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No.4008の一覧
[0] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION (Muv-Luv オルタ&SRWOGクロスオーバー作品)[アルト](2013/01/21 20:25)
[1] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第0話 プロローグ[アルト](2008/08/28 21:08)
[2] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第1話 異世界からの来訪者[アルト](2008/08/29 21:41)
[3] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第2話 新たなる出会い・・・そして・・・[アルト](2008/08/31 20:44)
[4] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第3話 イレギュラー[アルト](2008/08/31 20:40)
[5] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第4話 再会[アルト](2008/09/16 23:44)
[6] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第5話 姉妹の絆[アルト](2008/09/04 01:33)
[7] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第6話 不協和音[アルト](2008/09/05 08:43)
[8] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第7話 過去、そして現在(いま)・・・[アルト](2008/09/07 08:55)
[9] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第8話 侵入者の影[アルト](2008/10/16 22:13)
[10] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第9話 抹消された戦術機(前編)[アルト](2008/09/12 22:09)
[11] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第10話 抹消された戦術機(後編)[アルト](2008/10/16 22:17)
[12] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第11話 戦乙女再び[アルト](2008/09/21 23:33)
[13] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第12話 白銀の力[アルト](2008/09/23 21:34)
[14] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第13話 激突!孤狼と白銀[アルト](2008/10/16 22:30)
[15] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第14話 失われし記憶[アルト](2008/10/16 22:41)
[16] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第15話 真実が明かされるとき[アルト](2008/10/18 23:16)
[17] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第16話 純夏の想い[アルト](2008/10/22 01:41)
[18] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第17話 拒絶[アルト](2008/10/24 01:19)
[19] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第18話 得られたモノ[アルト](2008/10/24 01:19)
[20] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第19話 とある日常の訓練風景[アルト](2010/10/05 18:39)
[21] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第20話 BETA侵攻[アルト](2008/10/28 21:51)
[22] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第21話 紅き機神来たりて・・・[アルト](2008/10/30 17:56)
[23] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第22話 覚醒[アルト](2008/11/01 01:04)
[24] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第23話 新たなる力[アルト](2008/11/06 00:09)
[25] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第24話 邂逅[アルト](2008/11/06 00:07)
[26] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第25話 忘れられぬ日々[アルト](2008/11/16 21:36)
[27] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第26話 立脚点[アルト](2008/11/16 21:35)
[28] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第27話 運命のあの日[アルト](2008/11/22 00:26)
[29] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第28話 蠢く陰謀[アルト](2008/12/06 21:15)
[30] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第29話 総戦技演習へ向けて[アルト](2008/12/07 00:13)
[31] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第30話 島を行く[アルト](2008/12/20 00:23)
[32] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第31話 動き出す影[アルト](2009/01/12 15:06)
[33] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第32話 南国の激闘[アルト](2009/01/12 23:27)
[34] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第33話 脱出[アルト](2009/02/02 21:19)
[35] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第34話 吹き荒れる熱風、疾風の如く[アルト](2009/03/13 00:46)
[36] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第35話 暴れまわる幽霊達[アルト](2009/03/13 00:45)
[37] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第36話 Dancing dolls[アルト](2009/03/19 22:21)
[38] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第37話 疑念[アルト](2009/04/06 23:14)
[39] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第38話 一時の休息、そして新たなる始まり[アルト](2009/04/09 22:43)
[40] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第39話 悠陽からの招待状[アルト](2009/04/29 20:43)
[41] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第40話 新たなる仲間[アルト](2009/05/04 17:07)
[42] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第41話 天照計画(Project Amaterasu・プロジェクトアマテラス)[アルト](2009/05/18 22:58)
[43] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第42話 武神の産声[アルト](2009/06/10 23:09)
[44] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第43話 彼方への扉[アルト](2009/05/29 18:53)
[45] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第44話 白銀 武の受難[アルト](2009/06/10 23:29)
[46] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第45話 天元山での出会い(前編)[アルト](2009/08/03 18:37)
[47] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第46話 天元山での出会い(中編)[アルト](2009/08/04 00:13)
[48] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第47話 天元山での出会い(後編)[アルト](2009/08/31 01:05)
[49] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第48話 御守岩をぶった切れ!![アルト](2010/01/05 14:14)
[50] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第49話 迫り来る悪夢[アルト](2010/01/07 20:32)
[51] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第50話 数多の可能性[アルト](2010/01/10 23:19)
[52] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第51話 成すべきこと[アルト](2010/01/16 20:49)
[53] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第52話 護りたい背中[アルト](2010/01/31 21:06)
[54] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第53話 歪められた12.5事件[アルト](2010/01/27 22:43)
[55] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第54話 夕呼の企み[アルト](2010/01/31 21:03)
[56] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第55話 共に歩む尊き者よ[アルト](2010/02/04 00:28)
[57] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第56話 月が闇を照らすとき[アルト](2010/02/08 20:21)
[58] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第57話 シャドウミラー包囲網を突破せよ[アルト](2010/03/19 01:22)
[59] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第58話 合流(前編)[アルト](2010/05/02 22:47)
[60] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第59話 合流(後編)[アルト](2010/07/02 00:40)
[61] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第60話 偽りの仮面[アルト](2010/07/03 21:44)
[62] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第61話 DCの遺産[アルト](2010/08/01 22:10)
[63] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第62話 奪還作戦[アルト](2010/09/03 23:00)
[64] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第63話 究極の名を冠したモノ[アルト](2010/09/12 18:29)
[65] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第64話 ゲイム・システム[アルト](2010/10/02 23:51)
[66] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第65話 潰えし野望[アルト](2010/11/01 18:55)
[67] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第66話 開かれた次元の扉[アルト](2010/11/12 20:46)
[68] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第67話 新西暦と呼ばれる世界[アルト](2010/11/15 23:18)
[69] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第68話 導かれた悪意(前編)[アルト](2011/01/08 19:35)
[70] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第69話 導かれた悪意(後編)[アルト](2011/01/20 23:44)
[71] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第70話 因果律の番人[アルト](2011/02/02 21:30)
[75] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第71話 帰郷[アルト](2012/07/15 19:01)
[76] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第72話 A-01新生[アルト](2012/07/15 19:08)
[77] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第73話 明かされた出生の秘密[アルト](2012/11/05 11:54)
[78] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第74話 解隊式[アルト](2013/01/21 20:24)
[79] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第75話 ベーオウルブズ(前編)[アルト](2013/01/28 17:37)
[80] 本編登場機体設定資料(ネタバレ含む)[アルト](2011/01/20 23:46)
[81] 本編登場キャラクター設定資料(ネタバレ含む)[アルト](2010/01/27 22:49)
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[4008] Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION 第74話 解隊式
Name: アルト◆ceb42498 ID:f0f37b8f 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/01/21 20:24
Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION

