これにて上映は終了にございます。お客様、お忘れ物のないようお帰りください、か。
観客は一人もいなかったが……まあ、満足できる内容だったさ……
望まれない役者は、このまま消えるとしよう……
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首も座っていないのに雑な持たれ方のお陰で何度目かの死を迎える前になんとか目的地についたようだ。まったく、何度死の線をなぞってやろうかと考えたぞ。とまあ、そんなこんなでたどり着いた場所は酷く歪だった。少なくとも日本の街の風景ではなく、海外ならありそうな建物。しかし、行き交う所には日本語が使われている。更に文明のレベルも曖昧である。一体これはどういった所だ?仮に俺が転生していたとしても、寧ろ文明が上がっている筈だ。ならばこの光景は…
深く考えていても仕方がないか。郷に入っては郷に従え、少しばかり使い方が違うがここの生活に俺自身が慣れるのが先だろう。
そう考えながら俺は未だに苦しい思いでこの里を闊歩する男を見る。額当てというべきか、額にある鉄製の板がついた布。その板にはうずまきのようなものに出っ張りが付いた印が刻まれている。それをこの男は片目を隠すように付けている。マスクと相まって殆ど顔が見えないな。辺りを見ると、他にもこの額当てをつけた人間がちらほらと。この額当てをつけている者とそうでない者の違いとしてはその力量か…つけている者同士でも差はあるが、つけていないものは
基本的に強さが感じられない。
やれやれ、どうやら今俺を持っている男はコスプレではなく本物の忍者らしいな。そしてこの街、いや里は忍者の里だと思われる。七夜の里のように多少なりとも全員が力を持っているわけでもなく。すくなからず一般人は存在しているようだ
ん?何か視線を感じるな…
いや当たり前か。赤子を片手にぶら下げて歩く男、否が応でも目立つ。っと殺気が近づいてくるな
「なにしてるってばね!」
赤い髪がうねうね動いているな。秋葉のように炎でも出しそうな勢いだ。そして腹が膨れている…どうやら妊婦のようだな
「何って、任務の報告に火影様の所に行く所ですよ。クシナさん」
この女性(クシナというらしい)がそれを聞いて憤慨した様子でこちらに指を刺した。おいおい、いくら女性だと言っても人に指を指すのはいただけないぞ。幼少時に教わらなかったのか?さすのならナイフだろう。
「そんな持ち方じゃあ子供が苦しむってばね!」
「そうなんですか」
そう言って男は俺を女性に差し出した。何か生贄にされるような気分なんだが、外れていることを祈ろう。女性は俺を受け取り抱きかかえる。はぁ、やっと開放されたか
「その子も火影様の所に連れて行く所だったんですよ」
「どういうこと?」
「任務帰りに森で拾いまして。恐らくは捨て子だと」
む…心外だな。俺は捨てられた覚えなどないのだが。まあいい、この男がいう火影とやらが恐らくはこの里のトップ。そうでなくとも上の位置にいることは確実だろう。つまりはだ、ここにどういった風習があるかは知らんが俺の命はその火影の判断で決まるということだろう
…面白くないな。殺すか?
いや、満足に動けぬ身体で出来もしないことは言うべきではないな。他者に生殺与奪を預けるのは不本意だが仕方がない…か
「そうなのね。とりあえずミナトの所には私が連れて行くから、行くわよカカシ」
「はぁ…」
いつの時代、どんな場所でも女性というのは強かというのがよくわかるな。将来尻に敷かれるのではないか?この男。女性というのは扱いが難しい故に味方につければ円滑に物事を動かせるというのに
◇
俺が連れて来られたのはある建物だった。この里内でも大きい方の物で、その内部にいるであろう火影という人物は重要人物であるのは間違いない…のだが
「この子は私達で育てましょ。ミナト」
「それはいいんだけどね。まずはその子供が安全かどうかくらい確認を…」
「ん?」
「…なんでもないよ」
まさかこの女性が火影との夫婦だったとはな。正直驚きを隠せない。俺を連れてきた男は入り口付近でため息を吐いて立っている。
「とりあえず、少なからずチャクラはあるようだし。後で色々と調べるよ?」
「わかったわ。それは仕方ないわね」
さて、いったいどうなることやら