Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION第46話 天元山での出会い(中編)『そっちの状況はどうだ?』天元山より離れた森林地帯。そこで二人の男が何やら通信機越しにやり取りを行っている。「ああ、機体各部に損傷とかの問題は無いみたいだ。それよりも近隣の基地への連絡はついたのかよ?」どうやら彼らは味方とはぐれたことで困惑している様子だ。『駄目だな……ここが日本だという事は間違い無さそうだが、確定するには情報が少なすぎる』「他の奴等は?そっちにも連絡はつかないのかよ?」『レーダーのレンジを最大にしているが、マーカーは確認できん。だが、何やら動体反応の様な物は検知できた』「さっきの怪獣みたいな奴等じゃ無いのか?」『いや、反応は生物と言うよりは機動兵器に近いものだ。サイズから言って恐らくPTかAMといったモノだろう』「なるほど、とりあえずそいつらが味方だったら何かしらの情報が得られるかもしれねえ。情報収集を兼ねて移動するとしようぜ」『了解だ。こちらは索敵に集中する。もし敵と遭遇した場合は頼むぞ』「任せとけって」二人は情報収集の為にその場を後にする事を決め、移動を開始する。一方、天元山周辺の207部隊はと言うと―――『―――そうか、一応事態は理解した。お前と冥夜は引き続きその婆さんの説得を続けてくれ』「了解……なあ、タケルさん」『どうしたアラド?』「俺には解んねえよ……確かに婆さんの言いたい事も一理ある。でもさ、死んじゃったらそれまでじゃないか」『……そうだな、お前の言うとおり死んじまったらそれまでだ』「だったら……っ!!」そこまで言いかけてアラドは何故か思い止まった。この先を口にしてしまえば、自分の意見をあの老婆に押し付けざるを得なくなってしまうからだ。『とりあえず、その婆さんはお前と冥夜に任せる……それとあまり良くない話になるんだが、火山活動の活性化が予想以上に早い速度で進行しているんだ。今直ぐにってワケじゃ無いけど、予定よりも時間は無いと思っていてくれ』「……解りました」『月並みな言葉しか言え無いけど、頑張れよアラド』「ハイ……」通信を終えたアラドはもう一度考えてみる事にした。しかし、一向に良い考えは浮かんでこない。「(あの婆さん、冥夜さんを見て土下座してたよな……冥夜さんの事はよく分からないけど、あんなのを見せられたらあの人が偉い人なんだってのは俺でも解る)」先程の光景を思い出しながら冥夜について考えるアラド。「(……冥夜さんが婆さんを説得してくれたら上手く行くかも知れないけど……『アラド、少し良いだろうか?』……冥夜さん?)あ、ハイ。何かあったんですか?」『……そなたの事だ、今回の任務で人々の私に対しての態度を見て困惑しているのではないかと思ってな』まるで自分の考えている事などお見通しだと言わんばかりの彼女の発言に驚くアラド。しかし、何故かその事を聞いてはいけないような気がした。喉元まで出掛かったその言葉を無理やり胸の内へとしまい込み、何事も無かったかのごとく振舞おうと決めて彼女に答える。「まあ、確かに驚かされる事ばっかですけど、別に気にして無いッスよ」『そうか……』モニター越しの冥夜の表情は何かを言うべきか迷っている……その様に感じ取れた。やはりこの疑問は、今彼女に問うべきではない。そう確信した彼は、強引に話題を変える事にした。「……一つ良いですか?」『何だ?』「冥夜さんは何であの婆さん達を大切な人だって言うんです?」『……私は人々を守りたいと想い衛士を志した。そして日本人の魂を……志を守りたいのだ。人々の居ない国は無いのだからな』「だからあの婆さん達のことを大切な人だって言うんですね」『ああ……』魂、そして志、言葉にしてしまえば簡単なものだが、その想いはそれほど単純なものではない。その想いを貫き通すには、並大抵の覚悟では実現させる事は不可能に近いのだ。そして、時には犠牲にせねばならぬものも出てくる事も事実―――「で、でもさ!このまま火山が噴火しちまったら……冥夜さんが大切に思ってるあの婆さんは死んじゃうんだぜ!?」この時アラドは、心の中で一番最悪の答えが彼女から返って来ない事を願っていた。しかし―――『私は……あのご老人が亡くなるかどうかは、正直あまり問題ではないと思っている』「ッ!?