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No.19794の一覧
[0] 天河くんの家庭の事情(逆行・TS・百合・ハーレム?)[裕ちゃん](2010/07/24 18:18)
[1] 天河くんの家庭の事情_00話[裕ちゃん](2010/07/23 17:46)
[2] 天河くんの家庭の事情_01話[裕ちゃん](2010/06/26 12:59)
[3] 天河くんの家庭の事情_02話[裕ちゃん](2010/06/24 07:53)
[4] 天河くんの家庭の事情_03話[裕ちゃん](2010/06/24 07:53)
[5] 天河くんの家庭の事情_04話[裕ちゃん](2010/06/24 07:54)
[6] 天河くんの家庭の事情_05話[裕ちゃん](2010/07/10 22:31)
[7] 天河くんの家庭の事情_06話[裕ちゃん](2010/06/24 07:55)
[8] 天河くんの家庭の事情_07話[裕ちゃん](2010/06/24 07:55)
[9] 天河くんの家庭の事情_08話[裕ちゃん](2010/06/24 07:55)
[10] 天河くんの家庭の事情_09話[裕ちゃん](2010/06/24 07:56)
[11] 天河くんの家庭の事情_10話[裕ちゃん](2010/06/24 07:56)
[12] 天河くんの家庭の事情_11話[裕ちゃん](2010/06/24 07:57)
[13] 天河くんの家庭の事情_12話[裕ちゃん](2010/06/24 07:57)
[14] 天河くんの家庭の事情_13話[裕ちゃん](2010/06/26 02:01)
[15] 天河くんの家庭の事情_14話[裕ちゃん](2010/06/26 11:24)
[16] 天河くんの家庭の事情_15話[裕ちゃん](2010/06/26 23:40)
[17] 天河くんの家庭の事情_16話[裕ちゃん](2010/06/27 16:35)
[18] 天河くんの家庭の事情_17話[裕ちゃん](2010/06/28 08:57)
[19] 天河くんの家庭の事情_18話[裕ちゃん](2010/06/29 14:42)
[20] 天河くんの家庭の事情_19話[裕ちゃん](2010/07/04 17:21)
[21] 天河くんの家庭の事情_20話[裕ちゃん](2010/07/04 17:14)
[22] 天河くんの家庭の事情_21話[裕ちゃん](2010/07/05 09:30)
[23] 天河くんの家庭の事情_22話[裕ちゃん](2010/07/08 08:50)
[24] 天河くんの家庭の事情_23話[裕ちゃん](2010/07/10 15:38)
[25] 天河くんの家庭の事情_24話[裕ちゃん](2010/07/11 07:03)
[26] 天河くんの家庭の事情_25話[裕ちゃん](2010/07/12 19:19)
[27] 天河くんの家庭の事情_26話[裕ちゃん](2010/07/13 18:42)
[29] 天河くんの家庭の事情_27話[裕ちゃん](2010/07/15 00:46)
[30] 天河くんの家庭の事情_28話[裕ちゃん](2010/07/15 14:17)
[31] 天河くんの家庭の事情_29話[裕ちゃん](2010/07/16 17:35)
[32] 天河くんの家庭の事情_30話[裕ちゃん](2010/07/16 22:08)
[33] 天河くんの家庭の事情_31話[裕ちゃん](2010/07/17 01:50)
[34] 天河くんの家庭の事情_32話[裕ちゃん](2010/07/21 01:43)
[35] 天河くんの家庭の事情_33話[裕ちゃん](2010/07/21 23:39)
[36] 天河くんの家庭の事情_34話[裕ちゃん](2010/07/22 04:13)
[37] 天河くんの家庭の事情_35話[裕ちゃん](2010/07/24 18:16)
[38] 天河くんの家庭の事情_小話_01話[裕ちゃん](2010/06/25 20:30)
[39] 天河くんの家庭の事情_小話_02話[裕ちゃん](2010/07/07 03:26)
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[19794] 天河くんの家庭の事情_04話
Name: 裕ちゃん◆1f57e0f7 ID:326b293b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/06/24 07:54
それを伝えられたのは、ネルガルの会長室だった。

