「なぜだ・・・ナルト!何故お前が火遁の術を使える・・・?」
おお、驚いてる驚いてるってば。カカシ先生、マスクの上からでも今なら表情が丸分かりだってばよ。
しかし、この豪火球の術ってそんなにスゲーのか?まぁ、兄ちゃんに教わらないとオレも一生出来なそうな術だけど・・・。
まぁいいや、いまはこの術が使える事について言い訳もとい説明をしないと・・・。
「あぁ、これ?これってば、じっちゃんの部屋に置いてあった巻物をこっそり借りた事があったんだけど、
そんときの巻物の中に書いてあったってばよ!・・・じっちゃんにはこっぴどく叱られたけど」
「・・・なに!?巻物を読んだだけで使える様になったってのか・・・!流石は、先生の・・・やはり天才か・・・!」
そう、この言い訳はオレが兄ちゃんに出会うまでに散々イタズラを繰り返していたから出来る言い訳だ。
これなら特に兄ちゃん達と繋がりがあるなんて疑われる心配も無いってばよ。・・・カカシ先生はなんかオレが天才だとか言っちゃってるけど。
・・・ん?先生の、って・・・どういう意味だってば?まぁ、細かい事はいいか。
「それにしても、火影様の持ち物に手をだすとはね・・・イタズラ小僧だとは聞いていたが、あんまりやりすぎるなよ、ナルト」
「だいじょーぶだってばよ!オレさ、もう下忍になったんだから、イタズラは卒業だってばよ!!」
・・・正しくは、[下忍になったから]じゃ無い。・・・[そんな事をしている暇は無い]からだってばよ・・・。
本当なら、オレはこんな忍者ごっこなんかしてないでもっと修行をいっぱいして、強くなりてェけど、兄ちゃんの頼みだから仕方ない。
・・・っと、こんなのんきに会話してる場合じゃ無いってば。さっさとカカシ先生からスズを奪わねェと、試験に合格出来ないってば。
「サスケ!・・・おい、サスケェ!!聞いてんのかってばよー!!」
「―――――――!!・・・なんだ」
「カカシ先生からスズを取らなきゃならねェのはわかってるよな!!オレに協力しろってばよ!」
悔しいけど、今のサスケの方が体術も手裏剣術も戦法も忍術の使い方も、全てがオレより断然上だろう。
・・・悔しいけど、今のオレがサスケより優れているのは、多分チャクラの量だけ。
だから、オレ一人でもサスケ一人でもスズを奪えないと言うのなら、二人で協力すればいい。
もちろん、サスケが素直にこの申し出を受けてくれるかどうかだけど・・・、いざとなったら・・・。
「・・・協力、だと・・・?フン、なんでオレがお前に協力しなきゃならない・・・・・・断る!」
「なんでだってばよーーー!!オレとお前で一緒に戦えば、もしかしたらカカシ先生からスズを奪えるかもしんねーんだぞ!!」
・・・やっぱり、サスケってば無駄にプライドが高いからな・・・。素直に聞いてくれるやつじゃないってばよ・・・。
こうなったら、あんまりやりたくねーけど、サスケを怒らせて無理矢理協力させるってば!
オレってば、人を怒らせるのは得意だからな・・・!
「あれ、あれあれあれ~~!?もしかして、サスケちゃぁん、カカシ先生に1回やられちゃったぐらいで、びびっちゃってんの~?」
サスケの眉がピクリ、と分かりやすいほど反応した。
「あ~あ・・・アカデミーのトップが聞いて呆れるってばよー・・・、これじゃあオレがトップだってば!」
「・・・・・・・・・!!誰がびびってるだと・・・!このウスラトンカチ・・・、調子に乗りやがって・・・!!
―――チィ、仕方ねェ!協力してやる・・・が!邪魔なんかしやがったら後で容赦しねェからな」
・・・いよっし!やっぱりサスケってば、挑発に弱いってばよ!!前にアカデミーでオレがサスケに突っかかったとき、からかったら怒ったから
いけると思ってたけど・・・。よし、これでカカシ先生にも太刀打ちできる!
時間があんまり無いから、さっさとスズを奪って昼メシを食べる!
