Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION第55話 共に歩む尊き者よ武達が機体の調整作業に勤しんでいる間、日本政府は今回の事件に関して議論を続けていた。内閣総理大臣を初めとした各官僚達が現在話し合っている内容は、悠陽捜索に関してどの様な処置を取るかということである。「一体軍は何をしていたのだね?帝都に賊の侵入を許したばかりか、あまつさえ殿下を誘拐されるなどと……」「……」この場には政府官僚以外に、斯衛軍や帝国陸軍のトップと呼べる人物も列席している。奇襲ともいえる今回の出来事に対し、成す統べなく悠陽を奪われてしまった。いくら彼女を人質に取られていたとは言え、傍観するしかなかった彼らが責められてしまうのは致し方ないのかも知れない。「何か言ったらどうかね紅蓮大将?君はすぐ傍で、一部始終を見ていたのだろう?」「此度の一件は、我ら斯衛の失態です。現在、我が軍だけでなく国連軍とも協力して殿下捜索に当たっていますが、依然情報は得られておりません……」「斯衛だけではないだろう……帝都に存在する部隊、全軍の失態ではないのかね?」「まったくですな。いざという時に行動できない軍など、一体何のために存在しているのやら」「我々は対BETAに関する事以外に、こういった事も踏まえた上で軍に予算を割いているのです。その軍がこの体たらくでは、それらを見直さねばなりませんな」彼らの無念さなどお構い無しに辛辣な言葉を続ける官僚達。自分達の事は棚に上げ、攻め入る隙のある所を徹底的に叩く。何処の世界においても政治家というのは同じということだろうか?己の身の保身を第一に考え、事ある毎に相手の不利な点を論議し突き崩す。そういった者達ばかりではないと信じたいところだが、今の日本政府にそれを否定させる事が出来ないのも事実だった―――「―――落ち着きたまえ……今はそのような事を言っている場合ではないだろう」総理大臣である榊が、脱線しつつある話を下の方向へと修正する。「横浜基地からは、何か言ってきてはいないのかね?」「殿下捜索のために待機中の部隊を派遣してくれるとのことです。それから新たな情報が入り次第、逐一こちらへ報告すると言っています」「ふん、我らに恩を売ろうとしているのが見え見えだな」「横浜の牝狐が考えそうなことです」やはり日本政府は、今回の件で横浜に借りを作るのが嫌らしい。彼らの殆どは、大方有益な情報や部隊を派遣することで恩を売り、後でそれらに対する何かを請求してくるに違いないと考えていた。夕呼の性格を考えればそのような結論に至るのも無理は無いが、あまりにそれは極論と言っても良いだろう。だが、それらを否定しようとする者が居ない事も事実であり、彼らはそう肯定する以外に方法を持ち合わせてもいないのも事実。日頃の行いとは、よく言ったものだ。「この際、そういった考えは抜きに考えるしかないでしょうな……」「無論、それらは殿下を御救いする事ができてからだ……紅蓮大将、具体的な案は出ているのかね?」「ハッ、現在我が軍はトラブルの原因究明に力を注いでおります。また、各地の駐留軍から捜索隊を編成し、準備の整った部隊から即時出撃させております」「加えて申し上げます。我ら帝国陸軍も既に関係各所にこの旨を通達し、殿下捜索を行わせております」「だが、有益な情報は得られていないのでしょう?……総理、ここはやはり米国側からの申し出を受けるべきではないのですか?」「なっ!お待ち下さい!!」現時点では圧倒的に人員が不足している。国内に居る全ての部隊を総動員し、悠陽捜索に当たらせれば問題は無いかもしれないが、そんな事は絶対に出来ないのが現状だ。防衛線に展開中の部隊をそちらに回してしまえば、もしも万が一BETAが攻め入って来た場合の対処が遅れてしまう。そんな事は誰もが考え付くことだ。しかし、一刻も早く彼女を救い出さなければならない現状において、そうも言っていられないのも事実。如何したものかと考えていた矢先、米国側から今回の件に関しての協力申し出があったのである。「殿下を攫った賊は、米軍所属の部隊の可能性が高いのですぞ!?」「だが、向こう側はそれを否定している。そもそもあの戦術機が米軍機だと言う確証はあるのかね?」「確証はありません……ですが、誰の目から見てもそれは明らかです!」「確証も無いのに、何故君はそのような事が言いきれるのだね?」「そ、それは……『もう良いでしょう紅蓮殿……』……崇宰大将?」紅蓮の言い分に耳を傾けようとしない官僚達。討論が続けられている中、それを止める用に言ったのは同じくこの場に列席していた崇宰であった―――「―――確かに貴殿の言い分も解る。