第74話 解隊式





《Tiduru side》



「それにしても、何なんでしょうね?」
「明朝九時に講堂へ集合せよって言われたけど、一体何があるんだろう? あんな所で訓練、なんて訳無いだろうし」
「何も聞いてないの、榊?」
「聞かされていないわ。こっちが聞きたいくらいよ」


私達は今現在、前日に神宮寺教官から受けた指示通り、講堂を目指して歩いている。
話しを聞かされた際に何を行うのかを確認してみたけれど、教官は何も教えてくれはしなかった。
ただ、その時の教官の表情が、あまり明るいもので無かったようにも思える。
例えるならば、何処となく不安げといったところだろうか。
あの事件終息後、私達207訓練小隊はいつもと変わらない日々を過ごしていた。
いや、正確に言うのならば何もかもが変わらなかった訳じゃない。
やはりあの一件以降、皆心のどこかに影を落としている様な感じだ。
恐らくそれは、大きく分けて二つの事柄が影響しているんだろう。
大事な隊員の一人である御剣は、今現在も面会謝絶のまま入院している。
私達に教えられた事は、彼女はあの戦闘の際に怪我を負ったらしい。
それだけなら良かったのだが、今回の事件に深く係わっていたこともあり、それに伴う様々な事柄を解決しない限り許可の無い者を会わせる訳にはいかない状態になっているらしい。
そしてもう一つ、それは同じ訓練小隊でありながら、あの事件以降全く顔を会わせていない彼らの事だ―――


「―――やっぱり今日も来ないんでしょうか?」
「……わかんない」
「なんで急にこんな事になっちゃったんだろうね? 今まではずっと一緒に訓練を受けてたのに」


私以外、他のメンバーも同じ考えのようだ。
彼らの存在、それこそ当初はぶつかりもしたけれど、今となってはよきライバルだと私は考えている。
その彼らがここ数日姿を見せない事に対しての心情は、皆私と同じなのだろうと思いたい。


「……ひょっとしてサボり?」
「まさか、そんな訳無いと思うよ? だって、そんな事したら神宮寺教官が黙って無いと思うし」


相変わらず、鎧衣と彩峰の二人は相変わらずのマイペースだ。
全く情報が与えられないのも困ったものだけど、恐らく彼らにも事情があるのだろう。
軍という組織は、様々な事情で情報を与えて貰えない事がある。
たぶんだけれど、彼らも御剣と同様にあの一件で何かしらの機密に係わったのに違いない。
だとすれば、それを無理に聞き出す事も出来ないし、一介の訓練兵ごときにそれらの情報が回って来る事も無いだろう。
時が来れば私達も知ることが出来るに違いない……私はそう勝手に結論付け、皆と共に講堂へと向かう事にした―――