地面に埋まったままのサスケを引っ張り出すと、再びカカシ先生と対峙する。
サスケはホルスターから手裏剣を取り出した。オレも影分身の印を結び始める。
・・・すると、カカシ先生が片目を隠している額当てに手をかけた。
「お前たち二人が相手だと・・・あんまりオレも呑気にしてはいられないね・・・オレも少し」
額当てが上がると、左目が姿を現す。その目には、縦に大きく、傷ができていた。
カカシ先生は左目をカッ、と開く。すると、オレにとっては見慣れた、・・・・・・赤い瞳が見て取れた。
「―――――――本気を出さないとな!」
その目を見たナルトとサスケが声を上げる。
「・・・カカシ先生!!なんなんだ、その左目ってば!!」
「カカシ・・・!!うちは一族でもないアンタが、なんでその目を持っている・・・!?」
ハハハ・・・と、乾いた苦笑いをしたカカシだったが、直ぐに真剣な表情へと戻った。
カカシも懐からクナイを取り出すと、ナルト達へと言った。
「・・・ま!オレからスズを奪う事が出来たら、教えてやるよ!!―――さぁ、かかって来い、二人共!!」
サスケが幾つかの手裏剣をカカシ先生へ向かって投げつける。が、カカシ先生が投げたクナイによって全て空中で撃ち落とされてしまった。
間髪を入れず、サスケが次の手裏剣を投げるが、カカシ先生が術を発動した。
「―――――土遁・土流壁!!」
カカシ先生の前方に、大きな土の壁が現れた。その壁によって、サスケの投げた手裏剣が全てガードされてしまう。
・・・よし、サスケだけに戦わせてらんねェ!オレもやるってばよ!!
「多重・影分身の術!!」
ボボボボン、とおなじみの分身体がカカシ先生をとり囲むように姿を現す。分身体一体一体から、サスケに当たらないように注意しながら手裏剣を投げる。
以前、ペインさんのなんとかてんせいで全部弾かれてしまった時の戦法だけど、カカシ先生にはあんな無茶苦茶な術は無いはず。
「多重・分身手裏剣の術ーーー!!」
オレが術を使うと同時に、サスケも印を結び始めた。あの印は、オレにとっては馴染みが深い印だ。
「フン・・・・・・火遁・豪火球!!」
発動と共に、さっき発動した火球よりも更に大きな豪火球がカカシ先生へ向けて襲いかかる。
しかし、やっぱりサスケの放つ豪火球はすげェってばよ・・・。オレもあんなに大きな火球を撃てるように修行をしねーと。
「・・・くっ!!」
全方向からの手裏剣と、サスケの豪火球が一度に迫ってきたからか、カカシ先生が少しだけ焦った表情を見せる。
さっ、さっ、と目に見えない程のスピードで印を結ぶと、あろうことかオレたちの放った術へと向かって走り出した。
・・・!?カカシ先生、何をやってるんだ・・・?当たりにいってどうするんだってばよ・・・?
術が当たるその寸前、カカシ先生が術を発動した。
「――――風遁!大突破!!!」
凄まじい勢いの風によって、前方向にあったオレの影分身と、手裏剣、それにサスケの豪火球が全て消し飛ばされた。
そのまま、カカシ先生はぐるりと一周すると、オレの影分身達を全て消してしまった。
・・・またか!!なんだか、影分身を出すと直ぐに消されちゃってる気がするってばよ・・・!!
術の発動後、一瞬の隙を狙ってサスケがカカシ先生の懐へと突っ込んで行った。
すごいスピードでサスケが蹴りを打ち込むが、カカシ先生の右手によって防がれてしまった。
直ぐにパンチを食らわせようとするが、カカシ先生が後ろに下がって距離を取る。後ろに下がった瞬間、ガチッ、とカカシ先生の足が何かを踏んだ音がした。
刹那、カカシ先生の足元から千本が幾つも飛び出て来る。
・・・!そうか!!サスケの奴、あらかじめ罠を仕掛けておいて・・・、そこまで誘導したって事か!すげぇ頭がいいってばよ・・・。
「―――――!!また罠か・・・!ま、でもオレには通用しないよ!」
カカシ先生が千本をいつの間にか手に持っていたクナイで全て弾いてしまった。
まるで、全ての千本の動きが見えているかの様に・・・・・・・・・あ!!
