Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION第73話 明かされた出生の秘密《Takeru side》俺と純夏、そして月詠中尉の三人は、俺達の部隊用に宛がわれた一室でミーティングを行っていた。しかしそれは、またしても夕呼先生の呼び出しによって中断される事になる―――「―――では武様、今日はこの辺りで終わりにしましょう。我々はこれにて失礼いたします」「そうですね。あまり根を詰めても駄目でしょうし、本格的なミーティングは新任達が来てからにしましょう」「それじゃタケルちゃん、また後でね」先生からの呼び出し、厳密に言えば先生自身に呼び出された訳ではなく、そっちを経由してこちらに話が伝わって来たのだ。。なんでも帝都から俺に客が来たらしく、急いでそっちに迎えとのことらしい。「それにしても、こんな時間に誰なんだ? それに俺に会いに来るような人なんて思いつかないんだけどなぁ……」そんな事をエレベーターに乗りながら呟いていた。全く見当がつかない、って言うのが俺の考えだ。こんな夕暮れ時にここへ来るって事は、武御那神斬と一緒に来たという事なんだろうか?という事はその関係者と言う事になる訳だが、それだと巌谷中佐ぐらいしか思いつかない。しかし、巌谷中佐が来るというのなら、あの人の性格を考えてみても事前に何の音沙汰も無いのはおかしい。尤も、中佐がそれを伝える事を忘れていた場合は、話しは別になる訳だが……「……考えても仕方ないな」そう言う結論に至るとほぼ同時に、俺は指定された応接室のある階に到着していた。そのまましばらく廊下を歩くと、部屋の入口が見えて来る。部屋の前には二人の兵士が立っており、恐らく彼女らは警備の者なんだろう。だが、問題はその格好だ。二人の女性は、なんと斯衛の軍服を着ていたのである。つまりこれは、斯衛軍の誰かが俺を訪ねて来ている事を現わしていたのだ。「(斯衛軍? という事は俺に会いに来た人って言うのは……いや、殿下なら月詠中尉に話しが行っている筈だ。となると一体誰だ?―――)」「―――失礼ですが、白銀大尉殿でしょうか?」そんな事を考えていた矢先、片一方の女性が俺に声をかけてくる。慌てて自分が白銀 武である事を伝えると、そのまま俺は中へと通される事になった。正直に言うと、この基地の応接室に入るのは初めてだ。見ただけで上等なつくりだと分かる品々に、高そうなソファーやテーブルが並べられている。そんな感じで見惚れていた俺を現実に引き戻したのは、久しく聞いていなかった優しい声だった―――「―――久しぶりですね武。元気にしていましたか?」「……ば、婆ちゃん?」そこに居た人物、それは俺の祖母だったのである――――――久しぶりの再会。だが俺は、そんな事よりも何故ここに自分の祖母が居るのかが解らなかった。「な、なんで婆ちゃんがここに?」「驚くのも無理はありませんね。私自身、この様な形でそなたに再会するとは思っていませんでしたから」「それは俺も同じだよ……」「その事に関しては、追々説明しましょう。でもまずは、こちらへ来てよく顔を見せて欲しいのです。何せ、十年ぶりの孫の顔なのですから」「あ、ああ……」十年……口にすれば短いけれど、月日にすれば本当に長い時間だ。俺が婆ちゃんに初めて会ったのは、確か5歳ぐらいの頃だったと思う。それから年に何度か会う事はあったが、詳しい事は何も聞かされていなかった。「本当に、本当に立派になりましたね武。天国の影行たちも喜んでいる事でしょう」「婆ちゃんは、あの頃からあんまり変わらないね。一目見て、すぐに分かったよ」「そうでもありません。私も色々とありましたし、そなたが一番大変だった時も、傍に居てあげる事すら出来なかった……」目にうっすらと涙を浮かべながら、婆ちゃんは俺を見つめている。それは嬉しさと悲しさ、辛さといった心境を物語るには十分過ぎるものだった。「でも、なんで……なんで今まで何の連絡もくれなかったんだよ。親父もお袋も死んで、婆ちゃんの連絡先も分からずじまい。多分、親父たちと一緒に死んじまったんだと思ってた。俺の家族はもう誰もいないって思ってたのに……」「……武、今まで何の連絡もしなかった事、本当に申し訳なく思います」「別に謝ってほしいっていうんじゃないんだ。