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No.296の一覧
[0] 機動戦艦バルドナデシコARMS[CVTB](2005/07/31 22:49)
[1] 機動戦艦バルドナデシコARMSプロローグ2[CVTB](2005/07/01 21:39)
[2] 機動戦艦バルドナデシコARMSプロローグ3[CVTB](2005/08/29 14:56)
[3] 第一話[CVTB](2005/07/21 22:48)
[4] 第二話[CVTB](2005/07/31 22:47)
[5] 第三話[CVTB](2005/08/29 15:40)
[6] 第四話[CVTB](2005/09/09 21:14)
[7] 第五話[CVTB](2005/10/06 08:20)
[8] 第六話[CVTB](2005/11/22 22:31)
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[296] 第二話
Name: CVTB 前を表示する / 次を表示する
Date: 2005/07/31 22:47
 シェルターの屋根をぶち抜いて降ってきた物に、アキトは恐る恐る近づいてみる。遅れて落ちてくる瓦礫の欠片に気をつけながら装甲板の上に登ると、微かにしたから光が指していた。その落下物から漏れ出る光。その中の穴を覗き込み、漸く落下物が機械の一種だと解った。


「…………」


 呆気に取られて言葉も出せなかったが、その時のアキトはシェルターを襲った奴とは形とかが違うし、動く様子が無いから大丈夫かな、と混乱したままの頭でそう自己完結した。
 もっと奥まで穴を覗き込む。暗さに思いっきり中を凝視し、慣れてくるにつれまず椅子が見えた。一人用の椅子で、乗客はいない。続いて、中の大まかな形。ゲームセンターの体感ゲームにあるような小さなモニターの前に、操縦桿。そして幾つかのボタン。そこまで見て、やっとこれが戦闘機か何かの戦う為の機械だと想像できた。


(戦う機械……戦える……?)


 ある思考がアキトの意識を埋め尽くそうとする。突き動かされるかのように、気がつけば穴の中に飛び込んでいた。
 戦える。力。その一念がアキトを動かした。


(俺は、アイちゃんを守れなかった!)


 だから戦える力が欲しい。守りたい時に、守れる力が。
 電気はついている。ならば最低限の動力はある。やる事は一つ。
 動くかもしれない、むしろ動いてくれと、適当にボタンを押してまわり、レバーと言うレバーを入れる。
 果たして、奇跡は起きた。天はアキトに味方した。


「やった……!」


 モニターに起動を表す文章が流れる。だが次の画面に切り替わった時、一旦流れが止まった。


「エラーだって……くそっ」


 無茶苦茶にレバーを切り替えた際、設定が不都合を起こしていた。幸いモニターに修正箇所が詳細に書いてあったため、アキトのような初心者でも一つ一つ修正できた。
 そしてエンジンに火が入り、画面の文字がめまぐるしく入れ替わる。やっと動いてくれる、と一息ついたその時、上空から爆音が高鳴る。
 忘れていた。さっきまでは突然の落下物のインパクトと、動かす為に集中していた事もあって殆ど意識の外だったが、シェルターの上の地上部では未だ敵が跳梁跋扈しているのだ。おまけに『これ』が天井をぶち抜いた事もあって、シェルターの意味は現在無いに等しい。
 動け、動け、早く動け。あいつらを倒すために動け。
 火星を、みんなを、アイちゃんを襲ったあの奴らを倒すために、動け。


「動け……動け……動けぇぇぇぇぇっ!!」


 吼える。思いのたけの全てを一つの言葉に込め、叫びとともに操縦桿を握り締めた。
 刹那、身体が上に引きずられる。


「――――――――」


 本当に一瞬のうちに、彼の視界は暗黒空間から青の世界へと移り変わっていた。




 気がつけば空。雲が周囲を纏う高度にまで上がっていた。
 落ち着け、落ち着け。心の中で連呼する。だが行動とは裏腹に、心臓の鼓動は秒間16連射でうるさく刻み続け、冷や汗はナイアガラの如く生み出されては流れ出す。当然だろう、何処の誰が自動車も運転した事が無いのに一足飛びで初めてリアルの戦闘機を操縦し、空のど真ん中で落ち着いていられるだろうか。落ち着いている者は、まずまともな神経を持ち合わせてはいない。そしてアキトは、まごう事なきまともな神経の持ち主だった。
 しかし、次の展開が予断を許さぬ状況となる。
 警報、こっちを見つけたバッタの群れ、そしてミサイル。


「――――うわあっ!?」


 泣きそうになりながら無我夢中で操縦桿を揺らす。機体がつられて急旋回し、きりもみを二度三度かけながら急降下、そして一瞬前までいた場所でミサイルが爆発した時、やっと駆動が止まる。
 ジェットコースターさながらの上下回転運動に胃の中が酸っぱくなり、瞳もにじみながら、しかし逆に吹っ切れたのか、やっと決意を固めたかのように歯を食いしばる。


「――――ふざけるな」


 アキトは怒りを覚えていた。目の前の敵に対してではなく、何も出来ない自分に。
 いきなり俺達のコロニーを、生活を、火星を潰した奴等が目の前にいるのに、そして望んだ戦える力があるのに。アイちゃんにしたみたいに、見捨てるって言うのか!何もせず、何も出来ず、おめおめと逃げ出すってのか!