―――数分後、私達は何の問題も無く講堂へと到着した。
ここに来るまでの間、やはり皆は何処か不安げな表情を浮かべたままだった事に変化はない。
恐らく自分では判らないが、多分私も皆と同じ顔をしているんだろう。
それどころか、この場が近づくにつれてより一層その表情に影を落とすようになった気がしていた。


「……そう言えばここって、入隊の時に使って以来だよね。こんな所で一体何があるんだろう?」
「そうね。ここは基本的に私達には用の無い場所だし……って、あれは!」
「どうしたんですか千鶴さん?」


講堂の入り口にみえる人影、初めは距離があった事も重なって誰なのかは判らなかった。
でも、次第にその人が誰なのかに気付いた時、私は思わずそれを口に出してしまっていたのだ―――


「―――あれは……! ラダビノッド……基地司令……!?」


その場に居た全員が凍りついていたと思う。
“パウル・ラダビノッド”准将といえば、この基地に籍を置く者であれば誰もが知っている方だ。
そんな人物が、今私達の目の前に居るという事実に対し、驚かない方が無理というものだろう―――


「―――せ、整列ッ!」


無言のまま壇上へと足を運ぶ准将に対し、私達は茫然としていた。
そんななか私はハッとし、急いで皆に号令をかける。
だが、准将はこちらを見据えたまま、ずっと無言のままだった。
その場を沈黙が支配するなか、徐に准将が口を開いていく―――


「―――突然ではあるが、只今より国連太平洋方面第11軍衛士訓練学校・第207訓練小隊解隊式を行う!」
「解隊……式?」
「そ、それってまさか……」
「私達が……正規兵に……?」


准将の言葉に対し、驚き以外の感情が出て来ない。
それは皆同じ様で、まるで石になったかのようにその場に直立していた。
そして、この場には彼らは居ない。
という事は、この後任官されるのは、私達だけという事になる。
そう気付いた途端、何故か私は複雑な心境になっていた。


「諸君は本日をもって訓練課程修了……晴れて任官というめでたい日だ。本来であれば盛大に門出を祝ってやりたいところだが、先日の一件もある……日本国民の感情に配慮した事を理解して欲しい」


ついに、ついにこの時が来た。
訓練兵からの卒業、それは私達が夢にまで見た事であり、誰しもが願っていた事だ。
だが、願っていた筈の事なのに、何故か私の心は晴れない。
しかし、そんな私を余所に准将の言葉は続いて行く―――


「―――世界は今、力と勇気ある若者を欲している。経験豊富な指揮官や兵士の力は、戦場には欠かせぬものだ。だが、それと同じくらい重要なのが、勝利を信じ諦めぬ心なのだ。そしてそれこそが、君たち若者が持つ唯一にして最大の武器なのだ―――」


私達を見回し、次々と言葉を発する准将。
私達は皆、その言葉を一言一句噛みしめ、それらに耳を傾けていた―――


「―――本日付をもって諸君は、人類防衛の前衛たる国連軍衛士の資格を得た。その栄誉と責任を噛みしめ、必勝の気概を持ってその持てる力を尽くして欲しい。人類の勝利とその未来をつかみ取るために……さて、最後に……極めて異例の事ではあるが、諸君の任官に際し、お言葉が寄せられている。日本帝国政威大将軍・煌武院 悠陽殿下からの御祝辞……心して賜りたまえ」


講堂に設置されたスピーカーから殿下の御祝辞が流れて来る。
それは先日の一件での出来事に対する御礼とこの国のこれまで、そしてこれから歩むべく道の事、そして殿下の御心が私達と共に在るという事だった。
いや、最後の一言は、私達にというよりもこの場に居ない御剣に対しての言葉だろう。
私自身、あまり詮索はしないでいたけれど、それくらいの事には気付けない程馬鹿じゃない。
この場に彼女が居たならば……いや、これは私自身がどうこう考える問題じゃないわね―――


「―――昇任に際し、殿下から御言葉を賜るという名誉は、諸君自身の手で掴んだ栄光である。国連軍兵士として、それに相応しい活躍を期待する……以上だ。続いて衛士徽章授与を行う。“榊 千鶴”訓練兵!」
「……はい!」


名前を呼ばれた私は、壇上へと足を運ぶ。
准将はじっとこちらを見据えているが、その表情は厳しい中にもどこか優しさを感じさせるものだった。


「……只今をもって貴官は国連軍衛士となった。おめでとう少尉」
「……ありがとうございます!」


自分でも緊張しているのが分かる。
憧れていた衛士の証でもあるウイングマーク、それを准将自らが私に付けようとしてくれているのだ。
正直言って、これまでにない程の緊張感だったと言える。
その後、他の皆も順番に徽章を授与されていった。