俺だって子供じゃない。それに、そんな顔をしてる婆ちゃんを責める事なんて出来ないよ……何か理由があったんだろ?」「そなたは優しいのですね。ですが、私はそなたに責められても仕方がないのです」「……じゃあ、理由を話してくれよ。それで許すか許さないかを判断させて貰う」そのまま暫らく、婆ちゃんは黙ったままだった。多分、色々な事情があるせいで、何処から話して良いのかを考えているんだろう。室内を沈黙が支配し、そのまま時間だけが過ぎて行く。俺はその間、ずっと下を向いたままの婆ちゃんを見つめていた―――「―――少し長くなりますが、これはそなたの父、影行がずっと秘密にしていた事も含まれています」考えが纏まったのか、婆ちゃんが徐にその口を開いた。それに対し俺は、無言でうなずく事で返答する。「そなたは、自分の父親の事を何処まで知っていますか?」「どこまでって言われてもなぁ……その辺に居る普通の親父って事ぐらいしか分からないよ。これから話してくれる事に、親父が関係してるのか?」「ええ、そうです。ところで武、そなたも五摂家と呼ばれる五大武家は知っていますね?」「それぐらい俺でも理解してるって、実際に会った事ある人も何人か居るし……」「そうですか、ならば問題はないでしょう。武、驚くかもしれませんが、そなたの父は元々五摂家の一つである斉御司家の生まれなのです」「へぇ~、親父が五摂家の生まれねぇ……って、えぇぇぇぇぇっ!? ちょ、ちょっとまって婆ちゃん! いやいや、その冗談はいくらなんでも笑えないって……」流石の俺も、これには驚く以外何も反応出来なかった。つまり俺の親父は摂家の生まれで、何らかの事情があって白銀姓を名乗っていたって事なのか?いや、とてもじゃないが、これは何の悪い冗談だと思いたくなる。だが、目の前に居る婆ちゃんの顔は、至って真面目だ。という事は、これは事実以外のなにものでも無いんだろう。「驚くのも無理はないでしょうね。これらは全て、あの子の親である我らに責任があるのです。ですが、何故そうなったのかを知る権利は、そなたにもあります……どうしますか?」正直言って、いきなり突き付けられた事実に対し、俺の頭の中はかなり混乱している。親父が摂家の生まれという事は、その息子である俺自身もその血筋に連なる者という事だ。いやいや、あの親父がそんな御大層な血筋だなんて、どう考えてもおかし過ぎるだろう。だがその時、俺の中で前々から腑に落ちなかった件が頭をよぎった。それは、記憶にあるこれまでの世界での出来事だ。最初の世界と二度目の世界、そこで初めて月詠中尉と対面した際に彼女は俺にこう言っている。『貴様は……何者だ?』 『……死人が何故ここにいる?』その時は単に、存在しない筈の人間が冥夜に近づいた事を怪しんだ発言だと捉えていた。しかし、何故彼女は俺が存在しない筈の人間だと知っていたのだろう?だが、親父に関する話を聞いた事で、欠けていたピースが揃う事になる。これはあくまで俺の仮定でしかないが、城内省のデータベースの中に俺の死亡記録があったとしよう。普通に考えれば一般市民の情報がそんな所に在るとは思えないが、これが一般市民ではなく、摂家所縁の者であったならば存在する可能性が出て来る。という事は、この世界の俺だけでなく、これまでの世界における俺と言う存在は、斉御司家所縁の者だったという事になる。なるほど、そんな人物の名を語り、将軍の妹である冥夜に近づいたとあれば、護衛を務める者達からすれば疑われても仕方の無い事だ。「どうしたのですか武?」不意に話しかけられ、そこで俺は一時思考を中断する。今考えなければならない事はそんな事ではなく、親父に関しての件だと感じたからだ。「ごめん、いきなりの事でちょっと頭が混乱してた。聞かせて欲しい……いや、聞かなきゃならないんだと思う。色々と複雑な事情があったにせよ、俺はその事実を知らなきゃならない気がするんだ」「……分かりました」婆ちゃんが俺に話してくれた事実、それは大まかに言えばこんな内容だった。事の発端は、俺が生まれる少し前……親父とお袋が出会った頃らしい。