「もう一度行ってみろアカツキ!
ルリちゃんの暗殺だと!?」

アキトが掴みかかりそうな勢いでアカツキに怒鳴る。

「ちょっと落ち着いてくれテンカワ君。それじゃあ説明も出来ないよ。」
「...あぁ、手短に説明しろ」

そんな苛々しないでもと考えながら続ける。

「今までも火星の後継者から狙われたりといった事はあったけど、今回はかなり根が深いんだよ」
「あぁ、俺も護衛したから覚えている」
「テンカワ君。以前のクーデター並びにシャロン・ウィードリンの一件、覚えてるよね」
「クーデターの際には火星全域、シャロン・ウィードリンの一件でも敵全システム掌握」
「そう、それ。火星の後継者残党が生き残っていたうちはまだよかったんだけどねぇ、相手がいない時分には過ぎた力って事らしい」
「統合軍か?それとも政府か?」
「その両方だよ。宇宙軍は安心なんだよね、ルリ君シンパが多いし上からしてミスマル氏だからね」
「...そうか、潰してくる」
「テンカワ君。ちょっと待った!」

アキトがそういう行動に出る事は予想していたが、あまりの即決に慌てて止める。

「なんだ?」
「流石にそれは許可できないよ。そもそも統合軍と政府だ、全世界を相手にする事になる。そこでだ。テンカワ君がする事は...」

アカツキは勿体ぶったように切ると、ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべた。
面白い事を見つけた時や考え付いた時にする笑みに嫌な予感を感じて帰ろうと思った時、声がかけられた。

「私を連れて行って貰おうと思います」

扉を開けて会長室に入ってきたのはホシノルリだった。
思わずびくりと身体が震える。
頭の中には疑問の言葉しか浮かんでこない。
目の前にいるアカツキはニヤニヤして反応を楽しんでいる。
後で殴ろう、絶対殴ろう、アキトはそう決めた。

「実はこの話を持ってきたのはルリ君でね。話を聞いた時はイネスさんと同じようにと考えたんだけど、テンカワ君がさらってくれるならこちらとしても安心出来る」
「ちなみに、設定としては私が殺されるんですが、最期の力を振り絞ってトラップを発動させます。
トラップの内容は私の暗殺に関わっている企業、行政、軍全ての後ろ暗い情報を証拠付きでネットにばら撒いちゃいます」
「内容としては至極単純だよ。殺された恨みって事になるし、その情報でどうなろうと死んだ人は殺せない」

そこまで静かに聞いていたアキトだったが、ルリの方へ振り返ると言った。

「君は何を言ってるかわかってるのか?」

声にかなり怒りが籠っている。
アキトの雰囲気とそれを聞いてルリは息を呑むが、気丈に見据えると言葉を返す。

「勿論わかってます!」
「なら何故だ。今回の件を知ってるなら今まで狙われてきた事も知ってるだろう?」
「はい、知っています。アカツキさんやミスマルのおじ様が守ってきてくれている事も知ってます。」
「それでいいだろう。何処に問題がある?」
「それは...」

そのまま言い淀んだ。
唇を噛み締め、身体を強張らせながらも精一杯アキトの方を見据えている。
何度か口を開くが、決心がつかないのか声にならない。
アキトはそれを見てしばらく待っていたが、ふとため息をついた。

「何もないんだろう?ならこの話は終わりだ」

アキトは部屋を出ようとして足を踏み出した。
それが切欠になったのだろう、ルリが叫んだ。

「待って下さい!」

普段大声を出さないルリが叫んだ事に少なからず驚いたアキトは足を止めた。
ルリの顔は激情からか顔が赤く染まっている。

「もう嫌なんです!もう駄目なんです!
アキトさんとユリカさんが亡くなってから2年間ただ生きてただけでした!
生きてたと知ってからは1年以上ずっと待ってました!
我慢して来ました!
でも、もう無理なんです。
帰ってきて下さいなんてもう言いませんから傍に置いて下さい。
これ以上待たされたら私は...もう...壊れちゃいます.....
だから、アキトさん。
...お願いします」

