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No.19794の一覧
[0] 天河くんの家庭の事情(逆行・TS・百合・ハーレム?)[裕ちゃん](2010/07/24 18:18)
[1] 天河くんの家庭の事情_00話[裕ちゃん](2010/07/23 17:46)
[2] 天河くんの家庭の事情_01話[裕ちゃん](2010/06/26 12:59)
[3] 天河くんの家庭の事情_02話[裕ちゃん](2010/06/24 07:53)
[4] 天河くんの家庭の事情_03話[裕ちゃん](2010/06/24 07:53)
[5] 天河くんの家庭の事情_04話[裕ちゃん](2010/06/24 07:54)
[6] 天河くんの家庭の事情_05話[裕ちゃん](2010/07/10 22:31)
[7] 天河くんの家庭の事情_06話[裕ちゃん](2010/06/24 07:55)
[8] 天河くんの家庭の事情_07話[裕ちゃん](2010/06/24 07:55)
[9] 天河くんの家庭の事情_08話[裕ちゃん](2010/06/24 07:55)
[10] 天河くんの家庭の事情_09話[裕ちゃん](2010/06/24 07:56)
[11] 天河くんの家庭の事情_10話[裕ちゃん](2010/06/24 07:56)
[12] 天河くんの家庭の事情_11話[裕ちゃん](2010/06/24 07:57)
[13] 天河くんの家庭の事情_12話[裕ちゃん](2010/06/24 07:57)
[14] 天河くんの家庭の事情_13話[裕ちゃん](2010/06/26 02:01)
[15] 天河くんの家庭の事情_14話[裕ちゃん](2010/06/26 11:24)
[16] 天河くんの家庭の事情_15話[裕ちゃん](2010/06/26 23:40)
[17] 天河くんの家庭の事情_16話[裕ちゃん](2010/06/27 16:35)
[18] 天河くんの家庭の事情_17話[裕ちゃん](2010/06/28 08:57)
[19] 天河くんの家庭の事情_18話[裕ちゃん](2010/06/29 14:42)
[20] 天河くんの家庭の事情_19話[裕ちゃん](2010/07/04 17:21)
[21] 天河くんの家庭の事情_20話[裕ちゃん](2010/07/04 17:14)
[22] 天河くんの家庭の事情_21話[裕ちゃん](2010/07/05 09:30)
[23] 天河くんの家庭の事情_22話[裕ちゃん](2010/07/08 08:50)
[24] 天河くんの家庭の事情_23話[裕ちゃん](2010/07/10 15:38)
[25] 天河くんの家庭の事情_24話[裕ちゃん](2010/07/11 07:03)
[26] 天河くんの家庭の事情_25話[裕ちゃん](2010/07/12 19:19)
[27] 天河くんの家庭の事情_26話[裕ちゃん](2010/07/13 18:42)
[29] 天河くんの家庭の事情_27話[裕ちゃん](2010/07/15 00:46)
[30] 天河くんの家庭の事情_28話[裕ちゃん](2010/07/15 14:17)
[31] 天河くんの家庭の事情_29話[裕ちゃん](2010/07/16 17:35)
[32] 天河くんの家庭の事情_30話[裕ちゃん](2010/07/16 22:08)
[33] 天河くんの家庭の事情_31話[裕ちゃん](2010/07/17 01:50)
[34] 天河くんの家庭の事情_32話[裕ちゃん](2010/07/21 01:43)
[35] 天河くんの家庭の事情_33話[裕ちゃん](2010/07/21 23:39)
[36] 天河くんの家庭の事情_34話[裕ちゃん](2010/07/22 04:13)
[37] 天河くんの家庭の事情_35話[裕ちゃん](2010/07/24 18:16)
[38] 天河くんの家庭の事情_小話_01話[裕ちゃん](2010/06/25 20:30)
[39] 天河くんの家庭の事情_小話_02話[裕ちゃん](2010/07/07 03:26)
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[19794] 天河くんの家庭の事情_10話
Name: 裕ちゃん◆1f57e0f7 ID:326b293b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/06/24 07:56
サセボを出たアオとマナカはマンションの近くまで戻って来ていた。
そこで、アオはマナカに先に帰って貰いアカツキの所へ報告に向かった。
いつものように会長室へ向かうと、待ちかねたかのようにアカツキが声をかけた。
エリナもアオに声をかけるとひらひらと手を振る。
エリナも気を許して来たのか、アオが来る時はかなりフランクになっているようだ。