「尚、現在入院中の御剣 冥夜訓練兵に関しては、後日改めて衛士徽章の授与を取り行う……以上をもって国連太平洋方面第11軍・横浜基地衛士訓練学校第207衛士訓練小隊解隊式を終わる!」
『『「……ありがとうございました!!」』』


やはり准将は、最後まで彼らの事に触れなかった。
という事は、彼らは今回任官出来ず、今一度訓練を再開する事になる。
出来る事ならば、彼らと共にこの場で喜びを分かち合いたかった。
それぞれの胸に衛士徽章が輝き、これで私達は晴れて衛士の仲間入りが出来たというのに、私の心には何処か雲が掛かった様に感じる。
だけど、私達はここで立ち止まる訳にはいかない。
彼らが任官出来なかったというのなら、彼らの分も頑張らなければならないのだ。
恐らく皆も言葉にはしていないが、私と同じ気持ちだろう。
私達はその実感を噛み締めていた……そして、新たな一歩を踏み出さなければならない。
任官した私達が最初に行うべきこと、それは―――





《Marimo side》



私が講堂を後にしたのは、ラダビノッド准将がその場から立ち去るのとほぼ同時だった。
そして今、彼女達は衛士として任官した事の喜びを噛み締めている頃だろう。
やはり自分自身に嘘は吐けない……今の私の心境は、彼女達のそれとは全くの逆だった。


「……守られていた時間は終わり、ただの兵士として戦場に出る……これで、良かったのよね」


私は講堂の外壁に背をもたれながらそんな事を一人呟いていた。
あの子達がそれを望んでいたのは知っている。
でも、本当はその望みすらこの戦時下でそう教育されたものだ。
もしこれが……そこまでの言葉が頭を過ぎった時、私は頭を振ってその考えをやめる。


「……未練、ね」


それは何に対してだったのだろうか。
ポツリと呟いたそれは、自分の過去に起因しているのは承知している。
だが、それを今更どうこう言うつもりはない。
とはいえ、こうしてその様な考えが頭を過ぎっている時点で、それらはやはりただの未練でしかないのだろう。
そんな時だった―――


「―――神宮寺軍曹ッ!!」


バタバタと大きな足音を立て、大声で私の名前を叫びながら複数の人間がこちらに向かって来ている事に気付く。
足音のする方向へと振り返ってみれば、そこに現れたのは案の定彼女達だった。


「軍曹……あのっ!」


私はこの時、これからの事がこの子達に対しての最後の授業だと考えていた。
彼女達が任官した以上、私はもう上官では無い。
そして、彼女達を笑顔で見送る事がこの子達にしてあげられる最良の贈り物だと思ったのだ―――


「―――ご昇任おめでとうございます。少尉殿!」
『『「―――!?」』』


敬礼し、改めて私は彼女達に向き直った。
やはりその態度に対し、彼女達は戸惑いを隠せないでいる。
先程までは私の方が上官だったのだから癖が抜けきっていないのだろう。
それも当然だろうと感じるが、いつまでもこのままでいられないのも事実なのだ。


「軍曹、貴女には大変お世話になりました……!」
「お気を付け下さい少尉殿、私は下士官です。丁寧な言葉をお遣いいただくにあたりません」
「は、はい」
「……神宮寺…軍…そ…本当に…本当…にわたっ…わた…し…! ひぐっ―――」
「―――お気持ちは十分いただきました。さあ、涙を拭いて」
「うっ…ぐ…!」
「……軍曹、最後の教練…感謝する」
「彩峰、あなた…」
「光栄です少尉殿」


207訓練部隊には、まだ他に隊員達が居るが、この場に居るのはこの子達だけだ。
その理由を夕呼から聞かされた時、私は本当に驚かされた。
だが、それと同時に納得できてしまった事もある。
当初はあれだけの力量をもった者達が、何故訓練部隊にと考えさせられたのも事実だ。
夕呼の話には少々違和感を感じさせられるものもあったとはいえ、こういう時代であればああいったケースが無いとも言い切れない。
彼らもまた、ある意味で犠牲者なのだろう。
しかし、これらの事実を私は彼女達に伝える事を許可されていない。
真実を知った時、彼女等は彼らに対しどのような反応を示すのだろうか?
すんなりと受け入れる者もいれば、逆にそれを受け入れない者も出て来るだろう。
正直言って私は、前者の方であって欲しいと願いたい。
いくら事情があったとはいえ、私の教え子達がいがみ合う様な事にだけはなって欲しくないのだ。
だから私は、この子達を信じるしかない。
そして願わくば、彼女達が彼等や先任達と共に同じ道を歩んでくれる事を願いたいのだ―――