最初は激情のままに発していたが、次第に落ち着いていき、最後は涙まで流していた。
その真剣さにしばし呆然とするが、血で汚れた俺なんかがと踏み止まってしまう。

「もし、アキトさんが俺なんかがとか考えているならお門違いです。
他にも幸せにしてくれる人がいるかもしれませんがそんな事どうでもいいです。
私はアキトさんがいいんです。
私の中では今のアキトさんも昔のアキトさんも変わってません。
私にとってはずっと不器用で優柔不断でとても強い、アキトさんなんです」

そのまましばらく時が止まる。
そこまで言ってくれるルリを連れていきたい、だがだからこそ表で幸せになって欲しいのだ。
自分の所へ来るともう仲間には一生会えないだろう。
それをルリに味わわせるには余りにも忍びない。
考えてる間に思わず手を伸ばそうとしたが、思い留まったように手を握るとゆっくり下す。
それを見止めたルリは微かに目を見開いた後、諦めたような笑みを浮かべた。

「アカツキさん、最期にアキトさんに会わせて頂いてありがとうございました。
アキトさん、色々とありがとうございました。さようなら!」

そこまで一息で言い切ると弾かれたように踵を返す。
だが、その言葉に不穏な物を感じたアキトが咄嗟に腕を掴んだ。

「何をする気だ!」
「離して下さい!教える必要がありませんし教える義理ももうありません!」
「なっ!そんな屁理屈を聞きたいんじゃない!教えろ!」
「屁理屈じゃありません!アキトさんの馬鹿!もう知りません!他人です!関わらないで下さい!」
「馬鹿はどっちだ!いいから話せ!」
「嫌です!アキトさんこそ離して下さい!」

手を振り解こうとしてルリが死に物狂いで腕を振るので関節が外れないか心配したアキトは咄嗟に羽交い絞めにする。
羽交い絞めにされてもしばらく暴れていたルリが落ち着いてくると、アキトはルリをゆっくりと抱き締めた。

「...死ぬ気か?」
「壊れるくらいなら、いなくなってしまいたい」
「俺なんかにそこまで思い詰める程の価値なんてない」
「アキトさんを貶める発言はアキトさん自身でも許しません」
「...そうか」
「...そうです」

アキトはふっと表情を緩めるとルリの頭にぽんっと手をやる。
幾分驚いた表情で上を見上げたルリにバイザーを外して微笑む。

「わかった。負けましたよお姫様」

その言葉に目を輝かせると、大粒の涙を流しながら頬笑みを返す。

「私の騎士はアキトさんだけなんですから」
「あぁ、そうだね」

しかし、この二人は覚えているのだろうか、ここはネルガル会長室である。
まかり間違っても告白の場所ではない。
そんな二人を見ながらアカツキはニヤニヤしていた。
ちなみに頭の中ではこんな事を考えていた。

(いや、これは面白いものが見れた。前から思っていたけどやっぱり二人とも似た者同士だね。
ユリカ君は大人になりきれていなかったって所かな、惜しかったねぇ。
ここでわざと声をかけるのも面白そうだけど、ありきたりだなぁ。
どこまでいくか見ているのもいいけど気付いた後のテンカワ君の報復が怖い。
ふむ...そういえば、バイザーにメモリーがあったな...
電子の妖精、宇宙に咲いた白き花だったっけ?
うまい事編集して告白の疑似体験ムービーとでも売れないかね?
.....面白そうだな、PHR(Perfect Hoshino Ruri)に関わっていたウリバタケ君、プロス君、ゴート君にでも頼んでみるか)

ちなみにこれを元にした疑似体験データは同人ムービー【妖精からの告白】として2日後に24時間限定でダウンロード販売された。
内容の素晴らしさに某掲示板にスレが乱立し、宇宙軍所属のアラ○ギ少佐、マキビ中尉などルリファンに50万本以上売れたそうだ。
再販はされず、未開封に至っては10万を超える超プレミアがつく事となり、コピー商品でさえかなりの値段がつく事になる。
普段であればすぐに気付くルリだが、運悪く作戦の為に数日ネットに潜れずに気付けなかった。

「ハーリー君やアララギ少佐、すれ違う男性方がみんないつも以上に気持悪かったから変だとは思っていたんです。
ですが、普段と変わった行動をする訳にもいかなかった事が口惜しいです。
気付いた時にはすべて終わっていましたから...」