「やぁ、アオ君。弟君は元気だったかい?」
「うん、元気元気。私とマナカさんを助けられたって事になってるし、今回ので目的も出来たから怖いのから逃げるっていうのは無くなると思うよ」
「そうかい、それは結構だ」
「それで、これがその契約書」

そう言うとアキトのサインが入った契約書をアカツキに渡す。
アカツキはざっと不備がないか確認していく。

「お、わざわざすまないね。...ふむ、とりあえずはテストパイロットね」
「そ、時間があるのにナデシコが飛ぶまで何もしないなんて勿体ないからね、サセボに行ったらたっぷり絞ってやろうかなって思ってる。
帰る時に一人で出来るメニューは渡したし、なんとかなるでしょう」

しかし、そのメニューの余りの過酷さにアキトが途方に暮れていた事まではわからなかった。
その後サセボの街には早朝と夜に恨み事を口にしながらやけくその様に我武者羅に走る少年の姿が見える事となる。

話の中でサセボという言葉に反応したアカツキは話しを切りだす。

「そう、そのサセボの事で連絡しようと思ってたんだ」
「ん?何か進展あったの?」

サセボの事ならナデシコ関係の話しである。
戦艦全体の組み上げを始める段階になってからサセボでの作業になるのでそう聞いた。

「あぁ、君の持ってきた詳細なデータと君達監修のお陰で各機関毎の稼働テストが以前の計画と同時期には終わる見込みになった。
そこで当初の予定通り月が変わった11月にはサセボでナデシコの建造を始める予定だよ。
来年の8月までには全ての稼働実験が終わるから先に艦体を作り始めて順次組み込んでいく形になる。
エステバリスの稼働実験は12月に終わるから、実働試験として本格的に動かすのはそれからになるよ」
「あ、アオさん。ちなみに今回の件でアオさんとルリちゃん、ラピスちゃんにはボーナス弾む事になるから期待しててね」
「わ、やった!ありがとう、エリナさん♪」
「どういたしまして~」

書類を読みながら話しに耳を傾けていたエリナは、話しに割り込むと顔を上げて言った。
思わぬボーナスアップにアオは素直に喜んだ。
頭の中では

(早くルリちゃんとラピスにも教えなきゃ♪それに何かプレゼント買ってあげよう)

などと考えていた。

「そうなると、人集めも予定通り年を跨いでから?」
「そういう事になるけど。何か希望があるのかい?この人は早めに取って欲しいとか」

アオは顎に手をやり少し上を向きつつ思案すると思いついたように切りだした。

「そうね...ウリバタケさんは早めに欲しいな。ただ、オリエさんに悪いからせめてお給金はよくしてあげて欲しいのよね。
あと、あの人の改造と発明でかなり助けられるから別途に開発費を設けてあげる事は出来る?」
「ふむ、何の信用もないのにそういう訳にはいかないな。向こうもいきなりそこまでされては気味悪がるだろうしね。
だけど、そんなに凄いのかい?」

アオがそこまで褒めるのだ、興味が湧いたアカツキは詳しい事を聞いた。
アオは一つ一つ思い出すように指折りしていく。

「えっと、ディストーションフィールド中和装置やディストーションフィールドを応用しての隔壁毎のブロックに...
小型のジャンプユニットとか大抵のセンサーを誤魔化せる迷彩シートもあの人が作ってたわね。
他にもあったはずだけどすぐには出てこないや...
ジャンプユニットはイネスさんからの依頼で作ったみたいだけどね」
「そうか、エリナ君、なんとか出来そうかい?」