な、何を言ってるんですか冥夜さん!!」彼女の口からこれだけは聞きたくなかった。そして彼は―――「あの婆さんは、冥夜さんの大切な人じゃなかったのかよ!?あんたはああいう人を守りたくて、そしてあの婆さんみたいな日本人の魂を守りたかったんじゃなかったのか!?」『……話は最後まで聞いてくれ……命があれば良いという単純な問題ではないのだ……ご子息は前線に赴き、ご主人は既に亡くされ、死ぬならばこの土地でと言っておられた。このまま強制的に避難させても、待っているのは食料の配給もままならない難民キャンプだ』「それでも……死んじまったら―――」『そなたも考えてみて欲しい。自分の大切なものが……自分の意思とは無関係に奪われてしまうのだ』「自分の……大切なもの……」彼女の一言が、彼の胸に響き渡る。大切なものが奪われる事……自分もかつて同じ様な経験を味わった事を思い出したのだ。「(同じなのか?俺にとってのゼオラやラト、それに姉さんとの思い出と婆さんにとってのこの土地……)」スクールで姉や妹達と過ごした日々。辛い事もあった―――しかし、それ以上に楽しかった思い出も沢山ある。もしもそれらの思い出を理不尽なやり方で奪われたとしたら―――「(それは―――俺達が奪っていいものなのか?たとえ婆さん達を避難させたとしても火山が噴火したら……もうそれは永遠に奪われたままだ。婆さんはあの大岩が守ってくれるって信じて、そして息子さん達をずっと待っているのに……)」そしてつい最近、自分も似た様な経験をしている事を思い出すアラド。「(俺だってそうじゃないか……姉さんが失くしてしまった俺達との思い出。それが永遠に奪われたままなんてイヤだ!)……ゴメン、冥夜さん。冥夜さんのお陰で気付かされた事があった……確かに奪われる事は辛い」『アラド……』「俺、今になって気付いたんですよ。俺もあの婆さんと同じなんだって……自分に置き換えて考えればスゲェ簡単な事だったのに……ハハハ、やっぱ俺って頭悪いよなぁ」『どういう意味だ?』アラドは冥夜に打ち明ける事にした。自分達の姉の事、そして彼女が記憶を失い自分達の事を全て忘れてしまっている事、それを取り戻すと心に誓った事―――『そうか、あの凪沙殿がそなた達の姉上だったとはな』「姉さんの事知ってるんですか?」『記憶を失くし、帝都を彷徨っていた際に保護されたと聞いている。アラド、帝国斯衛軍の月詠中尉は知っているか?』「ええ、少し前に色々と世話になりましたから。それに月詠中尉自身から姉さんが月詠家の養子に入ったってのも聞いたッス」『凪沙殿を月詠家の養子に迎えてやってはどうかと提案したのは私の姉なのだ』「え?それってどういう意味ですか?」『私は故あって自分の素性を公に晒す事は出来ん……だが、そなたには話しておこうと思う』先程知りたいと思っていたが、聞いてはいけないと思ったこと。本当に聞いて良いものなのかと考えるが、そんなアラドを他所に冥夜は自身の素性を語り始める。その内容は、彼を驚愕させるには十分な物だったのは言うまでも無い。「……良いんですか?俺なんかにそんな事を話しても」『本来ならばおいそれと人に話して良いものではないのだがな。そなたの人となりを信じて話させてもらった』「ゲ、なんかスゲェプレッシャー感じるんですけど」『それほど難しく考えずともよい。いずれ皆にも話さねばならぬと思っていた事だからな……早いか遅いかの違いだ』「それもそうッスね……『HQより各機!』……っ!?」突如として開かれる通信。それはHQに待機しているまりもからのものだった。その通信が開始された直後、モニターにはデータリンクを解した溶岩ドーム周辺の状況が映し出される。『観測隊より報告、溶岩ドームに亀裂が確認された。天元山本山は、12時間以内に噴火する可能性が非常に高い。よって、作戦期限を明朝07:00に繰り上げる。各自指定された時間までに住民の避難を完了させるよう心がけよ……以上だ』『02了解!』「09了解ッス!……冥夜さん!!」『ああ、状況はかなり悪い方へと傾いているようだ。私は周辺区域の探索を行ってくる。そなたはご老人の説得を続けてくれぬか?』「いや、婆さんの説得は冥夜さんにお願いするッス。俺だと感情的になってまた婆さんと口論になりかねないですからね。