だが、今は早急に殿下をお救いせねばならないのが現状……御分かりだと思いますが?」「お主の言うとおりだ。しかし、此度の一件に関して、ワシは米軍の力を借りる事だけは納得が行かん!彼奴らが日本にした事を、お主も忘れたわけではないだろう!?」「無論、忘れたわけではありませんよ。ですが、事は一刻を争うのです。使えるものは何でも利用し、全力で殿下をお救いせねばならない……貴殿は殿下の御命がどうなっても構わないと仰るのですか?」「そうは言っておらん!貴様、ワシがいつ殿下の御命がどうなっても良いなどと言った!!」「先程から頑なにそれらを否定する貴殿の言動……私にはそう言っているようにしか聞こえないのですよ……」「何を言うかこの痴れ者め!いかに貴様とて、言ってよい事と悪い事があるぞ!!」「痴れ者は貴殿の方ではないか?仮にも摂家に属する私に対し、何という暴言の数々……身の程を弁えよ、この愚か者め!」崇宰の言い分も正しいと言えば正しい。現時点で優先せねばならない事は、何よりもまず悠陽の安全を優先し、救出せねばならないという点だ。その方法に関して形振り構っていては、下手をすれば命取りになりかねない。だが、反米感情の高まっている今の日本において彼らの力を再び借りるということは、それらを更に焚き付けてしまう可能性もある。そんな事になってしまえば国と民の心はますます離れて行ってしまい、修復を図る事は困難になるだろう。今の彼らは、悠陽を取るか民を取るかの二者択一を迫られている現状。二兎を追う者は一兎をも得ずなどと言うが、こればかりはそうも言っていられない。この身を投げ打ってでも、双方を助けねばならないのだと紅蓮は考えていたのである。「……言い過ぎた事に関しては謝罪しましょう。ですが、今ここで米軍の力を借りてしまえば、民の心はますます国から離れて行ってしまう……そんな事は殿下も望んでおりませぬ。それだけはご理解頂けませぬか?」紅蓮の方が軍内部での立場は高いが、五摂家の人間に対してともなるとそれらも逆になってしまう。だが、殆どの摂家に属する軍人は、崇宰のように己の家柄に関する事はあまり表には出すことをしない。一部例外はあるものの彼らは与えられた職務に対し忠実で、たとえ家柄が上であったとしても軍内部に居る限りはそれらを引き合いに出そうとはしないのだ。それらを嫌う者もいるが、基本的にこれらは暗黙の了解として認識されている。しかしその様な事があったとしても、ここで言い争っていても仕方が無いと考えたのだろう。そう踏んだ紅蓮は先程の非礼を詫び、崇宰に向けて謝罪と共に自身の胸の内を嘆願したのだが―――「……ふむ、確かに貴殿の言う事も一理ある。だがそれは、殿下が存在している事で意味をなす事なのではないのかね?大体貴殿は情に流され過ぎている……双方の事を考える事は実に素晴らしいが、今は民よりも殿下の事を最優先に考えるべきであろう……違うかね?」「しかし……」「では、私の意見をハッキリと言わせてもらおう……今の日本には貴殿の言う可哀想な民が大勢いるのも事実。だが、我々はそれらに一々構っている余裕は無いのだよ。丁度彼らに見切りをつける良い機会ではないかね?」「なっ!?お主は本気でそのような事を申しているのか?」「こんなこと本気で無ければ言えぬであろう……今の日本が嫌だという者達が増えるというのならば、米国でも豪州でも好きな所に移民してもらえば良い。何度も言うようだが、今の日本に彼ら難民全てを救うだけの力は無いのだよ」本気でこの様な事を言っているのか?今の話を聞いた紅蓮は、一瞬とはいえ自分の耳を疑いたくなった。かつて悠陽に難民救済のための施設建造を提示した男が、それらに一々構っている余裕は無い、見切りを付けるべきと言ったのだ。そして、今の日本が嫌ならば海外へ移民しろとまで言い切った。更に言うならば、その場に居た誰もがそれを否定しようとはしない。ここに居る者達は、一体何を考えているのか?本当にそれで良いと言うのか?そして紅蓮は、今になってやっと沙霧達の気持ちが解ったのだ。彼らがクーデターを起こそうと考えたのは、この様な今の日本政府を憂い悲しんだからではないかと。心の中でそんな官僚達の考えを嘆かわしいと思うと同時に、ワナワナと怒りが込み上げて来るのが解る。沙霧達と同じ目線に立てた事で、腐敗している現政府の内情を本当の意味で知ることが出来たのであったのは皮肉としか言いようが無い。そして紅蓮は、込み上げる怒りを抑える事が出来ず、遂にそれをぶち撒けてしまう―――「もう我慢ならん!これ以上、貴様等と論議を続けていても時間の無駄だ!!」目の前の机を叩き、これが今の自分の心境だと言わんばかりにアピールする紅蓮。