此処だ、と兄ちゃんの声が聞こえた。
ゆっくりと目を開くと、尖ったものが幾つも見下ろせる。
それが機械の様な形をした建物だ、と気づいた時、ナルトは自分が今かなり高い所に居る事に気がついた。
真っ暗な雲からは雨が降り注いでいる。
「此処は…?」
「雨隠れの里だ」
雨隠れの里…聞いた事もない里だ。
雨が降ってるから雨隠れなのかな、だとしたら安直なネーミングだな、等とアホな事を考えていた。
「雨虎の結界でも現れる瞬間まで感知出来んとは…相変わらず便利な術だな。それに、そいつは・・・」
「マダラ…その子は一体?」
何処からとも無く二人の男女が姿を現した。
一人は耳、口、鼻と黒いピアスを開けた橙色の髪をした男の人。
もう一人は頭に薔薇の様な花を乗せた紫色の髪をした女の人。
二人共、兄ちゃんと同じ黒い衣に赤い雲が浮かんでいるマントを着ている。
どうやら兄ちゃんの仲間は皆同じマントを着ているらしい。
「九尾の人柱力、うずまきナルトだ…オレと同じく木の葉の里に裏切られた哀れな子供だ。木の葉と砂の国境付近で見つけたので連れて来た」
兄ちゃんがオレの事を説明する。オレも無言では失礼だと思い、挨拶をした。
「う、うずまきナルトだってばよ…宜しきゅだってば」
噛んだ。しかも緊張してヘンな口調で喋ってしまった…。
「そう・・・この子が、九尾の人柱力・・・ふふ、そう緊張する事は無いわ。私は小南…今日からアナタも私達の仲間よ。宜しく頼むわ」
綺麗な声で笑われてしまった。うぅ、恥ずかしいってばよ…じゃない!恥ずかしい…。
「九尾だと!?こいつがか・・・フン、また世話の焼けそうなガキだな。俺はペイン。この雨隠れの里の長だ」
橙色の髪の男の人がそう言った。どうやらこの雨隠れの里で一番えらい人らしい。
ふと、ペインさんが近づいて来た際に気づいてしまった。
目が、普通ではない。
紫色をした波紋を描くような両眼…
じっと見ていると吸い込まれる錯覚を覚えそうなその両眼を見て、オレは悲鳴をあげてしまった。
「……ひっ!!」
反射的に兄ちゃんの後ろに隠れる。
失礼だ、と頭ではわかっていても、何故か本能的にそうしてしまった。
「あら……ペイン。アナタ、随分と怖がられたものね」
「フン、言うな、小南……傷つく」
やはり傷つけてしまったらしい。無表情なその顔の中に、少しだけ悔しそうな感情が浮かんでいた。
謝るついでに訊いてみる。
「ご、ゴメンってばよ…でも、なんなんだ、その眼は??」
「これは輪廻眼。白眼、写輪眼と並ぶ三大瞳術の中で、最も崇高な瞳術だ」
―――――んん?
全く分からない。
リンネガン?ビャクガン??シャリンガン???
…??
誰がどう見ても頭にハテナマークが浮かんでいるオレを見て、兄ちゃんが助け船を出してくれた。
「ペイン。お前のその説明は、解っている奴にしか分からん。―――ナルト。アカデミーで受けた授業の中に、幻術があったろう。
幻術の授業の際に、瞳術について習わなかったか」
「う…。オレ、座って受ける授業は苦手で…ほとんど寝てたから、あんまり覚えてないよ」
マダラと名乗っている、否、マダラと騙っているその男は理解した。
―――コイツ、アカデミーの頃のオレと同じで実地授業しか真面目に受けてこなかったな。
座学をよく寝ていたこの男も、かつては良く同じ班の仲間に叱られたものだ
(―――へん!カカシもリンもわかってねえな!!座って強くなれるんだったら、俺だってちゃんと授業受けてるってーの!!)
まあ、そんな過去の出来事は今更どうだっていい。
いくら思い出しても、あの頃へはもう二度と戻れないのだから・・・
―――だからこその、あの[計画]だ・・・。
最も厄介だと思っていた木の葉の九尾が、まさか自分からオレの手中に収まってくれるとはな――
思った以上に上手く行っている自身の計画を考え、マダラは仮面の中で笑みを浮かべた。
「・・・まぁ、瞳術やその他についてはこれから教えるとしよう。今のナルトには知識が足りん・・・それと経験もな。
今のままでは他里のクズ共に誘拐されかねん。まずは修行させる事にするか・・・
ナルト。下忍として任務が始まるまであとどのくらいの期間がある?」
「あと一ヶ月ってとこだけど・・・まさかオレ、また木の葉に戻らなきゃいけないの・・・?」
「そんな泣きそうな顔をするな。お前には、木の葉の忍として、木の葉の里の情報を集めて貰う必要があるのでな。
木の葉の里を潰す為だ。協力しろ」
「・・・わかったってばよ。まあ、そーいうことならオレに任せてくれって!!!」
自分が誰かの役に立てる事に気づいたナルトは一転嬉しそうな表情になる。
―――全く。コロコロと表情が変わる・・・昔の、馬鹿だったオレにそっくりだ・・・
あと一ヶ月か・・・一ヶ月でナルトを何処まで強く出来るか。
まぁ、九尾の人柱力だ。チャクラなら腐る程有る筈だ。やりようは幾らでもある。
すぐにでも修行をさせたいが、このままナルトが行方不明のままだと木の葉から追っ手が来るだろう。
まずはナルトを里に戻し、安否を確認させる。頃合を見て、オレがナルトをこっちへ連れて帰るか。
「ククッ・・・元気な事だ。ナルト、お前には今すぐ修行をつけてやりたいところだが、まずは先に木の葉へ帰ってお前の無事を里の奴等に確認させに行くぞ。
お前が消えたと知れば、里は血眼になってお前を連れ戻しに行くだろうからな・・・それでは邪魔になる。
里の・・・三代目にでも顔を見せて来い。その後、タイミングを見計らってオレがお前を迎えに行く」
行くぞ、と言われてナルトがマダラにしがみつく。
「行ってくるってばよ・・・また後でね!小南さん、と・・・・・・・・・ペインさん!!」
なんだ今の間は、とペインが言い終わる前に空間が歪んで移動が始まった。
「・・・全く、嵐の様なガキだな」
「ええ・・・でも、昔の弥彦にそっくりだわ」
残った二人は遠い目をしていた。
あとがき
ペインがネタキャラみたいになっちまった!
なんでだ!?どうしてこうなっちまう!?