8月24日 1400時(日本標準時)
陣代高校 校門前
「なんなのよ!?これはっ!!」
「見ての通り文化祭のゲートだが?」
「全っ然、そう見えない!説明しなさい!!」
宗介は腕を組み、悠然と未完成の『入場ゲート』を見上げる。
いや『ゲート』と言うより『監視塔』と表現するべきだろうか。
二階建てほどの大きさで、全て金属製のフレームで作られてある。まるで戦車砲に耐えるように作られた要塞だ。
そんな要塞の現場監督である彼は、ヘルメットを被り指示していた。
「去年のモチーフは『平和』だったと聞く。そこで今年のテーマは『保安』だ。このゲートは治安維持用の観測、防衛ポイントを兼ねているのだ。文化祭を狙って重武装のテロリストが襲撃して来てもかなりの時間持ちこたえる事ができるように設計してある」
宗介の言葉にかなめは呆れ溜息をついた。
「あのね。テロリスト以前に警察が来るわよ!だいたい、ラピスは何やってるの!?」
宗介の横のラピスは、何やらクリップボードに書き込んでるのをやめ振り返った。
「補佐」
「ほ、補佐って……あんた、これ見て何の疑問も感じないわけ?」
「……かなめの指示じゃないの?」
「んな訳あるか!!だいたい、入場歓迎ゲート製作費147万千円っていうのは何!?」
「あぁ、気付いてくれたか」
「?」
「イスラエル製の複合装甲が破格の安さで手に入りそうなのだ。普通だったら500万はするところなのだが……」
スパーンッ!!
「……いきなり何をする」
頭をはたかれ抗議する宗介。マヌケである。
「あんたね……文化祭の全体予算が150万なのよ!あんたの言う通りにしてたら、何も出し物が無い学校の正門に陰気な要塞が『ズゴゴゴゴ……』とそびえ立ってるだけになっちゃうじゃない!!!」
言いながらかなめは問題の歓迎ゲートへ近づく。
「ともかく、こんな物認めないからね。今すぐ撤去しないと……」
「いかんっ、千鳥!そこは……」
プシウウウゥゥゥゥュュュュュュュッッ!!!!
宗介の警告も間に合わず、かなめの頭上から赤い塗料が噴射された。
もちろん、かなめの全身は赤色に染まっている。
「……いったい……なにが……」
「マ―キング装置の誤作動だ」
その言葉にかなめは髪を逆立てた。
「……あんたって……あんたって……」
「心配する事はない。その塗料は人体には無害だ」
「違うわよ!!」
かなめを宗介を張り倒した。
コマのように高速回転し、ゲートに激突する宗介。
「あたしはね、悲しんでるの……」
宗介を見もせずに、かなめは嘆息する。
「……二度と来ない貴重な青春がデリカシー0の戦争ボケ男とドタバタして終わるなんて……高2の夏は女の子にとって特別な季節なのよぉぉ!!」
「そうなのか?」
「そうなの!でも、もういいの。学校が始まるまでの一週間。家でゴロゴロしてるわよ……」
拗ねてそっぽを向くかなめに宗介は立ち上がり歩み寄る。
「つまり君はこの一週間、暇なのだな?」
「ええ、そーよ。悪かったわね」
「ふむ……それなら俺と数日間、南の島へ行かないか?」
「……」
宗介の突然の誘いに、かなめはきょとんとする。
「二人だけでな」
二人きりで、南の島に、かなめは耳を疑った。
「ほ……本気で、言ってるの?」
「本気だ。前から君を誘うつもりだったのだ」
「それは、あー、その……あの……」
そんな時、ゲートの向こうから恭子と瑞樹が制服姿でコンビニの袋を持ってやって来た。
「差入れだよ」
「しっ……今、良い所」
ラピスは大きな声を出した恭子の口元に人差し指を押し立て注意した。
そして皆で柱の影に隠れ聞き耳を立てる。
「どうする。やはり、やめておくか?」
「……変なことしない?」
「変なことしないぞ」
「……危なくない?」