こちらの利益にもなりそうだと考えたアカツキは半ば受け入れていた。
そこで、契約内容をどうするか、エリナの意見を聞いた。

「そうね...全部が全部成功する訳じゃないだろうし闇雲に資金だけあげて使い込まれたらたまったものではないですわ。
ただ、出来あがった物が有用だった場合、それにかかった費用を返上するって形なら何とかなると考えられます。
そこでの水増し程度なら可愛いものですから」
「じゃ、そんな形でいこうか」

エリナの答えに満足したアカツキはその意見を通す。
それを受けてアオは続けた。

「後はパイロットの教育かな?シミュレーターくらい早く出来るでしょ?」
「それくらいなら問題ないだろうね、シミュレーターの数が出揃い次第パイロットと契約するようにしよう」

パイロットについては異存がなかったのかすぐ意見を受け入れた。
そしてまだ他にいるかい?と目線で問いかける。

「後は、大丈夫かなぁ...あ、少し話は変わるんだけどボソン通信とボソン技術の確立の件いつ頃目処が立ちそう?」
「エリナ君わかるかい?」
「はい、ボソン通信については今月末には、運搬用のボソン技術は年内にはなんとかなりそうです」
「ありがとうございます。ボソン通信が出来たら一度火星と話して貰っていいですか?それと同時に政府や軍と交渉を始めようと思う」
「そうかい、わかったよ。そうなると更に忙しくなるねぇ。アオ君にも色々手伝って貰わないといけないね」

アカツキの顔が商売人の顔へと変わる。
交渉の内容が内容なので、一つでも大きくしくじると全てが水の泡になる。
それどころか反逆罪で極刑になるだろうし、ネルガルも終わるからだ。
一つ一つ丁寧に舵取りをしていかないといけなくなる。

「え~、ナガレの本分でしょ?」
「立案はそちらだと記憶してるんだけどね?」
「冗談ですよぅ。過労死したらどうしよ...」

自分でさえ浮足立ってしまいそうになる程の大きな話ではあるが、目の前にいる少女と轡を並べられるならなんら不安はない。
そう本気で考えている自分に本当にどうにかしてしまったようだと苦笑するアカツキだった。

「どうしたの、ナガレ?変な顔してるよ?」
「いや、明日の事が楽しみでね。ぼ~っとしていた」
「それなら頑張って仕事終わらせようね」

アオはそう言うとニッと笑う。
エリナはうんうんと何度も頷いていた。

「エリナ君、最近はしっかりとやっていると思うんだけど?」
「"は"ってなんですか"は"って、普段からしっかりやって下さい」
「うんうん、任せられた事をしっかりとしない人は嫌いです」

アオから嫌いと言われる事は避けたかったアカツキには選択肢がないのである。
エリナはアオのおかげでアカツキがしっかりと仕事をしてくれるためとても助かっていた。
逃げ道を塞がれた思わずうなだれたのだった。

その後部屋へ戻ったアオはルリとラピスからしきりに話しをせがまれた。
それをなんとか食事の時にと落ち着かせると、みんなで料理をする。
食事中は約束通りアキトの話しで盛り上がった。
ルリはそれをどこか懐かしそうな顔で聞き、ラピスは自分の知らないアキトの姿に興味津々に聞き入っていた。

次の日、アオ達4人は早めに仕事を切り上げて準備にかかっていた。
魚をリクエストという事で秋が旬の金目鯛を煮付けに、余った所はあら煮にした。
後は海老とイカを揚げ物にし、きんぴらと里芋の煮っ転がしを作る。
ふかしたジャガイモからポテトサラダを作ってと慌ただしく動き出していた。

そんな中18時半を過ぎた頃にアオの部屋のインターホンが鳴った。
コールを取るとカウンターからアカツキが来てると言われ、思わず嫌な顔をしてしまった。
渋々部屋へ上げて貰うよう伝えてしばらくすると玄関のインターホンが鳴る。
その瞬間勢いよく扉を開けるとゴンッといい音がした。
見ると玄関前でうずくまってる妙に気合の入った服装をしたロン毛がいた。

「...何?」
「や、やぁ。仕事が早めに終わったからね、お呼ばれに上がったんだけど」
「で、今何時?」
「18時半だね」
「約束何時だっけ?」
「20時頃だね」
「.....何か言う事は?」