とは気付いた時のルリの言葉である。かなり辛辣だ。
ちなみにアキトからしっかりと殴られたのではあるが、没収と称してアキトも閲覧用、観賞用、保存用と3枚持ち帰っている。

そんな事を考えているアカツキの前ではまだ話は続いていた。

「ね、ルリちゃん。ユリカには?」
「...ユリカさんにも話してあります。
その時にアキトさんがユリカさんと会った時の話も聞きました。」
「そうか...」

アキトはシャロン・ウィードリンがクーデターを起こす前、ユリカが退院する直前に一度会っている。
その事を思い出していた。
ユリカはアキトに会った時、咄嗟に違う!と叫びそうになったのだ。
なんとか押し留めたが、アキトだと理解している自分と認めたくない自分が鬩ぎ合っていた為に話が出来そうになかった。
そこでユリカ自信が1日考える時間を貰えるようにアキトに伝えた。
その日はルリが見舞いに来たが、ユリカから「今日、明日はゆっくり考え事をしたいんだ」と言われ、すぐに退室していた。
次の日、同じ時間にアキトが来ると、今度はしっかりと目を合わせる事が出来るようになっていた。

「お久しぶりだね」
「あぁ...元気そうだな」
「うん、みんなのおかげでね!元気だけが取り柄だもん!」

他愛もない話を続けていたが、不意にユリカが切り出した。

「ごめんね、アキト。
奥さんが旦那様を信じられなかった。拒絶しようとした。
私は!アキトの事を!見れて...いなかった.....!」

堪え切れずに嗚咽を漏らしていた。
ユリカに対して何も言えず、ただ見ている事しか出来なかった。

「泣いてばかりでごめんなさい。アキトに、一つ聞いてもいい?」
「なんだ?」
「全部終わったら、アキトはどうするの?」
「.....」

アキトは無言で返したが、その表情でユリカは悟ったらしい。

「...そっか、ついていけなくてごめんね。私は...私らしく.....私の幸せを探すよ」
「.....」
「アキト、奥さんとして最後のお願い。
ルリちゃんにはちゃんと伝えてあげて、それであの子が決めた事なら受け入れてあげて欲しいの。
あの子は、ちゃんとアキトの事を見てるから。
あの子になら、アキトを支えられるよ」
「...あぁ、考えておく」
「そっか、会えて嬉しかったよ」
「あぁ、それじゃな」
「...ばいばい、アキト」

長い事考えていたらしい、ルリの表情が心配そうになっている。
大丈夫だよと微笑んだ。

「それでですね、ユリカさんからアキトさんを宜しくとお願いされました。」
「そうか、俺の方からもお願いするよ。これから一緒によろしく頼む」
「.....はい」

ルリは嬉しそうに目を閉じるとアキトに身体を預けた。
そのまま数分お互いの温もりを感じていると、後ろから声がかかった。

「そろそろいいかい?」

その瞬間弾かれたように二人は離れた。
アキトの顔にナノマシンの光が浮かんでいる。無表情を装ってはいるが動揺しているようだ。
ルリも顔を真っ赤にして俯いている。

「あれ、そのままでよかったんだが、本当にここが会長室だって事忘れてたみたいだね?」
「あの、要件はなんですか?」

絞り出すようにルリが尋ねる。

「大体話はまとまったんだから、後は決行をいつにするかだね」

それから誤魔化すような勢いで話をまとめていった。
終始顔は赤かったらしい。
作戦としては簡単だ。
統合軍が自室で寝ている時に事故を装うとはわかっているので、隙を見せてわざと統合軍が襲わせるように仕向ける。
突入前にアキトがジャンプで連れ帰り、部屋を爆破するだけである。

「至極単純だね。ただまぁ、これだけ偽装をやっているから疑われそうだけど?」
「それはアカツキさんの自業自得です。ご自分でどうにかして下さい」
「相変わらず手厳しいね」
「理解はしてますけど納得したくないだけです」
「そうかい。さて、これで話も終わった事だ。各々普段通りによろしくね」