それまでざわついていた場内は一瞬のうちに静まり返り、その光景に恐怖すら覚える者もいる。鬼気迫る表情と言わんばかりのその顔は、大の男であっても逃げ出したくなるほどの形相といったところだろう。「それで、一体如何なさるおつもりなのです?」その中で唯一と行ってもよい程に落ち着いていたのは崇宰のみ。彼は冷静な表情のまま、まるで他人を見下すように言葉を発している。「我ら斯衛は殿下を守護するのが第一の目的!無論、この国の人々もだ!!そして貴様等が民を蔑ろにすると言うのならば、我らは我らで独自に事を運ばせて貰う!!」「なるほど、確かにそうですな。精々頑張られるが良い」それがどうしたといった顔で対応する崇宰。応援する気など全く無く、紅蓮の行動を嘲笑うかのように彼は鼻で笑っている。「クッ……悪いがワシは失礼させて頂く……後は勝手にやられるが良かろう―――」怒りを露にし、その場を後にする紅蓮。その圧倒的迫力に押された……という訳では無いだろうが、誰一人としてそれを止める者はいなかった。そして彼が居なくなった事で日本政府は、米国政府からの援軍受け入れを承諾し、今回の件に米国が介入して来る事となる。それから約数時間後、その一報は横浜基地へも伝えられたのだが、何故か国連側から彼らの受け入れ要請が命じられる事は無かったのだった―――帝都でそのような話が行われている中、ついに武達にも出撃命令が下される事となった。任務の内容は、現在追撃任務に当たっている帝国軍の支援というものであり、武もオブザーバーという形で207訓練部隊に同行している。そのため現場指揮官はまりもが務めており、彼は冥夜達と共に搭ヶ島離城周辺で待機している状況だ。これは夕呼からの命令なのだが、何かあった際に武がその場に居た方が都合が良いからだと伝えられている。しかし、何故この場所を補給地点に指定したのかが解らない。どちらかといえばこの場所よりも、前線司令部の置かれている小田原西インターチェンジ跡の方が機材の設置などの点で便利だ。何か考えのあっての事なのだろうが、これでは円滑な情報のやり取りが行いにくい。その理由を夕呼に聞いてみたが、これに関しては教えて貰えなかったのである。「相変わらず先生の考える事は解んねえよな……」『そりゃ天才ですもの、凡人のアンタなんかに理解されちゃたまわないわ』「って、先生!?なんですかイキナリ……脅かさないでくださいよ!」『任務中にボケッとしてるアンタが悪いんでしょ?』「うっ……そ、それよりも先生、何か用ですか?」突如として開かれた通信に驚いてはいたが、彼女にこの様な事をされるのは今に始まった事ではない。そう割り切った武は、さっそく本題に入ろうとする。『ちょっと厄介な事になったわ……』「何か帝都に動きでもあったんですか?」『ついさっき、珠瀬事務次官がやって来てね……日本政府が米軍の受け入れを決定するそうよ』「なんですって!?」米軍受け入れの第一報を聞いた武は、徐々に状況が悪い方向へと流れて行っている事実に苦い思いをしていた。それはモニター越しに映る夕呼の表情からも解る通り、現状は自分達にとっても不利な方向へ傾いているのは間違いないだろう。『それからもう一つ……』「まだ、何かあるんですか?」もう一つの内容は、悠陽誘拐に関する情報が帝国内の民間人へと伝わってしまったという事だった。情報規制を行っていたにも関わらず、何故このような事態へと発展してしまったのか?その理由は、民間の放送局を占拠しようとしていたクーデター軍の兵士と思われる人物が、それらの情報をリークしたのである。しかもそれらの内容は、彼女が拉致される一部始終を映した映像という最悪なモノ。即座に報道規制が行われたが、そう簡単に鎮火出来るような内容では無い。これらは民の間で様々な憶測を呼ぶ事となり、一部の人間が情報の開示を求め首相官邸まで押し寄せる事態へと発展してしまったのだった。「これも奴らの作戦なんでしょうか?」『何とも言えないわね。でも、そのお陰で多少時間が稼げているのも事実よ』幸いなことにと言っては不謹慎だが、この一件を上手く利用すれば民衆を味方につける事も出来るかもしれない。放送された内容は『米軍所属の物と思われる機体に悠陽が拉致された』というものだった。そして『日本政府は常日頃から職務に怠慢であり、殿下を蔑ろにしている。今回の事もそれが原因で起こったに違いない』とまで言われていたのである。この様な事態になってしまっては、彼らも迂闊な事は出来ないに違いない。そのお陰で決定された米軍の介入は、ほんの数時間ではあるものの延期されることになったのだった。「でも先生、何で国連は横浜基地に受け入れを命じなかったんです?」