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No.2484の一覧
[0] 機動戦艦ナデシコ ~蛍蔓~[散川 散](2008/01/05 23:19)
[1] 一章[散川 散](2008/01/05 23:20)
[2] 二章[散川 散](2008/01/06 00:30)
[3] 三章[散川 散](2008/01/09 22:49)
[4] 四章[散川 散](2008/01/10 02:25)
[5] 五章[散川 散](2008/08/04 22:47)
[6] 六章[散川 散](2008/08/04 22:40)
[7] 七章[散川 散](2008/08/04 22:46)
[8] 八章[散川 散](2009/01/04 16:46)
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[2484] 八章
Name: 散川 散◆ef52a856 ID:d3da8e48 前を表示する
Date: 2009/01/04 16:46
「疲れた」
 部屋に帰るなり、ベッドに突っ伏す。
 昔からパーティは苦手だった。どこに言っても、アイドル扱いを受けるからだ。
それは過去行っても変わらない様だ。もっとも、そこに打算や、政治やらといった
汚いものが混ざっていないだけましだが。
「でも、楽しかったですね」
 なんだかんだ言っても結局のところ私にとっては同窓会だ。あまりにも、『星野
ルリ』に似ていたため、初めは気味悪がられたが、大概のことは、”遺伝子操作者
共通の特徴”で押し通せた。
 ただ、問題なのはユリカさんが敵意全開でいることだ。

『ピーンポーン』
 
 どうやら噂をすれば何とやらだ。ユリカさんが来たようだ。
「勝手に入っちゃいまーす」
 扉を開ける前に中に入ってきた。そういうところは相変わらずだ。
「どうぞ」
 艦長相手に突っ込みを入れたら負けだ。それは経験則で知っている。お茶やら、
お菓子やらを引っ張り出す。
「わぁ、ルリちゃん気が利くね。私、草加せんべい大好きなの」
「そうなんですか。まだまだあるのでどんどん食べてください」
「うわぁ、ありがと。……ってそんな手には乗らないんだから」
「えっと、意味がわからないのですが」
 両手に握った草加せんべいが真っ二つに割れる。相当の力が込められているよう
だ。怒らせるようなことをしただろうか? パーティではほとんど会話する機会が
なかったはずなのに。
「アキトとどういう関係なの!! すっごい仲良さそうだったけど」
 ああ、そういう事か。あのスケコマシLIVE中とか言ってたのは、冗談じゃなっ
たんですね。さて、どうしたものか。適当に流すと後でめんどくさいことになりま
すし、素直に話しましょうか。
「街中でアキトさんに声をかけられて、一緒にお茶しただけです」
「つまり、アキトはあなたを街でナンパして、あなたはあなたでまんざらじゃなく
て、コックピットにまで潜り込んでそれで愛の逃避行ってこと!!」
「えっと、その逃避行なら、今ここに居ませんが?」
「五月蝿いこの泥棒猫!! トンビ!! 人のものを盗んだらいけませんってお母
さんに教わらなかったの」
 うわぁ、完全にトリップしちゃってますよ。それにしても完全にもの扱いですか……
「えっと、私は人のものに手を出す気はありません」
「本当に!?」
「ええ、お二人はお似合いです。応援してます」
「ルリちゃん。いい子だね。そうだ、副長にしてあげる」
「ジュンさんが泣きますよ」
「えっ、ジュン君を知ってるの?」
「あっ、その、さきほどパーティで会いまして」
「へぇ、そうなんだ。じゃあ、わたし行くね。アキトに会いに行かなきゃ」
 用が済んだとばかりに、ユリカさんは去っていってしまう。
 その前に、どうしても聞かなきゃいけないことがあった。
「ユリカさん。一つだけ質問いいですか?」
「うん。いいよ」
 答えなんてわかりきっている。でも、これはけじめだ。直接、艦長の言葉で聞か
ないといけない。
「アキトさんのこと好きですか?」
「もちろん、わたしはアキトが大好き」
 屈託のない笑顔でユリカさんは答える。ああ、こんな表情は私には一生できないな。
「アドバイスです。その気持ちは言葉で伝えないと通じませんよ。アキトさん馬鹿
ですから」
「大丈夫。わたしとアキトは両思いだから。じゃ、今度こそさよなら」
 今度こそ、本当にユリカさんは姿を消した。
 大きく、深呼吸する。時計を見るとちょうど深夜12時。魔法が解ける時間だ。
「仕事の時間ですね」