・・・そうだった、カカシ先生は今、左目の写輪眼で見えているのか!兄ちゃんが言っていたけど、写輪眼はチャクラの色や種類、次の動作などいろいろな物が視える
らしい。だったら、カカシ先生には全部サスケがやろうとしていることも見えちまうのか・・・!
サスケもそれを知っているのか、なるべくカカシ先生の死角を突くように攻撃しようとするが、
やっぱり上忍、なかなか死角を突かせてくれない。
・・・いや!今のカカシ先生はサスケにばかり注意を向けてる!だったら、今はこのオレが死角になっているはずだってばよ!
今がチャンスだ!!
カカシ先生とサスケが戦っている中、なるべく音をたてないようにこっそりと二人に近づく。
・・・お!サスケがオレの作戦に気づいたのか、カカシ先生をこっちに向かせないように体術で意識を向けてくれてる!
さすが頭いいだけあるってば!
サスケが蹴りを放つと、カカシ先生がそれを軽々とガードし、カカシ先生が反撃すると、ギリギリでサスケが姿勢を低くして回避する。
・・・サスケもすげー体術が強いけど、やっぱ写輪眼じゃどうしようもねーってばよ・・・。
でもあともうちょい!持ちこたえてくれってば!
もう少しの所で、サスケの両腕がカカシ先生に掴まれ、抑えられてしまった。
よっし!両腕がふさがっててオレに気づいてない今がさいっこーのチャンス!
これで貰ったぁああああああああああああああ!
「―――――いただきぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいいい!!!!!」
バッ!!とカカシ先生の腰についている二つのスズを目掛けて手を伸ばす。
カカシ先生が驚いて後ろを振り向く。・・・もう遅ェってばよ!!!
・・・・・・・・・もらったああああああああ!!!!
―――――――チャリン。
小さな鈴の音が、虚しく鳴った。
「いやったぁああああああああああああああああああああ!!スズいただきぃぃぃ!!」
「ヘッ・・・下忍にまんまとしてやられるとは、情けねェ上忍だな・・・」
サスケも酷ェ事を言ってるけど、ちょっと嬉しそうな顔をしている。
カカシ先生は呆然と立ったままオレたちへ向けて言った。
「まさか・・・スズを取られちゃうとはね・・・・・・ま!でも、残念」
へ?残念・・・ってどういう事だ?スズは貰ったんだぞ?
――――――――ボン!!
カカシ先生、それと手にしたはずのスズが白い煙となって消えてしまった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・えええええええ!?」
「チィ・・・・・・!影分身だったのか!」
さっきとは逆に呆然としているオレたちへ、木の上からのんびりとした声が聞こえた。
「・・・・・・ま!ナルト・・・影分身を使えるのはお前だけじゃない、ってことだ!よーく身に染みたろ」
くっそ・・・!後ろからこっそり近づくオレに全然気づかないからなんだか変だとは思ったけど・・・ワザとスズを取らせるような真似をしたのか!
ちっくしょー・・・!やっと奪えたと思ったのに!
スタッ、と木の上から地面へ着地したカカシ先生は、間髪を入れずに印を結び始めた。
毎回同じくほとんど見えない様なスピードで印を結び終えたカカシ先生は、片手を下に向け、もう片方の手を下に向けた手に添えた。
・・・?なんだ・・・?あんな構えの術見たこと無いってば・・・?
「・・・オレもそろそろ写輪眼でチャクラがギリギリだからな・・・悪いが、これで終わらせてもらう!」
下に向けた手から、青白い光・・・いや、雷が放出される
。
放出された雷は、放たれる事は無くそのまま手の中で雷鳴を立て始めた。
―――――ジジジジジジジジジジジジジジッ!!!!!!
鳥が煩く鳴いているかの様なその音を鳴り響かせ、カカシ先生はサスケに向けて突進する。
・・・・・・は、えェ・・・・・・!!早すぎて全然見えねェってばよ!
「――――――――――雷切!!!」