『……こちらが交渉に来た事務次官に対して、それらを頑なに拒否した……っていうのもあるんでしょうけど、恐らく何者かがそう仕向けたんでしょうね』ここで夕呼の言う何者かと目される人物……それは間違いなく崇宰の事を指しているのだろう。米国側と深い繋がりを持っているであろう彼ならば、それらを実行に移すのも容易いと考えられるからだ。だが、いくら容易いと考えられたとしても、これ程早く実行されるものなのだろうか?そう疑問に思う武だが、彼は紅蓮がそれらを阻止できなかった事実を知らない。いや、阻止しようとしていた事すら知らないのだ。そういった疑問を浮かべるのは当然ともいえるだろう。「俺達は、このままで良いんでしょうか?事態が悪い方へ流れている分、横浜で待機してた方が良かった気がするんですけど……」『確かにアンタの言う事も一理あるわ。でもね、アンタ達を基地に待機させていてもメリットは無いのよ……何としても米軍より先に殿下を見つけ出さなければならないのは、アンタも理解してるでしょ?』「それは解ってますけど……」『兎に角アンタ達は任務に集中しなさい。何か情報が入り次第、直ぐに連絡してあげるわ』「了解です……」通信を終えた武は、コックピット内で深いため息をつく。それと同時に、これから自分が何を成すべきかを考えていた。今の現状では悠陽の安否はおろか、所在すらも掴めていない状況だ。彼女を助け出したいという気持ちに嘘は無いが、情報が無ければ動く事も出来ない。恐らく帝国軍や米軍が何らかの情報を得たとしても、そう易々と自分達の方へ情報を与える事はしない筈だ。彼らは彼らで、何としても彼女を助け出したいと考えている。その理由は様々だが、どちらかといえば自分達の思惑を成就させるためである事には間違いない。特に米国側は、アジア圏内での発言力や失ってしまった自分達の信用回復のために躍起になっていることだろう。そのためには、日本側に協力者を作る必要がある。日本側の親米派達は今後のためを考え、米国側との太いパイプを作っておかなければならない。一見すると両者の考えは一致しているような点も見られるが、最終的な目論見は全く異なっている。一方は自国を戦場にしないための動きだが、もう一方は目先の事だけに囚われているだけなのだ。この様な点を踏まえ、最後に笑うのはどちらか……?言わずとも米国側が断然有利に違いないだろう。「あの時はここまで深く考えられなかった……沙霧大尉達のやろうとした事の本当の意味が、今になってようやく分かって来たような気がするな……」再び深いため息をつく武。何が正しいのか、本当の敵は一体何なのか……勿論、BETAをこの世界から駆逐する事も重要な事なのだが、今の彼にそれを優先させようとする気は起こらないでいる。「世界が違えば考え方も違う……別世界の俺は、こんな事で悩んだりはしなかったのかも知れないな……」そんな事は無い……前回の世界の彼もまた、様々な事で悩み、そして苦悩しながらもそれらに立ち向かっていた。だが、今の彼は記憶を引き継いだだけの存在であり、元のベースとなっているのはこの世界の白銀 武だ。いくら記憶があろうとも、根本的なモノはこの世界の住人であるが故に悩んでしまうのだろう。『タケル、少し良いか?』「ブリット……?」突然開かれた通信に驚く武。作業の終了報告かと考えた彼だったが、それならば秘匿回線を使う必要性は無い。「秘匿回線なんか使って、一体どうしたんだ?」『いや、大した事じゃないんだ……その、なんだ……』大した事ではないと言ってはいるが、その表情からはその様には見えない。秘匿回線を使ってまで話しかけて来るという事は、誰かに聞かれるのも不味い内容が含まれているのだろう。武は誰かと話をする事で気が紛れるかも知れないと思い、その内容に耳を傾ける事にした。「何だよ、勿体ぶらずに言ってくれ」何かを迷っているような素振りを見せるブリット。そんな彼を察してか、武は笑みを浮かべながら彼に早く内容を聞かせるように即してみる事にした。『……こんなことは今話すべきじゃ無いってのは解ってるんだけどさ。他愛のない雑談みたいなものだから、適当に相槌打ってくれるだけで構わない』「ああ……」「俺はこの世界の人間じゃないし、煌武院殿下がどんな人なのかも知らない。間接的に世話になってるって言うのは聞かされてるけど、会った事の無い俺達からすればどんな人物なのかも想像つかないしな」苦笑いを浮かべながら、悠陽について話し出すブリット。本当に雑談だったんだなと思った武だが、突然彼が真面目な表情に切り替えた事で何かを察した。今までのは前口上だったのだろう。少し間を置くような感覚を経て、彼は本題に入りだした。『なあ、タケル……お前は今、何のために戦っているんだ?』「えっ?」