それにアキトとルリは答えるとアキトはジャンプで帰り、ルリは踵を返し部屋から出て行った。

「納まる所に納まったか。ご馳走様、テンカワ君」

それからルリは有給を1週間取り、ユリカと一緒に会えなくなるみんなの所へ顔を出していった。
怪しまれると困るので、ユリカが会いたいと言い出して連れまわされているという口実になっている。
ユリカをだしにして申し訳なく思ったが、「会いたいのは本当だったから丁度いいよ」と言ってくれた。
ウリバタケやプロス、ゴートは後ろめたい事があるせいか挙動不審だったがその時は深く考えなかった。
顔合わせも終わり、作戦決行前日のこと。
ユリカと食事を取る為にわざわざ宇宙軍の極東本部へ来ていた。
顔を合わせる男が全員おかしいのだ、目をらんらんとさせ期待の篭ったような浮かれたような顔で自分を見る為だ。
アララギ少佐に至っては顔を合わせた瞬間意識がどこかに旅立っていっている。
軽く首を傾げるが、深く考えずにユリカの元へ行くと、連れだってホウメイの経営する【日々平穏】へ向かった。

「お、ルリ坊にユリカさんかい。いらっしゃい。丁度ハーリー君と高杉さんも来てるよ」
「か、かかかか艦長!?こんにちは!」
「お~、艦長にミスマル大佐。奇遇ですね」

暖簾をくぐるとホウメイの快活な声が響く。
上擦った声を出しながら、弾かれたように立ち上がり直立不動で迎えたのはマキビ・ハリ中尉、どこかだらしない物言いは高杉三郎太大尉である。
二人ともカウンターに座って食べている。左からサブロウタ、ハリの順番である。

「ホウメイさんこんにちは、一人でご飯は寂しいのでユリカさんと来ちゃいました。
ハーリー君、今はプライベートなのでかしこまらないで下さい。サブロウタさんこんにちは」
「ホウメイさん来ちゃいました~」

返事を返すと、ルリはハリの右隣へユリカは更に隣へ座った。
ハリは既に【妖精からの告白】見ている。それも毎日見過ぎて現実と妄想が区別つかなくなっていそうなくらいみていた。
その事を知っているサブロウタはそんなハリにドン引きしながらも迂闊な事をしでかさないか戦々恐々だったりする。

「ホウメイさん、チキンライス大盛りでお願いします」
「私は日替わり定食、それとから揚げも下さい。ルリちゃん、から揚げ半分こしよ♪」
「あ、はい。ありがとうございます」
「そういえば、ルリちゃん。から揚げで思い出したけど、ホウメイさんにコツ教えて貰ったんだっけ?」
「そうなんです。教えられた通りにやったらサクサクに出来ましたよ。それと他の料理も勉強してます」
「時間があれば飛んで行ってでも作って貰うんだけどなぁ。もったいない」

ルリがいなくなるまでにはもう残り時間がない。
だからといって軍務をおろそかにする訳にもいかず、こうなるならもっと沢山食べに行けばよかったと惜しんでいた。

「クスクス。ユリカさんは忙しいですから、しょうがないです」
「艦長。話に割り込んですいません。話からすると料理なさってるんですか?」
「サブロウタさん気にしないで下さい。そうですね、私もそろそろいい年になりますから。将来の事を考えてって事です」
「そうなんですか、艦長の手料理を食べられる人は幸せ者でしょうね」
「そうそう、ルリちゃん結構料理上手なんだよ。アキトもルリちゃんは舌がいいって褒めてたし」

ここまで話していてルリはいつもは無理にでも話しに入ろうとするハリが入ってこないのに気になり、視線を向けた。
そこには本部で見たアララギ少佐に負けない程目がイっちゃってるハリがいた。
今の会話で自分と一緒に住み、料理をするルリの姿でも思い浮かべているんだろう。
ルリが眉を顰めたのを見たサブロウタは慌ててハリの頭をこづく。

「おい、ハーリー。食事中に何ぼ~っとしてんだ」
「あいた!サブロウタさん痛いじゃないですか~」
「痛いじゃないだろ変な顔しやがって、艦長もひいてたぞ」
「え!そ、そんな事ありませんよね、艦長?」