斉御司家の次期当主である親父は、一般人であるお袋との結婚を反対され祖父に勘当同然の扱いを受け家を出た。そしてお袋の故郷であるこの横浜で結ばれ、程なくして俺が生まれたんだそうだ。その後、祖父は亡くなり、婆ちゃんは親父達を探して方々に手を尽くしていた。丁度俺が5歳になった頃、親父達の行方が突き止められ、紆余曲折を経た後に斉御司家と白銀家の関係は修復されたそうだ。だが、親父は自分の我儘で飛び出た実家に戻る事を良しとせず、そのままこの地に留まった。その際、婆ちゃんには全ての事実を隠し、俺と接して欲しいと頼みこんだのである。全ての事実を隠すという事は、斉御司家の人間であるという素性を隠す事も含まれていたらしい。「なんで親父は、婆ちゃん達にこの事を隠す様に頼んだんだ?」「影行は、そなたを余計な柵に巻き込みたくない。この子は普通の子供として育てたいのだと言っていました。恐らく、そなたの御爺様との確執が原因なのでしょう」「そっか……もう一度確認するけど、全部本当の事なんだよな?」「これまでの話は、嘘偽りなく全て事実です。」「そう、なんだろうな。婆ちゃんが俺に嘘をつくとは思えないし……という事は、やっぱり俺も武家出身者って事になるのか?」「厳密に言えば、そうなります。しかし、白銀家は現在、斉御司家の遠縁という扱いなので、左程大きな家柄と言う訳ではありません」やはり先程の仮定は間違いじゃなかった。家柄が大きくないとはいえ、少なくとも摂家に連なる武家の一つである事には違いない。という事は、俺に関する情報が城内省に存在していたという事なんだろう。「……ですが、これからのそなたに関しては、そう言い切れないかもしれません」「どういう事なんだ?」俺は婆ちゃんのその言葉が気になった。そこから察する事が出来るのは、状況が変わるかも知れないという事を示している。「単刀直入に言いましょう……武、そなた斉御司家に来るつもりはありませんか?」「えっ……?」本当に単刀直入過ぎた。これは遊びに来いとかそういった類じゃないって事は、頭の悪い俺にも理解できる。「それはつまり、斉御司家を継げって事か?」「察しが良くて助かります。武にそのつもりがあるのならば、私はそなたに家督を譲るつもりでいるのです」「ちょ、ちょっと待ってくれ。それってさっきの話と矛盾してないか? だって、婆ちゃんは親父に俺を余計な柵に巻き込ませたくないからって頼まれたんだろ?」「確かにそう言いました。ですが、その際に私も条件を出したのです。武がある程度成長し、自分自身の考えで物事を判断できるようになったならば事実を話すようにと……」「それがこれまでの事実を隠す条件だったって事なのか?」「そうです。この事に関しては、影行も納得しています」「でも、それと家督を継ぐことに何の関係があるっていうんだ?」「それはそなたの幸せを願っての事です……そなたは影行の忘れ形見であると同時に、私にとっても大事な孫なのです。その様な子の幸せを願う事は当然の事でしょう?」なんというか、さっきから混乱しっぱなしだ。特に最後の家督を継いで欲しいっていう話は、それを一気に加速させている。確かに婆ちゃんの言うとおり、孫の幸せを願ってって言うのは解らないでも無い。でも、いきなりこんな話を振られ、はいそうですか分かりました……なんて言える程、俺も簡単な人間じゃないからだ。「……話しが唐突過ぎて、なんて言ったらいいのか判らないよ」「それは当然でしょう。私がそなたと同じ立場だったとしても、二つ返事で了承するなどと言った愚行はしないと思います」「ちなみにだけど、この件に関しての拒否権とかは?」「無論、そなたには拒む権利もあります。私自身にも無理強いをする権利はありません……ですが、その場合は今後の事を色々と考えなければなりませんね」今後の事、何故かその言葉が気になった。なんとなくでしかないけれど、そこに含まれる意味があまり良い方向に取れないと感じたからだ。俺が斉御司家に行くとなれば、色々なメリットも存在する。だけど、そうなってしまうと発生するデメリットも数多い。この部屋に来て婆ちゃんとの再会を喜んだのも束の間、まさかこんな話を振られるとは思ってもいなかった。何をどう話せばいいのか、全く考えが纏まりそうも無い。