<ラピス side>
「ねえねえ、ちょっといい?キミさ、ひとり?どっか遊びに行かない?」
無視。
「おいおい、無視しないでよ~」
うるさい。
「待てって!」
私にさわらないで。
「あん?……い、いてえええぇぇぇ!!!」
人は関節を鍛えられない。
だから手首を極めるだけでこんなに痛がる。
「消えて」
「は、はいいいぃぃぃぃ!!!」
ナンパ野郎がいなくなると私はしゃがみこんで考える。
なんでなんだろう?
明人は私の気持ちに気づいてくれない。
あの人と出会ってもう数年経つ。
子どもだったラピス・ラズリはもういない。
もう16歳だ。
大人の女性だ。
結婚だってできる。
なのに明人はいつも私を子ども扱いする。
なんで?
「明人のバカ……」
………やっぱり胸なのかな?
ユリカも大きかったらしいし……。
―――その時
「お嬢さん、お暇ですか?」
ウソッ!!
いつの間に私の背後を!?
私は咄嗟に振り向いた。
「お茶でもいかがです?」
……え~っと。ナマズ?
じゃなくて謎の中国人?
どっちにしろこいつできる……。
「ヤダ」
「そこを曲げて、ぜひ。貴女に断られれば、私は腹を切らねばなりません」
つかみどころが無い。
ブロスぺクターみたいだ。
「お願いします。我が主がお会いしたいと申しておりまして」
主が誰だろうと興味ないし……。
「おとといきな」
「そこを何とか!」
しつこい。
私には明人が入……。
「……いかがなされました」
「うふふ」
「?」
いいこと思い付いた。
「いいよ。連れてって」
<一成 side>
「大導脈流、狭窄掌!!!」
「「「グハアアァァァ!!!」」」
俺の秘奥儀で三人はその場にくずれおちた。
今日の俺は絶好調だ……。
「フッ……」
俺は椿一成。
空手同好会の代表だ。
俺はかつて天河に敗れた。
その後俺は自分の油断を認め、天河に謝罪した。
にもかかわらず、天河は俺を変態呼ばわり。
しかも天河はかなわないとみると卑怯にも用心棒を雇ったのだ。
「思い出したくも無い……」
あの日。
俺は三日間メシが喉を通らなかった。
おのれ天河め……。
武道家の風上にも置けない奴!!
もはや女とは思わん!!
天河・ラピス・ラズリ!!
そして黒ずくめの男!!!
必ずお前たちを俺の拳で叩きのめしてやる!!!
「……だというのに」
こいつらときたら、まだ休んでやがる!
「お前ら立て!!修行はまだこれからだ!!!」
「つ、椿君……」
「ちょ、ちょっと待ってくれたまえ……」
「とばし過ぎだ……」
「黙れ!!だからお前たちは弱いんだ!!!」
まったく!!
これじゃあ修行にならん!!
こうしてる間にも………。
「!!!!!」
あそこを歩いているのは天河じゃないか?
……間違いない!!天河だ!!
「まさか、こんなところで会えるとわな。……うん?」
一緒に歩いている男、この間の男と違うな。
「なるほど、用心棒を何人も雇っているのか……」
しかし奴はこんなところでなにを?
「……つけてみるか」
あとがき(いいわけ)
お言葉に甘えて…
>大導脈流・狭窄掌
元ネタは『大動脈狭窄症』です。