かなり機嫌を損ねているようだ。
その顔を見て冷や汗を垂らしながら正解を考える。
下手な事を言うと時間まで叩きだされかねない。

「え~~~...連絡せず申し訳ありません...」
「結構。こっちも準備があるのよ?それくらいわかってるでしょうに...」

そういうと中に招き入れた。
それに安堵のため息をつくとアオにお土産を手渡す。

「いやぁ、浮かれてしまってね。はい、これはお土産。ケーキだよ」
「ん、ありがと。エリナとプロスさん、ゴートさんは?」
「ボクが早めに出るのを知って、あの3人が慌ててたから早めに来ると思うよ」
「わかったわ。今日はお客なんだし適当に寛いでて」
「はいはい。わかったよ」

アカツキをリビングへ通すとテーブルにコップと2リットルペットボトルの水をドンと置く。
目線が常識のない人にはこれで十分ですと言っているので文句もつけられない。
ただ、その後にちゃんと焼き菓子を持ってくるあたりは流石である。
そうしてアオはキッチンへ戻っていった。
アオが戻ったキッチンはいつもの通り、アオとルリ・マナカとラピスのペアで料理を作っていく。
わいわいと楽しげに会話をしながら料理を作っていく彼女達にアカツキは見惚れていた。
早く来たのはそれが目的だったのかもしれない。
そんな中ルリは少し寂しそうな声を出した。

「アオさん、最近アカツキさんと仲がいいんですね」
「ん?どうしたのルリちゃん?」
「...なんでもないです」

どうしたんだろう?と疑問に思っているアオにマナカが助け船を出した。

「アオさん、ルリちゃんはアオさんが男性の方と仲良くしてるから寂しいんですよ」

マナカの言葉にルリは真っ赤になって俯いてしまった。
それを受けてアオは嬉しそうな表情をするとルリを呼んだ。

「ルリちゃん、こっち向いて?」
「...なんですか?」

そしていきなりキスをする。
リビングの方から何か吹き出す音が聞こえたが気のせいだろう。

「ありがとね♪」
「...なんでありがとうなんですか」
「ん、嬉しいからかな」
「...ばか」

そんなやり取りをしつつも料理は進んでいく。
そしてそろそろ19時半になろうかという頃、またインターホンが鳴る。
今度はエリナとプロス、ゴートだった。
すぐに上げて貰う。
玄関のインターホンが鳴ると今度はすぐ開けますと伝えてから玄関に向かった。

「エリナ、プロスさん、ゴートさん、こんばんわ」
「アオさんこんばんわ。ごめんなさいね、うちのボンボンが迷惑かけてない?」
「いえ、水出して放置してあるので大丈夫ですよ」
「そう、よかったわ。あとこれお土産。ワインじゃなくてワイン酒造が作ったジュースよ」
「わ、ありがとうございます。それじゃ、上がって下さい」
「「「お邪魔します」」」

3人をリビングへ通すと今度はちゃんとしたお茶を出す。
お茶菓子もアカツキへ出した物より手が込んでいるように見えるのは気のせいではないのかもしれない。
それを眺めてアカツキは少し寂しそうだった。

「アカツキ君、あなた、もう少しは考えて行動してくれないと困るわよ?」
「そうですなぁ。仕事が終わったとはいえ、ネルガル会長として規範を保って頂かないと...」
「いや、浮かれてしまってね。気付いたら来ちゃってたんだよ」
「子供なの、あんたは?」

勤務時間が終わった途端敬語と切りかえるのは流石といったところだろうか。
プロスからも小言を貰うが、アカツキに悪びれた様子は見られなかった。
それからは10分も経たずに料理が出来あがりみんなが席についた。
上座からアカツキ、エリナ、プロス、ゴートの順に、向かい側はアオ、ルリ、ラピス、マナカの順に座る。
食前酒として小さなグラスに梅酒を用意して乾杯をする。