『人類が滅亡に瀕している中で、場合によっては人同士が争わなければならないこの現状で、正直言って俺はどうすれば良いのか判らない……』「嫌なのか?」『いや、そういう訳じゃない。別に人類同士で戦うって事が、怖いって訳でもないんだ……俺達は、これまでに何度もそういった経験をして来ている。だからと言って、殺しあいになるかも知れない状況が好きって訳じゃない……出来るならそう言った状況は迎えたくない』「それは俺も同じだよ……人類同士が争うなんて間違ってる。だから、それだけは止めなきゃならない」『……お前は俺達の事を仲間だって言ってくれた。俺達もお前の事を仲間だって思ってる。勿論キョウスケ大尉達もだ……だからさ、一人で何でも背負い込まないでくれよ……』「ブリット……」『今更だけど、俺はこの世界に来た当初、得体の知れない何かに恐怖していたんだ。右も左も分からない異世界で、突然こんな事になってさ……運良くお前達に知り合えたのは、本当に幸運だったと思う。言ってみればタケルは恩人だな……』「よしてくれよ……俺はそんな大したもんじゃない」『いや、こんな時だからこそ言っておきたいんだ……俺一人じゃ大した力にはなれないかも知れない……でもさ、皆と協力すればそんな事は無いと思うんだ。楽しい事も苦しい事も、嬉しい事も辛い事も分け合う事が出来るのが本当の仲間ってもんじゃないか?もっと俺達の事を頼ってくれよ……お前みたいに器用に立ち回れないかもしれないけど、肩ぐらいは貸してやる事が出来ると思うんだ……』まるで自分の心を見透かされているような気がした。自分は一体今まで何を考えていたのだろうか?心配そうな表情を浮かべるブリットを余所に、先程までの自分を責める武。冥夜や彩峰に対し、自分は何と言っていた?彼女らに仲間とは何かを説いていたにも関わらず、今までの自分は本当に彼女達の事をそう思っていたのだろうか?否定したいところだが、やはり心のどこかで距離を置いていたのかもしれない。それはブリット達にも言える事だ。突如として何も解らぬ世界へと放り出された彼らは、自分達が元居た世界へ帰る事を優先せず自分達に協力してくれている。下手をすれば、死ぬかも知れない状況であるにも関わらずだ。それどころか目の前の彼は、自分の事を恩人だと言ってくれている。『だからさ、今のうちに恩を返させてくれ。これは俺からだけじゃない、皆からの願いなんだ」武の心情などお構いなしといった様子で、次々と言葉を続けるブリット。その表情はとても穏やかで、裏表や嘘偽りない想いだという事を物語っている。彼の話を聞いた武の心に湧き上がる一つの感情……それは自分自身の甘さや情けなさ、そして彼らに対しての感謝の気持ち。先程までのブリットの言葉は、それほど彼の心に深く沁み入っていた。「……縁起でもねえ事、言うんじゃねえよブリット。でも、ありがとうな……お陰で気分が少し楽になった」『タケル……?』「俺は今まで、色々な事に関して悩んでた。何が正しくて何が間違ってるのかなんて、人によってそれぞれ違う。十人十色って言葉があるみたいに、俺は俺、お前はお前なんだよな……」『い、いや、そういう事じゃなくってさ……』「兎に角、礼を言わせてくれ。お前のお陰でなんか吹っ切れたよ」『そ、そうか……まあ、元気になったみたいで良かったよ』「そろそろ合流予定時間だ。何が起こっても大丈夫なように、準備は万全にしておけよ?」『了解だ』「それじゃ、また後でな……」今思えば、彼とこういった会話をしたのは、初めてだったかもしれない。自分が一番辛い時に手を差し伸べてくれる存在は、これまでにも数多くいた。突如として異世界に放り出され、否応なしに巻き込まれてしまった自分を助けてくれたのは誰だったのか?再び同じ世界へと戻り、全てを成し遂げるために自分を助けてくれたのは誰だったのか?そして、両親を失い途方に暮れていたあの頃……自分を助けてくれた存在は誰だったのか?全ては掛け替えのない存在であり、自分が尊い者と想っている人達。今の白銀 武という人間を支え、そして助けて来てくれたのは他ならない仲間達だ。そのことを改めて気付かせてくれたブリットに感謝し、そして彼は再び決意する―――「何としても俺は世界を救う……皆と笑って明日を迎えるために……」そのためには、何としても悠陽を救い出さなければならない。彼女もまた、彼にとっては大切な人であり、共に笑って明日を迎えなければならない存在だ。天下の政威大将軍に対しかなり無礼な考えではあるが、役職や家柄などの柵を抜きにして一個人として見れるのは彼の良い点だといえる。だからこそ武は誰とでも分け隔てなく接することが出来、左程敵を作る事も無く皆に好意をもたれるのだろう。「……とは言うものの、問題はどうやって殿下を助け出すか……なんだよなぁ」確かにこの点は重要だ。