それに吹雪より俺の烈火の方が搭載されてるセンサーの分探索に向いてますから」『解った。だが、くれぐれも無理はするなよ?』「了解!!」待機状態を解除し、その場を後にするアラド。目的は退避ルートの探索と火山が噴火した場合のマグマの流出箇所の予測である。「山頂はあそこ……噴火した場合、ほぼ間違いなく婆さんの家の方へ溶岩が流れてくるな」コンソールを操作し、山頂付近やその周辺のデータを表示させながら作戦を考えるアラド。「あそこの谷、あれを塞き止める事が出来れば最悪火山が噴火しても婆さんの家の方への溶岩流は防げるけど……」モニターに表示されている画像を拡大させ、何とか塞き止める方法がないかと模索するが、思いつく方法はたった一つしか無い。だがそれは、戦術機単体で行うには不可能に近かった。そう、彼が思いついた作戦とは、かつて武と冥夜が別世界で行った御守岩を用いて塞き止める方法だ。しかし、現在彼の烈火に装備されている武装では、大岩の表面を削る事は出来ても崩す事は不可能。この場に特機クラスの機体があれば簡単に行えたかもしれないが、今は無いもの強請りをしている状況ではない。「ゼンガー少佐なら一刀両断!とか叫んで真っ二つなんだろうけどなぁ……ん?何だあれ?」一瞬、モニターに何かが写った様に感じたアラドは、急いで谷の周辺を拡大表示させる。「……気のせいか?一応熱感知センサーとかも使って調べるか……動体反応?人……いや、違うぞこれ!!」アラドは急いでライブラリのデータと先程感知した物の照会を開始する。そこに映し出された答え、それは最悪の物だった―――「こちら09!HQ至急応答してください!!」『こちらHQ、どうしたバランガ?』「教官!BETAです!!」『な、何だと!?それは本当なのか?』「現在確認中ですが、多分間違いないッス!!今からデータを送信するんで確認して下さい!!」ありえない事態に驚きを隠せないまりも。送られてくるデータを確認した事で、アラドの見た物がほぼ間違いなくBETAだと言うことが裏付けられる。『バランガ、落ち着いて聞け……貴様が確認したBETAは小型種に属するタイプだ。闘士級と兵士級……このまま奴等を野放しにしてしまえばどうなるか、解るな?』「退避中の住民や避難誘導に当たってる兵士が危ないって事ぐらい俺にでも解りますよ!幸いな事に小型種ばかり、このまま一気に奴等を蹴散らします!!」『待てバランガ!いくら敵が小型種とはいえ、貴様にはまだ実戦は早い!!今、白銀大尉に現場に向かってもらうようお願いした。貴様は直ぐにそこから退避しろ!!』「大丈夫ッス!訓練以上にやって見せますよ!!教官は他の皆に状況を伝えてくださいッス。以上、通信終わり!!」『待て!話はまだ……』そう言って一方的に通信を切るアラド。『クッ、馬鹿者が!HQより各機!緊急事態だ!!』完全な命令違反―――これが意味するものは誰にでも解る事だ。しかし、今はそんな事を言っている場合ではない。各自にBETA出現の報を伝えたまりもは、即座に待機していた斯衛軍の月詠中尉に現場へ向かうよう打診すると同時に横浜への応援を要請する。だが、応援が到着するまでに時間はかなり掛かるだろう。それまでに犠牲者を出さないようにするにはどうすれば良いか―――選択肢は自ずと限られてしまう。そう、住民の強制退去だ。出来ればとりたくなかった最終手段だが―――「何でお前らがこんな所に出て来るんだよっ!ここは婆さん達の大切な場所なんだぞ!!」BETAを確認した地点に急降下したアラドは、突撃砲から36mmを乱射し次々と小型種BETAを肉塊へと変えて行く―――未だかつてBETAがこの様な地点で確認されたという事例は無い。それが証拠に、天元山周辺は緑に覆われた自然豊かな土地だ。BETAが通過した場所の自然は尽く破壊され、大地は平坦な物へと変えられるからである。「絶対にここから先へは行かせねえ……来やがれ!俺が相手になってやる!!」なおも突撃砲を乱射し続けるアラド。36mmだけではなく、手持ちの120mmも総動員して一気に敵を殲滅していく。あらかたの敵を殲滅し終え、あと少しだと思ったその直後だった―――突如として起こる大きな地響き。最初は火山噴火に伴う地震かとも思ったが、それにしては規模が小さい。「クッ、地震じゃないのか!?」彼がそう呟いたとほぼ同時に地面が爆ぜる。「なっ!?」