「さて、それじゃナガレお願いね」
「...ボクかい、わかったよ。え~、皆さんグラスをお上げ下さい。
アオさん、ルリさん、ラピスさん、マナカさん、本日はお呼びに預かり光栄です。
貴女方との出会いによって私達の未来が輝かしいものになると、
貴女方との関係が何事にも代えがたい宝になると私達は確信しています。
その出会いに感謝を込め挨拶に変えたいと思います。乾杯」
「「「「「「「「乾杯」」」」」」」」

ルリとラピスは思った以上にしっかりした挨拶をしたアカツキに驚いていた。

「アカツキさん、ちゃんと挨拶出来たんですね」
「うん、アカツキちゃんとしてた」
「ルリ君にラピス君、これでもボクは会長なんだけどね?」
「それだけ適当だと思われてるんでしょ、普段しっかりしないからよ」

ちょっとショックを受けたようにアカツキは言うが、エリナにそら見た事かと窘められてしまった。
料理を食べ始めるとその味にアカツキ達4人は驚きしきりに褒めていた。
それにアオ達は照れていいたのだが、アオだけは喜びきれてないような表情をしていた。
そんな微妙な表情にルリが真っ先に気付いた。

「アオさん、嬉しくないんですか?」
「あ、ルリちゃんそうじゃないんだ」
「じゃあ、なんですか?」
「ん~、暗くなっちゃうからまた今度じゃ駄目かな?」
「いや、構わないよ。このままだと気になって味が楽しめない」

雰囲気を壊してしまうのを気にしたアオだったが、主賓のアカツキからそう言われたら答えるしかない。
弱ったなと頭を掻きながらも説明をしていく。

「ん、わかったよ。私って色々と知識とかインストールされてるじゃない?
だから何やってもどこか借り物の力な気がしちゃうんだ。
知ってるのと使いこなすのは違うっていうのもわかってるんだけど、こう...もやもやっとね」
「アオさんが一杯頑張ってたのは私が保証しますから、そんな事気にしないで下さい!」
「アオの料理は本当に美味しい」
「アオさんはルリちゃんとラピスちゃんが喜ぶ顔も借り物って言うんですか?」
「ルリ君の言う通りだ。これだけ出来て借り物なんて言われたら料理人が立つ瀬ない」
「そうね、これだけ美味しいのに借り物って言われたら逆にショックよ?」
「はい、是非ともコックとしてもうちと契約したいものですな」
「うむ、この味に嘘はないぞ」
「みんなにそこまで言って貰えるとは思わなかった。ありがとうございます」

自分としては些細な事だったのだが、全員から力一杯否定されて変な事を考えていた自分が恥ずかしくなってしまった。
顔を赤く染めて感謝をするアオの姿にみんなの顔が和らぐ。

その後もワイワイと楽しく談笑していたが、それに最初に気付いたのはアカツキだった。
アオとルリの動きが妙に感じたので、箸を止め注視する。
それに気付いたプロスやエリナ、ゴートも同じく二人の動きを注視した。
そんな4人に気付かず、アオとルリは自分達の中では普段通り動いていた。

例えばアオがお茶を飲もうと湯呑を持ち上げるが、中身が入ってない。
お茶は...と探そうとすると、ルリが「注ぎますよ」と湯呑にお茶を注ぐ。
今度はルリが里芋の煮っ転がしを取ろうと思ったが手が届かない。
お皿を寄せて貰おうとするが、その前にアオが気付き取り皿を持って取ってあげる。
はい。と渡されたルリは『ありがとう』と目で礼を言う。
更にラピスがお茶を飲もうと手を伸ばしひっかけてしまった時。
すかさずルリが立ち上がって湯呑を左手で持ち上げる。
アオは布巾をルリに手渡し逆にルリから湯呑を預かる。
ルリが拭いている間にアオがお茶を入れ直してラピスに持たせる。

