行ってきます、と言うと
ああ。また後でな。と返ってくる。
こんな他愛も無い言葉のキャッチボールが出来る事が堪らなく嬉しい。
「よっしゃあ!さっさと面倒事を終わらせてしゅぎょーしゅぎょー!俺ってば強くなっちゃうもんね!」
・・・ヘンな口調はもう諦めよう。
そう決めたナルトだった。
――明け方になり少しずつ昇り始めた朝の光が、優しくナルトを照らしていた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
「今まで何処におったのじゃナルトォォォォ!!朝になっても戻らなかったら、捜索隊を組むつもりだったのじゃぞ!!」
「ごめんなさいってばよじっちゃん・・・オレってばミズキ先生に凄ェ術教えて貰えるって事で、ミズキ先生に教わった巻物を
ちょーっとだけ借りちゃっただけなんだってばよ~・・・おねがい!ゆるして!!このとーり!!!!ね??」
努めて明るく、今まで道理振舞う。三代目火影は安心したようにすると、直ぐに暗い顔に戻った。
「・・・ミズキの件はイルカから聞いた。それに、ミズキから・・・お主の中に九尾が封印されていると知らされてしまった事も」
三代目は辛そうな表情のまま続ける。
「済まなかった・・・ナルト。お主に隠し通すつもりは無かった。今のナルトはまだ幼ない、故にこの事を知ってしまうとショックを受けてしまうと
思ったのじゃ。だから、もう少し大人になってから教えるつもりだった」
「だいじょーーぶだってばよ!!」
オレが可能な限り明るい笑顔で答えると、三代目は驚いた表情に変わる。
「オレの中に九尾が封印されてたって、オレはオレ!他の誰でもないってばよ!!!
いつかオレがオレの中の九尾を従えて、里の皆の前で九尾をドゲザさせてやるってばよ!!
だーから!!じっちゃん!楽しみにしててくれってばよー!!」
じゃ、そういうことでねーーー!と言い残し、凄いスピードで屋敷から飛び出して行った。
―――ナルト。いつの間にか、お主も成長しておったのじゃな。
自分の中に自分の里を壊滅させた化け物が居ると知って、ショックを受けていないハズは無いのだ。
それでも、ナルトは前を向いている。
赤子の頃からナルトを世話してきた三代目は、熱い感情が込み上げるのを感じた。
「やれやれじゃわい・・・ワシも歳をとるわけじゃのう」
あの子が、あんなにも明るいのだ。
この里の未来もきっと明るいものに違いない。
―――ミナトよ。お主の子供は真っ直ぐに成長しておるぞ。
三代目は、今は亡き四代目火影にそう語りかけた。
ナルトは一人、暗い顔をしていた。
ありがとう。じっちゃん。この里でオレの事を分かってくれるのは、ちっちゃい頃から
ずっと世話をしてきてくれたじっちゃんただ一人だろう。
お世話になったじっちゃんを裏切るのは心が痛む。
でも、オレはもう・・・
―――――もう、木の葉は信用できない――――――
先を急ぐオレの前に、一人の男が立ちはだかった。
・・・イルカ先生だ。
「ナルトォ!!!今まで何処にいたんだ!!心配したんだぞ!!!!」
「イルカせんせーー!!そっちこそ何処にいたんだっての!オレだってさっきじっちゃんと話し終わってイルカせんせーを探してたんだってばよ!」
「オレを・・・探してた?」
「そー!!昨日は話も聞かずに居なくなっちゃって悪かったってばよ!オレってば昨日びっくりしちゃって!!」
ニコニコした顔でそう言う。
「そうか・・・ナルト。昨日は言いそびれちまったが、オレはお前を憎んでなんかいない。むしろお前は俺にとって弟の様な存在だ。
オレが憎んでいるのは九尾で、九尾はナルトじゃないからな!お前は木の葉の里のうずまきナルトだ!」
・・・よく言うってばよ。イルカ先生だって、本当はオレのことが憎くて仕方ないんだろ?
あんたにとってオレは、両親を殺し里を滅茶苦茶にした化け物なんだ。
だったら。
里のみんなみたいに、オレに辛くあたってくれればいいんだ。暴力をふるってくれればいいんだ。
自分の本当の気持ちを隠してオレに優しくなんかするから。
・・・だから、以前のオレは簡単に信じまったんだ、あんたの事を。
イルカ先生。もう・・・
「えっへへへ・・・イルカせんせー、オレの兄ちゃんにしては歳をとりすぎだってばよぉ・・・あっははは!!!」
「あーっ!!ナルト!お前!人が折角慰めてやってんのに!な・ん・だ・と・ぉーー!!」
「だーーーっはっはっは!!ごめんってばよーーー!!!じゃあねーーーーーーーー!!!」
もう、オレの事は放って置いてくれ。
――――良かった。ミズキの話を聞かせてしまった時はどうなるかと思ったが、ナルトはオレが考えるような弱い子じゃ無かった。
里の人たちに疎まれても、あんなにも真っ直ぐに育っている。イルカはたまらなく嬉しくなった。
――――四代目、ナルトは・・・強くなりますよ!!アナタを超えるくらい!
あとがき
原作のナルトの性格とは真逆の路線を突っ走ります。
サスケやサクラはもう少しで出せるかなー?