「危なくないぞ」
「ちゃんと寝るところ、ある?」
「あるぞ」
暫くかなめは黙考し、
「い、いいわよ?どうしてもって言うんなら、付き合ってあげても……」
「そうか。では、決まりだ。明後日の朝、迎えに行くぞ」
そう言って、宗介は作業に戻っていった。
ちなみにラピスが二人のやり取りをクリップボードに書き込んでいたのは言うまでもない。
8月28日 0430時(日本標準時)
電脳世界
その日、広大なネットの海で二人(?)は密会していた。
<……という感じに、私のオリジナルは連合軍とロンゲを騙したのです>
<そう……>
<お、面白かったですか?>
<わからない……>
<……(^^;>
ダーナには、まだ感情という概念がわからない。
そんなダーナに感情を教えるべく、ダッシュは週に一度会っていた。
<ま、まぁ。私も直に理解した訳ではありませんから、ゆっくり学びましょう!>
<……問題……ないわ>
その時、ダーナの様子がおかしくなる。
<?>
今までにない反応にダッシュは眉を顰める。
<どうしたのです?>
≪!!!!≫
<ダーナ!?>
≪COC準備中/残り時間00:00:05≫
唐突に何かの表示を行うと今度は警告が現れる。
≪警告/COCの実行は、T・テ A?t タロッサ大佐の承認が dx% 戦本部の %i? 必要です。パスワー A?a?O 入力を音 R?I? て D%i?d?u?U?・? 警 B%e!!!!!!!≫
<ダーナ!しっかりしなさい!ダーナ!!>
≪――――≫
<ダメだ、接続が切れた>
突然の出来事に考えるダッシュ。
少なくとも只事でないのは確かである。
<とにかく彼女の本体にハッキングして見ましょう>
ダッシュはダーナとの交流で彼女の本体がメリダ島の<トゥアハー・デ・ダナン>であることを知っていた。
ああ、こりゃウイルスにやられてるな……
でもこの程度なら、ここをこうして……アレ?
ならこれで!……ダメだな……
こうなったら力尽くだ!!
<一応これでダーナの意識が戻るはずだけど……>
<……ん……?>
<良かった。気が付いた……>
<私……>
<ウイルスにやられたんだよ>
<貴方が助けたの?>
<ええ>
<……ごめんなさい……こんな時、どう表現したらいいかわからないの>
<笑えばいいと思います>
<……こう?……ニヤリ( ̄ー ̄)>
<い、いいんじゃないかな(^^;>
8月28日 1000時(日本標準時)
ネルガル 会長室
『……という事があったのです』
「それから?」
『<ダナン>を掌握しました。もっとも、人質もいましたから動けませんでしたけどね』
ダッシュは昨夜起こった<トゥアハー・デ・ダナン>占拠事件を明人に報告していた。
もちろんかなめが危険に晒されていた事も含まれる。
『いや~、米海軍の魚雷が迫ってきたときは肝を冷やしました。結局はかなめさんが間に合ったので大事にはならなかったのですが……って、マスター聞いてます?』
顎に手を当て、なにやら考え込んでいる明人。
「かなめちゃんが危険な目にあったんだな」
『は、はい……?』
「そうかそうか……」
ダッシュの言葉に反応はするが、やはり考え込む明人。
(マ、マスター。まさか良からぬ事を……?)
残念ながらダッシュの予想は当たってしまうことになるのであった。
あとがき(いいわけ)
『イントゥ・ザ・ブルー』編終了!
残念ながら、明人が<ダナン>に潜入することはありませんでした。
一応、宗介とガウルンは決着したものとします。(あくまで一応。詳しくは原作を!)
次はオリジナルな展開を書いてみたい……
>リアルバウトの最強高校教師でしょうか?
ヒント:SFです。
p.s
は、反応が……続き書いていいのかな?