自分の約数十メートル先に現れたのは要撃級だった。数にしておよそ十体―――そして、それらに続くようにしてその周辺に展開し始める戦車級。「俺ってホントついて無いよなぁ……けど、ここで引き下がるわけには行かないんだよ!!」突撃砲を投棄し、両腕の旋棍を構えるアラド。これだけの数の敵を相手にしなければならない場合、距離を取って一体ずつ確実に仕留めていくのがセオリーだ。しかし、彼はそれを行わなかった。いや、行えなかったのである。「突撃砲は弾切れ……残った武器は短刀とこのトンファーのみ……タケルさんが来てくれるまで持ちこたえねえとな」意を決した彼は、一番近くに現れた要撃級に向けて突撃する。「アルブレードと似たような俺向きの機体でよかったぜ……うおおおおおっ!!」勢いに任せ、すれ違い様に二体の要撃級の側面を切り裂くアラド。着地とほぼ同時に機体を反転させ跳躍すると、今度はその背後に居た敵に向けて急降下。両腕のトンファーを振り下ろし、一瞬にして三体の要撃級を仕留めた事を確認すると、彼は一旦距離を取ろうと試みる。しかし、それを許す敵ではない。一目散に得物へ向けて群がる戦車級。これだけ多数の敵の中に烈火一機で突撃しているのだ。囲まれない筈は無い。「俺は死ねないんだよ!生き残るのはこっちのほうだぜ!!」次々と飛び掛ってくる戦車級を旋棍で両断していく烈火。深紅に彩られていた機体が、徐々にBETAの返り血で紫色へと変貌していく。そして、一瞬の隙を突いて機体を跳躍させると彼は敵との距離をとった。まるで鬼神の如きその戦いぶりを誰かが見ていたならば、その誰もが彼の動きを賞賛していたに違いない。それほどまでに彼の動きは凄まじい物だった。「ハア、ハア、ハア……クソッ、キリがねえ……タケルさんはまだなのかよ?」彼の土壇場での爆発力は、エースパイロットと称される者達に匹敵するとまで言われたことがある。しかし、それほどの腕前を持っていたとしても体は正直に反応する。人は限界以上の力を出し続ける事は出来ないのだ。辛うじて今は持ち前のタフさで凌いでいるものの、このまま疲弊し続ければ間違いなく待っているのは死。だが、そんな彼のことなどお構い無しにBETAは仕掛けてくる。「このおっ!!」要撃級の攻撃をかわし、側面に居た戦車級を一体沈黙させた時だった。死骸の陰から突如として一体の戦車級が烈火目掛けて飛び掛ってきたのである。とっさの事で反応が遅れてしまったが、辛うじてその噛み付き攻撃を旋棍で受け止める事に成功したアラド。そのまま左腕の旋棍で戦車級を沈黙させたのだが、直後に最悪の事態が起こってしまう。「グッ!トンファーが!!」鈍い金属音を立てながら根元から折れてしまう旋棍。即座に彼は右側の旋棍を投棄し、急いでその場を離れる。このような事を考えたくはなかったが、敵の一体はまるで自分を犠牲にして烈火の攻撃力を削ぐという行動をとったのだ。そして、最悪の事態はまだ続く―――「っ!?各部駆動系に異常発生!?こんな時にかよ!!」限界以上の力を出し続けることが出来ないのは人も機械も同じだ。元々戦術機は、この様な短時間で損傷するほどの物ではない。しかし、彼の烈火の場合は違っていたのだ。先程から機体の色を紫色に染め上げる程の体液や血液を浴びているアラドの烈火。血液というものは、傷口からの出血を止めるために凝固する作用を持っている。これが人間で言う血液の主な作用だが、もしこれがBETAが流す血液にも同じ事が言えた場合はどうだろうか?そう、彼の烈火が浴びた返り血が偶然にも関節部分へと流れ込み、この短時間で凝固し始めているのである。だが、これ程短時間で血液が凝固するなどと言う事はありえない。BETAの血液が、短時間でその様な反応を起こす物と言う線も捨て切れないが、それ以外の原因がこの場には存在していたのだ。火山噴火に伴う気温の上昇―――季節は冬であり、空気は乾燥している。そして、この周囲は活動が活発になった火山地帯と言う事で他の土地よりも気温が高い。つまり、烈火に付着していた血液は、凝固し始めたわけではなく、乾き始めた事によって関節部分に入り込んだ異物になってしまったのだった。「クソッ、動け!動けよ烈火!!あと少しだけで良いんだ……頼む動いてくれ!!」コックピット内に響くアラドの悲痛な叫び。しかし、返って来るのは異常を示すアラート音だけだった。