憧れのルリにひかれるなんて嘘だと思いたいハリは思わずルリに尋ねる。
だが、ルリはその言葉を聞かなかった事にして話しを変えた。

「それはそうと、極東本部でも気になったんですが、会う人会う人先ほどのハーリー君みたいな感じなんですけど、何か知ってますか?」
「(ひいてたのは否定しないんだね、ルリちゃん...)それ、私も気になる。
2-3日前から男性の方みんなぶつぶつと中佐中佐とかルリさんルリさんとか言ってて女性士官みんなで気味悪がってるんだよね」
「俺は良く知らないんですよ。どうしたんだ?って聞いても『お前みたいなリア充には教えん!』とか訳の変わらない返事しか帰ってきませんでした」
「となると、この中で知ってるのはハーリー君だけですか」

憧れのルリに隠し事をするのは辛いが、まさか話す訳にもいかないハリは冷や汗を流しながら困っていた。
ルリがハリへ問いかけようとした時

「はい、ルリ坊にユリカさんお待たせ。チキンライス大盛りと日替わり定食ね。から揚げもすぐ持ってくるよ」
「ありがとうございます」
「わ~い、食べよう食べよう♪」

ハリはうまい事逃れられた安堵でため息をついたが、そんなに人生は甘くないらしい。

「ハーリー君、やましい事があるみたいなので、後でしっかり聞きます。食べ終わるまでここで待ってて下さい」

ハリはこの世の終わりが来たような顔で落ち込んでいた。
そして、それを見たサブロウタはもう逃げ道はない事を悟り、せめて看取ってやろうとハリの肩を叩く。

「ハーリー、俺が看取ってやる。諦めろ」

ご愁傷様である。
その後ルリとユリカは食べ終わり、ハリへの尋問という事になった。
席を4名席に映すと、ユリカはデザートに杏仁豆腐を4人分頼んだ。

「.....ハーリー君?言ってくれれば怒りませんよ?むしろ何も言わないから怒るんです。
大丈夫、悪いようにしません。私とハーリー君の仲じゃないですか、いってくれないなんて私は寂しいです」

そういうとにっこりとほほ笑むルリだが、目は笑っていない。
ユリカとサブロウタはそれに気付いてるので内心震えているが、とばっちりが怖い為表情には出さない。
ハリは自分へ投げかけられた『私とハーリー君との仲』や『私は寂しい』という言葉に感動し、すべてを話す事にした。
ルリの作戦勝ちである。
それからハリはいつでも見れるようにと持ち歩いていたポケットデバイスで問題のブツを再生しだした。
まさか自分の告白を見せられるとは思わなかったルリは顔を真っ赤にしてそれを呆然としていた。
しかも言葉や背景、服装は変えてあるが、どう考えても会長室での一件である。
ユリカは見ている中で作りものにしては自分の知ってるルリそのものの表情や行動だと理解していた。
そしてこんな表情や仕草をする相手がアキトだけだという事も。
ちゃんと告白出来たんだという嬉しさを感じていたが、可愛い妹の純情を弄んだ相手にどんな事をしてやろうか考え始めた。
サブロウタもこれが作りものにしては出来過ぎている事に違和感を感じた。
そしてルリの焦り方を見て、本当にあった事なんだなと感じ、自分の知る彼女がこれだけ感情豊かだった事に喜びさえ感じていた。
彼もまたしっかりとホシノ・ルリという一人の人間として見られる希少な男だった。
そんな中、ハリだけはDVDの内容を目の前のルリにかけあわせた妄想の世界に旅立っていた。
そして再生が続く中、落ち着いたルリはこうなった要因、首謀者・協力者などの可能性を猛然と考え出した。
そこに女の感が加わり、瞬時に正解を導き出していく。

(アキトさんが協力するはずありません。となると、あの元大関スケコマシしかありえませんね。
ここまでの編集と趣味に走った内容を考えると、編集や監修はウリバタケさんとゴートさんですか...
資金の出所は、PHRの一件もありますからプロスさん辺りですね)

そして.....

