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No.2484の一覧
[0] 機動戦艦ナデシコ ~蛍蔓~[散川 散](2008/01/05 23:19)
[1] 一章[散川 散](2008/01/05 23:20)
[2] 二章[散川 散](2008/01/06 00:30)
[3] 三章[散川 散](2008/01/09 22:49)
[4] 四章[散川 散](2008/01/10 02:25)
[5] 五章[散川 散](2008/08/04 22:47)
[6] 六章[散川 散](2008/08/04 22:40)
[7] 七章[散川 散](2008/08/04 22:46)
[8] 八章[散川 散](2009/01/04 16:46)
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[2484] 七章
Name: 散川 散◆6b24ed7e ID:aa4608b2 前を表示する / 次を表示する
Date: 2008/08/04 22:46
急に機体が崩れ落ちた。無茶の連続で、完全に相転移エンジンが停止してしまった
ようだ。
「今度は守れた。俺はやったんだ!!」
 頭に浮かんだ火星の光景を振り払い、倒れこんだ敵のテツジンを睨みつける。俺
は動けない。だが、後はリョーコちゃん達がやってくれるだろう。
 安堵のため息をつく。しかし、その瞬間異変が起きた。
「あれはなんだよ」
 テツジンが、地面を歪ませ、周りのビルを倒壊させながら、見たことも無いよな
出力のフィールドを形成した。
「イネスさん、いったいなにが起こってるんだ!?」
「おそらく、相転移エンジンを暴走させて自爆させるつもりね」
 通信で、呼びかけ帰って来たのは最低の答えだった。さっき、振り払ったばかり
の光景がまた戻ってくる。
 こうして、落ち込んでいる間にも、半径数kmが消滅するやら、現状の火力では対
処不能だとかいやな情報ばかりが押し寄せてくる。しかし、そんな俺を奮い立たせ
るものがあった。それは皮肉なことに銃声だった。赤、青、黄、リョーコちゃん達
のエステバリスは無駄とも思える砲撃を続けていた。
「おい、テンカワ。な~に、寝てんだよ」
「寝ちゃいないさ。今寝たら、ゲキガンガーの再放送を見逃しちまう」
 フィールドを切り、セーフモードで再起動させる。予備バッテリーに切り替え、無理矢理機体を立たせる。
「いくぞ、ガイ」
 試験機に過ぎないこの機体にはロクな武装が無い。しかし立ち上がり、走り、殴
りかかるぐらいはできる。
 全力でIFS端末を握り、駆け出そうとした瞬間、足元にいる誰かを踏みかけて、
急制動をかけ、つんのめった。
「どうして、こんなところに人が居るんだよ!?」
 周りを見渡す、辺りは崩れ落ちたビルの破片やら、跳弾が雨のように降り、一分
後には人間なんてミンチになりそうな天気模様だ。
「くそっ!」
 拾い上げ、コックピットに乗せる。流石にここで見捨てるのは目覚めが悪い。
「るっ、ルリちゃん!?」
「お久しぶりです。アキトさん」
 あまりにも、意外な人物だったせいで、体が硬直してしまう。その間にルリちゃ
んは俺の膝の上に体を滑り込ませ、IFS端末の上に手をのせてしまった。華奢に見
える少女の体の柔らかさと匂いに、さらに数秒硬直時間が増えた。
「えっと、何をしてるんだい?」
「人助けです。より性格に言うと機械相手に説得作業ですね。みんなを殺さないで
下さいって」
「今は、ふざけてる場合じゃないだろ!!」
 彼女の手を振り払い、IFS端末を奪い返そうとするが、その小さな手にどれだけ
の力を込めているのかを振り払うことはできなかった。
「ふざけてませんよ。アキトさん、私を信じてください」
 彼女の真剣な瞳。このありえないシチュエーションで、ありえない行動をされ、
それで信じろと? 普通じゃない。でも、俺は、
「ああ、信じるよ」
 頷いてしまった。そう、断ることが出来なかった。
「ありがとうございます」
 ルリちゃんは、微笑んだ。そして、一瞬、彼女の髪が光ったのを見た気がした。