「―――それでは皆さん、武運長久を……!」


その言葉を最後に、私は彼女達の元を後にした。
これで私の教官としての仕事は、本当の意味で最後だ。
彼女達の任官、それは同時に私の教官職を解かれる事を意味している。
この後、改めて次の任務に関する辞令が下りると聞かされているが、教官職を解かれた以上はどこかしらの部隊に配属されるのだろう。
そう考えた時、私の中に様々な感情が溢れて来るのが分かる。
出来る事ならば、もう少しだけ彼女達を導いてあげたかった。
恐らくはその感情が一番心の中を占めていたに違いない。
やはり、これもまた未練の一つなのだろう。
私は一人、そんな事を考えながら歩いていたのだった―――






《Miki side》




任官式が終わった直後、私達はこれから配属される部隊への辞令を受け取りました。
正直に言ってしまえば、この辞令の内容がどういう意図でこうなったのかは分かりません。
さっきまで『これで皆ともお別れですね』なんて話していたのに、蓋を開けてみればまた皆一緒に同じ部隊への配属だったんです。
ブリットさん達C小隊の皆がどうなったのかも分からないし、やっぱり任官出来なかったのかな?
今度タケルさんに会う事があったら、もう一度聞いてみよう。
もしそれが無理だったなら、別の方法を考えるしかないんだけど、ずっと一緒に頑張って来たんだしどうしても気になるよ。
後で皆とも話し合ってみようかな?


「それにしても、辞令を受けてそのまま今日の午後に配属先に異動しろなんて、よっぽど上層部の人達はせっかちなんだね」
「そんな訳無いでしょう? それにしてもまた全員同じ部隊になるなんてね」
「そうですね。あんなに泣いてお別れしたのに……でも、私は凄くうれしいです」
「そうだね。ねえねえ、慧さんもそうでしょ?」
「……別に」
「相変わらずね貴女は……まあ、別にもう慣れたから良いけど」


鎧衣さんの問いかけに対し、彩峰さんはそっけない返事をしている。
嬉しくないのかと思ったけど、多分答えはノーだと思う。
本当に嫌だったら私達と一緒に行動する筈無いもの。
私は今、またこのメンバーで一緒に行動する事が出来るのが本当にうれしい。
だけど、本音を言うとこの中に御剣さんも居て欲しかった。
ずっと面会謝絶で会う事も許されず、元気なのかどうかすらも判っていない。
タケルさんは大丈夫だって言ってたけど、やっぱりちゃんと本人の顔を見て話してみないと不安だよ。
御剣さん、本当に大丈夫なのかなぁ―――


「―――さて、ここよ。ここから先には今後私達の隊長になる方や先任達がいらっしゃるわ。誰とは言わないけれど、粗相の無いようにね」
「大丈夫、私はどっちかって言うと榊の方が心配」
「あら、それってどういう意味なのかしら?」
「言葉通りの意味……何だかんだで榊もたまにやらかす事があるしね」
「な、なんですって!」
「ふ、二人とも落ち着いて下さい!」
「そ、そうだよ慧さん、千鶴さんも…着任直前に喧嘩なんてよしなよ!」
『あー、とりあえずお前ら、上官を待たせるのもなんだから、レクリエーションは程々にして早く中に入って来い』
『『「!?」』』


部屋の外でこれだけ騒いでいたら、それは当然中に聞こえていてもおかしくない。
多分、この部屋の中に居る私達の上官は、私達の存在に気付いて声を掛けて来たんだろうと思う。
でも、そんな事は別にどうでもよくなってしまった。
私達が揃って驚かされたのは、その声に聞き覚えがあったからだと思う。


「し、白銀!? い、いえ、失礼しました白銀大尉!」
「ああ、別に敬礼なんて良いから、とりあえず中に入って来い。話しはそれからだ」


やっぱり声の主は、タケルさんで間違いなかった。
入室を促されて中へ入ってみたけれど、部屋に居たのはタケルさん以外に後二人だった事に驚かされる。
一人は私も良く知っている月詠中尉だったけど、もう一人は見た事無い人だ。
なんだか私達を見て嬉しそうな表情を浮かべてる気がする。
ひょっとして、凄く喜んでくれているのかな?
だとしたら、私も凄くうれしい。
見た感じ、私達とそう歳も離れていないみたいだし、仲良くしてもらえたら良いんだけど―――