現時点で彼女に関する情報は、何も得られていないに等しい。帝国軍も動いてくれているにも拘らず、これといった情報が何も入って来ないのはおかしいとしか言いようがないだろう。いくら情報が規制されていたとしても、何一つとして新たな情報が入って来ないのはあり得ない。「帝都以外に駐留している部隊も捜索に加わっている筈だ。それなのに手掛かり一つ見つけられないのは変じゃないか?」武の言うとおり、何の手掛かりも掴めないのは考えられない。いくら相手の機体が光学迷彩を搭載しているとはいえ、補給も無しに行動できる筈は無いのだ。補給の際に何処かに身を隠していたとしても、補給を行う部隊の足取りすら掴めないのはおかしい。いくら警戒網の間を縫って補給を行う事が出来たとしても、補給中は全くの無防備になる。その間に発見されれば相手の目論見は失敗に終わり、誘拐に関する一連の事件は終息へと向かうだろう。武は他に協力者でもいるのかと考えてみたが、現状で思い当たる節は精々シャドウミラーか崇宰の息の掛かった者達ぐらいだ。それに加え、第三者の介入という点も否定は出来ない。ここで言う第三者とは米軍の事だが、彼らとてそんな迂闊な事をするほど馬鹿ではないだろう。これ以上考えても仕方が無いと考えた武は、一先ず考える事を止め任務に集中しようとしたのだが―――『HQよりフェンリル1、応答願います』「こちらフェンリル1、何かあったんですか神宮寺軍曹?」様々な思考を張り巡らせ、一人考えていた武を現実に引き戻したのはまりもからの通信だった。『特務隊のブロウニング中尉から、大尉宛てに通信です。そちらに回しますが、宜しいでしょうか?』「はい、問題ありません」『では、そちらの方にお繋ぎします……』「こちら白銀、如何したんですかエクセレン中尉?」『あ、タケル君、そっちはどう?皆ちゃんとやってるかしら?』「特に問題無くやってますよ。例の部隊に関する情報ですか中尉?」まさかこの様な緊迫した状況で、話がそれだけという事は無いだろう。彼女が皆の事を心配してくれるのは有難いが、流石にそれだけで連絡をよこすとは思えない。自分達と別行動を取っている彼女達は、シャドウミラーが介入してきた際にそれらを迎撃する任務を与えられている。何らかの動きを掴んだのかと思ったのだが、口調から見てもそう言った様子では無い様だ。『残念だけど、影も形も見えてないわね』「まさか、ただ単に雑談する為に通信をよこした……って事は無いでしょうね?」『いくら私でも、そんな真似する訳無いじゃない。それに、そんな事してキョウスケが黙ってると思う?』「それもそうですね……で、ご用件は?」『夕呼センセ~からタケル君達に渡すものを預かってるんだけど、ちょっとそっちへは行けないのよね……で、冥夜ちゃん辺りに受け取りに来て貰いたいんだけど……』「冥夜にですか?それだったら俺が行きますよ」『ダ~メ、タケル君はオブザーバーとはいえ、そこを離れるワケには行かないでしょ?』「なるほど……」『それから、冥夜ちゃん一人じゃ危ないと思うから、ん~そうねぇ……ブリット君とクスハちゃん辺りで良いから、一緒に来るよう伝えてくれるかしら?』確かに彼女の言うとおり、自分はおいそれとこの場を離れる事は出来ない。だが、預かり物を受け取る程度の事なら、わざわざ受け渡しの相手を指定する必要も無いだろう。そんな事を考えた武だったが、丁度良いタイミングで指定された者達は休憩に入る時間だ。少々時間が削られてしまう事になるが、致し方無いだろう。もし受け取りの時間が長引いてしまうようならば、その分自分の休憩時間を削ればいいだけだ。そういう結論に至った彼は、彼女からの指示を承諾する事にした。「解りました。そろそろ交代時間なんで、休憩がてらそっちに行くよう伝えます」『悪いわね。それじゃ、そこから東へ20キロ位の地点で待機してるから、ヨロシク~』「……この人も相変わらずだよな……さてと、こちらフェンリル1、20702ならびに07、08、聞こえるか?」エクセレンに指定された人物へ通信を送る武。交替で任務に当たっているとはいえ、彼女らの休憩時間を削ってしまう事は正直いって少々心苦しい。だが彼女らは、嫌な顔一つせずそれらを了承してくれた。「もし時間が長引くようなら、お前達の休んでる間に俺が交替で任務に就くよ」『いや、それほど時間は掛からないであろう。指定された地点までの距離を鑑みても問題は無い』『そうだな、物資受け取りの時間を入れても、往復で大体30分ってところじゃないか?』『それに白銀君、休めるときに休んでおかないと駄目だよ。もし何かあった時に、満足に動けなかったら困るでしょ?』