<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

ナデシコSS投稿掲示板


[広告]


No.285の一覧
[0] いつか見た、漆黒の宇宙《そら》へ[YENA](2005/03/24 12:54)
[1] Re:いつか見た、漆黒の宇宙《そら》へ プロローグ2[YENA](2005/03/24 20:24)
[2] Re[2]:いつか見た、漆黒の宇宙《そら》へ 本編第一話Aパート[YENA](2005/03/28 12:31)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[285] いつか見た、漆黒の宇宙《そら》へ
Name: YENA 次を表示する
Date: 2005/03/24 12:54
金属塊が漂う宇宙域。
かつて『火星の後継者』と名乗っていたものがいた場所。
その中で、漆黒の人型機動兵器――ブラックサレナは静かに漂っていた。

その操縦者たるテンカワアキトはコックピットで咳き込み、その口から血が溢れた。
強引に口をぬぐって、荒い息をつく。


―――ドクン


嗚呼。これで終わりなのだ。

他者の血にまみれたこの手も、蝕まれたこの身体も。

すべてが終わりだと告げている。

《アキト》

終わりだ。

《・・・終わり》

そう、終わりだよラピス。
火星の後継者の残党はあらかた潰した。
そしてもうすぐ俺は死ぬだろう。

《・・・アキト。私はアキトの目、アキトの耳、アキトの手、アキトの足、アキトの・・・私はアキトがすべて。
アキトが終わりだというのなら私も終わり》

・・・ラピス、君は俺とは違うんだ。
死んでしまうだろう俺とは違って、ラピスにはまだ未来がある。それは俺に無いものだ。

《だったら私はどうすればいいの? アキトがいないのなら、私は一体何?
アキト、アキト、私を置いていかないで!》

連れてはいけない。それに、置いていくわけじゃない。俺は時間と言う流れの中から、リタイアする敗北者だ・・・
ラピスはまだ歩いていける。俺が死んだらエリナに頼れ。

《アキトがいないのは嫌、いっしょがいい!》

・・・ごめん、本当にごめん。無理だよ。俺はラピスに・・・生きてて欲しい・・・
これは俺の・・・わがまま・・・なん、だ・・・

意識がぼんやりと薄れていく。呼吸が浅く、速くなっていく。
なぜだか身体が冷たい。五感が無いはずなのに、『命』と言うものが身体から流れ出ていっているようだ・・・

《アキト!》

さよなら、ラピス・・・


そこで、おれの意識はぶつりと途絶えた。


―――はずだ。
しかし。


「・・・なんなんだ、ここは」

あたり一面が、金色。
そんな場所に俺は立っていた。
地面と空の区別がつかない。境目が無い。建物の中なのか外なのか、それすらもわからない。

手を見る。素手だ。
身体を触る。身体が存在するが・・・熱やどんな感触なのかがいまいちわからない。

触れられる、見える、聞こえる、味覚と嗅覚がどうなっているのかはわからないが、今の俺には五感があった。
もっとも、この空間は俺の脳が作り出している幻かもしれない。

死んだはずなのに、息苦しさも何も無い。
わからない。理解不能だ!

「一体なんだっていうんだ!」

ゴパァ・・・ッ!

俺の声と同調するように、世界がぐにゃりと変化した。

俺が立っているのは一本道。その横には金色の波がさざめいている。
金色の海は水平線まで続き、境目からは金色の空が広がる。
やはりどれもこれも金色だったが、濃淡でようやく世界がはっきりと認識できた。

後ろを見ると、そこで道は終わっていた。やはり海が広がっている。
そのまま一歩、道のあるほうに足を進める。
進んだ分、金色の道はそのまま溶けて海になった。

このまま進め、と言う事だろう。

よく見ると俺は元々来ていた服を身に着けていた。バイザーもある。

この世界は、一体なんなんだ?