「―――先程はお騒がせして申し訳ありませんでした。榊 千鶴以下3名、本日付で同部隊へと配属される事になりました。今後ともよろしくお願いします」
『『「よろしくお願いします」』』
「国連軍横浜基地特殊任務部隊A-01フェンリルナイツ隊長・白銀 武大尉だ。まあ、お前達にしてみれば見知った顔だとは思うが、今後ともよろしく頼む」
『『「ハイッ!」』』
「それじゃあ他の隊員を紹介させて貰う。同部隊の副隊長を務めて貰っている月詠 真那中尉だ」
「先程紹介に与った、月詠 真那中尉だ。よろしく頼む」
「月詠中尉は、この度帝国斯衛軍から出向という形で同部隊に配属されている。本来ならば隊長を務めていてもおかしくはない人物だ。お前らも色々と学ばせて貰うといい」
「そ、そんな。私などまだまだです大尉」


タケルさんにそう言われた中尉は、凄く照れていた。
室内に居たほぼ全員が、その意外過ぎると言っても良い表情に驚いている。
見かけたときはいつも真剣な表情をしているのに、ちょっと意外だったかもしれない。


「ハハハ、謙遜しなくても良いですって。それからそこに居る彼女は、一応お前達の先任に当たる。純夏、自己紹介してやってくれ」
「はい。鑑 純夏です。階級は少尉で一応皆の先任って事なんだけど、私達同い年だし、階級とか関係無しに接してくれて構いません。皆よろしくね」
『『「よろしくお願いします」』』
「一応言っておくが、純夏も斯衛軍からの出向だ。それとこの場には居ないが、冥夜も退院次第この部隊への配属が決まっている。後、霞もこの部隊に配属になってるんだが、副司令の手伝いで遅れると聞いている。後で合流する手筈になっているから、挨拶はその時でいいだろう。さてと、何か質問はあるか?」
『『「……」』』
「よし、では続いてこの部隊について説明させて貰う。いいか、心して聞けよ?」


それからタケルさんは、この部隊について色々と説明をしてくれた。
聞いたところによると、この部隊は香月副司令直属の特務部隊で、つい先日作られたばかりらしい。


「ちなみに結成の経緯に関してだが、煌武院 悠陽殿下が係わっている。この部隊は表向きは香月副司令の直属だが、それはあくまでカモフラージュに過ぎない。国連軍に派遣された煌武院 悠陽殿下直属の部隊だと考えて貰って良い。人選に関しても横浜基地、帝国軍、斯衛軍から招集され、有事の際は独立して動く事を許可されている。そして結成目的は、とある計画の完遂とBETAの打倒だ!」


今の私の心境は、正直言ってこの場所から逃げ出したいくらいのものだった。
香月副司令の直属ってだけでも驚きなのに、それが実はカモフラージュで本当は殿下の直属だなんてどうしたらいいんだろう。
チラッと周りを見てみたけれど、皆も同じように驚いてるし、動揺してないのはタケルさんと月詠中尉、それに鑑少尉の三人だけだし。


「とまあ、ここまではあくまで建前だ。有事の際って言うのは、あくまで言葉のあやに過ぎないと思ってくれ。要するに、それくらいの覚悟をもっていて欲しいって事だ」
「白銀大尉の言葉に補足させて貰うと、我々は香月副司令直属である特務部隊である事には変わりない。本来、殿下の直属は斯衛軍が務めるものであり、我々は彼らですら対応が困難とされた場合に動くに過ぎん。よってあまり難しく考える必要はないから安心しろ」
「補足説明ありがとうございます中尉。さて、ここまでで何か質問は?」
「……タケルちゃ、じゃなかった。白銀大尉、多分皆、驚きの方が勝っててそれどころじゃないと思います」
「だろうな。まあ、さっきも言ったけど結成の経緯を説明したのは、あくまでお前達にある程度の覚悟をもっていて貰いたかったからだ。訓練兵とは違って、任官すればそれ相応の責任を背負わなければならない。気を引き締め、事に当たって貰いたくて最初にこんな事を言わせてもらった。だからお前達は、追々それに対応できるようになって言ってくれればいい。お前達は、あの神宮寺軍曹の教え子なんだからな」


タケルさんが最後に言った言葉のお陰だと思う。
私達は軍曹の教え子であり、あの人から沢山の事を教えて貰った。
色々厳しい事もあったけれど、多分それは私達がこうして任官してもきちんとやって行けるようにと思っての事だったんだろうと思う。
タケルさん達も、私達に期待してくれているからこうしてこの事を話してくれたんだ。
それを裏切ったりしたら、私達は神宮寺軍曹に会わせる顔が無いよね。
だから、今までよりももっと頑張らなきゃいけない。
きっと皆も同じ気持ちだと思う。
少なくとも、私はそう考えていた―――





《Kei side》




まさか配属初日、というか配属直後にこんな重大な事を聞かされるとは思ってなかった。
この部屋に来てからまだ数分しか経っていないっていうのに、もう何時間も経過しているような気持ちにさせられる。
普段はそんな素振りを見せる事の無いと思っている自分でも、流石にこの話を聞かされた直後は緊張もするし動揺もしてしまう。
ひょっとしたら顔に出ているかもしれないけれど、それは皆も同じことだし別に構わないけどね―――