 備え付けの端末からネットの海にアクセスする。
 優先の専用回線でもない限り私の意志はどこへでもいける。
 目的のものはすぐに見つかった。後は確認するだけ。
「大関スケコマシさん。まだ、起きていらっしゃいますでしょうか?」
 コミュニケから、専用コードを使いアクセスする。
「起きてるよ。妖精君」
「テツジンのパイロットから、どの程度の情報を引き出せました?」
「う~ん。それがね。軍に横槍入れられて、連れ去られちゃったんだよ。
 まったく、僕としたことがとんだヘマを……」
 普通嘘をつくときは、必ずどこかに違和感を感じる。
 しかし、大関スケコマシは別だ。息をつきように、自然体で嘘をつく。
「軍部が、街の復旧で糞忙しいときに、大量の人員を派遣して、逃げた”宇宙
人”を必死に探しているのはどういうわけでしょう?」
 この裏づけをするために、ネットを海に私は潜っていた。
「やっぱり、この程度の嘘はばれちゃうか。うん、シークレットサービスの連中を
使って軍部に対して、秘密裏に確保してるよ」
「わざとらしすぎます。ナデシコクルーの目をそらすために、わざとアキトさんと
の会話をライブしたり、パーティを開いたりして。そこまでやられれば、ガイさん
でも気づきますよ」
「失敗したな。でも、まぁ、八割は僕の趣味だから問題ないんだけどね」
 にやけながら頭をかく、こちらに慌てている様子をアピールする。
「で、実際のところどうです?」
「うん。まぁ、君にだから言うけど、特殊なIFS打ち込んで、直接データを頭から
吸い出してる。正直なところ、君から貰ったデータの裏を取る程度の情報しかな
い。ただ、月面基地攻撃の具体的なプランが頭に入っていたのは、儲けものだったかな」
「九十九さんがその程度の情報しかもって居ない筈はないです。木星軍部の情報の
深いところまで入手できたはずです」
 今度こそ、本当に声を上げてアカツキさんは笑った。
「おかしいな。物理的に外部との情報を遮断していたはずなのに。
 うん、君の言うとおりだ。テツジンの機体情報と合わせて、戦略拠点、チューリ
ップのターミナル。ほとんど、木星を叩き潰すに足り得る情報が、手に入ったよ。
まったく、これほどの重要人物が前線に出てくるなんて正気の沙汰じゃないね」
「アカツキさん。あなたが、試作型といえ、ボソンジャンプができる機体、私が渡
した情報、そして、九十九さんの情報を得た今、もう、”私達”に負けはありません」
 命がけの戦いなど必要ない。そもそも私がどれだけがんばろうと、簡単に歴史は
変わらない。適切な人物に、適切な情報を渡す。これができた時点で私の仕事はほ
とんど終わっている。
「随分と過大評価してくれるねルリくん」
「艦長や私は所詮、戦術レベルの思考しかできません。そして、現場レベルでしか
発言権がありません。私が知る限り、一番ましな未来を作る独裁者はアカツキさん
ですから」
「そう、じゃあ、僕は僕のために君の考えに乗ってあげる」
「ええ、そうしてください。明日から私は一介のオペレーターとして、ここでモラ
トリアムに浸っておきます。
 ただ、忘れないでください。ナデシコクルーが不幸になるようなことがあれば、
例えあなたと道連れになろうが、全力で地獄行きのチケットを用意しますから」
「OK。肝に銘じておくよ。取り引き成立だ。安心したよ。ギブ&テイクじゃない
 取引は信用ができないからね。
 君には早速明日から実践についてもらうよ。
 そう、シャクヤクの防衛任務に」

 これでようやく、私にとってのナデシコ出航が始まる。


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