顔をしかめながらも前を向いて歩く。立ち止まっていても仕方がないからだ。
道の先に、金色ではない場所が見える。
近づくたびに詳細がはっきりとしていく。
それは、脈絡も無く唐突に存在する、巨大な屋敷だった。

開かれた門をくぐり、白い道を通り、季節を無視した花達が咲き誇るアーチを見上げ、緑色の芝生を横切る。
金色の水がこんこんと湧き出る噴水のそばを通り、開け放たれた扉をくぐった。

薄暗かったはずの屋敷の内部、一歩中に踏み入れた時、シャンデリアに明かりがついていっせいに光り輝くロビーへと変貌した。
中世ヨーロッパの貴族の屋敷のような屋敷。
円形のロビーの壁には絵画や写真が飾られている。

ルーベンスの絵画、『アダムとイヴ』
2世紀のローマに立てられたパンテオンの写真
モヘンジョダロの写真
アンコール=ワットの写真
13世紀、ヴェネツィアの風景画
カーバ神殿の写真
版画、『コロンブスの上陸』
『モナリザ』
ヴェルサイユ宮殿外観の写真
ダヴィド画『ナポレオン』
ドラクロワ画、『民衆を導く自由の女神』
アメリカ、西部開拓時の白黒写真
白い十字架が幾百も並ぶ墓地の写真・・・・・・『ヴェルダン攻防戦での戦没兵士の墓』と記されている。
鍵十字(ハーケンクロイツ)を背に演説するヒトラーの白黒写真
人間の骨が積み重なって出来た山の写真・・・・・・『ポル=ポト派の虐殺』と書かれている。
ダリ画『内乱の予感』
原爆実験、キノコ雲の写真
スペースシャトルの写真
月の拡大写真。地表面には人口の光の輝き。
火星に大気圏突入するチューリップ。

そして・・・ナデシコ。

「・・・!」

俺は思わず目を見開いた。
ナデシコの写真。宇宙を航行する白亜の戦艦。
そのさらに隣には、ブラックサレナの写真。
サレナの周囲には金属塊がただよい、まるで墓場のようだ。
そうだ、これは・・・!

「そう。あなたが『死ぬ』直前のものよ」

幼い声に、俺は振り向いた。
金色の瞳に金色の髪の少女。

彼女には、表情というものが欠落していた。

「ようこそテンカワアキト。―――万魔殿《パンデモニウム》へ」


      ◆  ◆  ◆


「エリナ、エリナ、えりなぁ・・・!」

桃色の少女が泣きじゃくる。

『ラピス、一体どうしたの!?』

ウィンドウの向こうでエリナはあわてた。普段感情らしい感情をほとんど見せないラピスが、これほど取り乱して泣きじゃくっているのだ。ただ事ではない。

「アキトが・・・アキトが・・・・・・死んじゃった」
『!』

エリナは一瞬目を見開き、何かを飲み込むように目をつぶって、大きく息を吐き出した。

『・・・そう。彼、死んでしまったのね』

ラピスとアキトはつながっている。
それは文字通りの言葉だ。つながりが絶たれるのは手術をしてリンクを切るか・・・片方が死亡するかのどちらかだ。
それが切れたというのなら、ラピスには疑う余地もない。そしてエリナも。

「火星の後継者を潰したから、だから・・・アキトは全部終わりだって」

最後の最後まで、死にかけていた己の肉体を憎悪と気力だけでもたせてきたのだろう。
それが切れて、支えがなくなってぶつりと彼の命が途絶えた。

「・・・今、アキトが乗ったブラックサレナをバッタで回収させてるところ・・・デブリが密集しててユーチャリスからは近づけないから・・・
アキトが死んだ・・・私、私どうすればいいの? わからないよぉ・・・!」

ラピスにはアキトがすべてだった。
アキトは自分の一部・・・もとい、自分がアキトの一部であるとさえ思っていたラピスだ。依存するものがいなくなって、混乱しているのだろう。

『ラピス、とりあえず帰ってらっしゃい・・・アキト君を連れて』
「うん・・・」


     ◆  ◆  ◆


あとがきらしきぶんしょう?

やってしまいましたナデシコ。YENAです。
初投稿です先行き不安です。
ダメダメじゃないっすかと思いつつ書いてしまっていたり・・・うう。
っつーかアキトの行き先きんきらきんの場所ってもろばれのような気が。
まあとにかく生ぬるく見守ってください・・・


次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.080348968505859