神経を集中させる。
両足に分配するチャクラの量に気を取りながらも、目の前の無数の紙に意識を集中する。
どれだ。次はどの紙が飛んでくるんだ―――?
視界に映る紙の吹雪の中から、4つ。
手裏剣を象った紙、所謂紙手裏剣が飛んでくる。
紙手裏剣を回避する事に集中しながらも、両足に送るチャクラの量も決して忘れない。
4つを回避すると、次は8つ。
8つも何とか回避すると、今度はそれ以上。
数え切れない数の紙手裏剣がオレに向かって飛んでくる。
―――これを全て避けきるのは無理だ
そう本能的に察知したナルトは、術を発動させる。勿論、その間も足に送るチャクラの事は忘れない。
「多重――――」
ペインが驚愕の表情を浮かべる。
(まさか・・・水に浮かびながら影分身を発動する気か?今のナルトにはそんな芸当が出来る訳――)
「影分身の術!!!」
ボン、という音と共に現れた無数の分身体が、オリジナルのナルトを庇う様に取り囲む。
刹那、無数の紙手裏剣がナルト達を襲った。
ぐあ、イテッ、くそっ、等の様々な悲鳴が聞こえる。
数の暴力に成す術なく消えていくナルトの分身体。
吹き上がった水飛沫と消えた分身体から出た煙が舞い上がり周囲が真っ白に染まる。
「・・・合格だ」
「へへッ、やったっ・・・て、ばよ・・・」
煙幕が晴れると、中に居たオリジナルのナルトは未だ水の上に浮かんでいた。
疲れ果てたナルトが陸地に戻ると崩れ落ちる様に膝をつく。
しかし、その表情は満足そうな顔だった。
「・・・しかし、よくあの状況下で影分身を使う事が出来たな。火事場の馬鹿力という奴か?」
「馬鹿に・・・すんなっての・・・!オレだって修行の後、諦めないで一人で練習してたんだってばよ・・・!」
―――諦めない、か。先生に良く似ているな・・・
「あの数の紙手裏剣を全て防ぎきるとは予想していなかったわ・・・成長したわね、ナルト君」
紙吹雪の術を解いた小南がナルトの傍に来る。
「小南さんも・・・さっきのアレは死ぬかと思ったってばよぉ・・・」
「当然よ。当てる気で攻撃したもの。じゃないと修行にならないわ」
このおねーさんも・・・厳しいってばよ・・・
まぁ、おかげで大分チャクラコントロールも上達したし良しとしよう。
「さてと、ナルト。これでチャクラコントロールの修行は終わりだ。
今日はもう戻ってゆっくりと休むといい。明日からは俺達では無くマダラが修行をつけてやる筈だ。
明日までしっかりとチャクラを練っておけ」
「・・・おう!小南さんペインさんもありがと!!」
―――全く、あれだけ頑張っても元気な事だ・・・
次の日、早起きしたオレは考え事をしているらしい兄ちゃんをとっ捕まえて修行を開始させた。
早く火遁の術を教えて貰うってばよ!
「さて、ナルト・・・ペインから聞いたが、水上で影分身を発動させる事が出来るまでにはチャクラコントロールの
技術が成長した様だな。今日からあと3週間は火遁と雷遁、そして風遁の術を習得してもらう。
お前は人柱力・・・狙われる可能性も無くはないからな。引き出しは多い方が良い」
ヤッター!いろいろ教えて貰えるみたいだってばよ!
これでオレも強くなれる!
「と言っても、お前一人で3週間という短い期間で多彩な術を覚えるのは無理がある・・・」
「えー!!じゃあ教えてくんないの!?」
ブー、と不機嫌な顔をしてナルトが文句を言う。
―――やれやれ、昔のオレと同じく話を全く聞かない奴め・・・
「話を最後まで聞け、ナルト。オレはさっき、お前[一人]では無理と言ったろう・・・
つまりだ。一人じゃなければ良い」
「えー?どういうことだってば?」
「・・・影分身だ。影分身は消える時、その時に得た経験をオリジナルに還元する事が出来る。
この事を利用して、大勢に影分身し、一度に大量の分身体に練習させる。
チャクラ量の多いお前ならではの強引かつ無茶苦茶で最高の修行方法だ」
すげえ、影分身にそんな使い方があるのかー!!と感動したナルトだった。
「すげー!これでオレも一気に強くなるってばよ!!じゃあさ、じゃあさ!!
さっそく教えてくれってばよ!!」
せっかちな奴め、と思いながらも男はナルトを宥める。
「まあ落ち着け、ナルト。その前に、お前にこれから教えてやる術を見せてやる」
と、男が言った途端に、おー見せて見せて!!とはしゃぎ始めるナルト。
仮面の中でやれやれ、といった表情を浮かべた男は印を結び始めた。
「――――火遁」
すげえ印のスピードだ・・・目で追えねェ・・・!
印を結び終えた男は空へ向けて術を発動する。
「豪火球の術!!!」
刹那、凄まじい質量の火の球が空へと発射される。青空を覆い尽くす様な炎が空へ広がり、消える。
―――すげェ。これがアカデミーで先生が使ってた火遁の術と同じなんて。規模が桁違いだってばよ・・・
「・・・これはうちは一族でも使えてやっと一人前という基本的な術だ。使用チャクラは決して少なくは無いが、
威力は強力なものだ」
「すげえ・・・オレにもこんな凄い大きさに出来るの?」
「それは修行次第、と言ったところだな。最初は小さいサイズしか出来んだろうが、練習すれば相応の大きさを
作り出す事は出来るだろう・・・他にも、火遁を極めていくとこんな術も使えるようになる。
これは以前オレがあるうちはの男に教わったものだが・・・威力も使用チャクラも異質なものだ。
豪火球の究極系、と言ったものか」
言い終えると、兄ちゃんがチャクラを貯め始める。
さっきの豪火球の時とは比べ物にならないチャクラを貯めている。
すっげえ量だってばよ・・・何が始まるんだ?
三角形に作った印を結ぶと、兄ちゃんはそれを発動した。
「・・・・・・・・・火遁!」
発動する瞬間、凄い勢いの風が通り過ぎるような感覚がオレを襲った。
―――この術は、凄い。
本能で察知したナルトだった。
「――――――――――豪火滅却!!!!」
瞬間、ありえない規模の火の嵐が空を真っ赤に覆い尽くした。
あとがき
忙しくて中々更新出来ず・・・
連休を使います!