「ハーリー君、今から私に協力して貰いますね♪」

それは、今までに見た事がない程綺麗な笑顔でした。
ハリはそう後に述懐した。
その後報復として首謀者だあるアカツキの恥ずかしい性癖をネットに流したが、ルリの反響が覚めない時だったので思うようにいかず。
口惜しさに臍を噛んだが、出演料と称して利益は全没収と相成った。
ウリバタケに関してはデータをオリエに渡され、こちらも報酬は全部没収となった。
プロスとゴートは、ルリから一件を教えられたエリナからこっ酷く叱られもうしませんという念書と使い込みの賞罰をくらう羽目になる。
宇宙軍のルリシンパはユリカから一件を聞いた女性陣から乙女の純情を弄んだという事で総スカンをくらい、それまで以上に相手にされなくなってしまった。

そして、ルリ暗殺の作戦決行当日。
自宅へ戻っていたルリは、自室のIFS端末からネットへ潜り、暗殺計画関係に仕掛けていたバックドアから情報を流すようにする。
元々何かあった時の為準備は進めてあった為、トリガをつけるだけだったのですぐに終わった。
日付が変わると、電気を消し、私服のままベッドに潜りこむ。
そのまましばらくゴロゴロしていた時だった、不意に声がした。

「ルリちゃん。お待たせ」
「はい、一杯待ちました」
「外のやつらがすぐに動きだす、罠をつけたらすぐに跳ぶよ」
「はい」

アキトはすぐに動き手早く罠を設置していく。
設置し終わると持っていた大きなバッグからルリに良く似た遺体を出す。

「...それは?」
「ルリちゃんのクローン体だそうだ。アカツキが最近潰した研究所にいたらしい」
「そんなに私の能力が欲しいですか...」

それには答えずにその遺体をベッドに寝かす。
実際にはこの為に用意した急造のクローンであるが、その事をアカツキはアキトにさえ言っていない。
無理な成長促進の為に産まれてまもなく死亡したが、無理に心臓だけ動かし続けて16歳の状態まで持って行ったのだ。

「身代りにしてすまんな」
「...私の代わりに、ありがとうございます。そして申し訳ありません。」

アキトは寝かしたルリのクローンを優しく撫でた。
それを見たルリも悲しみの篭った表情でそっと撫でる。

「さて、ルリちゃん行こうか」
「.....はい、お願いします」

アキトの言葉を受けて、名残惜しそうに部屋を見回したルリはゆっくりと身体を預ける。
数瞬後、二人の姿は消えた。

それから30分程経つと、黒尽くめの男が侵入して来た。
それぞれ部屋に入ると、無言で寝ているルリに向かって銃を撃つ。
くぐもったプシュっとした音がするとルリの頭と、胸に穴が空く。
すばやく死んだ事を確認しようとした瞬間、光が弾けた。

それからは電子の妖精が死亡したという記事が乱れ飛んだ。
損傷がかなり激しかったが身体の一部も見つかり確定的となった。
最初は事故という事だったが、1日も経たずに暗殺という情報が乱れ飛ぶ。
それからはそれに関わった政府高官・軍部の人間のスキャンダルな情報がどんどんと飛び出してきて大わらわとなった。
それは、暗殺を悟ったルリが自分が死んだら流れるようにしていたのだという噂になった。
アカツキはNSSの情報から誰の情報が流れるか知っているらしくうまい事やるらしい。

これ以降統合軍は更に弱体化し、宇宙軍を吸収予定が逆に吸収される羽目となり、それに伴い軍縮へと向かっていく。
ミスマル・コウイチロウ、ムネタケ・ヨシサダを中心とした人道的で有能な者が上に立つ事になり、評判はいいらしい。

地球連合政府では代表がほぼ総とっかえという前代未聞の様相になってしまった。
世界で知らないものがいない程有名なホシノ・ルリの暗殺にかなりの数が関わっていたのだ。
なんとか危険性を語って弁明しようとしたが、清廉潔白な彼女との対比で後ろ暗い事があるからだと逆に糾弾される事となる。
そんな中ホシノ・ルリの血縁であるピースランド国王が暗殺に関わった者が牛耳っているような国への支援・援助を取りやめると発表。
離れて暮らしてはいるが娘を魔女だ悪魔だと罵られ、殺そうとする国への援助など出来ないと親としての気持を前面に出し訴えた。
ピースランドからの支援に頼っている所も多く、そういった所は暴動が起きかねない状況になり、一斉に首切りとなった。

