生にIDを貰って、それから207訓練部隊に配属じゃ無いんですか?」「・・・んー・・・そうねぇ、それもそうなんだけど・・・」「先生?」「ヨシッ、決めたわ。白銀、今回はアンタの207訓練部隊への配属は無し!」「はぁっ?ちょ、ちょっと待って下さいよ先生、そんなことしたら・・・」「いいから黙って話を聞きなさい。今更、訓練部隊に配属させても意味ないでしょ?訓練部隊で生活させるよりも私の指示通り動けるようにしておいた方が良いと思うのよ。今回は彼らの存在がイレギュラーになっている・・・もしも何かが起こったとしても、アンタが近くに居れば直ぐに対応できるでしょ?」夕呼の言う事は尤もだ・・・下手に武を訓練部隊に配属させるよりも、自分の近くに置いておき、何かが起これば即座に対応させた方が安全である。今回でのこの世界で起きている出来事はイレギュラーな出来事が多すぎる。言うなれば武は保険と言う事になる。「でも・・・あまり歴史を変えない方が良いって言ったのは先生じゃないですか?それに207訓練部隊の連中と接点がなければ、それこそ歴史が変わり過ぎます。下手をすればあいつ等にだって何が起こるか・・・」武の言い分も尤もだ。確かに武が207訓練部隊の面々と接触を図った事で、前回の世界でのオルタネイティヴⅣは成功したと言っても過言では無い。それ以上に苦楽を共にした彼女達と過ごす事が許されない事の方が武にとっては辛かったのである。「あーもうっ五月蠅いわねぇ!!解ったわよ。アンタには訓練部隊の特別教官をやって貰うわ。そうすれば彼女達との関係も築けるでしょ?」「お、俺が教官?・・・でも207訓練部隊には神宮司軍曹が居るじゃないですか?」「あー言えばこう言う・・・ったく、そうよ207訓練部隊にはまりもが居るわ。だからアンタは特別教官。基本的には、まりもに任せてアンタは手が空いた時にあの子たちの面倒を見る。これなら問題はないでしょ?」「でも、俺まだ任官されてませんよ?それにここの訓練部隊の教官は軍曹までだって・・・」「アタシを誰だと思ってるの?その程度の事アタシの手にかかればどうってことないわ」「しかしっ!」「五月蠅いっ!これはもう決定事項なのよ。アンタは本日只今を持ってアタシ直轄の特務大尉!・・・良いわね?」「特務大尉って、そんないきなり・・・」「前に言ってたじゃないの。アタシに認めて貰おうにも、計画をサポートしようにも訓練兵じゃ話にならない・・・同じ情報でも訓練兵が言うのと基地司令が言うのとでは、まるっきり重みが違う・・・とか言ってなかったっけ?」「・・・確かにそんな事言ったかも知れません」「じゃ、問題無いじゃない。と言う訳でアンタは少佐相当官の特務大尉って事で決定ね」「さ、更に凄い階級になってるじゃないですかっ!!特務大尉ってだけでも驚きなのに、少佐相当官って何ですかそれっ!!」「だってアンタには207訓練部隊の教官以外にも、A-01部隊の教官もやって貰うからよ?」「更にヴァルキリーズの教官までって・・・先生一体何考えてるんですか!?」「白銀・・・アンタ、自分の言った事には責任を持ちなさいよ?アタシに認めて貰って、更には計画のサポートもするんでしょ?認めるのはどうでも良いとして、サポートして貰うからにはアンタにもそれ相応の立場が必要になって来る・・・一訓練生では発言力なんて物は無いに等しいわ。ある程度の権限を持たせるのは別にアンタの為じゃない・・・全てはアタシの計画の為よっ!」「うわ、言い切ったよこの人・・・」「何か言ったかしら?あんまりグダグダ言ってるとこっちにも考えがあるわよ?」そう言った彼女の表情は、かつて武が幾度となく見せ付けられた顔だ。『や、ヤバい・・・あの顔はマジだ・・・しかも、何か恐ろしい事を考えてる時の顔だ・・・さっきから俺の第六感やら危険を知らせるセンサーが全力で反応してる・・・』彼の脳裏に様々な悪夢が浮かぶと同時に背筋に嫌な汗が流れる・・・「し~ろ~が~ね~」『ヤバいっ!