中忍選抜試験当日
俺は少し浮かれたいた。
久しぶりに同期のメンバーと顔を合わせることになるからだ。
会場に向かう途中にナルトとサクラを見つけた。
「オイ!ナルト!久しぶりだな。」
「オウギ!」
「お前とサクラだけか。サスケは?」
「まだ来てねぇってばよ。」
「そうか。」っと適当に返事を返し、辺りを見回す。
サスケの姿はない。
ぼーっとしていると背後から気配を感じる。
「さっきサスケって言ったじゃん。」
「な、何だってばよお前。」
背後から全身真っ黒で顔に隈取りの男が俺の肩に腕を掛け、ヌッっと現れる。
いきなり過ぎたから身体がビクっとした。
「うちはサスケってお前じゃん?」
「ちっ違げーよ!俺は竹取オウギだ。お前こそ何者だ!」
「カンクロウって言うじゃん。お前がサスケじゃないのは知ってたじゃん。で、サスケってヤツは何処にいるじゃん?」
「さっきから俺の名前を呼んでいるようだが、何の用だ。」
サスケがカンクロウの背後の木の陰から現れた。
カンクロウは少し動揺しているようだった。
「おいカンクロウ何をしている。」
「が、我愛羅!」
我愛羅と呼ばれた男は背中に瓢箪のような物を背負って髪は赤く、額に”愛”の文字があり、不気味なオーラを漂わせていた。
背後の木の枝から声を掛けて来る。
ってか、お前ら背後好きだな。
心臓に悪ぃ。
枝から降りて来てゆっくりと歩きだす。
「何だお前達。殺すぞ。」
周りに殺気を飛ばし、俺と目が合う。
身体がビクっと反応し、頭の中に「ヤバい」の文字が浮かぶ。
「我愛羅、ここで問題を起こすのはマズいじゃん。」
「カンクロウ、お前が死にたいか?」
かなり殺気立っている様子だ。
周囲に緊張が走る。
「砂の忍か人様の里で何をしている。」
背後の木の枝の上に立ってこちらを見ている男がいた。
白い目に木の葉の額当てをして、髪は黒で長く背中の辺りで結んでいる。
ってか、本当に背後好きだな。
戦術の基本だけど。
「お前達、試験前から問題を起こすんじゃない。」
我愛羅が静かに長髪の男を見て口を開く。
「…。カンクロウ、行くぞ。」
「分かったじゃん。」
そう言うと我愛羅とカンクロウと女が先に行ってしまった。
長髪の男が降りて来て、サスケに話し掛ける。
「お前、名前は?」
「人に名前を聞く時はまず自分からじゃないのか?」
「フッ、日向ネジだ。覚えておけ。」
「うちはサスケだ。」
「また何処かで会うかもな。…。リー、テンテン行くぞ。」
そう言うとネジとリーとテンテンが行ってしまった。
「彼奴ら、化け物か。」
「サスケくんが来てくれて良かったわ。一時はどうなるかと思ったもん。」
サクラが笑顔でサスケに言い寄るとナルトが声をあげた。
「サスケ、てめぇ目立ってんじゃねーってばよ。」
「ウスラトンカチが…。」
二人が言い合いをしている側でサクラが笑顔で見守っている。
そのやり取りを見て俺も緊張が解れ、サクラに話し掛けようとする。
「なぁサクラ…。」
「あん?私に話し掛けないで。」
汚物を見るようなひと睨みに妙な汗をかく。
そう言えば、あの事件から俺に対しての態度は最悪だったのを忘れてた。
そのせいで他の女子からも酷い目で見られ、ばい菌扱いされてたっけな。
「…すみません。」
驚くほど小さな声で言葉を絞り出した。
「俺達も行くぞ。」
「オウ。オウギ、またな!」
そう言うとナルト達も行ってしまった。
ぼーっとナルト達を見送ると遅れて、キンタとミヤが到着した。
「何やっているです、オウギさん。」
「ああ、何でもない。」
「…。…さっきのヤツら…強いな。」
「そうですね。この試験のレベルが高いのが分かりますね。」
背後取り合戦のやり取りを見守り、俺は完全に蚊帳の外だった。
少し自身を無くした。
「それでも私は絶対に中忍にならなければいけません。」
「そ、そうだな。」
「私達も行きますよ。」
ミヤはそう言って、歩いて行く。
俺も付いて行こうとするがキンタに引き止められる。
「何だよ。」
「前に言った事を覚えているか…。」
「あっああ。」
気持ちの乗らない返事をしてしまった。
「俺とミヤは…、特にミヤは…中忍にならないと…いけない。だから…、
アイツの足だけは…引っ張るな…。」
「お、オウ。」
弱々しく返事をした。
なんか俺、かっこ悪い。
俺だってやってやる!