そんな事がちょくちょく起こるのだ。
その様子を見ていたアカツキ達4人はぽかんとしていた。
打ち合わせでもしているんじゃないかと思ったアカツキは二人に声をかけた。

「え~っと、アオ君、ルリ君」
「「はい?」」
「さっきのってなんかサインでも出しあってるのかい?」
「「?」」

何の事かわからない二人はきょとんとして顔を合わせた。
それに答えたのはマナカだった。

「アカツキさんが聞きたいのは、二人の息がぴったりな事ですよね?
もちろんサインなんて出してませんよ。いつもあんな感じですもの。
私なんて仲睦まじく暮らしている新婚夫婦の中に居座ってる感じがしてたまにこんな所にいていいのかしらと!
よよよよよ.....」
「「なっ!マナカさん!!」」
「ね、息ぴったりでしょう?」

そうマナカにからかわれた二人は顔を真っ赤に染め上げる。
エリナ、プロス、ゴートはそんな二人を呆れたように見ていた。
アカツキに至ってはショックを受けているようだった。
そんなアカツキにエリナが追い打ちをかける。

「アカツキ君、あんなのに入り込むの無理なんじゃない?」

アカツキは唸った。
みんなが食べ終わり、テーブルの上を片付けるとダイニングやリビングで思い思いにのんびりとしていた。
そんな中、窓際でお酒を飲んでいたプロスとゴートの元へアオがやってきた。

「おや、アオさん。今日はご馳走になりました」
「とてもうまかった」
「ありがとうございます、ルリちゃん達にも言ってあげてくださいね。それでですね、プロスさんとゴートさんにこれを」

アオはよいしょと持っていた籠を持ち上げる。
プロスとゴートが中を見ると結構な量のお菓子が入っていた。

「アオさん、これは?」
「えっと、今日も来てるんですよね?NSSの方達」
「...そうでしたな。アオさんは知ってらっしゃいましたね」
「あぁ、となるとこれは」
「えぇ、NSSの皆さんに。私からすると知ってる方も多いですからよろしくお願いします」
「本当は駄目なんですが、アオさんの頼みです。お受けしますよ」
「代わって礼をいう」
「いえいえ、体調崩さないようにね~とお伝え下さい」

アオはぺこりと頭を下げるとリビングへ戻っていった。
それを見送ったプロスとゴートは眩しそうに目を細めていた。

「あの様な未来から守ってあげたいですな」
「あぁ」
「それでは、ちょっとこれを届けてきますかね」
「了解した、ミスター」

プロスはアオへ届けてくる旨を伝えると一度部屋から出ていった。
これ以降、アオはアカツキだけでなくNSSへの差し入れもいれるようになった。
それに伴いアオ、ルリ、ラピス、マナカの護衛任務希望者が激増したという話もあったが真相は定かではない。

プロス達から離れたアオはエリナと並んでクッションに座り話していた。
その目線の先にはソファーで格好つけながら黄昏ているアカツキがいる。

「エリナ、あれどうしたの?」
「わからないならわからないままでいいわよ。
狙ってた大きな獲物は既に捕獲済みでしかも捕獲したのは獲物と同種だったってだけだから」
「ふぅん?」

アオは今一要領を得ない顔をしていたが、おもむろに四つん這いでアカツキへ近付いていく。
近くまで行くとちょこんと女の子座りになり下から見上げるようにアカツキを見る。

「ナガレ、もしかして調子悪い?なんだったら休む?」
「くっ...アオ君、なんでもないから大丈夫さ。今は君の無邪気さが憎い...」

何も考えず無防備に下から見上げられて心を動かされるが、食事中の一件で傷を負った心ではただ傷口が広がるのみだった。
そんなアカツキの様子を見てもアオはただ首を傾げるだけだった。
エリナは「流石にあそこまで行くと哀れだわ」と同情の眼差しをアカツキへ注いでいた。

「そ?ならいいけど、無理しないでよ?」
「あぁ、無理はしてないさ」

心から血の涙を流すアカツキだった。

それからアオはルリの横へ向かうとアオと入れ替わるようにマナカがエリナと談笑を始めた。
ルリは足を放り出して座っており、背中をソファーに預けている。
その足の間でラピスが座っているが、ご飯を食べて眠くなったのかルリに背中を預けて転寝していた。
その横にアオが座るとルリはアオに身体を預ける。

