「いやー、みんなゴメンねー。ちょこーっとだけ遅れ―――――」
「うらあッ!!!水遁・水浴びせの術!!!」
バッシャアアアア!とマスクを被った銀髪の忍者、はたけカカシの全身に水が襲いかかる。
ドアを開けたとたんの突然の出来事に成す術なく頭から水を浴びるカカシ。
びしょびしょに濡れたカカシが、ナルト達へと問う。
「・・・おーい、お前達。これは、どういうことかな?」
ニコニコしながら少しの怒気を含んだ口調でナルトへ言った。
突然理由も無く(と、彼は思っている)水を掛けられたのだから、当然だろう。
ちなみに先ほどナルトが使ったのは術では無く唯のバケツの水である。
「3時間も遅れて来たくせにオレがなんもしねーと思うなってばよ!これはイタズラじゃねェ、セイサイだ!」
イライラした表情と口調でナルトが叫んだ。
(まったくよー、3時間もあったらどれだけ修行出来んだと思ってんだってば!あーあ、兄ちゃんのとこに帰りてェってば」
「先生、ごめんなさい。私は止めたんですがナルト君が・・・」
申し訳なさそうな顔でサクラがカカシに説明するが、内心ではガッツポーズをしたい気分であった。
(しゃーんなろー!!!あんだけ私たちを待たせて置いて反省も無しだもの、ざまあないわね!!)
「・・・チッ、ウスノロが」
(・・・これで本当に上忍か?頼りなさそうな奴だな・・・)
三人の子供達のうち二人から辛酸な言葉を投げかけられ、少しガックシとなったカカシ。
尊敬していた四代目火影の息子がいる班だと聞いて三代目から担当上忍の任務を受けたが、早くも後悔していた。
――――まさか、あの四代目の息子がこんなやんちゃ坊主だとはね・・・。
「ん――――――・・・なんて言うのかな、お前らの第一印象は・・・・・・嫌いだ!!」
アンタに言われたくねぇ、と第七班の三人は同じことを考えていた。
場所は移って忍者アカデミー屋上。
ナルト、サスケ、サクラ、そしてカカシの4人は対面して話を続けていた。
ナルトの機嫌も、サクラに何度も宥められたので現在では元に戻っている。
さて、とひと呼吸おいてカカシが三人へと言った。
「そうだな・・・まずは自己紹介してもらおう」
「・・・どんな事言えばいいの?」
「・・・そりゃあ好きなもの、嫌いなもの・・・将来の夢とか・・・ま!そんなのだ」
―――自己紹介か。兄ちゃんに言わてるし、あんまし下手な事は言えねーってばよ。
何故かは分からないが、俺が兄ちゃん達の組織へ入っている事が万が一木の葉の里へとばれてしまうと大変な事になるらしい。
まー、オレが強くなって木の葉へ復讐するその時までは絶対に隠しておくってばよ。
それにしても、夢か・・・とりあえずこの場では火影になりたいとか言っておくか。
一番妥当で安直な夢だし、変には思われないだろう。と、その前に、このカカシ先生について聞いておくってば。
担当上忍の事も兄ちゃんには報告しないといけないし・・・。
「あのさ!あのさ!それより先に先生、自分のこと紹介してくれよ!」
「そうね・・・見た目ちょっとあやしいし」
あやしい、と言われたカカシがまたガックシする。
「あ・・・オレは[はたけカカシ]って名前だ。好き嫌いをお前らに教えるつもりはない!将来の夢・・・って言われてもなぁ・・・
ま!趣味はいろいろだ・・・・・・」
・・・おいおい、なんだってばよその自己紹介は。名前しかわかんねーぞ。
この人は自己紹介ってもんを知らないのか??
「ねェ・・・結局わかったの、名前だけじゃない・・・?」
ぼそり、とサクラちゃんがオレが考えていた言葉を呟いた。
こんなんじゃ・・・兄ちゃんになんにも報告できねーじゃねェか・・・。
「じゃあさ・・・カカシ先生、忍術とかは何が使えんの?」
「忍術か?ま、いろいろとな・・・あとで分かる」
また答えになってねーってばよ・・・後で分かる、ってのはどーいう事なんだ?
どんな術使うのかも気になるし、一度でいいから戦ってみたいってば。
「じゃ、次はお前らだ。左から順に・・・」
「はい、私は春野サクラ。好きなものはぁ・・・ってゆーかぁ、好きな人は・・・えーとぉ・・・
・・・将来の夢も言っちゃおうかなぁ・・・キャーーーーーー!!」
サスケの方をチラチラ見ながら頬を薄桃色に赤らめるサクラを見て、カカシは思った。
(・・・この年頃の女の子は、忍術より恋愛だな・・・)
「なるほどね・・・次!」
カカシが次を催促すると、中央に座っていたサスケが自己紹介を始める。
「・・・名はうちはサスケ。嫌いなものならたくさんあるが好きなものは別にない。それから・・・
夢なんて言葉で終わらす気は野望はある!一族の復興と、ある男を必ず・・・・・・・・・殺す事だ」
サスケの自己紹介を聴き終えると、カカシは顔をしかめる。
――――――やはりな。サスケ・・・あの事件の事をかなり・・・。
ナルトもカカシと同じ事を考えていた。
―――――サスケェ。やっぱりお前、イタチさんを・・・。悪いのはイタチさんじゃねェ、木の葉のやつらなのに・・・。
教えて誤解を解いてやりたいが、あいにくイタチさんに口止めをされてしまっている。
・・・なんでイタチさんは、そうまでして全部自分で背負うんだ・・・。
「・・・・・・最後、お前だ」
・・・おっと、いよいよオレの番か。だいたい言う事は決まってる。
火影になりたいと言っておけばいい事と、あとは考えていることと逆の事を言えばいいんだ。
「オレはうずまきナルト!好きなものは火影のじっちゃんやイルカせんせーみたいな優しくて強ェ忍者!
嫌いなものは勉強と野菜!」
(・・・オレはうずまきナルト。好きなものは力と兄ちゃん達組織の皆。嫌いなものは木の葉の里)
努めて明るい表情で自己紹介を続けるナルト。しかし、内心では黒い感情が渦巻いている。
「将来の夢はァ、火影になる!!そして、今までのどの火影よりも強くなる!ンでもって、里の奴ら全員にオレの
存在を認めさせてやるんだ!!!」
(将来の夢・・・兄ちゃん達ともっともっと修行して強くなる。この里のどの忍者よりも・・・そして・・・
木の葉の里を・・・・・・・・・潰す!)
ナルトの本当の心の内が読めないカカシは、素直に、
(なかなかおもしろい成長をしたな・・・こいつ)
と、そんな感想を持つ事しか出来なかった。
ナルトの心の内が読める人間は、この里には存在しなかった。