「―――さて、今日はお前達の技量を確認させて貰おうと思う。先ずは機種転換も兼ねて訓練だ。各自、強化装備着用後14:30にシミュレータールームへ集合だ。以上、解散!」
『『「ハイっ!」』』


どうやら今日は、かなりハードな一日になりそう。
初日から飛ばすよね白銀も……でも、私にとってはそれは願っても無い事かもしれない。
任官する事が出来たけれど、私は、いや私を含め皆はまだまだひよっ子だ。
今は少しでも強く、そして目標とする彼に追いつきたい。
あの時、私の心は多少なりとも救われたと思う。
だから、彼の期待に応える事が何よりの恩返しだ。
私はこの時、そんな事を想いながらドレッシングルームに向かっていた―――







―――指定された時間になり、私達はシミュレータールームに来ている。
正規兵用の軍服は支給が間に合わないと言われたけれど、強化装備が訓練用の物から変わった事は素直に嬉しかった。
あまり動じないようにしていたつもりだけれど、一応私も女だ。
多少なりとも羞恥心は持ち合わせているし、何よりもこの黒い強化装備が正規兵の証であることが喜ばしい。
多分それは、他の皆も同じ気持ちだと思う。
何だかんだで付き合いも長い事だしね。


「さて、まず新任には機体になれて貰う為に簡単なプログラムを用意した。オペレーターは月詠中尉が務めてくれる。使用機体は不知火、装備は一番スタンダードな設定とさせて貰う」
『『「はいッ!」』』
「それでは各自、搭乗を開始しろ!」
『『「了解!!」』』


このシミュレーターから社も私達に合流していた。
そして訓練には彼女と鑑少尉も参加するよう指示を受けている。
社は分かるとして、少尉も機種転換訓練を受けるとは思っていなかった。
斯衛軍の衛士だったって事は、武御雷の搭乗経験もあるだろうし、それ以外の機体にも乗った事はあるよね?
ひょっとしたら実はこの人も、私達と同じで任官したてなのかもしれない。
なるほど、さっき階級を気にする必要はないって言ってたのは、こういう意味だったのか。
性格も榊みたいにお堅いイメージじゃないし、案外上手くやって行けるかも知れない。


『各機準備は良いな? とにかく実戦仕様の不知火の性能を体で覚えるんだ。吹雪と同じ第三世代機とはいえ、舐めてかかると痛い目に遭うからな。油断するなよ?』
『『「了解!」』』


帝国軍が開発した初の国産機である不知火。
吹雪と同じ第三世代機に位置付けされている機体だけど、やっぱりその性能は高等練習機とは比べ物にならなかった。
同じ感覚で操縦すると、簡単に振り回されてしまう。
XM3が搭載されているお陰で、キャンセルを使えば何とか動かす事は出来るけど、それでも難しい。
他の皆も苦戦してるだろうなと思っていたけど、そんななかで一人だけ器用に不知火を操っている人が居た。
正直言って、さっきの発言を取り消したい。
鑑少尉は、絶対に任官したてじゃないと思う。
何処となくだけど、白銀に似た動きをするし、慣熟が必要ないんじゃないかと思う位に順応している。


「凄いですね鑑少尉。先程から驚かされてばかりです」
「いやいや、そんな事無いよ榊さん。このXM3が搭載された機体は今日が初めてだし、不知火も1、2回しか乗った事がないんだから……それと、さっきも言ったと思うけど、私達同い年なんだから敬語は使わなくていいよ」
「で、ですけど……」


そんなやり取りをしながらも、彼女は設定された市街地跡を縦横無尽に動き回っている。
匍匐飛行からのショートジャンプ、その後ビルの壁面を利用して更に跳躍し、今度はその動作をキャンセルしたかと思えば急降下。
着地とほぼ同時に再び匍匐飛行を開始し、私達の先を進んでいる。
こっちは全力とはいかないけれど、現時点では彼女と同じ様な速度で動き回る事は出来ていない。
機体になれていない分、無意識に力をセーブしてしまっているのかも。
正直に言うと、これは結構悔しいかも知れないと思う。
本人は今日初めてXM3搭載機に搭乗したって言ってるけど、この短時間でここまで乗りこなせるのは驚きだ。


『あー、お前ら、本人がそう言ってるんだし、別に俺や月詠中尉に遠慮する必要はないぞ。場を弁えてくれれば、それ以上の事を言うつもりはないからな』


そんな事を考えている私を余所に、白銀がこんな事を提案していた。


「ほら、タケルちゃんだってああ言ってるんだし、今後は敬語ナシでいこう! という訳だから、皆、改めてよろしくね!」


タケルちゃん……?
さっきのブリーフィングルームでのやり取りを見て思ってたけど、やっぱりこの二人は親しい間柄なんだろうか?
これは後で聞いてみるのも面白いかもしれない。