そしてホシノ・ルリの葬式。
ユリカやその父であるミスマル・コウイチロウは暗殺を目論んだような人間に参加して欲しくない事から混乱を避ける為に身内のみの参加という条件にした。
それでもナデシコやナデシコBの乗員、同じ宇宙軍の者が多数参加し、1000人は優に超える規模となった。
それに加えて外にはファンの者が最後の別れを惜しもうと多数並んでいた。
宇宙軍の者やハリなんかはショックで泣き喚いてる者が多かったが、ナデシコやナデシコBの乗員は涙はあっても悲嘆している様子はなかった。

それは【妖精からの告白】の為である。
近しい者程あれがただ作られたものではなくルリの本気の表情だと気付いていた。
そしてそれを向ける相手も。
だから、追っかけて行ったんだという認識をしていた。

お焼香が全て終わり、別れの挨拶の為にユリカがみんなの前に向かった。
だが、そこでルリの方ではなく参列者の方へ向き直ると、おもむろに話しだした。

「先日、1通の手紙が私の所へ届きました。ルリちゃんからの手紙です」

それを聞いた参列者は一様にざわめいた。

「みんなに伝えて欲しいと書いてあったので、不躾ではありますがこの場で読み上げさせて頂きます」

─みなさん、こんにちは。
─この手紙を読み上げているのは葬儀場ででしょうか。
─少し長いですが、みなさんに聞いて頂ければと思い筆をとりました。
─私には家族がいませんでした。そしてそれがどういうものかもわかりませんでした。
─そして、昔は自分が人間だと思ってませんでした、機械だと思ってたんです。
─そんな私を変えて人間にしてくれたナデシコのみなさん。
─色々あって冷たく接していたのに、優しく接してくれたナデシコBのみなさん。
─いつも慕って下さった宇宙軍のみなさん。
─私は自分の身が長くないという事を知った時、みなさんに何が残せるかなって一所懸命考えました。
─一杯考えた末に、私の大切な人が経験したような理不尽な事が起こるのを少しでも減らせれたらと思ったんです。
─今頃大変な事になってるとは思います。立つ鳥跡を濁しまくりで申し訳ありません。
─私には結果を見る事が叶いませんが、よりよい未来へ変えて下さると信じてます。
─よろしくお願いします。

─私はこれから遠い所で大切な人を追っかけようと思います。
─追いついて捕まえて離さないようにするので心配して下さった方は安心して下さい。

─追伸
─【妖精からの告白】を持っている方へ
─本当は全部没収して記憶からも消し去りたいのですが、私も居なくなる身です。
─断腸の思いではありますが、それを私からの最期の贈り物と思って下さって結構です。
─ですが、大切な人が出来たら必ず処分して下さい。

あまりの彼女らしさとそこに込められた想いに悲しみなどどこかへいってしまったのか、葬儀場には和やかな空気が流れていた。
その中には渡されたバトンの大きさを胸に身が引き締まる思いをした者たちがいた。
大切なあの人の所へ行った事に安心し、一言も別れの挨拶がなかった事にちょっと寂しい思いをした者がいた。
自分が持ってる映像データの事を言及されてそわそわと落ち着かない者もいた。

その後手紙が公開され、テンカワ・アキト、ホシノ・ルリ、ミスマル・ユリカの辿った数奇な運命から薄幸のヒロインとして広く知られる事となった。
それに併せてテンカワ・アキト、ミスマル・ユリカを始めとしたボソンジャンプの被害者への人体実験にもスポットが当たるようになり
それに加担した火星の後継者やクリムゾン社への風当たりが更に酷くなっていった。
テンカワ・アキトもテロリストではあったが、被害者であり同情的な目で見られる事も多くなっていった。
文面から本当は駆け落ちなんじゃないか?という噂も流れたが、身体の一部が見つかっている為噂以上にはならなかった。

そして、葬儀があってから数日後、ある宙域で一つの戦艦がボソンジャンプしたのである。
それから更に数日後、ナデシコとナデシコBに乗艦していた者の所へ差出人不明の手紙が届いた。

─捕獲成功!
─離しません!
─幸せになります!

そんな意味合いの事が書かれていたそうである。


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