そんな風にまったりとした時間が過ぎていった。
プロスが戻ってからもしばらくの間各々はのんびりと雰囲気を楽しんでいた。
そして、日付が変わる頃に食事会は解散することになった。

「今日は、楽しかったよ。次の機会は中華でも頼むとするよ」
「了解。次は連絡なしに早く来るとかしないようにしてよ」

アカツキはいつの間にか復活していた。

「みなさん今日はありがとうございます。マナカさん、例の件今度詳しく聞かせて下さい」
「わかったわ、エリナさん。少しずつ成果も上がってきていますわ。全女性の未来の為一刻も早く形にしてみせます」

エリナとマナカはやっぱりあの件で盛り上がっていた。

「今日はご馳走になりました、はい。そしてアオさん、うちの者からお礼を伝えておいて下さいと言伝がありましたので代わって申し上げます」
「今日はとても有意義に過ごせた。感謝する」

プロスとゴートは素っ気ない言葉だが最大限の感謝を込めていた。

「食事じゃなくてちょっと顔出すくらいならいつでもいいから遠慮せずに来て下さい」
「お気をつけてお帰り下さい」
「...ばいばい」
「皆さん、お休みなさい」

アオ達はそれぞれ挨拶をすると、4人は帰って行った。
扉が閉まるとアオは一度背伸びをすると、気合いを入れる。

「さて、片付けしないとね!」

リビングへ戻ると、アオとルリは後片付けへ。
ラピスは眠そうなので、マナカに頼んで先にお風呂へ入れて寝かしつけて貰うようにした。
ラピスとマナカがお風呂からあがる頃には後片付けも終わった。
ラピス達にお休みと挨拶をすると、今度はアオ達がお風呂へ向かう。
湯船に浸かった二人はソファーでのルリとラピスがしていたのと同じ体勢になっていた。
ただ、今度はアオがルリを抱き締める形だ。

「あの、アオさん...?」
「ん、なぁに?」
「新婚夫婦...だそうですよ」
「仲睦まじいって言われちゃったね」
「はい、言われちゃいました」

恥ずかしそうな、嬉しそうな表情をしながらルリはアオに体重を預けた。
すると、アオはその首筋に顔をうずめる。
そのままお互いの温もりを感じあっていたが、おもむろにルリが切りだした。

「アオさん...」
「ん?」
「私、父と母に連絡取ってみようと思うんです...」
「...ピースランドの?」
「はい。お願いしたい事も出来ましたから」

アオが顔を上げると、ルリは後ろを振り向いた。
しばしの間真意を測るように見続ける。
程なくしてアオはまたルリの首筋に顔をうずめた。

「ん、いいよ~」
「聞かないんですか?」
「なんとなくわかったからいいの。その代わり会いに行く時は私とラピスも行くからね」
「...ありがとうございます」
「ううん、親は親、子は子って言うしね。ルリちゃんの親もやっぱり最後は親だったもん。
私達の時は時間が足りなかっただけ、受け入れてくれるよ。ルリちゃんも、ラピスもね」
「...ありがとう...ございます」

ルリは何も言わないでもアオが自分の気持ちを汲んでくれた事が嬉しくて涙を流した。
ルリが考えていたのはジャンプする前にあったルリ暗殺事件の顛末で自分の父親であるピースランド国王がした事である。
娘であるルリの暗殺に関わった物が牛耳っているような国への支援・援助は取りやめると発表したのだ。
政策としては下策な上、それもただのパフォーマンスだったのかもしれない。
それでも親としての思いを前面に出してくれた事がルリには嬉しかった。

「ただ...」
「何かありましたか?」
「いや、どうせならあの不味いのとかもなんとかしたいよね?」
「この世の物とは思えませんでしたからね...それにどこもかしこも嘘ばっかりでした」

そうしてなんとか出来ないか二人は悩んでいると、アオが何か思い付いた。
楽しそうな表情に変わると嬉々として説明をし始める。

「ね、ルリちゃん。どうせ嘘ばっかりならその嘘を全部本当に出来ないかな?」
「嘘を本当に...?」
「そう、あのね...」

そうして夜は更けていった。


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