「それもそうだな……とりあえず、神宮寺軍曹には俺から伝えておくから、時間になったらエクセレン中尉の所へ向かってくれ」『『「了解」』』そしてそれから10分後、彼女らはエクセレンに指定されたポイントへ出発する事になった。だが、同時に3人も抜けてしまうと、若干任務に支障をきたす可能性があるかもしれない。今更ながらにそう考えた武は、冥夜達が戻るまでの間HQに詰めているまりも達に手を借りる事にする。後先考えずにエクセレンからの頼みを承諾してしまったのは問題だったが、物資受け渡しを指示したのが夕呼なら下手な事は出来ない。拒否すれば後で何か言われるのは間違いないだろうし、遅れたら遅れた分だけ文句をつけられる。まりもにも申し訳ないが、武はそう割り切る事にしたのだった―――「そろそろ時間か……っと、来た来た……」あれから約30分が経過し、物資を受け取りに行っていた冥夜達が戻って来た。時間きっかりに戻って来たのは、なんとも彼女らしいと言えるだろう。既に沙霧達も到着しており、彼らは推進剤の補給と休憩に入っている。補給が完了次第、彼らは富士教導隊と合流して更に西を目指す予定だと言っていた。簡単な挨拶と情報交換を終えた武は、あまり彼らの邪魔をしては不味いと考えてそれ以上接してはいない。本当ならば色々と話したい事もあったのだが、現状ではそうも言っていられないという事だろう。「こちら白銀、三人ともご苦労だったな」『ああ、どうやら時間内に間に合ったようだな』『申し訳ありません。どうもこの機体には不慣れなもので……』「いくら出力を落としているとは言っても、吹雪と違って烈火は基本的にピーキーな機体だからな。それに複座型の管制ユニットだ、その辺はしょうがないさ。時間内に間に合ったんだから、気にする必要はないぜ冥夜」『有難う御座います白銀大尉』「……ん?(何だこの違和感……?)なあ冥夜、どうしたんだ急に?」『え?』この時武は、何やら妙な違和感を感じていた。先程からの冥夜の口調が、普段と違うような気がするのだ。「いや、普段は俺の事タケルって呼ぶよな?」『ああ、そうであったな……すまぬ、先程ブロウニング中尉殿達と話をしていたためだろう。気にしないでくれ』「そっか……よくよく考えればそれが上官に対しての普通の接し方だもんな。悪い、変なこと言っちまった」『気にする必要はありま……ではなくて、気にする必要は無い。いかんな、どうやら変な癖が付いてしまった様だ』「オイオイ、まるでラミア中尉みたいだな。まあ、俺としては面白くて良いんだけど」『タケル、あまり御剣をからかうな。任務中でもあるし、少々不謹慎だと思うのだが……』「悪い悪い……ってかブリット、お前もなんか変だぞ?」『そ、そうか?別に普通にしているつもりなんだが……』口調に違和感はあるが、モニターに映っている人物は彼女らそのものだ。恐らく冥夜の言うとおり、先程までエクセレン達の傍に居たからだろう。大方彼女の妙なテンションにでも当てられ、自分に対しての接し方に関する感覚が狂っているのかも知れない。そう考えた彼は、とりあえず受け取って来た物資が何だったのかを聞いてみる事にした。「ところで何を受け取って来たんだ?見たところ、何も受け取って来たようには見えないんだけど……」『その事だが、物資と呼べるほどの物は無かった。中尉から受け取って来たのはこれだ』そう言って彼は、自機の背後にマウントされていた長刀を引き抜く。それは従来の長刀とは異なったデザインをしており、その形状は間違いなく日本刀と呼べるもの。その正体は、元々彼の機体であるヒュッケバインMk-Ⅱに装備されていたシシオウブレードだった。「確かシシオウブレードだったっけ?受け取って来たのはそれだけなのか?」『ああ……我々もこれだけだった事に少々驚いているよ』「今更なんでそんなもんを……ったく、夕呼先生の考える事は、ホント解んねえよな……」『……何か考えがあっての事なんだろう。タケル、すまないがそろそろ休憩に入らせては貰えないだろうか?』「っと、そうだったな。10分位オーバーしちまったから、その分は俺がカバーさせて貰うよ。30分しか残ってないけど、ゆっくり休んでくれ」『了解だ。急かす様な真似をしてすまないな……』「いや、俺は気にして無いから大丈夫だ」『では、失礼します』どうも違和感が拭えない……それが通信を終えた彼の率直な感想だった。妙にそわそわしている様な素振りを見せ、何処となく口調もおかしい。それは先程の通信時の最後の会話にも言える。まるで自分と会話を続けるのに問題がある様な感じだ。いくら気のせいだと否定されたとしても、そこそこ付き合いが長い分、どうしてもその違和感が気になって仕方が無い。だが要らぬ詮索は、彼女らに対しても失礼だ。せっかく築く事の出来た関係を、妙な一言で崩す事だけは避けたい。