そうしている間にも徐々に距離を詰めてくるBETA。アラドは攻撃を行うのを止め、必死に敵の攻撃を回避している。だが、それも長くは続かなかった―――要撃級の攻撃を回避するため、無茶な姿勢から跳躍ユニットを噴射させた烈火。回避は成功し、後は着地を行うだけだったのだが、地面に足が着くと同時に体勢が崩れたのである。そのままバランスを崩し、尻餅をついてしまう烈火。体勢を立て直そうとするが、機体は言う事をきいてくれない。もはや逃げるすべは無い……そう考えたアラドが、ベイルアウトすべく脱出レバーに手を掛けたその時だった―――『うけろ!必殺!!T-LINKナッコォ!!』「えっ!?」突如として響き渡る男の声。それは懐かしくもあり、聞き覚えのある声だった。『今だライ!!』『了解だリュウセイ!バーストモード……ターゲットロック!……ハイゾルランチャー、発射!』眩しい閃光を放ちながら重金属粒子のエネルギーが、次々と眼前のBETAを焼き払っていく。その光景を見たアラドは、驚きと共に何が起こっているのかを理解できないでいた。『こちらはスペースノア級戦闘母艦ハガネ所属、ライディース・F・ブランシュタイン少尉だ。そこの未確認機、ここは俺達に任せて後退しろ!』「い、今のはR-2のハイゾルランチャー?」『聞こえていないのか?こちらの通信が聞こえているなら応答しろ!!』スピーカーから流れる男の声、そしてモニターに写る見慣れた機体。アラドは慌てて外部スピーカーのスイッチを入れ、彼らに向けてコンタクトを試みる。「こちらアラド・バランガ!本当にライ少尉とリュウセイ少尉なんですね?」『何、アラドだと!?本当にその機体に乗っているのはアラドなのか?』『ちょ、ちょっと待てよ!お前、キョウスケ中尉達と一緒に行方不明になったって聞いてるぜ?』「本当も何も俺は正真正銘アラドッスよ!!」『一体どうなってるんだ?それにお前、ビルガーはどうしたんだよ?』「そ、それは……とにかく、その辺も含めて後で詳しく話すッス!とりあえず今は、目の前のBETAを何とかしないと!!」『……どうやらその様だな。アラド、機体は動けるか?』「何とか動く事は出来ますけど、戦闘は多分無理っすね」『そうか……だったらお前は一度後退しろ。ここは俺とリュウセイで何とかする』「で、でも……」『見たところ武器も近接用の兵装だけだ。動きの鈍い機体で接近戦は無理だろう?ここは俺の指示に従え』「……解りました。でも、絶対に無理はしないで下さいよ?」『お前に心配されるほど俺達はヤワじゃねえよ。サクっと片付けてやるから安心しろって』『そう言って油断していると痛い目を見るぞリュウセイ』『解ってるよ、それじゃいつもどおり俺がフォワード、バックスは頼んだぜライ!!』『任せろ!!』各自の役割を再確認し、BETAの群れへ向けて突撃するリュウセイとR-1。何故彼らがこの世界に現れたのか?そして、何故この場にBETAが現れたのか―――未だに多くの謎を残したまま、ここにBETA対R-1、R-2の戦いが開始されるのであった―――あとがき第46話でございます。天元山編中編です。SRXチームファンの皆様、今回SRXチームの男性陣を登場させました。と言ってもアヤやマイ、ヴィレッタ隊長はまだ登場しません!この三名に関しては、後のお楽しみと言う事でお待ち下さい。さて、いきなり現れたリュウセイとライの二人。彼らに関してですが、SRXチーム共々元々登場させる予定でした。しかし、いきなり全員出してしまってはSRX無双になりかねん……と言う事から分散しての登場と言う事になってます。まあ、R-1だけでも十分無双できそうな感じがしないでも無いですが、そこの所はご容赦下さい。そして、代わりと言ってはなんですが、今回アラド君が無双してます(笑) ちょっとやりすぎた感じがしないでもないですが、追い詰められた時の彼の爆発力を書きたくてこの様な描写とさせていただいてます。そして、この世界に来た事を通しての彼の成長を描いてみたくなり、この天元山編ではあえて冥夜とコンビを組ませました。上手くまとめる事が出来ればと考えていますが、自分の中ではこんなのもアリなのではと思ってます。次回はSRXチーム男性陣が大暴れする予定ですので楽しみにお待ち下さい。それでは感想の方お待ちしてます。