「わかり、いえ、分かったわ。鑑の言うとおりにさせて貰うわね」
「……いきなり呼び捨て、流石は榊だね」
「なっ、別にいいじゃないのよ!」
「そうだよ彩峰さん。私は全然気にしてないし」
「それじゃ、私もそうさせて貰う。という訳でよろしく」
「こっちこそ、よろしくね」
「か、鑑さん、わ、私もよろしくお願いします」
「うん、壬姫ちゃんもよろしくね」
「ハイっ!」
「よろしくね純夏さん」
「うん、こっちこそよろしくね鎧衣さん」
「純夏さん、私もよろしくお願いします」
「当然だよ霞ちゃん! 私、霞ちゃんにまた会えて本当に嬉しいんだから!!」
「私もです。これからまたずっと一緒ですね」
「そうだね! ……っと、うわ、うわっ!」


こうやって会話が出来るって事は、皆ある程度動きになれて来たんだろう。
その間に私達は、こんな感じで私達は挨拶を終えた。
その直後、操縦を誤ったのか鑑が盛大に転んだ。
どうやら彼女は、多少どこか抜けている所があるらしい。
なかなかに面白い、いや、楽しめそうな……楽しそうな子かもしれないと私は考えていた―――






《Mikoto side》



『さて、良い感じで親睦を深めてるみたいだな。それでは次の内容に移るぞ。これより貴様達には模擬戦を行って貰う。内容はシミュレーター内に現れる敵機の撃墜だ』
『『「了解!」』』


オペレーターを務める月詠中尉からの指示は、予想以上にハードだと思った。
昔、父さんに連れられて色々なところで色んな目に遭ったけど、その時に比べたらまだマシな方かな?
多分これは、ボク達の機種転換と同時に慣熟を早めるためだと思うけど、タケルや中尉の事だから何か考えがあっての事なんだろうと思う。
やっぱり隊長を任されるだけあってタケルは凄いよね。


『それでは準備を含め、今から10分間の休憩を挿む。その間にポジションを決めても構わんし、作戦を練っても構わん。装備に関しては、各自の好きな物を選択して良いと白銀大尉から許可が出ている。以上だ』
『『「了解ッ!!」』』


ボク達全員、純夏さんとは初めて一緒にチームを組む。
さっきの機動を見てたけど、この人も本当に凄い。
今日初めてXM3に触った人が、いきなりここまで動けるなんて思わなかったよ。
でも、正直に言えば、この短時間でいきなり模擬戦をやるのはかなり厳しい状況だよね。
純夏さん以外のメンバーは、訓練部隊に居た頃から一緒だからある程度の癖も把握してる。
だから色々な状況でどう動くのかもある程度解るけど、彼女の場合はどう動いてくれるかが判らない。
そうなってくると、ポジション決めと作戦が大事なんだけど、千鶴さんはどうするつもりなのかな?


「それじゃ、ポジション決めと作戦会議だね」
「そうだね。でも、結構難しいと思うよ」
「あはは、それって多分、私のせいだよね」
「ええ、貴女には色々と質問をしたいんだけど、構わないかしら?」
「良いよ。何でも聞いて」
「それじゃ質問させて貰うわ。斯衛軍に居た頃のポジションは何処だったのかしら?」
「うーん、色々とやった事があるけど、突撃前衛(ストーム・バンガード)と強襲前衛(ストライク・バンガード)が多かったかな」
「それじゃあ今回は、彩峰と二人で突撃前衛をお願いするわ。それでいいかしら?」
「OKだよ。彩峰さん、一緒に頑張ろうね!」
「了解」
「他の皆は、それぞれ訓練部隊の時のポジションで行きましょう。その方がお互い動きやすいでしょうしね」
「なるほど、それなら臨機応変に対応できるね」


ポジションはそう時間もかからずに決める事が出来たけど、問題は作戦の方だ。
さっきボク達は、月詠中尉からこれから現れる敵機を倒せって言われただけでそれ以外の詳細を知らされていない。
この限られた情報から考えると、多分相手は戦術機なんだろうと思う。
多分それは皆も理解しているんだと思うけど、やっぱり情報が不足という事で作戦らしい作戦をたてることが出来なかった。
最終的に純夏さんと慧さんの二人が囮になって様子を窺った後、千鶴さんと社さんが相手の動きを分析、そしてその間ボクと壬姫さんは援護に徹する事になったんだ。
でも、その考えが甘かったって言う事実は、模擬戦が始まったとほぼ同時に覆される事になるなんて、この時はまだ誰も気付いてすらいなかった―――



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