 結論を言うと、俺たちは彼女に救われた。その、肝心の彼女は、
『たいしてことはありません。データ通信方式は共通ですので。ただ、旧世紀の遺
物の蜂の巣のように開きまくったセキュリティホールから、どこかの馬鹿が用意し
て、一向に変更されない管理者コードを使用して、全機能をロックしただけです』
 そんなわけのわからないことを最後に倒れてしまったからだ。
 なぜか、無性に頭をなでてあげたい。
 普通は、胸やら尻やら、太ももなのだろうが、さっきから頭が気になって仕方な
い。
「よく頑張ったね」
 なんとなく優しいお兄さん的な雰囲気を作り上げて、保険をかけ、ゆっくりと手
を伸ばす……
「やぁ、テンカワくん。お疲れ様。おかげさまでいいデータが取れたよ。でっ、一
つ忠告、さっきから君のコックピットの光景ライブ放送で流れてるから。あと、録
画もちゃんとしているんだけど、それでもいいなら好きなようにしてくれ」
「なぁ、アカツキ」
「なんだい?」
「俺を殺してくれ」
「まぁ、そう焦るなって、たぶん同意の上の行動だから、ねぇ、ルリくん」
「そこまで、わかっていて、首を突っ込んでくる貴方の無神経さは今も、昔も、未
来までも変わりませんね」
 倒れて、俺にもたれかかっていたルリちゃんが目を覚まして、アカツキに毒を吐
いた。
「おきてたんだルリちゃん」
「今、起きたんですよ」
 絶対嘘だ。
「まぁ、君たちはよくやってくれたよ。正直、この街が消えると、兆単位の被害が
でるところだったからネルガルとしては、非常に助かるよ。ああ、それと、君たち
さっさと戻ってきてよ。ルリちゃんの着任パーティと、テンカワくんの復帰パーテ
ィがあるから。もちろん帰る場所はわかってるね?」
「ええ、もちろんナデシコですよね?」
「ああ、もちろん」
 ルリちゃんとアカツキが笑いあう。なぜか、ルリちゃんの笑顔が嘘に見えた。
 それを最後に通信が切れた。

 節電モードでナデシコに向かっているが、会話が無い。ルリちゃんは妙に満足そ
うな顔で俺に体を預けていた。
「ねぇ、ルリちゃん?」
「なんですか、アキトさん」
「さっきから俺に体預けてるけど、そういうの抵抗ないの?」
「アキトさんだからいいんです」
「ろくに知りもしない男だよ?」
「似てるんですよ」
「恋人に?」
「嫌味ですか、彼氏いない暦=年齢の私に」
 少しむすっとした顔でルリちゃんは言った。彼女の容姿から考えるとひどく以外
だった。
「そんなに驚いた顔しないでください。嫌だったら止めますが、私個人としては現
状維持を渇望します」
「嫌じゃないよ。俺も知り合いに似てて安心できるし」
「恋人ですか?」
 少し、からかうような口調でルリちゃんは言った。彼女とまったく同じ言葉を返
そうか迷ったが止めた。たぶん、ここは誤魔化すところじゃない。
「妹だよ」
「そうですか。少し残念です」
「どうして、ルリちゃんが残念がるんだよ。次は、ルリちゃんの番。俺だけ言うのは不公平だろ」
「そうですね。父親兼 お兄ちゃん兼 友達兼 コック兼……初恋かもしれなかっ
た人です」
「すごく大切な人だったんだね」
「なに、勝手に過去形にしてるんですか」
「いや、雰囲気的に」
「ちゃんと居ますよ。ただ、遠いところに居るだけで」
「会えるといいね」
「ええ、きっと会えるって信じてます」
 彼女は、笑顔を浮かべる。これで確信した。やっぱり、さっきのアカツキとの会
話に浮かべた笑顔は偽者だ。だって、本当の彼女の笑顔は、こんなにも綺麗だ。


 


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