マジでヤバい!ええいっ、こうなったらもう腹を括るしか無い。どうにでもなりやがれっ!!』「い、いえ何でもありませんっ!白銀 武、本日只今を持って香月 夕呼副司令直轄の特務大尉として粉骨砕身、全力でサポートさせて頂きますっ!」「あら、随分とまあ簡単に納得してくれたわね。それじゃ、そう言う事でヨロシク~」『やられた』・・・武は心の中でそう呟いた。初めからこの人はそのつもりだったのだ・・・先程の表情も演技だろう。毎回毎回そうだが、良い様に彼女の手のひらで転がされている・・・自分は一生この人には勝てないんじゃないだろうか?彼女の前では常に敗北と言う二文字が付いて離れない・・・武はそう思うしか無かった・・・「香月副司令、我々はどうすれば・・・?」漫才の様な会話を止める為にキョウスケが口を開く。「ああ、ごめんなさいね。一応アンタ達にも階級とIDを用意するわ」「一つ宜しいでしょうか?」「何かしら?」「自分達の機体は今何処に?」「安心しなさい。この基地でも一番安全で安心のおける場所に搬入させてあるから大丈夫よ」「機体の状態は?」「・・・それに関しては、アタシからは何とも言えないわ」「どう言う事でしょう?」「先ず初めに、黙って調査させて貰った事は謝るわ。目に見える範囲の調査結果だけど、現状では殆どの機体が大破状態に近い。中には比較的損傷の少ない機体もあるけど、修理しようにも使用されている技術が違い過ぎるのよ。戦術機のパーツが使えるかどうかはもっと大掛かりな解析が必要になるわ。その為には内部構造の調査なども必要になって来るし、アタシ達だけじゃかなりの時間を要するわね」「なるほど・・・」キョウスケは解っていた。転移直後にざっと見まわしただけだが、自分達の機体が受けたダメージは相当の物だと言う事が・・・中でもMk-Ⅱと弐式の損傷は酷い物だった・・・たった2機で仲間を守る為の楯となったのだ。ブリットやクスハが無事だったのは奇跡に近いと言っても過言では無い。これからどうすべきかを考えるキョウスケを他所に、夕呼は再び武に話しかける。「白銀、まりもには話を付けておいてあげるから、とりあえずアンタは207訓練部隊の所へ向かいなさい。IDやその他諸々は後でピアティフにでも届けさせるわ」「了解しました。それじゃ、行ってきます。キョウスケさん達もまた後で」「ああ、俺も君に色々と聞きたい事がある」そう言うと武は執務室を後にしようとしたが、ふと自分の服装について気付く。「先生」「何?」「服ですよ服、流石に大尉として出向くのに訓練兵と同じ恰好じゃ不味いでしょ?」「ああ、アンタが前に使ってた部屋あるでしょ?あそこ使えるようにしてあるから、そこで着替えて行きなさい・・・場所は覚えてるわよね?」「大丈夫です。それじゃ行ってきます」そう言うと武は、今度こそ執務室を後にした。彼が部屋を出た直後、夕呼は机の上にあるインカムでどこかに連絡を取り始める。恐らく、先程言っていた訓練部隊だろう。頃合いを見計らってキョウスケは自分達の機体を確認させて欲しい事を伝える。「そうね、下手に触ったりして爆発でもしたら困るし、一度見て貰いましょうか・・・」そう言うと夕呼は皆を引き連れて第90番格納庫へと向かう事にした。その頃武はと言うと、注意しながらも自分の部屋へと向かっていた。一応特務大尉と言う事になっているが、注意するに越した事は無い。『なんだかスニーキングミッションを得意とする某ゲームの主人公みたいだな・・・』武が心の中で呟いたとおり、その動きは彼に似ていた。と言っても、流石に段ボールを被ったりはしてはいないのだが・・・自分ではそう思っていないのか、第三者から見ればその動きは非常に怪しい。本人は注意しているつもりでも、その行動は不審者と見られてもおかしくない動きだった。通路の曲がり角で壁に張り付き、先を覗き込んで安全を確認してから進むなどと言う行為は、彼らしいと言えば彼らしいのだが・・・運良く誰にも見つからないまま自室に到着すると、国連軍の制服に着替えエレベーターへと向かう。