思考を中断するのは簡単だけど、それを行うのは安直過ぎる。どう話を切り出すべきか、そんなことばかりを考えていた俺だったのだが―――『―――お母様、それ以上武を苛めないであげて下さい。可哀想ですわ』それは懐かしく、聞き覚えのある声だった。声のした方を見ると、そこに立っていたのは一人の女性。斯衛軍の青を基調とした服に身を包み、あの時と同じ優しい笑みを浮かべてこちらを見ている。「久しぶりね武、元気にしてたかしら?」「な、なんで? なんで叔母さんがここに……グフッ」「あら、私の聞き間違いかしら? いま、誰かが私の事を叔母さんって言った様に聞こえ気が……」「き、気のせいだと思います美雪姉さん……だ、だからこの手を話して……い、痛い」先程までの笑顔は何処へやら、一瞬で間合いを詰めた彼女は、今現在俺の頭を鷲掴みにしている。彼女は親父の妹だと聞かされており、俺の叔母に当たる人物だ。だが、叔母さんと呼ばれる事を激しく嫌い、私の事はお姉さんだと思いなさいと言われ続けていた。そう、ガキの頃何度か顔を会わせていたが、怒らせるたびにこうやって所謂アイアンクロ―と呼ばれる技を食らっていたのである。「クッ、相変わらずの馬鹿力め……」「……今、何か言わなかった?」「そ、そんな事無いって……とりあえず姉さん、質問して良いか?」「構わないわよ。貴方が聞きたい事って言うのは何?」「先ずはその格好だよ。それって斯衛軍の軍服だろ? それからさっき婆ちゃんに言った事だよ。あまり俺を苛めるなって、一体如何言う意味だ?」「ああ、そう言えば言ってなかったわね……帝国斯衛軍第17大隊所属、斉御司 美雪大佐です。こうして話をするのは初めてね、白銀大尉」彼女はニヤリと笑い、どうだ驚いたかと言わんばかりの表情を浮かべている。今日だけで一体どれだけ驚かされているんだろうか?数えるだけで嫌になる俺を余所に、彼女は言葉を続けていく―――「―――それからもう一つの質問だけど、言葉通りの意味よ」「言葉通りって、それじゃ答えになってねえよ」「相変わらず鈍いわね……これってやっぱり遺伝なのかしら?」「どうせ俺は鈍いですよ。って、ちょっと待ってくれ。ひょっとして純夏が言ってた斉御司大佐って……」「そうよ、私の事」彼女は、あっさりそう言い放つと婆ちゃんの隣へと腰掛けた。斯衛軍の人間で気さくな人がいると純夏が言っていたが、目の前の彼女なら納得だと思ってしまう。ソファーに並んで座る二人を見比べてみると、本当に親子かと思う程に性格が違うのだ。俺の中で五摂家やそれに係わる人物と言うのは、殆どの人が真面目でお堅いと言っても良い。多分、何も知らない人間に彼女を紹介したとしても、実際に俺がそうであるように武家出身者だとは思わないだろう。「ああもう、頭が混乱しすぎて何が何だか分からなくなってきたよ。久々に会ったと思ったら斉御司家に来いとか、いずれ会った時に礼を言わなきゃと思ってた人が実は身内だったとか……何これ一体?」「あら、別にお礼なんて良いのに」「頭痛くなってきた。悪いけど姉さん、ちょっと黙っててくれ……婆ちゃん、悪い。さっきの話だけど、今すぐに答えは出せない。少しの間だけ俺に時間をくれないか?」「構いません。いきなりこの様な話をされ、そなたもすぐに考えが纏まる筈も無いでしょう。何れまた、ゆっくりと時間の取れるときに話しを聴かせて貰う事にします」「助かるよ……」「では、私たちはこの辺りで失礼する事にします。落ち着いたらで良いので、一度帝都の斉御司家に遊びにいらっしゃい」「解った」その後婆ちゃんと美雪姉さんは、入口に待機していた護衛の人達と共に帝都へと帰って行った。入口まで見送ろうと思っていた俺だったが、今度は格納庫から呼び出しを受けた事もあり、そっちを優先させて貰う事にしたのである―――《Kyousuke side》アクセルに連れ出された俺は、彼と共に横浜基地の裏手にある森へと来ていた。何故こんな場所にと疑問に感じていたが、恐らくこれから話す事は基地内部では出来ない事なのだろう。それの意味する所は即ち、香月副司令の耳にも入れたくない事なのだと容易に想像がついた。「それで、話と言うのは?」「まあ慌てるな……先ずはこれを見てくれ」そう言って彼は、懐から数枚の写真を取り出した。