さてさて、今は何時かな?
簡単だね、5時だね、朝のね。
…にしても変な時間に起きたな。泣いて母さんたち起こすのも気後れするし…。
今の内に状況整理でもするか。
ここは俺が生きていた世界とは違う世界。つまり異世界な訳なんだが…。
どことなく既視感を覚える。
例えるなら母さんが作ったレトルトカレーとおんなじ感じのが学校の給食で出されたみたいな…。
意味わかんねぇ?俺もわかんねぇ。
これは考えりゃ考える程分かんなくなるから後回しにしよ。
俺はうちは一族って名門…の頭みてぇな立ち位置である父さんの二人目の息子として産まれた。
やっぱりこういう名門だと跡継ぎは長男ってのがセオリーらしく、兄は次男坊の俺より期待されてる。
その分プレッシャーもかかってるけど。
母さんはすっげぇ美人で父さんは結構怖い。んでもって兄は優しい。
恵まれた家庭だと思う。一族云々でごたごたがあったとしても、だ。
折角の兄弟なんだから兄には重圧をかけさせない様にしてやりてぇけど…もう少し産まれるのが早かったらなぁ…。
兄不孝者とか言ってたけど兄には長生きしてほしいし幸せになってほしいし素敵な義理のお姉さんも作ってほしいと思う。素敵な義理のお姉さんも作ってほしいと思う。
「ん…なんだサスケ、もう起きてたのか」
俺の邪な心を感じとったのか兄が起きてきた。
眠そうに目を擦りながら俺に目を向けてくるその様子を見るからに、どうやら兄もいつもより早く起きたらしい。
やっぱり兄弟だから似るね、やったねたえちゃん。おいやめろ。
「うぅ…あ、あー、う、あぅー」
「サスケも起きちゃったのか?父さんと母さんはあと少しで起きてくるけど…」
俺を抱き上げて優しく言ってくれる兄。俺乳児から幼児になったら絶対兄貴の事自慢してやるんだ…。
実際兄は笑えるくらい優秀で美形で…才色兼備、容姿端麗…ダメだ泣きたくなってきた。
俺これで落ちこぼれブスだったらぜってぇ死にたくなるわ。頑張ろ。
兄に見劣りしねぇように文字通り死ぬ気で頑張ろ。
「…サスケは考え事してる時が多いな」
「うっ、うー…うぇ?」
うっおっあっえっいっ。
兄貴は俺の思考でも読めるのか?正直かなり動揺してる。心臓ヤバイ。
兄弟ってこんな事までわかんのか?双子じゃね、ここまでくると双子じゃね。
尊敬の念を込めた目で兄貴を見つめると、兄貴も見つめ返してくれる。
暫く見つめあったままだったけど、俺が手を伸ばしたのと同時に母さんが声を掛けてきて兄は俺から目を離した。
「今朝は早いのね、イタチ。あら…?サスケも起きてたの」
少々びっくりしたのか母さんが軽く目を見開きながら近寄る。
兄は気付く事無く、伸ばした腕は行き場が無くなって落ちる…
寸前に兄は俺を抱き上げてくれた。
腕に気付いてたかどうかはわかんねぇが、俺はそれが嬉しかった。
兄は俺の事を見てくれる。
兄貴は俺の事を気にかけてくれる。
兄さんは俺の事をちゃんと分かってくれてる。
刷り込みみてぇに兄さんを称賛し始めたけど俺は前から兄さんの事尊敬してたから、手のひら返しとかじゃねぇから。
「サスケ、朝ごはんだぞ。今日はサラダが出るらしい、楽しみだな」
「あぃ、うー!」
あー幸せ。やっぱサラダといったらゴマドレッシングだよな。
かけさせてもらえねぇだろうけど。ちくしょうめ。