1階フロアに着いた時、彼の眼に懐かしい顔が飛び込んできた。・・・神宮司まりも・・・元の世界、そして前の世界でも自分にとっては掛け替えの無い存在・・・自分にとっては記憶にあるだけの存在の筈なのに、気づけば彼の眼は涙が浮んでいた・・・「お待ちしておりました白銀大尉・・・どうかされましたか?」敬礼をし、様子がおかしい事に気づいたまりもが武に問う。武はハッとしながらも敬礼を返す。「すみません、まり、神宮司軍曹・・・こちらこそお待たせしました」「いえ、大尉」「では、案内の方よろしくお願いします」「ハッ・・・、あの大尉・・・よろしいでしょうか?」「なんですか?」「できれば敬語はお止め下さい・・・私の方が年上でしょうが、私の方が階級は下ですので・・・」武は懐かしさの余り『まりもちゃん』と呼んでしまいそうになった上に敬語で話しかけていた。前の世界では任官される前までは、まりもは自分の上官であり教官だった。気を付けているつもりでも、その癖が抜けきって無い為か想わず敬語で話してしまっていたのである。「すみま・・いや、すまない軍曹。実はあまり慣れていないのだ・・・」武は使いなれない言葉で返す。「いえ、こちらこそ下官に有るまじき発言をお許し下さい」「構いませ、っと構わん・・・では、案内を頼む」「ハッ、こちらです」そう言うとまりもは士官学校施設の方へと歩き出す。武もそれに続く形で歩き出した。その間、武はこれから再び会う事になる207訓練部隊の面々とどう接するかを考えていた。いや、正確には心が躍っていたと言う方が正しいであろう。あの時、桜花作戦において、自分を守り、そして先へ進める為、人類の未来を守る為に散って逝った彼女たち・・・もう会えないと思っていた彼女たちに今こうして再び会えるのだ・・・嬉しさの余り自然と顔が綻ぶのが自分でもよく分った。それに気づいたまりもが訪ねる・・・「大尉、どうかなさいましたか?」「え?」「いえ、随分と嬉しそうな顔をなさっていたもので・・・」「・・・いや、何でもないよ」「・・・そうですか、もうすぐ到着しますので・・・」そう言うとまりもはそのまま先を急いだ・・・見覚えのあるグランド・・・そして校舎・・・自分もここで訓練を受けていた事が随分と昔に感じられた。暫くすると自分達の方へ眼鏡をかけた少女が近づいてくる・・・『委員長・・・』武は心の中で呟く・・・再び委員長こと榊 千鶴に会えた事が嬉しかったのだ。千鶴はまりもと2,3会話をした後、大声で招集を掛ける。「207訓練部隊集合っ!!」召集の掛け声に釣られ、今までグランドにて訓練をしていた面々が集合する。そこには、再び会う事は出来ないであろうと思っていた懐かしい顔が揃っていた・・・自分でも自然と顔が綻ぶのが分かる。『たま・・・彩峰・・・そして・・・』そう心の中で呟きながら顔を見回す・・・次に瞑夜の顔を見ようと思ったその瞬間であった・・・「た、タケルっ!!・・・よもや再びそなたに会えようとは・・・うっうぅ・・・」武は一瞬何が何だか解らなかった・・・冥夜と目が合った瞬間、彼女はその顔に涙を浮かべながら武の胸に飛び込んできたのだ。突然の出来事に周囲の人間は呆然としていた・・・何が何だか分からない・・・それが武の率直な気持ちだ。戸惑いと驚きを隠せないまま、無情にも時間だけが流れて行くのであった・・・あとがき第3話です。相変わらず自分の才能の無さに落ち込んでおります・・・今回の話でタケルちゃんは少佐相当官の特務大尉に任命されました。初めは中尉位にしようかと思っていたんですが、色々と考えた末に少佐相当官の特務大尉に落ち着きました。これは後々の為に考えた結果です。キョウスケ達のPTに関しては、次のお話以降で更に詳しく書かせて頂くつもりです。上手く纏めて皆様のご期待に沿えるようにできれば良いのですが・・・(苦笑)駄文で申し訳ありませんが、ご感想の方お待ちしております。