そこに写っているものは、何かしらの残骸だ。殆ど原型を留めていないが、機動兵器に近いものだという事はすぐに判断できた。「この写真がどうかしたのか?」「これは、先日とある男から渡されたものだ。数年前、この世界で撮影されたものだと言っていた……三枚目の写真をよく見ろ。貴様もそれに見覚えがある筈だ」「これは!? いや、彼女がこちらに来ているんだ。これが存在していたとしてもおかしくはないが……」「お前の言うとおりだ、これがな……さて、話しは変わるがキョウスケ、貴様は疑問に思った事はないか?」「何に対してだ? それを聞かない事には、お前の質問に答える事は出来ん」「すまんな……この残骸は当時、帝国軍によって回収されたそうだ。そしてその後、これらの解析はとある人物に託された……誰だと思う?」「香月副司令……だろうな。そのくらいしか思いつかん」「御名答だ。だが、妙だとは思わんか?」「何が言いたい?」「ヤツは、俺達がこちらにやってくる前にこれを手にしていた。つまり、そこから得られる技術が既に在ったという事だ。しかしヤツは、俺達に取引材料として自分達の機体を解析させろと言った……何か矛盾してると思わないか?」「……確かにそうだな」写真に写っていたもの、それは俺達の世界に存在していたものだ。それがこちらの世界に来ている事は、別に不思議な事では無い。これのパイロットである少女がこちらに来ている以上、無いとは言い切れないからだ。しかし、この残骸を俺達が来る以前に香月副司令が入手していたとなると、幾つかの疑問が浮かび上がってくる。彼女がこれの存在を俺達に伝えなかったのは、自分が優位に事を進めたかったからだろう。それについては、彼女の性格を考えればある程度分かる事だ。「それに常々疑問に思っていた事もある」「俺達の機体を解析していた時間、か?」「そうだ。これは白銀から聞いた話だが、とある特殊な装置を用いて短時間で終わらせたらしいが、それにしても早すぎだ」「なるほど、既に下準備は出来ていた……という事か」「恐らくは、な。PTとADに関して言えば構造はだいぶ違うとはいえ、使われている技術に関してはそれほど大差はない。特にこいつはその名が示す通りPT関連の技術を用いて改修された機体だ。そう言う事もあって短期間のうちにPT関連の技術を戦術機に転用出来たんだろう」「俺達は彼女の掌で踊らされていたという事か……まあ、今更それを言っても始まらんな」「気に食わん事だが、貴様の言うとおりだ、これがな。だが、このままやられっぱなしというのも俺の性に合わん」「何をする気だ?」「別に香月に害を成そうという訳じゃない。単純にヤツが隠しているであろう情報を探ってみるだけだ」「まだ他に俺たち絡みの何かがあると?」「確証がある訳じゃないが、火の無い所に煙が立ちはしない。それにこの情報を提供してきた男もだが、俺は帝国軍や斯衛軍も何かを隠していると考えている……尤もこれは、お前自身にも心当りがあるんじゃないか?」「……確かに、お前の言うように俺にも心当りがない訳じゃない。だが、俺達が異邦人である以上、不必要な行動は俺達自身にも命取りになる。だから止めておけ……と言っても無駄だろう。だが、程々にしておけよ?」「解っている。俺としてもそこまで馬鹿じゃないさ……」この時、俺達はこの写真に写っていたものが、後に脅威を引き寄せるものだとは思いもよらなかった。そして、その脅威が目前に迫っているという事実にも気付いていなかったのである―――あとがき御無沙汰しております。更新が遅れているのはいつも通りのことで本当に申し訳ありません。さて、本編内で語られた内容ですが、オルタ本編にてタケルちゃんが月詠中尉に疑われた件を独自に解釈し、こう言う理由ならばと考えた末の結果です。ちょっとおかしくないか? と思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、何卒ご容赦頂ければと思います。次回は任官式からトライアルに向けての話しを予定しています。戦闘描写が全く書けていませんが、その分トライアル辺りの話しを頑張らせて頂く予定ですので楽しみにお待ち下さい。