「そんなのは、もううんざりなんだ!」


 操縦桿が潰れるように見えるほど、力強く握り締める。そして思いっきり引いていた。
 だから、その後に起こった事は、奇跡だったのかもしれない、とアキトは思っていた。人生で数少ない、奇跡のバーゲンセールだと。
 機体が軋む。中にいるアキトには、モニターに映るただ一文しか解らなかったが。


 ――――本機はバトルモードに移行します――――


 それの種明かしは、エンジンに火が入った時には既に、周囲の不審機を確認して戦闘用のプログラムを走らせていた。しかし落下直後の衝撃の為にメインプログラムを先に修正していたから、今のタイミングになっただけの話。そのタイミングが、アキトには奇跡になっただけという事。
 それはともかく、確かに今、火星の空に、それは姿を見せたのだ。戦闘機から変形し、高さも15mを越えるだろう、人型のロボットが。


 それは、とある世界で最終兵器だった。どこかの青とか決戦存在とかは全く関係ないが、それでも人類の希望だった。侵略者によって蹂躙され、破壊され、絶望の中にあった地球を救ったロボット。
 ――――白い『モビルスーツ』が、時こそ違えど、確かに侵略者に向かって今牙を向こうとしていた。




 正体不明のモノを認識し、向かい来るバッタ達。数は五。たった一機でさえさっきまで恐ろしかったそれが、しかし今のアキトには怖いものとは感じなかった。モニターの説明どおりに、ダブルライフルを取り出す。雨のようにミサイルが降り注ぐのと、ライフルを構えるのは同時。的確なロックオンサポートにあわせ、指を握る。
 射撃。一つ二つ、以下数えるのも面倒なほど花火が咲き、数秒の後に五機のバッタも同じ運命を辿った。
 その時やっと、残りの木星蜥蜴達は正体不明の白いモビルスーツを排除すべき敵と認識した。周囲にいた部隊を集め、戦艦一隻に五十を越えるバッタが揃う。それでもアキトは怯まないし、怯えない。どちらもする必要が無かったから。今のアキトには、何だって自由に出来る気がしてきたから。


「お前らなんかぁぁぁぁぁぁっ!!」


 背中からビットを三機射出し、ライフルを前に構える。くるくると主人を守るようにビットが回りながら、ライフルの火線を濃くする手助けをする。四方向からの一斉射撃は、黄色い虫達を殺虫剤の如く纏めて叩き落し、敵小型兵器全滅と言う結果を、目の前に示した。
 しかし、その花火と煙の中を悠々と進む物もまだ存在していた。
 木星蜥蜴の戦艦。火星大戦開戦当時から地球軍の戦艦の攻撃を殆ど意にも介さなかったあのディストーションフィールドは、後にナデシコが現れ、更に後にフィールドキャンセラーが現れるまではまともな対処方法が存在しなかった。それは機動兵器の一機程度の射撃に楽に破られるほど、柔な造りではない。そんなものを、蜥蜴の戦艦は搭載していた。


 だが、アキトはそれでも倒せると思っていた。重ねて言おう。何だって出来ると、確信していた。
 モニターに表示された使用可能な最後の武装を、指示通りの方法で取り出す。自機の前に構えられた武器は、巨大な主砲と呼ぶのが相応しいものだった。その名を、メガバズーカランチャー。敵を完全に貫くための、一撃必殺の兵器。


「落ちろぉぉぉぉぉぉっ!!」


 白の閃光が火星の空に走る。一瞬何も無かったかのように静寂が訪れるが、光の矢は確かに敵に突き刺さっていた。敵艦の周囲の空間が僅かに歪んだ次の瞬間、中から火が次々と噴き出し、続いて完全に爆発四散した。


「やった……!」


 勝利。間違い無く完全勝利。何の問題も無く、敵を蹴散らした。それにアキトが喜びの声を上げるのは、無理も無い事と言えた。
 だが、ここで奇跡は終わった。いや、ここまで奇跡が続いた、と言った方がいいだろう。アキトが気を抜いたその時、


「――――っあ!」


 前方から機内を叩く振動に、全身を何度もコクピットの壁にぶつけた。原因は単純明快、メガバズーカランチャーが爆発したからだ。
 元々『落ちてきた』兵器を整備も何か問題があるのかも確かめずにすぐに乗り、戦うこと自体にかなり無理があった。ロボットは意外と繊細な部分があり、飛んだり跳ねたりするだけでも金属疲労などを起こす。ましてや地面を崩すほどの衝撃で落ちたのであれば、どこかが壊れていてもおかしくは無い。メガバズーカランチャーもその関係で、いきなり高出力を引き出した為に動力に異常な力がかかり、爆発した。更に泣きっ面に蜂か、次の瞬間モビルスーツの動力が停止した、とモニターから告げられた。武器の爆発は余り危険に思えなかった(それでもびっくりはしたが)アキトでも、それを告げられる意味はすぐに解った。
 よほど無理が祟ったのか、警告のモニターの光があっという間に消え去る。アキトが顔を病人さながらに蒼ざめたと同時、鉄の棺桶に入ったまま哀れにも上空何百mからのパラシュート無しのスカイダイブを体験する羽目になった。






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あとがき
やっと前のレス数まで追いついたぜ。相変わらず遅筆だが。
次はまたナデシコサイドですが(つうか交互?)、いい加減そろそろバルドの面々出さないとバルドとのクロスと言うことすら忘れかねない(主に私が
取り敢えずカークランドかなぁ。


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