ーーー
ーーー
ーーー
一次試験は筆記試験だった。
まだ時間ある。
一問でいい。
解ければ次に繋がる。
「それでは、最後の問題を言う前に
これが解けなければ中忍になる資格はない。貴様らは永遠に下忍だ。」
試験官の言葉に周りがざわつきだす。
「最後の問題を受ける者は残れ、受けない者は同じ班の者とこの教室から出ていってもらい、即刻失格とする。」
ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい。
問題は分からない。
時間はない。
一次試験からピンチじゃねーか。
『私は絶対に中忍にならなければいけません。』
分かってる。
俺も成りてぇし。
『足だけは…引っ張るな…。』
分かってる。
けど、分からねー。
問題が‼︎
不安で落ち着きを無くし、机に塞ぎこむ。
こんな時はどうすればいいんだ。
正直、失格になってもいいから教室から出たい。
けど、キンタとミヤが何て言うか。
不意に扇子を取り出す。
これは忍になった時に母さんから貰った。
机の下で広げて、無地の扇子の見る。
なぜか分からないが不安が消えた。
そうだ、俺は忍になったんだ。
ビビってんじゃねーよ。
もう一度問題の見直してみよう。
一問でも分かればいい。
「舐めんじゃねー‼︎」
ナルトがいきなり大声で叫ぶ。
「…一生下忍だってかまわねぇ!意地でも火影になってやる‼︎」
ナルト、お前は。いつも真っ直ぐで迷いがない。困難にもいつも前向きに立ち向かう。失敗したって関係ない。
よし、俺もやり通そう。キンタやミヤの言葉で不安になっていたがもう迷わない。
「そうか…お前達に…。」
強面の試験官が口を開く。
鼓動が高鳴り、手に力が入る。
クソッ。もうどうにでもなれ!
「…お前達に一次試験の合格を申し渡す。」
ん?
ん?
マジか!
ーーー
ーーー
ーーー
「いやー!一次試験は楽勝だったな。」
一次試験はあえて下忍レベルでは分からない問題を出して、カンニングをさせて情報収集能力を見る試験だったらしい。
最後の問いこそ、一次試験のミソで不安を煽り、失格者を出して振るいにかけることだった。
「そんなこと言って…オウギ、お前は…大丈夫だったのか?」
「あ、あったり前よ!全部解けたぜ!」
「じゃあ聞きますけど、記号問題の答えは?」
「…”B”かな。」
「”C”です。私は隣の方が”当たり”だったので答えは知っています。」
「まぁいいじゃあねぇか、通ったんだからよ。」
「…そうですね。二次試験に進めただけいいとしましょう。」
トゲのある言葉をもらい少し落ち込んだ。
一次試験は内容はどうであれ、大人しく座っていたら受かる試験だった。
だが、二次試験はそうはいかない。
通称『死の森』と呼ばれる森で5日間のサバイバルをしなければならない。
各班に”天の書”か”地の書”が配られ、期間以内に二つの書を揃え、三人で森の中央にある塔まで来ること。
当然、奪い合いになる為、戦闘は避けられない。
ゲートの前に到着した。試験官が一人立っている。
「君!」
突然、試験官に声を掛けられた。
「竹取オウギ君だね。」
「そうだけど…何か?」
「僕の名前はカワキって言ってね、昔、君のお父さんに助けて貰ったことがあるんだよ。息子さんがいるのは知っていたけど初めましてだね。お父さんとそっくりだから直ぐに気付いたよ。」
「はあ…。」
「あっ、ゴメンね。試験頑張ってね。応援しているよ。」
さっきのミヤとのやり取りで落ち込みかけた気持ちが立直った。
考えても仕方ないだろ。
試験中だ。
後でいっぱい考えてやる。
試験開始時間が来てゲートが開く。
「よし、行くぞ!」
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あとがき
主人公のオウギがカッコ悪いですね。
彼の活躍はもう少し後になります。
数少ない読者の方へ
読んで頂きありがとうございます。
メリハリが無く、読み応えを感じないと思いますが、彼らの物語はこれからです。
もうしばらくだけお付き合い下さい。