そう考えた武はそれ以上悩むのを止め任務に集中する事にしたのだが、後にその違和感は意外な形で彼の目の前に正体を現す事となるのだった―――一方、武との通信を終えた冥夜達は、秘匿回線でとある人物と会話をしていた―――「……私は国連軍横浜基地所属、御剣 冥夜訓練兵であります。そちらは沙霧 尚哉大尉で間違い無いでしょうか?」『っ!?……(で、殿下?いや、そんな筈は……)……如何にも、貴様の言うとおり沙霧 尚哉で間違いない』冥夜が通信を繋げた相手……それは補給のためにこの場に立ち寄っていた沙霧だった。突如として開かれた通信に対し彼は、始めは驚き戸惑っていたものの、直ぐに平静を装い彼女からの通信を受け取る。驚いていた理由は、言うまでも無い……彼は冥夜を悠陽と見間違えたのだ。以前の世界で一度彼と対面した事のある冥夜だが、その時は悠陽として彼と話をしている。その時も彼は、彼女の事を悠陽と信じて疑わなかった。詳しい事実を知らぬ者からして見れば、それほどまでに彼女達は似ているという事なのだろう。まあ、双子なのだから当たり前といえば当たり前なのだが―――「突然のご無礼、何卒お許しください……率直に申し上げます。大尉殿、貴方は今の日本を見て如何思われますか?」『……貴様も任務中であろう。それは今答えねばならぬのか?』「無礼は承知の上です。大尉殿は、この国の在り方を憂いているとお聞きしました。そして、その為に事を起こす気であったとも……」『……御剣訓練兵、貴様その話を何処で……』冥夜の話を聞いた沙霧の表情が、徐々に強張り始める。現時点で彼がクーデターを起こす気であった事は、極一部の人間しかその事実を知ってはいない。あろう事かそれが、国連所属の訓練兵に漏れていたのだ。考えられる要因が無いとも言い切れないが、それならば横浜に居る彼女から何らかの反応がある筈。だが、今はそんな事を考えてはいられない。状況が状況だけに、場合によっては冥夜の口を封じる事も考えねばならないのだ。しかし、何の証拠も無いままにその様な事をする訳にも行かない。一先ず彼は、彼女の出方を見てそれを判断することにした―――「―――詳しくは、明かせませぬ……ですが、これだけは言わせて頂きたい。あの御方は、その様な事を望んではおりません……」『……それはどういう意味だ?』「あの御方は貴方が民の事を想い、その身を汚泥に晒す覚悟が御有りだという事も理解されております。ですが、それによって無益な血が流れれば、更なる争いを生みかねません!それだけは、何としても避けねばならぬのです!!」目に涙を浮かべ、必死になって彼を説得しようと試みる冥夜。そんな彼女に対し沙霧は、先程から目を瞑り彼女の話に耳を傾けている。彼女の言う『あの御方』それは即ち悠陽の事だろう。何故彼女が、悠陽の気持ちを代弁しているのか?この際、その件や彼女の素性に関しての詮索は無用だ。彼女は言ってみれば、悠陽から自分達の下へと使いに出されたメッセンジャーの様な者。ならば彼女の発言は、悠陽の言葉とも受け取れる。『……確かに貴様の言うように、それらは避けねばならぬのかもしれん。だが、ここで誰かが起たねば日本の民は二度と己の両足で立つ事が出来なくなるやもしれんのだ……貴様も我らと同じ日本人ならば解るだろう?』「では何故、貴方はまず話し合いのテーブルに着こうとすらしないのです!?力に対しそれを力でねじ伏せようなどと……それでは貴方が撃とうとした者達と、何も変わらないではないですか!!」『……我らはそうする機会すら与えられなかったのだ……それは帝都に住む、多くの難民達にも言える。奴らは将軍殿下を民から遠ざけ、国政を思うままにしている……そして、何の咎も無い国民が、あたかも罪人のごとく扱われているのだぞ!?貴様はその実情を知りながらなんとも思わないと言うのか?』「ですがっ!!」ついに堪え切れなくなった彼女は、目から大粒の涙を流していた。それは自分の想いを理解して貰えない事への悲しさからか、もしくは想いを伝えられない事への悔しさか……それは判らない。彼女自身も、感情の抑制が効かない状況なのだろう。それが涙という形で表に出てきていたのだった―――『もうよい冥夜……沙霧とは、私が直接話をします』「あ、姉上……」『で、殿下……!?な、何故殿下がこちらに……?』突如として二人の会話に割って入った人物……それは攫われた筈の悠陽。何故彼女がこの場に居るのか?その疑問は尽きないまま、事態は急展開を迎えるのだった―――あとがき第55話です。えー、皆様言いたい事は沢山御有りでしょうが、詳細は次回に続くという事でご勘弁くださいm(__)m一つだけヒントを……ひとつ前のお話。これがヒントです(苦笑)